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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第2部.再戦の萌
42/112

白竜の覚醒



『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


 怪物の悲鳴のような咆哮により、ミリンはあやふやになったその意識を現実へと引き戻した。


「コウスケ!コウスケは!?」

「ミリン…?いきなり騒ぎだして一体どうしたんだい?」


 ミリンと行動していたスミレは、いきなり騒ぎだしたミリンを前に首を傾げた。


「コウスケが死んじゃう!助けなきゃ!」

「えっ、ちょっとミリン!?」


 ミリンは理解できていないスミレの反応なんてお構いなしにひとり叫ぶと、そのまま攻撃を辞めた怪物の方へ向かって走りだした。

 取り残されたスミレはしばし口を開けていたが、状況を察するとひとり、ため息をついた。



ーーー



「はぁっ…はぁっ…!まさか、自我を失いかけてもここまで判断能力が衰えないとは…」


 2本のナイフを振り回したペストは、若干息を切らしながらボソッと呟いた。

 ユイはそんなペストの一瞬の隙を見逃すはずもなく、そのペンデュラムを振り回した。


「くっ…」


 すんでのところでそれをかわしたペストは後退すると、背後に生えていた木を蹴ってユイに向かって突っ込んだ。

 ユイは咄嗟に地面を蹴って後方に飛ぶと、そのまま影の中へと身を潜めた。


「…チッ」


 ペストがそれを姿を見失った瞬間、その背後にある影から飛び出したユイは、その勢いに任せて手に持った鎌を振り下ろした。


「…そこかッ!」


 ユイの一撃はペストに触れる寸前、ペストの手にあるナイフによって受け止められる。

 ペストは口元を歪めると、咄嗟のことに体制を整えきれていないユイの鎌を弾き飛ばすと、その身体に1発、回し蹴りを喰らわせた。


「…ガッ…ァ…ッ…」


 飛ばされたユイは、受け身を取る間も無く何本もの木に衝突し、それを破壊すると地面に叩きつけられた。


「あ〜あ…ちょっと強く蹴りすぎちゃったかな…」

「貴、様…」

「お〜怖い怖い。まだそんな口が聞けるんだ?」


 血だらけながらもペストを睨み付けるユイの背中をペストは踏みつけると、持っていたナイフでその右翼を切り落とした。


「ぁぁぁぁッ!ぁ…ぁ…」

「あたしのナイフは特別製でね?こうやって」

「ぁぁぁッ!」

「斬りつけるとッ!」

「ッ!」

「どんな回復魔法や治癒能力でも傷が塞がらない呪いがかかってるのよ」


 右翼に続いて左翼、尻尾を切り落としたペストは断末魔を上げるユイにその言い放つと、その髪を掴んで仰向けにした。


「さぁ…もっとあたしを楽しませてよ」


 ペスト満遍の笑みを浮かべながらそう言うと、再びナイフを突き立てた。



ーーー



「中二ッ!コウスケは!?」


 カイトの元はやってきたミリンは若干息を切らしながらそう言った。カイトは驚いた様子でそれを見たが、相当焦った表情のミリンを見て大剣を閉じかけた穴に突き出すと口を開いた。


