後輩と陰謀と
「流石です!早乙女先輩!一体なんですかあの魔法!」
コウスケとユウが控室へ戻ってくると何故か入り浸っているカイトが騒がしい声とともに出迎えた。
「なんだ吉田…また来たのか?」
「フフフ…よくぞ聞いてくれた幸助よ…我は姫様を嫁にするために来たのだァァァァ!」
コウスケの言葉にスイッチが入ったのかカイトはふざけたようなテンションでやたらかっこいいポーズをとりながらそう叫んだ。
「はいはい…私はあなたには興味ありませんからそれは無理です。というかあなたそろそろ試合が始まる時間じゃないんですか?こんなところで油売ってないで早くスミレさんのところに行ってあげてください」
「アッハイ…」
ユウが心底嫌そうな顔で切り捨てるように言うとカイトは小さくなってその場を出ていった。
ーーー
『さァ続いて2回戦!まずはッ!昨日の試合では一切ダメージを受けていない2人組ッ!ナズナ&ミツバペアだァァァァ!』
暑苦しいアナウンスが流れる中、観客席に座ったカズヤは難しい表情を浮かべていた。
「どうしたの叔父さん?そんな難しい顔して。そんなことよりこれからコウスケの後輩が戦うらしいよ!」
「ん?あ、あぁ…」
ミリンに言われカズヤはステージのほうを見るとちょうど始まりの合図がなった瞬間だった。
「あの男も異世界人ねぇ…」
「スミレ、後ろは任せた」
「…了解」
ステージに立ったカイトとスミレは短く言葉を交わすと各々の武器を構えた。
「へー…あんたらが去年優勝した2人組ね。上等じゃない」
「ナズナ、慢心はダメ。口を開くのは勝ってから」
ギャルのような口調のエルフの女と大人しそうな人間の女はそう話しながらカイト達に近づいた。
「手加減はッ…しないわよッ!」
ナズナは地面を蹴ると両手に構えたダガーをカイトに振りかざした。
「〈壁〉」
スミレが呟くとその手に持っていた杖が光るとともにカイトの周りに魔力でできた障壁が出現した。
「何ッ!」
ナズナは壁に弾かれると宙返りをして体制を整えた。
「その程度の攻撃…我に通じるとおもうなよ!〈パワーブースト〉!」
カイトはその隙に身体強化魔法を唱えると手に持った大剣を構えた。
「攻撃とは…こういうものだッ!」
「ッ!〈防御〉!」
ナズナは咄嗟に防御魔法を唱えるがその攻撃を受け止めきれずに後方へと吹き飛ばされた。
「ナズナッ!だから言ったじゃない!」
「…何あの一撃…仕方ない。ミツバ、あっちの女を叩くわよ」
ナズナはスミレのほうを指差すとミツバは小さく頷いた。
「「はァッ!」」
ナズナとミツバは息を合わせると左右からスミレに飛びかかった。
「残念。僕を狙ったつもりなんだろうけど僕に触れていいのは君たちみたいな女性じゃない」
スミレは2人の連携攻撃をひらりひらりと交わすと後方へ下がった。
「僕に触れていいのはユウだけだ」
「おいスミレッ!姫様は我が貰うからな!」
カイトはそう叫びながらスミレの横に駆け寄ると2人に向けて剣を構えた。
「私はそっちの趣味はないのであの男についていく気はありませんけど」
控室の中からステージの様子を見ていたユウは少しイラついた様子で口を開いた。
「まあまあ…というか吉田のやつユウさんが男だって気づいてないのか?スミレさんもあれはあれでどうかと思うけど…」
コウスケはそんなことを呟きながらステージのほうへと視線を戻した。
「この女…以外に素早いんだけど…」
ナズナはスミレに攻撃を仕掛けるもスミレは無駄のない動きでそれをかわしていた。
「スミレ。こっちは片付いたぞ」
スミレがカイトのほうを向くとそこには気絶したミツバが横たわっていた。
「ミツバッ!」
「大丈夫だ。殺してはない…あとはスミレに任せた」
「わかった」
スミレはカイトと入れ替わるようにナズナの前に出ると杖を前にかざした。
「〈ダークスライム〉」
スミレが静かにそう言うとその足元に現れた魔法陣から闇色の巨大なスライムが出現した。
「スライムごとき…〈ファイアアロー〉ッ!」
ナズナが魔法を唱えるもスライムに傷をつけるとこはおろかダメージを入れることすらできなかった。
