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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第2部.仮面を被った少女達
29/112



わたくしはミツバ…いえ、魔王直属暗殺部隊所属、サルモネラ。貴方の命を刈り取りにきました」


 コウスケの意識がはっきりしてから状況を理解するまで、そう時間はかからなかった。


「コースケさん!」

「コウスケ!」


 ユウとミリンはコウスケを視界に捉えると、その場に駆け寄ろうとした。


「来るなッ!2人とも!」


 コウスケは向かってこようとしている2人にそう叫ぶと、ナズナの前を離れようとした。


「〈風刃ウインド・カッター〉」


 コウスケが足を踏み込んだ瞬間、ナズナの声と共に風の刃がコウスケの右腕を切断した。


「グァッ…ゥ…」


 コウスケは転がるように倒れると、切断された二の腕部分を左手で押さえた。


「コースケさんっ!」

「コウスケっ!」


 ユウとミリンはコウスケの元に集まると、ナズナを睨みつけた。


「あーあ…外しちゃった…ま、利き腕切り落としたしこれから殺せばいいんだけどね」


 ナズナはあははと笑いながら杖を顕現させると、弱っているコウスケにそれを向けた。


「今度こそ死ね。〈ファイアアロー〉」


 ナズナが作り出した炎の矢は、コウスケ達に触れる寸前に新しい『影』によってかき消された。


「またせたな、ユウ、ミリン」


 驚愕のあまり固まっているナズナとサルモネラを前に、その影ゆっくり振り向いた。


「死神…」

「2人とも、話は後だ。ミリンとりあえずその男の血を止めておけ。このままだと出血多量で死ぬぞ」

「…!は、はい!」


 ミリンは朦朧としているコウスケの右腕に触れると、〈イメージの具現化〉を使ってその血を止めた。


「あ…ありがと、ミリン…」


 コウスケはかすれた声をでそう言うと、ミリンはニコッと微笑んだ。


「あんた誰?アタシ達の仕事邪魔しないでほしいんだけど…」


 ナズナは機嫌悪そうにそう言うと、死神はそっと振り返った。


「お前らはたしか…暗殺部隊のサルモネラとレジオネラか。また厄介なのを寄越しやがって…」

「は!?なんであんたがアタシの名前知ってんの!?」

「ま、まぁまぁレジオネラ…落ち着いて…」


 死神の発言にナズナーレジオネラはそう叫ぶと、サルモネラはそれをなだめるようにレジオネラの肩を抑えた。


「コースケさん、しばらくミリンと休んでてください。あの2人から何処か嫌な気配がします…ここは私達に任せてください」


 コウスケとミリンがコクリと頷くと、ユウは影の中から飛び出した《アベンジャー》を構えると、死神の横に並び立った。


「あははっ!もうあの男なんてどうでもいいや。サルモネラ、アタシ達であの竜人捕まえれば大手柄じゃね?」

「はぁ…本来なら戦いは控えたいのですが…戦うしかないようですね」


 笑い狂っているレジオネラにサルモネラはため息をつくと、腰に付けていた2本のダガーを構えた。


「あははっ!〈風刃ウインド・カッター〉ッ!」


 レジオネラは笑いながらそう叫ぶと、無数の風の刃がユウと死神に向かって飛んできた。


「ユウ」


 死神はそう呟くと、ユウはそれに答えるように死神の影の中へ飛び込んだ。


「その程度の攻撃…俺に届くことはない」


 死神は鎌を横に振り抜くと、飛んできた刃を全て蹴散らした。


「は?そんなのアリ?マジ意味わかんないんですけど…」

「はぁ…レジオネラ、何をモタモタしてるのですか」


 やや半ギレ状態のレジオネラにサルモネラはため息をつくと、建物の壁を蹴って死神のほうへと走り出した。


「モタモタしてないし!〈ファイアアロー〉!」


 死神は向かってくるサルモネラを無視するように飛んできた炎の矢をかき消した。


「よそ見してて大丈夫なんです、かッ!」


 死神に肉薄したサルモネラはダガーを首元に向かって振り下ろした。


「よそ見なんてしてないさ。だってその攻撃は…」

「私が邪魔しますからね」


 ダガーの刃は死神の服の隙間から飛び出た《アベンジャー》によって弾かれた。


「あなたの相手は私です!サルモネラ!」

「…ッ!」


 そんな声と共にその服隙間から飛び出したユウは、肉薄しているサルモネラの腹に回し蹴りを喰らわすと、サルモネラを壁へと吹っ飛ばした。


「サルモネr…」


 レジオネラが目を離した瞬間、背後に移動した死神はレジオネラの首目掛けて鎌を振った。


「まずは1人…」

 



