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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第2部.秩序の管理者
38/112

秩序の竜



「…客人とは珍しいこともあるものだ」


 遺跡の最深部。コウスケ達が何もない開けた空間に出ると、周囲からそんな声が響いてきた。


「…!?誰だ!」

「フッ…我の部屋に入っておきながら『誰だ』はないであろう」


 コウスケの声に、『声』は笑ったようにそう言うと突然、部屋の中央に黒い渦が出現した。


「姉さん、これって…」

「あぁ…たしかに俺達と同じドラゴンの気配だ…!」


 コウスケ達は2人の言葉に唾を飲むと、各々の武器を構えた。

 黒い渦はその内側から発せられる強い力によって破られると、その中から群青色の鱗を怪しく光らせた巨大なドラゴンが出現した。


「我は霊竜オーダー・ドラゴン。久々の客人だ。我はなんじらと戦う気はない。歓迎するぞ」


 霊竜…と、そう名乗ったドラゴンはどこか楽しそうなものを見るような瞳でコウスケ達6人を見渡した。


ドラゴンが3、エルフが2、それと…」


 霊竜はコウスケ達に聞こえないくらいの声でそう呟くと、コウスケの方へと顔を近づけた。


「汝、一体何者だ?ヒトでありながら我と同じドラゴンの力を持ち…あの忌まわしき魔族の力も持っているとは…」

「俺はコウスケ。異世界からやってきたただの人間だ」

「ふむ…コウスケとな。まぁ異世界からやってきたというのは本当らしいな。今しがた汝らの記憶を読ませてもらった」

「…な!?いつのまに!?」


 コウスケが霊竜の言葉に驚嘆の声を上げると、霊竜は笑いながらその顔を離した。


「…しかし、厄介な力を授けられたものよ。我らドラゴン固有の能力である〈イメージの具現化〉、そしてまだ完全に覚醒はしていないが魔人固有の能力である〈魔力操作〉…どちらもヒトの使えるそれではないからな」

「〈魔力操作〉…?もしかして俺が暴走した原因って…」

「いや、汝の今までの暴走自体そのスキルとは別物だ。そもそも〈魔力操作〉というものは周囲の魔力…つまり、魔法使用時に飛び散る魔法に変換できずに放出された魔力を自分のもののように自由に使えるという能力。使い方によっては自身の魔力を温存したり味方の魔法の威力を上乗せすることも可能である」


 霊竜は一通り語ると、再びコウスケ達のほうへと目を向けた。


「汝が暴走するというのはただ単純にヒトという存在がその2つの力を受け止められるほど大きな器ではなかったということだ。そもそも、他の種族に力を与えること自体、我には一つしか方法が思い浮かばぬのだが」

「…ちょ、ちょっと待ってくれ。その方法とやらを使えば俺は暴走をせずに済むってことか?」

「それは…可能だ。だが、それにはその2つを移し替える新たな器が必要となる。異世界からきたというだけあってある程度蓄えられる汝と違い、新しく器となったヒトが壊れないという保証はない。むしろ暴走以前に耐えられずに死ぬであろう」

「じゃあ結局その方法というのは使えないってことかよ…」

「…まぁ現段階ではそうだな。だが、その力を与えた者達は汝だからこそ、その力を預けたのではないか?」


 霊竜の言葉に、コウスケはハッとした。たしかに望まない力とはいえ、コウスケはあの2人に頼まれていたのだ。


「『この世界を救ってほしい』か…」

「うむ」


 コウスケがそう呟くと、霊竜はそう頷いた。


「たしかに現段階では汝には有り余る力だ。だが、汝の器を大きくする方法はないわけではない。汝がソレを見つけるまでの間、我も多少力を貸してやろう」

「…!それって…」

「3回だ。この状態となった我がソレを抑えこめるよはおそらくそれで限界だ。汝はそれまでにその力を己がものにしてみせろ」


 霊竜はコウスケを試すような口調でそう言うと、その瞳をジッと睨みつけた。


「あぁ…俺、絶対にこの力を使いこなしてみせる!もう、みんなに迷惑はかけない!」

「そうか…その覚悟、しかと見た。汝に我の力の一端を授けよう」


 霊竜がそう言うと、コウスケの身体が一瞬光りその身体の中に何か温かいものが流れ込んできた。


「これで3回だけ、汝が暴走してもその意識を保っていられる。ただ、暴走するときの理由が理由なだけにその有り余る力をどう使うかはしっかりと考えたほうがいい。そうでなければ我が力を貸す意味もない」


