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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第2部.対面!最強の四天王
24/112

着せ替え人形

「所詮この程度ですか…」


 崩落した遺跡の中に現れたローズは、相変わらず表情のない顔で動かなくなったエイズの身体を踏みつけると、どこか呆れたようにそう呟いた。


「まぁ兄様が強いことの証明なんでしょうね。毎度毎度誰が回収してると思っているのやら…」


 ローズはそう言いながらエイズを担ぎ上げると、空気に溶けるようにその場から消えていった。



ーーー



「コースケさん、なんで私は女と間違われるのでしょう?」

「え?」


 エイズとの戦闘から3日。コウスケがいつものように紅茶を飲んでいるとユウの突然の一言に固まった。


「い、いやぁ…なんでだろ?その服装のせい…なのかな…」


 コウスケはユウからそっと目をそらすと少し上擦った声でそう言った。まぁコウスケもそう言いながら「なんで女じゃないんだろう?」と考えたことはあるが。


「服装…ですか。まぁこの服はミリンからのお下がりですし…あ、でもこの服着なくても間違われて…いや、あれは姉さんの服だし…」

「あ、あの…ユウさん?そんな考えてるとこ悪いんだけど…俺、ユウさんが男性服着てるとこ見たことないんだよ」


 コウスケがそう言うとユウは一瞬それだといった言ったような顔をしたがすぐに俯いてしまった。


「そういえば私…男性服って着たことないです…」

「へ?逆に今まで女性服しか着たことないの?」

「はい」


 コウスケはその一言に頭を抱えると、ふと思いついたように手を叩いた。


「そうだよ!着たことないなら着てみればいいんだよ!ほら、そこにある俺の服をきれb…」

「言い訳ないでしょ!」


 コウスケが言い終える直前、気配もなくコウスケの背後に現れたミリンの手刀によってコウスケは気絶した。


「ミリン…いつの間に…」

「ユウが『なんで女と間違われるのでしょう』って言ったときからいたけど?あ、そうそう。新しく気配を消す魔法習得したんだけどどう?」

「さっきまでそれを使ってたってことですか?すごいと思いますよ!私もさっきまで気付かなかったので…」


 ミリンはユウの言葉に胸を張ると再び口を開いた。


「ユウはさっき男性服を着てみようって言ったじゃない?わたし達これから買い物に行くんだけど…来る?」

「い、行きます!」


 ユウはミリンの一言に頭を上げると万遍の笑みで頷いた。



ーーー



「…これが…服屋ですか…」


 気絶したコウスケを置いてアール商店街へとやってきたユウ達は服屋(男性)に入っていった。


「わたし達が服を選んでくるから、ユウはここで待ってて」

「あ、はい。わかりました」


 ミリンの声にユウが返事をすると、同伴していたユリ、サクラ、スミレは各々ユウに似合いそうな服を見繕いにいった。


「男物の服ってあんまりレパートリーないんですね…でも、これを着れば女と間違われることはないんですよね…」


 試着室の前で待っていたユウは店内を見回すと、ひとりそう呟いた。




「ユウ、こんなのどう?」

「いや、こっちのほうが似合うって」


 ユウがしばらく待っていると両手に大量の服を持ったユリとサクラが戻ってきた。


「えっと…私はどうすれば…」

「あ、ユウはとりあえずコレ着てみて!あたしが選んだから絶対似合うって!」

「は、はぁ」


 ユウは力なく返事をするとユリから受け取った服を着るため、試着室に入った。


「そういえばユリ、前にリーダーから渡されたすまほ?ってやつがあるじゃない?」

「え?うん、確かみんなで連絡を取れるようにって渡されたけど…それがどうしたの?」


 サクラはユリにそう聞くと自分のスマホを取り出した。


「これ、『しゃしん』っていうのがあるんだけど…景色とかを保存できるらしいよ」

「へー…ん?ということは?」

「今日、ユウが着替えた姿をいつでも見れるようになるってことだよ!」

「え!ほんとだ!ナイスサクラ!」

「なんの話をしてるのかと思えば…」


 ユリとサクラが盛り上がっているといつのまにか背後に現れたミリンの一言に2人は肩を震わせた。


「ミ、ミリン…」

「いつの間に…」

「そんなことはどうでもいいんだけどさ。写真撮るならユウが嫌がらない程度にしておくのよ?」


 ミリンがそういうと2人は静かに頷いた。


「あの…こんな感じでいいのでしょうか…?」


 着替え終えたユウはそんな声と共に試着室のカーテンを開けると恥ずかしいのかモジモジしながら顔を上げた。


「これは…」


 ユリに渡された服はコウスケが最初に着ていたような学生服だった。いつもスカートの中にあって見えなかった赤い竜の尻尾はブレザーの下から生えていて他の亜人にはない色っぽさを放っていた。

 ユリはそんなユウを目に硬直すると隣にいたサクラはものすごい速さでユウに向かってシャッターを切っていた。


「男装女子にしか見えない…!」

「え」


 ミリンの一言にユウは声を漏らすとサクラが自分の手に持っていた執事服をユウに突き出した。


「次!次はコレ着て!」

「は、はい」


 ユウは流されるようにそれを受け取ると再び試着室に入っていった。


「サクラ、後でその写真ちょうだい」




「これでいいでしょうか…?」


 サクラから渡された執事服を着たユウは顔を赤らめながらカーテンを開けると、目の前で待機していたユリとサクラはその姿を目に焼き付けようと写真を撮ったり色々な角度から覗いていた。