「どうした。えっと…先輩の恋人殿?いや、奥様?」

「わたしの呼び方なんてどうでもいいから!コウスケは!?まだこの中にいるの!?」

「あ、あぁ…姫様プリンセスはエイズと一緒に外に出ていったが…」

「わかった!ありがと!」


 そう言い放ったミリンは刺さっていた大剣を引き抜いて投げ捨てると、背後で騒いでいるカイトの声を無視しながら穴の中へと飛び込んだ。



ーーー



「ふっ…フハハハハッ!倒した…ッ!倒したぞ!あの最強と呼ばれた竜人をッ!」


 ユウが沈んだ海面を覗きこんだエイズはユウの姿が見えなくなると、ひとり海の上で高笑いを浮かべていた。

「これで竜人なんかよりも俺が強いことは証明されたッ!もう誰も俺のことを雑魚呼ばわりできるやつh…」

「誰を倒したですって?」

「それはあの最強の魔物、竜人に決まって…」


 不意に背後から聞こえた声にエイズが振り返ると、その姿を見た瞬間表情が固まった。


「貴様ッ!何故ここにいる!?さっき俺が沈めたはず…」

「生憎ですが私、泳ぐのとか得意なんですよね。伊達に森の中で生活してませんから」


 そう、今エイズの目の前にいるのは先程沈めたはずのユウだった。ユウは何も持っていない両手を広げると、その海面にうつった影の中から飛び出した銃と〈アベンジャー〉をその手に収めた。


「…本番はこれからですよ」


 ユウはニヤリと口元を歪めると、海面を滑るようにしてエイズに向かって走りだした。

 エイズはその足についた装置を弄ると、切りかかったユウのそれをスルリとかわした。


「ハッ!多少驚いたが所詮はその程度。そんな動きじゃ俺に攻撃を当たることすらできないな!」


 余裕といった様子で宣言するエイズに、ユウは姿勢を低くすると、警戒した様子でその2つの武器を構えた。



ーーー



 ミリンは朧げにある自分の記憶を頼りに怪物の中を走り回ると、塞ぎかけている壁の亀裂を見つけてはこじ開けると、その中へと入っていった。


「ウッ…ァ…」

『フヘッ!フヘヘッ!あの時の借りは返させてもらったぜ兄ちゃん。この力を得た俺はもうお前に負けることなどあり得ないッ!フヘッ!』


 ミリンが最深部に顔を出すと、コウスケはその肩に刺さった細い柱をへし折ると、それを引き抜いてみせた。


「ッ!…お前、人間を辞めてまでそんなことする必要はあるのか?」

『あぁ?』


 コウスケは鮮血の噴き出る肩を押さえながらユラユラと立ち上がると、怪物ガリを睨み付けた。


「コウスケッ!」

「…!?ミリン、一体どうしてここに…」


 コウスケは唐突にかけられたミリンの声に反応すると怪物ガリから目を離した。


『フヘッ!これはこれは…この男と一緒にいた姉ちゃんじゃねぇか』


 ミリンの姿を捉えた怪物ガリはどこか興奮気味にそう言うと、地面に刺さっている腕を引き抜いた。


「コウスケ…よかった。まだ死んでなくて…」

「死ぬ?なんの話だよミリン。縁起でもないこと言ってんじゃねぇよ」

「あはは…そう、だよね」


 コウスケに近づいたミリンは回復魔法を使ってその肩を修復すると、何やら突っ立っている怪物ガリを睨み付けた。


『おぉ…今日はやたらと睨み付けられるなぁ…フヘッ!ま、女に睨み付けられるのは楽しいから好物なんだが。フヘッ!』

「うるさいッ!あんただけは…絶ッッッッ対に許さないッ!コウスケ、いくよ!」

「えっ…あ、あぁ!」


 何故かブチ切れているミリンに疑問に思うも、コウスケは2本の剣を構えると怪物ガリと向かい合った。


「…コウスケ、あの力使って」

「えっ…でも…」

「今のコウスケじゃ多分、あの怪物に勝てないよ」


 ミリンがそう耳打ちをすると、コウスケは先程一瞬ひとりで考えていたことがおかしく思えてきた。と同時に、そんなミリンの期待を裏切ってはいけない、とも。

 怪物ガリは、なかなか行動しない2人に痺れを切らしたのかその頭であろう部分を掻き毟ると、その両腕を再び地面に突き刺した。


「ミリンッ!」

「うん!」


 2人は四方八方から伸びてくる細い柱をかわすと、ミリンは薙刀のようにした杖で、コウスケはその2本の竜剣でそれを薙ぎ払った。


「一緒に、アイツを倒すッ!」

「コウスケとなら…負けないッ!」


 2人は自分に言い聞かせるようにそう叫ぶと、不意にミリンの身体から眩い光が溢れ出した。


『ッ!なんだこの光はッ!』


 怪物ガリは唸るようにそんな声を上げると、その両腕で自身の目にあたる部分を覆った。



ーーー



(このまま永遠と戦い続ければ先にどちらかの魔力が切れるはずですが…そうなるまでにあの怪物からの攻撃も同時に凌ぎ切る必要がある。そうすればより多く魔力を消費するのは私。どこか…どこか弱点があれば…)