 コウスケは霊竜のその言葉を胸にしまうと、大きく頷いた。


「コースケさん、よかったですね!」

「いや、まだ万事解決ってわけじゃないよユウさん。でも、これでしばらくはなんとかなる」


 コウスケがそう言うと、不意に最深部の入り口付近から騒がしい音が聞こえてきた。



「はぁ…はぁ…一体、なんなのよこの町はッ!ローズ様から頼まれたとはいえあんなゲス共と…うぅ…なんという屈辱ッ!」

 


 みんなが振り返ると、そこには全身をベタベタにして自棄になっている女がいた。


「ふむ…今日はやけに客人が多いな…あの女、汝らと知り合いか?」

「いやいやいや…」

「私も会ったことのない女性ですね…」


 コウスケとユウが否定すると、そのなこと全く気にも留めない様子で女はぶつぶつと言っていた。


「ようやくたどり着いたというのに先客がいるなんて…あぁッ!もうなんてついてn…ん?」


 女は顔を上げると、ユウとユイを見てその足を止めた。


「これは…もしかしてあの竜人!?あぁ…なんという偶然ッ!ここで私があの2人を捉えたら私は出世間違いなし!そしたら今日の屈辱も…いや、それはそれで許せn…」

「あ、あのぉ…先程から一体何を呟かれているのd…ぇ…もしかしてこの匂いって…」

「えっ?」


 女は、いつのまにか目の前に現れたユウの姿に驚愕すると、状況を理解しきれていないのか何やら無駄にかっこいいポーズをとると目の前にいるユウを指差した。


「フフフ…ここであったが運の尽き…私は魔人、ローズ様直属の部下、ポリオである!ローズ様の命によってこの町へやってきたがこの仕打ち…なんたる屈辱ッ!だが竜人、私はお前達を捕k…」

