暴走した力の果てに
『アァァァァァァァァッ!』
ユイの誘導により、路地を伝って町の外へと出た『コウスケ』は苦しそうに咆哮を上げながら周囲の木々をなぎ倒した。
「ユウ!ミリン!遅くなった!」
「あたし達にしかできないことって言ったけどどういうこと?」
ユウからの連絡を受けたユリとサクラは、いつの間にか習得していた飛翔魔法を使ってコウスケ達のいる荒野へとやってきた。
「ユリ、サクラ。2人の魔法でこの甘い匂いを流せませんか?今姉さんが時間を稼いでいますから」
「え?『姉さん』?」
「どういうこと?」
ユリとサクラはユウの言葉に驚いたような声を出すと首を傾げた。
「あー…2人には後でわたしから事情を説明するわ。それより今はコウスケを元に戻してほしいの。お願いできる?」
ユリとサクラは顔を見合わせるとコクリと頷いた。
「まぁユウとミリンの頼みだしね」
「あたし達も結構助けてもらったからね」
2人はそう言うと暴れ回るコウスケのほうへ視線を向けた。
「魔法を使うのはいつぶりか…最近は身体強化魔法しか使ってないからな…」
「ユリは魔力の絶対量は私より多いし大丈夫だと思うけど?」
「またまた冗談を」
ユリとサクラはお互いの両手を合わせると、その手を銃のような形にして暴れ回る『コウスケ』に向けた。
「「〈スコール〉ッ!」」
2人がそう叫ぶと、コウスケの上空に出現した魔法陣から大量の雨が降り注いだ。
『ヴァァァァァァァァッ!』
大雨をもろに浴びた『コウスケ』は苦痛に耐えるように咆哮をあげると力が抜けたように平伏した。
「ふっ…!」
ユイはすかさずコウスケの首裏に手を当てると、手刀でその意識を刈り取った。
ーーー
「ん…ここは…」
コウスケが目を覚ますと、そこには見慣れた天井があった。
「あ!コウスケ!よかったぁ…目が覚めたんだね」
「うわぁ!?ちょ、ミリン!?」
ずっと看病をしていたのかミリンはコウスケが目を覚ますなりギュッと抱きついた。
「もう…3日起きなかったら誰だって心配するよ!」
「3日…?」
「あ、ちょっとみんな呼んでくるね!」
「あ、おいミリン!?」
ミリンはそう言うと、風のように部屋を出て行った。
1人になったコウスケは左手を頭につけると、思い出すように掻き毟った。
「たしか…俺はあのとき右腕を切られて…破壊衝動に襲われて…化物の腕が生えたんだ…ん?化物の腕?」
コウスケはおもわず自分の右腕を前に出すと、そこにはちゃんと人間の右腕が生えていた。
「なんで右腕が…?たしかに切り落とされたはずじゃ…」
コウスケが思考を凝らしていると、バーンと勢いよく部屋の扉が開かれた。
「コウスケ!みんな連れてきたよ!」
ミリンがそう言うと、あとから5人がミリンに続くように入ってきた。
「コースケさん、目が覚めたんですね」
「おにぃちゃんずっと寝てたもんね」
ユウとハルナは安堵するように胸を撫で下ろすと、ユリとサクラも強張った表情をふっと緩めた。
「その様子なら大丈夫そうだな。お前、これ以上ユウに心配かけるなよ。まぁ気絶させたのは俺なんだけどさ」
「えっと…たしか死神の…」
「ユイだ」
「あ、うん。ユイさん。よく覚えてないですけど俺を止めてくれてありがとうございます」
コウスケは改まってユイに礼をすると、ユイはふっと目を逸らした。
「え?死神…?」
「ユウのお姉さんが?」
コウスケの発言にユリとサクラは遅れて反応すると、コウスケ、ユウ、ミリンの3人はコクリと頷いた。
「え?え?じゃああたし達にあの本を渡してくれたのって…」
「俺だよ。あの魔導書はあいつらのところから持ち出したものだけどな」
ユイはうんうんと頷くようにそう言うと、2人は思考が追いつかないのかぽかんと口を開けていた。
「たしかに飛翔魔法なんて本来なら存在しないはずの魔法ですしね…魔導書なら納得です」
「あとは叔父さんの作った魔道具くらい?コウスケが前に使ってたあの翼のやつ」
ユウとミリンが冷静に分析していると、サクラが思い出したように口を開いた。
「そうそう!リーダーも目が覚めたから義姉さんから改めて自己紹介しないと」
「え?あ、そうか…」
ユイは一瞬固まると、コウスケのほうに向き直った。
「コウスケ。これからは俺もこのパーティで世話になるからな」
「…と、いうわけでこんな姉ですがよろしくお願いしますね、コースケさん」
ユイの言葉にキョトンとしているコウスケにユウはそう言うと、ぺこりと礼をした。
「言っておくがお前にもユウは渡さないからな!」
「えぇ…?」
ビシッとコウスケを指差してそう宣言するユイに、コウスケは困惑の声をあげた。
ーーー
「実験は失敗のようでしたね。エイズ」
水晶をのぞいていたローズは、相変わらず無表情のままどこか楽しげにそう呟いた。
「いや…実験は大成功さ。竜人にあの薬は効かないという実験結果を得られたからな。それに…」
エイズは重傷を負っているサルモネラのほうを見ると、どこか満足気な表情をした。
「あの『死神』とやらの正体、それとあの男の中にあるであろう『力』の断片も除けた上にそのサンプルも回収したからな」
ローズはエイズの深みのある笑いに寒気を覚えると、空気に溶けるように消えていった。
ユイ姉きちゃー!
Hay!というわけでみなさんこんにちは赤槻春来です。
第9章、いかがでしょうか?ちょっと戦闘シーンの描写を多く入れてみました。
今回は前半、後半の区別をせずに少し駆け足気味になってしまいましたが…まぁ私的には満足です。
全体を通して死神…じゃなかった、ユイ姉の活躍多めの回なっております。ユイ姉はいつか出そう出そうと思っていたキャラなのでようやく登場させられてよかったです。見た目、声はユウと同じなのに胸部と口調だけがずいぶんと違うという…そんな姉にしてみました。
そして今回の見どころは姉弟のタッグ戦闘シーン!再会した直後なのにあのコンビネーションなのは息のあったあの姉弟だからこそだと思います!
さてさて次は第10章!もうここまできたんだなと感心している私がいます…
第10章では今回書けなかったユイ姉のお風呂シーンも含め、ユウちゃんの可愛いシーンをいっぱい書きたいと思います!(宣言)
あ、ついでにコウスケとミリンの仲も進展させておかないと…
面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。
感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。
それではみなさん!あでゅー!