 ユウは攻撃を次々とかわしていくエイズを観察しながらそう考えると、不意に飛んできたエイズの反撃をかわして後方へと下がった。


「フッ…威勢はいいがそんなんじゃ俺を倒すどころか攻撃すら当てられないな!」

「…」

「おい、なに黙ってんだよッ!」


 ジッと動かないユウにエイズはそう怒鳴ると、足元についた装置を弄って海面から高く飛び上がった。


「…!」


 ユウは上空から降ってきたエイズの攻撃をかわすと、再び滑るようにして距離をとった。


「へッ!どうした?攻撃しないのか?」


 煽るような言い方をするエイズ。ユウは無言のまま中腰からゆっくりと体制を直すと、顔を上げてその口元を歪めた。



ーーー



「ミリン、一体何が起こって…!?」


 光が収まり、コウスケがその視線をミリンに戻すと、目の前にあるミリンの姿を見て言葉を失った。

 何故ならそこには、どこかユウやユイを思わせる形状をした『白い竜の翼』と『白い竜の尻尾』が生えたミリンの姿があったからだ。


「…?どうしたのコウスケ?」

「あ、いや…ミリン。その翼と尻尾…」

「ん?…えっ!?えっ!?」


 ミリンは自分の姿を見ると、コウスケ同様驚いた様子をみせると混乱した様子でコウスケのほうを見た。


「これ、一体どうなって…」

「ミリン、理由はあとだ。今は…目の前にいるアイツを倒すッ!」

「…!う、うん!」


 コウスケとミリンはとりあえず考えることを放棄すると、未だに目を塞いでいる怪物ガリを見てその息を整えた。


『なんだ…一体何が起こってやがるッ!』


 怪物ガリは塞いでいた手を退かすと、目の前にいるミリンの姿を見てその声を荒げる。


「コウスケ、いくよ!」

「ああ!」


 2人はそんな怪物ガリの一瞬の隙を捉えると、それぞれ武器を持って走り出した。


『フヘッ!今の俺が最強だってことがまだわからないのか!』


 怪物ガリは向かいくる2人を前にそう叫ぶと、攻撃を仕掛けようとその両腕を地面に突き刺そうとした。


「ミリン!」

「えぇ!」


 コウスケの掛け声を聞いたミリンはその胸に手を当てると、そこから白く光り輝く、ユウのと同じペンデュラムを取り出して怪物ガリの両腕を切り落とした。


『ッ…ァ…なんだ!?何が起こって…』


 混乱する怪物ガリにコウスケは接近すると、その両手に持った剣を振り下ろした。


「…ッ!なに!?」


 コウスケの剣は怪物ガリに命中するも、その粘液だらけの身体を滑るように流れていった。


『フヘッ!この俺に剣撃は効かないッ!』


 怪物ガリは切り落とされた腕を一瞬で再生させると、コウスケの身体を突き飛ばした。


「…へっ!この時を待ってたぜ!」

『何…?』


 宙を舞ったコウスケは、その『天井』に2本の剣を突き刺すと、ぶら下がるような体制でニヤリと笑った。


「力…貸してもらうぜ、霊竜」 



ーーー



「貴様ッ!何がおかしいッ!」


 ユウの表情を見たエイズはどこか焦った様子でそう怒鳴ると、足元の装置を弄ってユウのほうへ向かって海面を蹴った。


(…!今ッ!)


