彼女との出会いは運命なのか
「はぁ…っ!」
コウスケは黒い剣を振りかざし、ゴブリン達を一掃する。
災いの森には多くの魔物が生息しているらしく山道を歩いていただけだったコウスケも魔物と遭遇することは多かった。
「それにしてもこの剣はよく切れるな…俺の身体の一部みたいだ…」
コウスケは黒い剣に付着したゴブリンの血を拭きながらそんなことを考えていた。
コウスケが少し開けた場所に出た瞬間…
「──、─ッ!」
茂みの奥から誰かの叫び声が聞こえてきた。
コウスケかそれに気づいたとき、その足はすでに声のした方向へと向かって走っていた。
コウスケがそこについたとき、事態は既に収束していた。
そこにはコウスケと同じくらいの歳であろう長い黒髪の小柄な少女が気絶していた。
しかし、コウスケはそれとは別のものを見て絶句した。
少女のまわりには首と胴体が切り離されたゴブリン達の残骸がゴロゴロと転がっていたからだ。
コウスケは少女に近づくと肩をゆすりながら声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
少女はそれに気づいたのか水晶のような目をうっすらと開けると飛び跳ねるように起き上がった。そして、まわりを見まわすとコウスケを見て口を開いた。
「あ、あの…助けてくれてありがとう…」
消えてしまいそうな声だった。周りの様子を見るに相当不安だったのだろう。
それを感じたコウスケは少し困っていた。自分が助けたわけではないのだが…少女の不安を煽るような言動や行動をしてはいけないと思ったからだ。
コウスケは心の中で謝りながら少女に声をかけた。
「無事でなによりだよ。…俺はコウスケ。君は?」
少女はいきなり名前を聞かれて驚いたのかびっくりした様子で固まっていたが、しばらくすると何かを覚悟したかのように口を開いた。
「わ、わたしはミリンです。助けてくれてありがとうございます」
少女─ミリンはそう言うとその場を立ち去ろうとした。
「あ、ちょっと待って!」
ミリンはコウスケの声にビクッと反応すると足を止めた。
「なんですか?」
若干警戒気味だったが、コウスケが悪い人ではないと判断したらしく聞き返してきた。
「俺、アール王国ってところに行きたいんだけどこの森を全然抜けられなくて…君さえ良ければ案内してくれないかな?」
ミリンは安心したような顔を作ると笑顔で答えた。
「わかった。わたしについてきて」
「ありがとう」
──こうして2人は王都へと歩き出した。