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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第1部.宿敵と奇妙な薬
21/112

奇妙な薬

「…ぁ…そん…な…」


 ユウは膝から崩れ落ちた。

 首を絞められ動かなくなったコウスケやもはや助からないほどのダメージを受けたミリン達を前にユウは絶望に浸っていた。



ーーー



 魔物の襲撃以来復興していたアール王国の王都ではすっかり元の姿を取り戻し活気に満ち溢れていた。


「コースケさん。今日の夕食は何にします?」

「うーん…さっき昼食ったばっかだからこれといって食べたいものはないかなぁ…」


 コウスケとユウは『アイテム屋KAZU』の食材売り場に並ぶ商品と睨めっこをしていた。


「ユウさんの作った料理はどれも美味しいしなんでもいいと思うけど…」

「なんでもいいが一番困るんですよ!では今日の夕食コースケさんは無しということでいいですね。つまみ食いするならはやくミリンを食べてあげてください」

「ユウさん?ミリンって調味料のことだよね?人じゃないよね?」


 コウスケがユウらしからぬ発言に思わずツッコミを入れるとその様子を店の奥から見つめていたカズヤが思い出したように口を開けた。


「あ、そういえばあんちゃん。ちょっと面白いもん作ったんだよ。お代はいらなぇから使ってみてくんね?」

「面白いもの?」


 コウスケが不思議そうに首をかしげていると横で聞いていたユウが目をキラキラと輝かせていた。


「カズヤさん!それってどういう風に面白いんですか!?私、気になります!」

「ほんとユウは昔から面白いもんになるとすぐ食いつくな…」


 カズヤはそんなユウの反応にボソッと呟くと再び口を開いた。


「じゃ、姉ちゃん飲んで確かめてみるか?」

「はい!」


 ユウは子供のように喜ぶとカズヤの手にあった5粒の薬を全て口の中に放り込んだ。


「あ、1粒でいいのに…」

「美味しいですねこれ」


 ユウはカズヤの言葉が聞こえていないのかそのまま薬を飲み込んだ。


「どう?ユウさん。なんか変わったことある?」

「いえ…まだ何も…カズヤさん。この薬一体何の薬なんですか?」


 コウスケとユウはカズヤのほうへ顔を向けるとカズヤは何やら困ったような表情の浮かべていた。


「いやぁ…ちょっと性別変化剤を…」

「何その怪しい薬!?というか何でもありだなこの店!?」


 カズヤの言葉にコウスケは思わず叫び声をあげた。


「ユウさんも何か言おうよ…」

「私…女?ぺったん…」

「ユウさん!?何自分の胸ペタペタ触ってんの!?」


 コウスケがユウのほうは向くとユウは自分の胸を触って悲しいような顔をしていた。


「あー…やっぱこうなったか…」

「おっちゃんもこうなったかってまるで予想してたみたいに言わないでよ!」

「まぁある種の混乱状態だからすぐに元に戻るさ」


 あははと笑ってみせるカズヤにコウスケはため息をついた。



ーーー



「それで?今のユウは女ってことなの?」


 宿に帰ったコウスケ達はミリンの部屋で事の顛末を説明するとそれを聞いたユリが少し興奮気味に反応した。


「カズヤさんの話が正しければ明日の朝には元に戻るハズです。まさか1粒で3時間も効果が続くとは思いませんでしたけど」

「見た感じあんまり変わってないと思うけど…そこはツッコんじゃだめなとこかな…」


 苦笑いするミリンにユウは不思議といった様子で首をかしげるといきなり部屋の扉が開かれた。


「早乙女先輩!姫様プリンセス!今日も我が参上し…痛っ」


 何故かいつになくハイテンションなカイトは自ら開けた扉に頭をぶつけるとその場にうずくまった。


「吉田…お前相変わらず日本語めちゃくちゃだな…」

「だっさ…」


 サクラの罵倒とともにコウスケはカイトの体を起こす。


「こんにちはユウ。僕も遊びに来たよ」

「あ、スミレこんにちは。ちょっと待っててくださいね。お茶淹れてきますから」


 ユウは扉の前に立っていたスミレに気付くと慌ただしく部屋を出ていった。


「結局いつも通りのユウさんだな」



ーーー



「で?今日は何の用できたの?」


 カイトがユウの淹れた紅茶に口をつけるとコウスケは口を開いた。


「あー…それはね、なんか新しい遺跡が発掘されたから大会の優勝者である先輩達に見てもらおうって話で来たんだけど…スミレは多分、姫様プリンセスに会いにきただけだと思う」