「えっと…これはどういう状況ですか…?」


 ユウは困った様子でそれを遠巻きに見ていたミリンに視線を向けた。


「いやぁ…あはは…」


 ミリンはユウに曖昧な反応をするとそっとそこから目をそらした。


「ちょっとミリン!?なんで目をそらすんですか!?」

「さぁユウ…僕の選んだこの服で…ってなんだその格好!ここは天国か…!まさかユウの男装姿が見れるなんて…!」

「ちょっ…スミレ!次はあたしが選んだこの服を着てもらうんだから!」

「違うよ!次は私!」


 ユウがミリンに声をかけようとしたが服を選び終えたスミレが戻ってきたことにより、ユウはその後色々な男性服を着せられることとなった。




「つ、疲れました…」


 気付けば外は暗くなり始め、活気のある商店街は食事処へ向かう人が増え始めていた。ユウは数十着の服を着せられたが、結局何も買わずに店を後にした。


「男っぽく見える服ってなかなかないんだね…」

「まぁあたし達のユウに対する固定のイメージってのもあるんだろけど」

「サクラ。僕にもそのシャシン?とやらをちょうだい!」

「ダメ!あんたには絶対あげない!」


 ユウはそんなふうに言い合っている女性陣の後ろに並んで歩いていると、何か思い出したのか焦り始めた。


「どうしたの?ユウ」

「サクラ…どうしましょう…私、夕食の支度してないです…」

『え?』


 ユウの一言に女性陣はみんな同じような反応をして固まった。


「店長に自分から頼んでおきながら忘れるなんて…!はやく!帰らなければ!」


 ユウはワナワナとした後、自分に言い聞かせるようにそう呟くとミリン達を置いて走り出した。


「っは!ちょっと待ってユウ!わたし達も帰らなきゃ!」


 硬直が解けたミリン達はユウを追うようにその場を後にした。



ーーー



「おねぇちゃん…助け…」

「どうしたんですか!?大丈夫?ハルナちゃん」


 ユウが宿屋フラワーに戻ると青い顔をしてフラフラと歩いてくるハルナと遭遇した。


「しょ…食堂…」


 ハルナはそれだけ言うと力尽きたようにグッタリと倒れ込んだ。


「食堂がどうかしたんでしょうか…?」


 ユウはハルナを背負うと自室へと向かった。


 自分のベッドにハルナを寝かしてきたユウが食堂に入ると得体の知れない異臭と共に何人もの宿泊客がハルナと同じようにグッタリしていた。


「一体何が…」


 ユウが途切れそうになる意識を無理矢理つないでいるとユウの後を追って帰ってきたミリン達が食堂に入ってきた。


「ただいまぁ…って何これ!?どういう状況!?」

「何そんなに騒いで…うッ…!何この匂い…」


 スミレは異臭に耐えかねたのか鼻を抑えると食堂から飛び出した。2人の後ろにいたユリとサクラは匂いのせいか立ったまま気絶していた。


「ミリン。とりあえず換気しましょう」

「え、えぇ…」


 ユウとミリンは食堂の窓を片っ端から開けていくと、籠もっていた空気が入れ替わるように幾分か匂いは和らいだ。


「この匂い…厨房からなんじゃ…」

「…いってみましょう」


 2人が厨房に近づくにつれ、だんだん匂いも濃くなっていった。

 ユウが厨房に続く扉を開くと、厨房の中ではシェフ達がハルナと同じようにグッタリと倒れていた。


「あ、ユウさん!ミリン!おかえり!」


 2人がシェフの安否を確認していると急に、その場状況に似合わない元気のいい声が聞こえてきた。

 2人はその声にビクッと肩を震わせると、ゆっくり声のする方へ目を向けた。


「…コースケさん、なんですかソレ」

「え?ユウさん。みてわかんないの?夕食だよ!ゆ・う・しょ・く!ユウさん達が帰ってくんの遅かったから作ってあげようかなぁって思っただけだから!」


 そこに立っていたのは物体Xがのった皿を両手に持つコウスケだった。

 コウスケはユウの反応が不服だったのかプンプンと怒ったように頰を膨らました。


「コウスケ…そのうねうね動くのが料理…なの?」

「そうだけど?あ、ちゃんと冷蔵庫にあった食料を使ったからね!」


 ユウとミリンからすれば逆にどうしたらそんな物体ができるのか気になるところではあったが、ユウはコウスケの反応を無視すると無言で火炎魔法を放ち物体Xを焼き払った。


「これで悪は去りました」

「ちょっ!ユウさん!?なんで燃やすのさ!せっかくの自信作だったのに…」

「せめて食べれるものを作ってくださいよコースケさん…少しは周りを気にする癖をつけたほうがいいと思いますよ?」

「…ユウ?なんでわたしのほうを見るの?ねぇ!?なんで!?」

「夕食は今から私が作りますから2人は倒れた人達を起こしてあげてください。悪い夢を見てたとでも思わせておいてくれたほうがいいですけど」


 ユウはコウスケの持っていた皿に載っている灰をゴミ箱に捨てるとどこから取り出したのかエプロンを装着すると食堂の奥へと入っていった。


「…コウスケはもう厨房への立ち入り禁止ね」

「そんな!?ちょっと?ユウさんもミリンも今日俺に対してキツくない!?ねぇ!」


 ミリンはコウスケの腕を掴むと引きずるように厨房を後にした。



 ユウ厨房に入ってから数十分後。食堂にあった異臭はなくなり、倒れていた人達も意識を取り戻した。


「はい!お待たせしました!簡単なものになってしまいましたけど…」

「おぉ…!」

「美味しそうだ!早速いただきます!」


 幸い全員が悪い夢を見ていたと思い込んでいた為このことが公になることはなかった。

 ユウは何もなかったかのように出来立ての料理を笑顔で配膳し終えるとコウスケ達のいる席に座った。


「それでは」


『いただきます』

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