「す、スライム…嫌だッ!食べられたくな…」
ナズナは絶望に染まった顔で逃げようとしたが言い終わる前にスライムに食われた。
『き、決まったァァァァ!勝者は前回優勝のカイト&スミレペアだァァァァッ!相手を絶望に染める圧倒的な強さでナズナ&ミツバペアを封殺だァァァァ!ダークスライムッ!相変わらず恐ろしい魔物だッ!』
試合終了のアナウンスが流れると冷めやまぬ会場の中カイトとスミレは静かにステージを後にした。
「ダークスライム…あの魔物は厄介だな…」
控室にいるコウスケはスミレが召喚したスライムを見て絶望の表情に染まっていた。
「明日の対戦ではあれをどうにかしなきゃいけないのか…」
コウスケがブツブツ呟いていると控室の扉が開いた。
「やったよ!先輩!姫様!これで明日の決勝戦は先輩達と俺らの直接対決だね!」
カイトがやたらと高いテンションでそう言うとそれに続くようにスミレが入ってきた。
「やりましたね!スミレさんッ!」
「ちょ、ちょっとユウ!?そんなにくっつかれたら僕…」
ユウは勢いのあまりスミレに抱きつくとスミレは顔を緩めながら混乱状態に陥った。
「あー…これはあと一押しで気絶するな…」
カイトはそんな2人の様子を見てボソッと呟いた。
「あと…一押し…?…あっ」
コウスケは固まっているスミレを見て勝利への鍵を見つけたように心の中でガッツポーズをした。
ーーー
「あの女…ッ!ふざけやがって…」
「一発ギャフンと言わせてやりテェ…フヘッ」
観客席から大会の様子を見ていたゴリとガリは2つの試合が終わると人目のつかぬ場所で会場の壁を殴り付けていた。
「そうかそうか…その憎しみ…あの女どもを報復させたいか…」
「誰だお前…ふざけやがってッ!」
2人のもとにやってきた白衣を着た男はゴリのパンチを軽く受け止めると再び口を開いた。
「この俺…エイズがお前らに力をやろう。あの女どもを倒せる力を…」
「お前…ッ!一体な…に…を…」
エイズがそう言うとガリとゴリはその場で意識を失った。
「これは…とてもいい実験ができそうだ…」
エイズは2人を抱えると不敵な笑みを浮かべながらその場を去っていった。
ーーー
大会3日目。
控室にいるコウスケは緊張のあまりガチガチになっていた。
「先輩、決勝だから緊張しすぎじゃないっすか?」
「いや…まぁ緊張してるけどね?まさかこんなかたちで吉田と戦うことになるとは思わなかったよ」
コウスケがそう言うとカイトはやたらとカッコいいポーズをとった。
「なに…我らに負けるのがそんなに怖いのか!幸助よ!」
「したの名前で呼ぶんじゃねぇ!あ、なんか勝てるか気がしてきたわ」
コウスケがそう言うとカイトは少し悔しそうに顔を歪めた。
「相変わらず仲がいいですね。それよりコースケさん、昨日言ってた秘策ってほんとにやるんですか?」
「あー…予想通りならやれば綺麗に決まると思う」
「何々…?秘策?どんな作戦か知らないけどそんなの通用しないぞ先輩!なんたってこっちにはスミレがいるからな!」
2人の会話にカイトは胸を張ってそう言うとそのまま扉のほうへと向かっていった。
「それじゃ先輩!また後で!」
カイトはそう言い残すと控室を後にした。
ーーー
『さぁやってまいりましたッ!決勝戦ッ!今回戦うのはァァァァ!前回大会優勝者ッ!ノーダメージで相手を圧倒したカイト&スミレペアだァァァァッ!』
司会のアナウンスとともにカイトとスミレがステージに上がると会場中から歓声が上がった。
『対するはッ!初出場ながらも見たことのない魔法で圧倒的な強さを見せたニューフェイスッ!コウスケ&ユウペアだァァァァ!』
2人はお互いの顔を見合わせるとステージに上がった。
『それではッ!司会開始だァァァァッ!』
司会が叫ぶとより一層大きくなった歓声とともに戦いの火蓋が切られた。
「ユウさん。頼んだよ」
コウスケがそう呟くとユウは丸腰の状態でスミレのほうへと歩いていった。
「さぁ吉田…お前の相手は俺だ」
「望むところだッ!この世界では我に勝てると思うなよッ!」
「どうしたのユウ?そんな丸腰で…僕の油断した隙を狙うってことかな?」