 エイズの足が海面に触れる寸前、ユウは銃の引き金を引くと、エイズの足についている装置を撃ち抜いた。


「ッ!しまっ…」

「沈んでくださいッ!」


 ユウは再び引き金を引くと、もう片方についている装置も撃ち抜いてみせた。

 装置が破壊され、海面を踏み込めなくなったエイズはそのまま海面に叩きつけられるように着水すると、何やら慌てた様子でもがき始めた。


「…ぷぁ!た、助k…おぼ…溺r…」


 ユウは溺れかけているエイズをゴミを見るような目で見ると、ジタバタと動かしているその腕と足を撃ち抜いた。



ーーー



「…ペスト。任務は終わったのか」


 崖の上からユウとエイズの様子を見ていたエボラは、不意に背後から歩いてくる影に気付くとそう言った。


「ん〜?まぁ大体ね。現段階で脅威になるようなことはないかな」

「…それはどういう意味だ?」


 エボラが振り返ると、そこに立っているペストは血だらけの姿で楽しそうに笑ってみせた。



ーーー



 コウスケは一瞬闇に包まれると、その腕を前に暴走した化物のソレへと変えてみせた。


「…ッ!」


 霊竜の加護を受けとはいえ、無理矢理力を引き出したコウスケの右腕は一瞬激しい苦痛を伴うも、それもすぐに馴染んだ。

 怪物ガリはそんなコウスケの姿を見て一瞬驚いたような表情をすると、地面を蹴ってぶら下がるコウスケへと接近した。


『たかが右腕一体程度でこの俺に勝てる訳がn…』


 コウスケは右手を離すと、左手だけでぶら下がりながら向かってきた怪物ガリに1発、右ストレートを喰らわせた。


「ミリン!」

「任せて!」


 ミリンは落下してくる怪物ガリを視界に捉えると、持っているペンデュラムを振り回してその両腕、両脚を切り落とした。


『グァァァァッ!俺の…俺の腕が…!足がぁ…!』


 そう叫び、直ちに再生しようとした怪物ガリの一瞬の隙を見つけたコウスケは、刺さってきた剣から手を離すと、右手を前に突き出した状態落下した。


『お、おい…そんな高さから落ちたらお前もタダじゃ済まn…』

「うるせぇ!」


 コウスケは何か弁解のようなことをする怪物ガリに耳もくれず、落下の勢いで威力の増した拳をその頭に叩き込んだ。

 それに触れた怪物ガリの頭部が木っ端微塵になると、怪物ガリの身体はしばらく痙攣を起こした後、その機能を停止した。



ーーー



 エイズが溺れていく様を見届けたユウはその武器を影の中に放り込むと、海面に立ち尽くしていた。


「…これでよかったのでしょうか」


 ユウは気泡がなくなるまでそれを眺めると、不意に背後から何かが近づいてくる気配がした。


「おーい!」

「ユウ!」 


 そんな声を聞いてユウが振り返ると、飛翔魔法を使って飛んできたユリとサクラはユウの側まで来るとその場に静止した。


「ユリ、サクラ。どうしたんですか一体」

「何って…エイズと一緒にいたって聞いたけど大丈夫?」

「まぁその様子を見た感じ大丈夫そうだけどね。ユリはユウのことになると周りが見えなくなるから…」

「なッ!…それはサクラも一緒でしょ!なんでこのタイミングで…」

「ま、まぁまぁ2人とも…私は大丈夫ですから。その、言い争いはやめてください…」

「あ…」

「うん…」


 困った様子のユウの言葉に2人はお互いの顔を見ると気まずそうにその口を閉じた。


「それよりも、あの怪物はどうなったんですか?2人とも前戦を抜けてきたみたいですけど…」


 ユウがそう聞くと、2人は困ったような表情をすると再びお互いの顔を見合わせた。


「怪物が攻撃をやめたから何が起きたのかと思って中二病のところに行ったんだけど、中二病アイツが話す限りだとミリンがリーダーのところに加勢に行ったみたいだよ」