「何よ…あれ…」


 ミリンはコウスケの腕を止血しながら、ユウと死神の戦いを見ていた。


「あれが…死神と呼ばれる理由…」

「比喩でもなく首の皮を一枚だけ残して切断する…噂に聞いてたけどいざ見るとすごいな…」


 意識の戻ったコウスケはミリンの手をそっと退けるとゆっくり立ち上がった。


「コウスケ、もう大丈夫なの?」

「あぁ…まだ痛みはあるけど血は止まったしね」


 コウスケは左手で無くなった右腕を抑えると、ユウと死神のほうへ視線を戻した。




「うふふ…あなた達、やってくれましたね…」


 死神の一撃によってレジオネラが崩れるように倒れると、サルモネラはよろよろと立ち上がった。


「いいですよいいですよ…どうせ今回の任務は失敗しましたし…」


 サルモネラはブツブツと呟くと、ユウと死神を見てニタァと笑った。


「いっそこのまま全員殺しちゃいましょう!竜人の力さえ回収できればルイン様も問題はないでしょう」


 サルモネラはまるで別人のようにそう叫ぶと、自らの右腕に噛み付いた。


「宴の始まりよ」


 サルモネラがそう呟いた瞬間、サルモネラの身体から濃密な魔力が放出されると、その身体を人の姿からみにくい怪物へと変えていった。


「あれがサルモネラの本来の姿か…」


 死神はそう呟くと、自らの服に手をかけた。


「死神、一体何をするつもりですか?」

「いや、ちょっと本気を出そうと思ってね」


 死神はそう言うと、身につけていた黒い服と仮面を影の中へ投げ捨てた。


「ね、姉さん!?え?どういうことですか!?」


 『死神』の中から出てきた赤い竜の翼と尾を生やしたユウと瓜二つの女を目にしたユウは驚愕の声を上げた。


「ユウ、話は後だ。まずはあの怪物をなんとかする」

「ふふっ…誰かと思えばあの脱走した女ですか。好都合ですねぇ…竜人を一度に2匹も捕まえられるなんて」

「サルモネラ、俺にはユイって名前があるんだ。10年囚われた恨み…まずはここで返させてもらう!」


 死神─ユイは身体に着けていた鎖のような拘束具を外すと、首をコキコキと鳴らした。


「ふぅ…久々に軽くなった。さぁ、相手してやるぜ。ユウ、いけるか?」

「!はい!姉さん!」


 ユウは元気よく頷くと、影の中から飛び出した黒い銃を右手で掴んだ。


「相変わらず生意気な女…」

「言っておけ」


 サルモネラは軽口をたたくユイに怒りを覚えると、周囲に散乱する瓦礫をユイに投げ付けた。


「姉さん、ここは私に」


 ユウは銃の引き金を引くと、次々に瓦礫を消しとばした。

 ユイは瓦礫の処理をユウに任せると、ものすごい速さでサルモネラに肉薄する。


「…ッ!」

「遅い」


 サルモネラはユイを突き飛ばそうと腕を振ったが、ユイは翼を広げるとそれをかわすように宙に舞い上がった。


「ふ…ざ…けるなぁぁぁぁッ!」


 サルモネラは咆哮をあげると、周囲の建物の外壁を殴りつけた。その衝撃を受けた建物はユイの飛べる場所を塞ぐように崩れ始めた。


「姉さん!」


 ユウが反射的にそう叫ぶと突然、上空に巨大な黒い魔方陣が出現すると、まるでユイを守るように崩れ落ちた瓦礫を消しとばした。