ユウがスミレに近づくとスミレは警戒したように杖を構えた。
「あー…これでどうですか?」
ユウはそう言うと影からとり出した剣と銃を後方へ投げ捨てた。
「武器なしなら問題ないですね」
「…僕と肉弾戦で戦うってことかな?いいよ」
スミレは杖を投げ捨てると構えた。
「さぁこいッ!」
「いきますよッ!」
ユウはスミレのほうへ突っ込むとそのまま抱きしめた。
「スミレ…好きですよ」
「えっ…えっ…?」
そのままユウはスミレの耳元でそう囁くとスミレは混乱したのか目を回していた。
「好きですよ。スミレ」
「あっ…あっ…」
ユウが追い討ちをかけるように再び囁くと言葉の意味を理解したスミレは幸せそうな表情で全身を痙攣させながら気絶した。
「これでいいんですかコースケさん…まさか本当に気絶するとは思いませんでしたけど」
ユウは気絶したスミレを寝かせると影の中へと潜っていった。
「先輩ッ!この程度ですかッ!」
コウスケはカイトの大剣を2本の剣で受け止めると後方へ退いた。
「吉田、生憎今の俺はお前に負ける気がしないんだ」
「先輩…それはただの死亡フラグっすよ…まぁ勝って姫様をいただくのはこの我ってことですけどッ!」
コウスケは浮遊魔法を使ってカイトの攻撃を交わすと右手に持った黒剣|〈ダークスレイヤー〉をカイトに向けて振り下ろした。
「甘いよ先輩…そんな一撃余裕で耐えられる」
「へー…それはどうかな」
カイトはそれを大剣で受け止めるとコウスケはニッと口を歪めた。
「私は姫様じゃありませんッ!」
そんな叫び声とともにカイトの足元にあった影からユウが下から蹴り上げるように飛び出した。
「〜ッ!」
ユウの蹴りが腹部に直撃したカイトは声にならない叫び声をあげてそのまま上に突き飛ばされた。
「ホットパンツにニーソックスってユウさん…」
「コースケさん!?ナチュラルにスカートの中を覗かないでもらえますッ!?」
「いやいや…さすがにそれはひどくない!?逆さまの状態で出てきたらいやでも見えちゃうよ!?」
ユウとコウスケがそんな言い争いをしているとカイトが上空から落ちてきた。
「私はッ!あなたなんかと結婚する気はありませんからッ!」
ユウはそう叫びながら落下してきたカイトに回し蹴りをかますとカイトの身体はそのままステージの壁に大穴を開けた。
『これは…き、決まったァァァァ!勝者はなんとッ!初出場のコウスケ&ユウのペアだァァァァッ!去年に引き続き初出場の選手が優勝ッ!これは誰が予想できたかァァァァ!』
「うわぁ…痛そう…」
「いやぁ…思った以上に力入っちゃいました」
司会のアナウンスが流れるとコウスケとユウはそんな言葉をもらした。
ーーー
「おぉォォッ!勝ったよ!コウスケ達が勝ったよ!」
観客席から様子を見ていたミリン達はコウスケとユウの優勝を前に人一倍はしゃいでいた。
「まさか本当に優勝するなんてね!」
「この試合…リーダーが時間稼ぎしかしてない気がするのはあたしだけ?」
ミリン、ユリ、サクラは興奮した状態で声をあげている中、カズヤはひとり暗い顔をしていた。
「なんだこの胸騒ぎは…?」
蘇生係がカイト達を回復させると表彰式が始まった。
コウスケとユウは国王から賞金を受け取ると会場はかつてないほど盛り上がった。
『それでは優勝したお2人に感想を一言ずつどうぞッ!』
司会のアナウンスにコウスケが感想を言おうとした瞬間、会場の一角から黒煙が上がった。
「なんだあれ?」
「何かあったのか?」
それを目撃した人々がざわめきだし会場は混乱に染まっていった。
『え、えー…緊急事態発生!会場周辺に大量の魔物が出現ッ!冒険者諸君!増援に向かってくれ!繰り返す!会場周辺に…』
アナウンスにより会場にいた冒険者達は慌てた様子で装備を整えると次々に外へと出ていった。
「表彰は中止ですね。私達も急ぎましょう」
「あぁ…」
コウスケとユウが装備を持ってステージを降りようとすると先程ユウが開けた穴から1人の男が歩いてきた。
「お前は…確かゴリだったか?そんなとこにいないで外に行くぞッ!」
「オ前ラ…ユルサナイ…ゼッタイ…ツブス…ウホッ」
