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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第2部.再戦の萌
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海辺の誘惑

「俺達は『キャンセラー』。歴史を…作り替える者」


 竜人はそう言うと、黒い魔法陣を出現させて襲いくるエイズを弾き飛ばした。


「貴様ァ!一体なんなんだ!この俺の邪魔をしやがって…!」

「フッ…邪魔してきたのは貴様のほうだ、エイズ。俺はこの20年間、貴様らへの復讐心がなくなったことなんて無いんだよ」

「復讐だァ?なんの話だよ」

「そうか…この時代じゃまだ10年だったか」


 竜人がそう言って右腕を上げると、その足元に巨大な時計の盤面のような魔法陣を出現させた。


「さぁ…覚醒の時だ。従姉妹ミリンよ」



ーーー



「先輩、これよくないっすか?」

「これは…!あぁ、最高だな。でも、一体どこでこれを…」

「フフフ…いいところに気付いたっすね先輩…!」

「お、おう…」

「実はこの世界、我らの住んでた世界の季節と時期が違うんっすよ」

「それはってつまり…どういうことだ?」


 コウスケがこちらの世界にやってきてから早4か月。

 コウスケは訪ねてきたカイトと共に、自室でカイトの持ってきた数冊の冊子を眺めていた。


「最近、まだ4月になったばかりなのにめっちゃ暑いと思いません?」

「それは…たしかにそうだな。でも俺らのいた世界じゃないから気温は高くても別にいいんじゃ…」

「まぁ、そうなんすけど。つまりはですね、今は夏だってことなんすよ」

「あぁ…夏ね、夏…って夏!?」


 コウスケのその反応がカイトの期待通りだったのか、カイト心底楽しそうに頷いた。


「え…じゃあこれって…」

「…今なら見放題っすよ」

「マジか。異世界最高」


 2人はひそひそとそう話しながらニヤニヤした表情を隠し切れていなかった。


「でも、こんなこと話せる相手がいてよかったよ。ほら、俺のパーティって女性ばっかだからそういう話できないし」

「まぁ我も似たような理由っすけど。先輩がいてよかったっす」

「「HAHAHA!」」


 そう言った2人が肩を組んで大笑いをしていると、不意にその部屋の扉がガチャリと開かれた。


「あの、コースケさんと…えと、その後輩さん?でしたっけ?その、2人で盛り上がってるところ悪いんですけど…お菓子ができたので呼びに来ました」

「あ、ユウさん。わざわざありがとう」

姫様プリンセスッ!今日こそは我の妻に…」

「お断りします。そもそも私が貴方と結婚自体物理的に無理です」

姫様プリンセスぅ…そんなに我が嫌なのか…」

「いや、もっと別の理由があると思うぞ吉田…」


 コウスケがどこか呆れ気味でそうツッコミを入れると、同じく呆れたようにユウが言葉を続けた。


「そもそも私は姫様プリンセスではありませんし、嫌いではないですが別に私は貴方に対してなんの情もありませんから論外です」

「ろ、論…外…」

「…ま、まぁまぁ2人とも一旦落ち着いt…」

「コースケさん、貴方も大概ですよ」

「…へ?」

「まぁ… その、コースケさんも男なので理解できないわけではありませんが…自分の部屋とはいえさすがに女性ばかりの場所でこういった本を読むのは良くないかと…」

「あ…」


 コウスケは最初、ユウが何を言っているのか理解できていなかったが、真っ赤な顔で指差した先にある開きっぱなしの冊子を見てコウスケはそんな声を漏らした。


「…とりあえずこの件はミリンに報告しておくとして、皆さん待ってますから早めに来てくださいね。なくなっても知りませんよ」


 ユウは早口でそれだけ言うと、逃げるように部屋を飛び出した。


「…」

「…姫様プリンセスぅ…」

「…とりあえず、みんなのとこ行くか。吉田」

「はい…」

 


ーーー



 コウスケ達が席に着くと、ユウと女性陣は何事もなかったかのようにテーブルの上に広がるお菓子を食べていた。


「コースケさん、これどうぞ」

「あ、うん。ありがとユウさん」

「え?我の分は?」

「貴方は勝手に取ってください。私が貴方に渡す義理はありません」

「うぅ…そりゃないっすよ…」


 ユウの冷たい言葉にカイトが肩を落としていると、その様子を見ていたユイが不意に口を開いた。


「で、なんでこんな殺伐としてんの?俺は状況が理解しきれてないんだが…」

「いえ、何もないですよ姉さん。ただ、先程コースケさん達が水着の写真集…いえ、裸のもあったのでそういう冊子ですね。それを見てコソコソ何かしてただけですから」

「ちょ、ユウさん!?何言ってくれちゃってんの!?」


 ユウの一言にコウスケが慌てた様子で立ち上がると、ユウはスッと一枚の紙をコウスケに見せつける。


「コースケさん、私もさすがにそういうのを見るなとは言ってませんよ。ただ、その後にこれを見たらさすがに許容できないですよ」

「そ、それは…」


 ユウの持っている紙には『最近、海辺で大量出現している服を溶かす魔物のせいで客が減っているので、討伐してほしい』と書かれていた。

 コウスケが言葉を詰まらせていると、いつのまにか立ち直ったカイトが口を挟んだ。


姫様プリンセス、その依頼クエストはやるべきであるぞ!なんてったって放置していたら誰も海で遊べないしな!」

「いえ、私が今言っているのはそういうことではなくt…」

「それに、先輩方は最近色々とあって疲れ気味みたいだからその息抜きも兼ねて…と」


 カイトの言葉にユウは思い当たる節があるのか言い返せずにいると、黙々とお菓子を咥えていたスミレが口を開いた。


「この件に関して僕は賛成かな。カイトはいつもまともな依頼クエストを持ってこないけど、これはやるべきだと思うよ」

「で、本音は?」

「水着姿のユウとナメクジみたいにグッチョリしたレズs…」

「それ以上言わせないよ!?」


 スミレの言葉にツッコミを入れたサクラは小さくため息をくと、何故かずっと黙り込んでいるミリンとユリのほうへ視線を向けた。


「ふたはどうなの?この依頼クエスト、行くの?行かないの?」

「あー…あたしはどっちでもいいかな。たしかに水着姿のユウも見てみたいけど」

「私は…賛成かな。動機はどうであれ誰かがやらないといけないしね」

「あの、さっきから論点がズレてる気が…」

「でもユウだって行くでしょ?」

「それは…そう、ですけど…」


 ミリンとユリに促され、ユウがどこか納得のいかない様子で肯定すると、コウスケとカイトは緩んだ頬を押さえながらお互いの顔を見合わせた。

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