「お前もユウさんに会いにきたんじゃないの?」

「それは…そうだけど…」


 コウスケとカイトは再び紅茶に口をつけるとサクラと言い争っているスミレのほうへと目を向けた。


「ダメ!絶対ダメ!ユウと一緒に風呂とか…絶対ダメ!」

「僕はユウともっとナメクジみたいにグッチョリしたレズs…」

「それ以上は言わせないわよ!?」


 サクラは叫び声のような声をあげるとその様子を見ていたミリンがコウスケの肩を叩いてきた。


「コウスケ、そういえばユウは?紅茶を淹れたっきり姿が見えないけど…」

「あー…ユウさんならユリと夕飯作るって厨房に向かったよ」


 コウスケがそう言うと取っ組み合っていたサクラとスミレがピタリと手を止めた。


「なんですって…」

「僕がいない間にそんな…」


 2人は絶望に染まったような表情を浮かべるとその場にへたり込んだ。


「マジで何やってんだあの2人…」

「さぁ?」

「我も理解しかねる」


 それを見ていたコウスケ達は三者三様の反応をするとお互いの顔を見合わせた。



ーーー



「ユウさん、俺の夕食は?」


 夕食の時間となりいつもと同じように席についたコウスケはテーブルのの上を見渡すとそう聞いた。


「ありませんよ?カズヤさんの店にいるときそう言ったじゃないですか」

「あれマジだったの!?今日はやけに豪華だと思ったら俺の分だけないんだけど!?」


 コウスケはユウの言葉にたまらず叫び声をあげると周りにいた宿に泊まっている人たちの視線が集まってきた。


「なんて冗談です。ちゃんと用意してますからちょっと待ってくださいね」

「え?冗談?」


 ユウは楽しそうにクスクスと笑うと厨房のほうへ戻っていった。


「よかったねコウスケ。あんな楽しそうなユウもなんか新鮮だけど」

「いつものクールなイメージとはちょっと違う気もするけど…これも薬のせいなのか?」


 コウスケは隣に座るミリンとそんな言葉を交わすと戻ってきたユウのほうへ向き直った。


「はい、コースケさん。昼に言ったみたいにさっさとミリンも食べてあげてくださいね」

「ちょっとユウさん?それは一体…」


 ユウはコウスケの耳元でそう囁くとコウスケの言葉を待たずに自分の席へと座った。


「ん?俺の料理だけなんか違くね?みんなより精のつくものが多い気が…」


 コウスケがそう言うとミリン以外はニヤニヤと口元を歪ませていた。




 夕食後、みんなが部屋に戻ると食器を洗い終えたユウは風呂場へと向かっていた。


「コースケさんは今夜どうするんでしょうね…ミリンの部屋にスミレを泊めたし…あの中二病男は帰ったし…」


 ユウはそう呟きながらいつものように自分用の風呂場へと繋がる扉を開けた。


「あ、ユウ!そうか…どおりでいつも女湯でスタンバッてても入ってこないわけだね」

「あの…スミレ?ここ貸切のハズなんですけど…って毎回風呂場で待ち伏せてたんですか!?」


 脱衣所にいた全裸のスミレにユウは思わず声をあげた。


「…そういえば今日のユウはいつもとちょっと違うね。僕にはいつものほうがもうちょっとクールなイメージがあるんだけど」

 「…た、たまにはこういうテンションの日もありますよ」


 ユウは額に汗を滲ませながら若干目をそらすとそう言った。


「まぁこんなユウもこれはこれで…」


 ユウは途中から自分の世界に入ったスミレを横目に服を脱ぐと浴室の扉を開いた。


「僕を置いて行かないで!」


 スミレは身体を流したユウに後ろから抱きつくとユウの身体をペタペタと触り出した。


「ちょっとスミレ!?そんな触りかたしないでくださいッ!」

「おぉ…予想通りスベスベの肌だぁー!このスレンダーな見た目といい…僕の心はもう…」

「ちょっ…スミんんっ…変なとこ触んぁっ…らないでぇ…」


 スミレは興奮した様子で鼻血を垂らしながらユウの身体を弄っていると浴室の扉が勢いよく開かれた。


「ユウ!私が背中を流して…ってちょっとスミレ!?あんたナニしてんの!?」


 浴室に入ってきたサクラはユウとスミレの姿を確認すると思わず叫び声を上げた。


「えへへ…ぐふふ…あれ?サクラいたの?僕は今ユウと愛し合ってるところだから用があるなら後にしてくれないかな」

「そう言うセリフは鼻血を拭いてからにしてくんない!?」


 スミレはユウをホールドしながらそう言うとサクラはユウからスミレを引き剥がそうと2人に近づいた。


「さ、サクラ…助んぁっ…けて…」

「ちょっと!ユウをはなしなさいよ!」

「やめてよ!僕に触っていいのはユウだけなんだぞ!」


 サクラがスミレの腕をつかむとスミレは発狂したように声を上げるとさらに強くユウを抱きしめた。


「お尻触らないで…」

「それじゃ愛し合うじゃなくてあんたがただ一方的に愛撫してるだけじゃない!」

「なんだって?僕ちゃんと『愛してる』と言われたんだぞ!」


 スミレのその言葉にユウはピクリと反応すると何か思い立ったようにスミレを抱き返した。


「ひゃっ…ユウ?やっと僕t…」

「スミレ、愛してますよ」

「な…」


 ユウはスミレの耳元でそう囁くとそれを見ていたサクラが驚愕に満ちた顔で固まった。


「愛してます」

「あぁ…!」


 スミレはユウの言葉を理解すると同時に幸せそうな顔で鼻血を撒き散らしながら気絶した。


「ふぅ…これで解放されますね…」


 ユウはスミレを引き剥がすと周りに飛び散った血を流した。


「ユウ…?さっきの台詞は一体…?」

「ああ、あれは大会のときコースケさんが『スミレの耳元で愛してるって囁けば動きが止まる』って言ってたのを思い出しただけですよ。こうすれば離れて…サクラ?」


 先程までのせいか若干顔を赤らめたユウの色っぽい姿につられるようにサクラはゆらゆらとユウに近づくとそのまま抱きついた。


「ユウ…その話…詳しく聞かせてくれない…?」

「ちょっとサクラ!?そこはんんっ…尻尾はダメですぅんっ…さっきので敏感だから触らないでぇ…」



ーーー



「…それで?ユウが全身痙攣させながら気絶するまで弄ってたと」

「ハイ…」


 浴槽から出たサクラは幸せそうに気絶するスミレと妙に色っぽい状態で気絶しているユウの横で正座をさせられていた。


「スミレに関してはなんとなくこんなことになるかと思ってたけど…まさかサクラがやるとは思わなかったよ」


 そうため息を吐くミリンを横目にユリとコウスケは苦笑した。


「罰として明日から1週間ユウの風呂に立ち入り禁止ね。今日はユウをわたしの部屋に寝かせるから変なことはしないでね」

「ハイ…」

 

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