ゴリはそう言うと光のない瞳をユウに向けた。
「ゼッタイ…犯ス…オ前ラ…タオスッ!〈砂の巨人〉ッ!」
ゴリはその両眼を見開いてそう叫ぶとステージ上にあった伝えが次々とゴリのほうに集まった。
「オォォォッ!」
土はゴリを核に集まると巨人を形成した。
「巨人!?なんで人間が…?」
「ユウさん、今はそんなことはどうでもいい…あいつを倒さないと!」
会場を破壊し始めた砂の巨人に向かってコウスケは2本の剣を構えるとそのまま突っ込んでいった。
「おりゃぁぁぉぁッ!」
砂の巨人はそれを余裕で受け止めると腕を回してコウスケを跳ね飛ばした。
「…ッ!なんだアイツ…硬すぎて物理攻撃が効かねぇ…」
「コースケさん、あれは砂の巨人。基本的には物理攻撃は効かないですよ。魔法を使っても核を壊さないといくらでも再生する厄介なやつです」
ユウは砂の巨人の攻撃を防ぎながら説明すると観客席のほうからミリンが飛び出した。
「はぁっ…!」
ミリンが右手をかざすと砂の巨人の周辺に出現した小さな魔方陣から爆発が起こった。
「ミリン!?」
「ミリン、あれは水爆ですか?」
ミリンはコウスケ達のほうへ駆け寄ると2人はそんな声をあげた。
「そうそう。昨日の試合でコウスケが使ってたあの魔法…『水素爆発』の規模が小さいバージョンね。というかあれはなんなの?打っても打っても再生されるんだけど…」
「あれは核を…中にいるゴリを倒さないと消えませんよ」
ユウがそう言うと観客席のほうから悲鳴が聞こえてきた。
「もう魔物がここまで来てるっってことか…?」
コウスケがそう呟くとユリとサクラがミリンと同じように観客席から飛び降りてきた。
「あたし達に任せな!」
「ゴーレムにはゴーレムだね!」
ユリとサクラはそう言うと砂の巨人に突っ込んでいった。
「コースケさん、私達は観客の避難を!」
「ああ…!」
コウスケはユウにそう返すと浮遊魔法を使って観客席へと向かった。
「お願いしますねミリン、ユリ、サクラ」
「水はミリンが作ってくれたから問題ないよ」
ユウはサクラの言葉を聞くと影移動を使って観客席へと向かった。
「皆さん!こっちに逃げてッ!」
コウスケは魔物を倒しながら残った観客を誘導しているとその群れの中に見たことのある顔を見つけた。
「ガリ…なんで魔物なんかと一緒にいるんだ…?」
「オ前ラ…タオス…フヘッ…アノ女…犯ス…ッ!」
ガリはゴリと同じように光のない瞳を見開くとものすごい勢いで襲いかかった。
「ッ!」
コウスケが攻撃を受ける寸前、目の前に飛び出したユウが銀色の竜剣〈アベンジャー〉でそれを弾いた。
「コースケさん。この男は私が引き受けます。コースケさんはスミレさん達とともに観客の避難を!」
ユウはそう言うとガリを巻き込んで会場の外へと飛び出した。
「すまないユウさんッ」
コウスケは残った魔物を蹴散らしながら観客の誘導を続けた。
「久々の出陣…腕がなるね」
「ミリン、そのままその魔法を打ち込んで」
「了解ッ!」
ユリ、サクラ、ミリンの3人は砂の巨人を囲うように走り回った。
「よし、これで準備は整った!〈水の巨人〉!」
サクラがそう叫ぶとミリンの魔法で発生した水がサクラの元へ集まった。
「あたしはッ!〈パワーブースト〉〈パワーブースト〉〈パワーブースト〉…」
ユリはひたすら身体強化魔法を唱えると巨人状態になったサクラが砂の巨人をねじ伏せた。
「オォォォッ!」
「このッ!大人しくしろッ!」
砂の巨人は水の巨人が接触した部分からだんだんと動きが鈍くなっていった。
「ユリ!今よ!」
「言われなくても…わかってるよッ!」
ユリは動かなくなった砂の巨人をありったけの力を込めた一撃で殴った。
砂の巨人は全身にヒビが入るとそのまま粉々に砕け散った。
「「ミリン!」」
破片の中からゴリの身体が出現すると2ミリンは杖を構えて叫んだ。
「水素爆発ッ!」
コウスケより威力は小さいもののミリンの放った一撃は大量の水とともにゴリの身体を木っ端微塵に吹き飛ばした。
ーーー
「これは…」
