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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第1部.そして出会いは突然に
3/109

やるべきこと



「一体なんだったのだあいつら…」


わざわいのもり』と呼ばれる森の中、コウスケは今日何回目かの深いため息をつく。


「そんなこと俺にできるのか…?」


 草木を掻き分けながらコウスケはひとり呟いた。



ーーー



 それは数分前…


「君に…この世界を救ってほしい」

「…え?」


 コウスケが困惑していると女が男の肩に手を置き口を開いた。


「あなた、そんな言い方じゃ何を言っているかわからないわよ。ちゃんと順を追って説明してあげなきゃ。」


 男は「ああ、そうか」といった顔をしたのちコウスケのほうに向き直った。


「いきなりすまなかったな。えっと…君の名前は?」

「あ、はい。俺はコウスケっていいます」


 突然の質問にやや驚きながらも答えたコウスケ。

 男はそれを聞くと話を続けた。


「コウスケか…俺は『竜人りゅうじん』とでも名乗っておこう。…彼女は『魔人まじん』とでも言っておこう。」


 男─竜人りゅうじんはそう言うと女─魔人まじんはそれに続くように言葉を発した。


「信じてもらえないと思うけど私達は10年後の未来からやって来たの」


 コウスケは目を丸くした。

 いきなり未来からやって来てだなんて信じられるわけがないのだ。


 しかし今のコウスケはそれを信じられるー否、信じる以前に不思議な事件に巻き込まれているわけで、信じるほかなかった。


 そして魔人は語り出した。

 その内容はとても信じがたいことであった。


 魔人の話によると今から10年後のこの世界は破滅寸前であるということ。

 その未来を無かったことにするために時間遡行魔法を使って破滅の始まる3日前ー今日にやってきたということ。

 そしてその歴史を書き換えるために本来、死ぬ“はずだった”異世界の人間を呼び出そうとしていたらしい。


─その人間に自分達の願いを叶えてもらうために─


「これで私達が話せることは大体話したわ」

「どうだ…これを聞いても受けてくれるか…?」


 竜人はコウスケに確認するようにそう言った。

 コウスケにはどこまで本当なのかはわからないがこの質問に対する答えは最初から決まっていた。


「もちろん引き受けます」


 即答だった。

 心の何処かに不安がなかったわけではない。しかし、人間は欲望に忠実なわけで…

 コウスケの頭の中では


異世界にやってくる

勇者になる

女子にモテる

ハーレムを作る


などというどこかのアニメやマンガにあるような密かな期待をしていたのである。


 しかし、竜人と魔人はそんなコウスケの願望がわかるはずなどなく…


「いいのか!ありがとう!」

「ありがとう!感謝するわ」


──などと素直に喜んでいるようだった。


 もちろんコウスケに彼らを助けたいという思いはあるがそんな願望を抱いていたことに少しだけ良心が痛んでいた。


「あの…いくつか質問してもいいですか?」


 コウスケの声に2人は話を止めた。


「ああ、いいぞ。俺達に答えられることなら答えるぞ」


 どうやら普通に答えてくれるらしい。


 コウスケはいくつか知りたいことーというよりは知らなければならないと思ったことを聞いてみることにした。


「俺はこの世界の言葉や文字を理解できるのか?」

 これは聞いておきたかった。彼らと会話ができているから言葉による意思疎通はできるとはふんでいた。しかし文字が読めるかどうかはわからなかった。

「そんなことか…心配する必要はない。文字は普通に読めるはずだ…多分」

「ん?ねぇ、今多分って言った?」


 どこか最後に聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。

 竜人はあたふたしながら「いや、そんなことはないぞ」と言っていたが…まぁ大丈夫だろう。

 幸いコウスケは物覚えだけはいいのだ。


「質問はそれだけ?」


 竜人が落ち着くと魔人は次の質問を促すように言葉を放った。


「俺も魔法が使えるのか?」


 彼らの言動からこの世界には魔法があるらしい。コウスケは自分もそれが使えるか気になってはいた。


「どうかしら…人によって魔力量は違うしどんな属性を使えるかはわからないわ。でも見た感じ魔法自体は使えると思うわ。そこは私が保証してあげる」


 魔人がどうして保証できるのかはわからないがどうやら魔法は使えるらしかった。


「それで俺は何をすれば…」


 コウスケさりげなく行った一言に2人は思い出したかのように口を開いた。


「ああ…それはだな─」



ーーー



──そして今



「『3日後『水晶の洞窟』にいる人物を連れ出してほしい』か…」


 コウスケは2人に渡された大量の金貨の入った袋と竜の装飾の入った一本の黒い剣を見つめながらひとり呟いた。


「あの2人、指輪してたし夫婦なのかな…?」


 などとどうでもいいことを考えながらコウスケは災いの森の隣に位置するアール王国の王都を目指し、しばらく森の山道を歩いていた。


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