「なッ…!」


 その光景を目の当たりにしたサルモネラは一瞬意識をそちらに奪われると、その隙を待っていたとばかりに鎌を構えたユイがとてつもない勢いで急降下した。


「消え失せろ」


 ユイの振り下ろした鎌は、身を守ろうと前に出したサルモネラの左腕を切り落とすと、サルモネラの胸部に突き刺さった。


「…ふふっ…まさかこのわたくしがここまで追い詰められるとは…」

「お前の負けだ、サルモネラ」


 不敵な笑みを浮かべるサルモネラからユイは鎌を引き抜くと、その傷口からおびただしい量の血が吹き出した。


わたくしの仕事は竜人の暴走化…せめてそれだけでもッ!果たすッ!」


 サルモネラは右手で瓶のようなものを取り出すと、叫びながらそれを地面に叩きつけた。

 叩きつけられた瓶は、ガシャンという音と共に中から甘い匂いを放つ白い煙が噴き出した。


「それでは、ごきげんよう」


 煙が晴れると、レジオネラの死体と切り落とされたコウスケの右腕がまるで持ち去られたようにサルモネラの姿と共に消えていた。


「チッ…逃げられたか…」


 ユイは一瞬悔しい表情を見せると、サルモネラの血の付いた鎌を影に投げ捨てた。




「なんだ…?この匂い…」


 ユイの戦いを見ていたコウスケとミリンは、周囲に充満した匂いに本能的な恐怖を感じていた。


「コウスケ、この匂い…」

「あぁ…なんかヤバい気がする…」


 そう呟いた瞬間、コウスケは全身の毛が逆立つような感覚に襲われると、視界がグワングワンとブレ始めた。


「コウスケ?なんか調子悪そうだけど…」


 心配そうにこちらを見るミリンを前に、コウスケの脳はとてつもない破壊衝動に襲われていた。


「なんだこれ…?一体…どうなって…」

「コウスケ?ねぇ大丈夫なの?」


 コウスケを襲う破壊衝動は、残ったコウスケの理性を完全に奪い去ると背中をさすっていたミリンの腕を強引に引き剥がした。


『アァァァァァァァァッ!』


 コウスケが苦しそうに奇声を上げると、切り落とされた腕の断面から大量の『力』が溢れ出した。


「こ、コウスケ…?」

『ヴゥゥゥゥゥ…フゥゥゥゥゥ…ヴゥゥ…』


 溢れ出したその『力』は無くなったコウスケの右腕に集まると、そこに黒く禍々しい化物の腕を形成した。


「ミリン!大丈夫ですか!」


 ユウは『力』を放出し続ける『コウスケ』を目にすると、地面にへたり込んでいるミリンの元に駆けつけた。


「ユウ!コウスケが!コウスケが!」


 ユウはテンパるミリンを優しく抱きしめると『コウスケ』のほうに視線を戻した。


「これは…ある種の麻薬だな」


 ユイは2人と『コウスケ』の間に立つとボソッと呟いた。


「ユウ、俺が誘導しながら時間を稼ぐ。その間に残りの2人を呼んでくれ。この匂いを消せばコイツも治るかも知れん」


 ユイはそう言うと『コウスケ』を挑発するように翼を広げると、そのまま宙に舞い上がった。


『ヴァァァァッ!』


 コウスケは飛び回るユイを視界に捉えると、地面を蹴ってそれを追い回した。

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