「ユウ!避けて!」


 女──ポリオが意気揚々と名乗っていると、その台詞はミリンの一言によって遮られた。


「〈常闇竜の吐息(ダークブレス)〉」


「えっ…嘘でsh…」


 足元の影から伸びた手によってユウが影に引き摺り込まれると、次の瞬間、霊竜の口から放たれた漆黒の吐息はポリオの姿を跡形もなく消し去った。


「…えっ」


 しばらくの間、何が起きたのか理解できずに固まっていたコウスケ、ミリン、ユリ、サクラの4人だが、状況を理解し始めたユリの声にみんなは我に帰った。


「ふむ…魔人と言っていたがこの程度であったか…」

「いやいやいやいや…それはないでしょう!?いや、確かに俺らからしたら敵だけどさ…普通名乗りの途中で攻撃する!?」


 コウスケのツッコミに霊竜は首を傾げた。


彼奴あやつが戦意を見せたから攻撃しただけだ。敵なのだろう?問題なかろう」

「いや…あれ?そっか…問題ないか…」


 コウスケが混乱した様子で考え込むと、不意にその背後に何かがぬっと現れた。


「ふぅ…間一髪だったぜ…」

「あ、あのぉ姉さ…あぁん!?助けるためとはいえいきなり尻尾h…あぅ!つ、つかまなッ…いでくだしゃ…いぃ!?」


 ユウの尻尾を掴みながら影から出てきたユイは、色っぽい声を上げながらピクピクしているユウを影から引き摺り出すと、それを背負った。


「えっと…ユウ、大丈夫?」

「大丈夫でしゅ…しゃくら…」

「いや、私の名前も言えないくらい大丈夫じゃないってことだよね!?義姉さんもこれを見てなんでそんな平気で…」

「あー…ユウは昔から尻尾が弱くてな。ま、しばらくすればまた元に戻るから安心しろ」


 サクラの言葉にユイがそう返すと、それを見ていた霊竜がフッと笑った。



ーーー



 霊竜とのやり取りを終えたコウスケ達は、ミリンの〈ゲート〉を展開すると霊竜のほうへと向いていた。


「それでは、今日はありがとうございました」


 ユウのその声に、コウスケ達は礼をした。


「汝らのおかげで我も久々に有意義な時間であった。こちらこそ、感謝する」

「いえいえ…俺もあなたに会えてよかったです。絶対、この力を使いこなす方法を見つけてみせます!」

「ふふっ…汝らなら大丈夫だ。今日の様子を見ただけだが、この我が保証しよう。ただ、力の使い方はよく考えるのだ」

「あぁ!もちろんだ!」


 コウスケが胸を張ってそう言うと、霊竜はホッと胸を撫で下ろした。


「では今度こそ、ありがとうございました。またいつかお伺いしますね」

「うむ。その時を楽しみにしているぞ、ドラゴンの娘よ」

「わ、私は男ですッ!」


 ユウが〈ゲート〉を潜る瞬間、霊竜にそう言われると、ユウは捨て台詞のように叫ぶとその中へと入っていった。


「ふむ…やはりな…」


 霊竜は〈ゲート〉が消えるのを見届けると、ひとりそう呟いた。



ーーー



「…ポリオが消滅した」

「「え?」」


 魔王城の一角で水晶玉をのぞいていたローズの一言に、サーズとマーズは反射的にそんな声を出していた。


「えっ?…えっ?ローズ様、それはなんの冗談d…」

「サーズ、これは嘘ではなく事実。ポリオには先日からトレーターにいるとされる霊竜の調査に行ってもらっていた。まぁ、本人の希望で1人だったが」


 表情を変えず、淡々と話すローズに2人はしばらく言葉を失っていた。


「兄様ではないとはいえ…ドラゴンと戦闘なんて、馬鹿な部下だ…ッ!」

「「ローズ様…」」


 表情を変えずにそう言うローズから、どこか怒りや悔しさを感じた2人はしばらくの間ローズとお互いの肩を抱き合って泣いていた。



ーーー



「よぉ…久しぶりだな。元気にしてたか?」


 コウスケ達が帰ってから数分。遺跡にいた霊竜の影から一つの人影がヌッと出てきた。


「はて…どちらであったか?」

「おいおい、忘れたのか?400年ぶりの再会だっていうのに…ま、無理はないか。この姿で会うのは初めてだもんな」

「…で、今更私になんのようなの、スカーレット…いや、その姿ではカズヤでしたっけ?」

「なんだよ、しっかり覚えてんじゃねぇか」


 カズヤは霊竜のその言葉に頬を緩めるとその身体をパシパシと叩いた。


「どうだ?俺自慢の姪夫婦と娘達は」

「…すごく、いい子たちね。それに、私が高圧的な態度をとっていても全然微動だにしないんだもの。ホント…ヤになっちゃうわ」


 霊竜はコウスケ達に対するそれとはまるで違う口調でそう言うと、どこか悔しそうに俯いた。


「ま、あいつらはすでに俺の半身と会ってるしな。ユウは人族の男以外なら基本態度変わんないし、ユイはユウ一筋なところがあるしな…」

「私としてはそれ以前にスカーレットに子供がいたことに驚きよ。それも、人の形質を持つ『竜人』だなんて…」

「ははッ!確かにな!俺も妻も子供はできないと思って諦めかけてたからな、元気に育ってくれてよかった」

「うぅ…なんで私好きな相手の子供について自慢されなきゃいけないのよ…400年もずっと私はスカーレットのことを想い続けてるのに。いざ再会したら子供がいるなんてホント、あんまりよ…」

「…それは、そう…だったのか…俺はお前のことは昔からいい女だなぁとは思ってたけど」

「え、今更!?嘘…」

「でも、俺はこれから何百年経って妻がいなくなってもずっと、妻だけを愛するよ。ごめんな」

「…ふふっ…スカーレットもホント、昔から変わんないね。だからこそ、好きだったんだけど」


 霊竜は涙ながらにそう言うと、周囲に現れた黒い渦とともに消えていった。


「…眠ったか…オーダー、お前はやっぱ強いよ。霊竜と呼ばれ、秩序のために死のうとしても死ねない身体になってまでもそれでもみんなを見守って…そう、俺なんかよりもずっと…」


 カズヤは「またな」と小さな声で呟くと、影の中へと消えていった。

 ポリオよ…すまん。


 みなさんこんにちは!赤槻あかつき春来はるきです!


 第11章、いかがでしたでしょうか?これでようやく全体の4/1が終わったと言った感じです。


 さてさて、今回は珍しく前半後半わかれていません!まぁこの内容のためにわける必要はないだけなんですけど。

 今回登場の『霊竜れいりゅうオーダー・ドラゴン』ッ!竜人以外では初めてのちゃんとしたドラゴンですね。‘オーダー’というのは日本語で秩序という意味です。永久に死ねない身体って悲しいかなぁ…一体いつから生きてるんだろ?

 そしてもう1人はポリオ!まぁ、前回の最後に名前が登場してコレってのは我ながら酷い。うん、酷い。

 そういえば登場した『男』は私が考える『気持ち悪い』を集約したキャラクターとなっております。まぁ実際に同じような人がいて気を悪くしてしまったならすみません。他意はないんです。


 次回は第12章!時系列で言うと、ユウとコウスケが出会ってから大体4か月ちょっと経ったくらい…

 魔王軍も動き始めて一体どうなっちゃうの!?


  面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。

 感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。


 それではみなさん、またどこかでお会いしましょう。バイバイ!

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