「それで、私達はユウがエイズと一緒にこっちに行ったって言うから、その、勢いで…」 

「あー…わかりました。とりあえず私達も戻りましょう」


 ユウはそう言うと、その水面を蹴ってものすごい速さで入江に向かって滑り始めた。



ーーー



「うっわ…グロくない?大丈夫なのコレ…」


 ミリンがそう言うと、コウスケは怪物ガリの身体から手を抜いた。


「うーん…なんか水晶っぽいの砕く感覚あったし多分これで核は破壊してると思うんだけど。念の為この胴体部分も砕いとく?」

「いや、大丈夫じゃないかな…ほら、もうこの空間も石化してきt…」


 ミリンが周囲を見ながらそう言った瞬間、不意にコウスケの剣の刺さっていた『天井』が音を立てて崩れ落ちた。


「…」

「…」

「…ミリン、これヤバくない?」

「うん。とりあえず出口まで向かtt…」


 2人が振り返ると、すでに入り口も崩れ落ちていた。


「やば…ッ!」

 コウスケが慌てた様子で足を後ろに引くと、その衝撃のせいか2人の足元に大きな亀裂が入った。


「コウスケ!〈ゲート〉!」


 ミリンは咄嗟にその翼を広げると、コウスケに抱きつくようにして自ら展開した魔法陣の中へと飛び込んだ。



ーーー



「へぇ…こんな派手に崩れ去るんだね…」


 定位置から離れた場所で石化し、崩壊していく怪物を眺めているスミレは、その有様に感嘆とも呼べる声を上げていた。


「あの男はともかくユウとミリンが巻き込まれてないか心配だな…最悪僕のダークスライムでなんとかするしか…」


 その腕を組み、ひとりブツブツとつぶやいていると、不意にその上空にひとつの魔法陣が現れた。


「危なかった…ありがとうミリン」

「大丈夫だよこれくらい。それよりも間に合ってよかった…」


 魔法陣から飛び出したコウスケを抱えたミリンはその翼でしばらく飛んでいると少し開けたスミレの近くに着地した。


「ミリン!ユウは何処に…」


 スミレは2人の元に駆け寄ると、周囲を見渡しながらそう言った。


「ユウさんならエイズと一緒に沖に飛び出したけど…」

「沖に!?って、それよりもエイズってあの四天王のエイズ…?」

「うん」

「たしかにわたしが行った時にはもう飛び出してたって中二病が言ってた」


 2人の言葉を聞いたスミレは驚きと不安が入り混じったような表情をすると固まってしまった。


「先輩〜!なんすかさっきの光?一瞬なんか光ったと思ったら先輩なんか空飛んでるしあの怪物は崩壊始めるし…一体何が起こtt…」


 2人の軌跡を追ってきたカイトはそう喋っているとミリンのその2人の姿を見てその口を止めた。


「えっと…先輩?その右腕は一体…それに彼女さんのその翼と尻尾って…」

「あー…」


 2人がどう返そうか互いの顔を見合わせると、不意に光に包まれてその姿が元に戻った。


「えっと…詳しいことはまた今度話すよ。うん。今はまだ俺達もわかってないことが多いし」


 コウスケの言葉にミリンが頷くと、カイトは納得いったようないかないような表情をするとそれ以上言及しなかった。


「皆さん!無事でしたか!」


 しばらく沈黙が続いていると、不意にそんな声と共にユウがコウスケ達のいる岸へと上がってきた。


「えっ姫様プリンセス…!?」

「あ、おい吉田!?」


 ユウの姿を捉えたカイトは一瞬にしてその顔を赤く染めると、盛大に鼻血を出して気絶した。


「えっ…えっ?何が起きてるんです?」


 そんな光景を見たユウは混乱した様子でコウスケに聞くと、コウスケはユウの姿を見るなりその顔をそらした。


「ユウさん、その、服が破けて色々見えてて…」

「えっ…あっ」


 コウスケに指摘され自身の水着を見たユウは、戦闘のせいでボロボロになり所々肌が露わになっている自分の身体を隠すようにその手で覆ってみせた。


「コースケさん、見ました?」

「い、いや…何も見せません!はい!」

「本当に…?」

「あ、いえ、そのはだけて丸見えな胸とかお腹とか見てません!」

「しっかり見てるじゃないですか!」


 早口で捲し立てたコウスケにユウは身体を捻ると、その尻尾でコウスケを跳ね飛ばした。


「ぐはっ…」

「コウスケ!?」


 ミリンは慌てた様子でコウスケに駆け寄ると、その身体に回復魔法をかけ始めた。


「ちょっとユウ早くない?あたし達飛翔魔法使ってるのに追いつかなかったんだけど…」

「まぁユウだしさすがというかなんというか…うん」


 ユウを追うように飛んできたユリとサクラはブツブツとそう言うと、岸へと着地した。


「えっ?何この状況…」

「…さぁ?」


 2人はコウスケ達の様子を見ると互いに顔を見合わせながら首をかしげた。


「2人とも、姉さん知りませんか?まだ姉さんの姿だけ見えないのですが…」


 2人を見つけたユウは風のように2人に駆け寄ると、周囲を見渡しながらそう言った。


「義姉さん?」

「義姉さんならたしか作戦の途中で別行動してたよ。たしか…突然現れた魔人を一人で足止めするって、あたし達も加勢しようとしたんだけど…」

「魔人…!?姉さんッ!」

「あ!ユウ!」


 サクラの言葉を聞いたユウは今までにないような慌てた表情を浮かべると、自身の感覚(と勘)を頼りにユイの元へと走り出した。


「姉さんッ!どこですか姉さんッ!」


 しばらく走ったユウは、不意に木々が薙ぎ倒され開けた場所に出ると、その足をピタリと止めた。


「はぁ…はぁっ…どうしたのユウ?急に止まったりして…」


 ユウを追いかけたサクラは突っ立っているユウに追いつくと息を荒げながらそう言った。


「姉さん…?」


 ユウはそんなサクラの声などまるで聞こえてないといった様子でそう呟くと、おぼつかない足取りで歩き始めた。


「ユウ…?一体どうs…ひぃッ!」


 ユウの向かう先へと目を向けたサクラは、その目に映った光景を前に言葉を失った。

 それもそうだろう。ユウが向かおうとしている先にあるのは赤い水溜りの上に転がる人型の『何か』とその周囲に転がる赤い翼と尻尾だった。

 ユウはその場にゆっくりと膝をつくと、その人型の『何か』をそっと持ち上げた。


「姉…さん…」


 傷だらけの『何か』を見たユウは複雑な感情が入り混じった一筋の涙を流すと、ゆっくりとその意識を手放した。

 …


 皆さんこんにちは。赤槻あかつき春来はるきです。


 今回は第12章、いかがでしょうか?

 いや、挨拶の前に色々コメントを考えていたんだけれども、そんな余裕が無くなってしまった私です。はい。

 戦闘シーンを多く入れようとした結果、多すぎてこの章を途中で分けるという…

 さてさて気を取り直しまして、前半はコウスケとカイトのエロ本騒動(?)でした!まぁコウスケも年齢的には高校生なのでこれくらいはアリかなぁ…なんて。はい、なんかごめんなさい。

 後半は海辺での魔物退治!新たな姿になったミリンに、コウスケとガリ、ユウとエイズ…2人の再戦は書いていて楽しかったです。てか水爆耐えるあの怪物防御力ヤバすぎ…


 次回は第13章!ユイはどうなってしまったのか、ユウはこれからどうなってしまうのか…

 

 面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。

 感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。


 それではみなさん、またどこかでお会いしましょう。バイバイ!

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