ガリを巻き込んで会場の外に出たユウが辺りを見渡すとそこにはとても悲惨な光景が広がっていた。 その光景はまるで…10年前の竜の里のように大量の魔物のと重症を負った冒険者がゴロゴロと転がっていた。
「オ前モ…犯ス!」
「しまっ…」
周りの光景に目を取らたユウはガリの攻撃に反応するのが遅れてしまった。
「貴様…何をしている」
変声機越しのような低い声を出す存在にその攻撃は止められた。
「あなたは…死神!?」
「死神、か…今はそう名乗っておくとしよう」
死神はそう言うとガリに向かって大鎌を構えた。
「ユウ…お前も戦えるか?」
「…えぇ…まだ戦えます」
ユウは右手に銃、左手に〈アベンジャー〉を構えると死神のほうは目を向けた。
死神のフードのような布の下には頭蓋骨のようなものがユウをのぞいていた。
「俺と協力しろ。この街を守るんだろう?」
死神はユウの返事を聞く前にまるで飛んでいるかのように魔物の大群へ突っ込んでいった。
「えぇ…協力してあげますよッ!」
ユウは引き金を引くと周囲の魔物を蹴散らした。
ーーー
「ほう…あれが噂の死神か…」
「エイズ。また実験動物で遊んでいるのですか」
会場の屋根の上からユウの様子を見ていたエイズはいつのまにか現れたローズに驚きのあまり固まっていた。
「私の呼び出した部隊まで使って何をするかと思えば…こんな実験をしていたのですか」
「い、いや…そんなことはありませんローズ様!」
相変わらず表情のないローズにエイズは頭を下げると言葉を続けた。
「必ずやあの竜人を捕獲してみせます」
「あなたが捕獲に失敗したら父様に報告します。仮にも四天王であるからには自身の手で捕獲しても構わないのですよ?」
ローズは無表情に感情のない声で、しかしどこかからかうようにそう言うと空気に溶けるように消えていった。
「ハッ…俺の実験が失敗するなど有り得ないな。ルイン様の娘だからって調子になるんじゃねぇぞ」
ーーー
「あとはガリ…あなただけです」
たった2人で魔物を一掃したユウと死神は前後からガリを囲うと武器を構え直した。
「ホウ…コノ短時間デヨク倒シタナ…ダガ俺ハ倒セナイ…フヘッ!」
ガリはそう言うと目に見えないほどの速さでユウに襲い掛かった。
「馬鹿め」
死神がそう呟くとユウに向かっていたガリは地面に落とされた。
「コ、コレハ…」
「お前のいる場所だけ重力を重くした。これでお前お得意の高速移動は使えん。ユウ、今だ」
「え、えぇ!」
ユウはガリの攻撃を交わすと〈アベンジャー〉でその腕を切りつけた。
死神はまるでユウの動きを知っているかのようにユウの一撃一撃の間にガリを大鎌で切りつけた。
「これで終わりだ」
死神はそう呟くとその鎌でガリの首を切った。
首の皮一枚を残したガリがその場に倒れると死神はユウのほうへと近づいた。
「この男はもう人ではない…ただの魔物だ」
死神はそう言うと影の中へ消えていった。
「死神…あなたは一体…」
ーーー
「ちょっとミリン!あたし達を巻き込まないでよ!」
「ご、ごめん!思ったより威力強くて…」
ゴリを倒した3人は大量の水を浴びてビショビショになっていた。
「いやミリンがリーダーと同じようにしたいのはわかるんだけどね?叫ぶ必要は無かったと思うよ?サクラが庇ってくれなかったらあたしも木っ端微塵だったよ!?」
「ま、まあまあユリ落ち着いて…みんな無事だったんだしよかったじゃない」
サクラがそう言うと2人はそれもそうかといったように言い争いをやめた。
「さぁ、リーダー達と合流しましょう」
サクラの言葉にふたは大いに賛成した。
ーーー
大会から数週間後。
アール王国の王都はコウスケとユウが大会で手に入れた賞金を使って再建し、活気を取り戻していた。
「コースケさん。紅茶がはいりましたよ」
あの事件以来、ユウはひとりで街を救った英雄として街に名を残した。当の本人は自分のファンクラブができていることを知らない。
「ありがとうユウさん。そういえば最近街の人がうるさいけど何かあったの?」
「リーダー…最近ユウは『英雄』とか呼ばれてて色々と疲れてるんだよ…それくらい察しなよ」
コウスケはユリにそう言われると紅茶を口に含んだ。
「おねぇちゃん!はるにもちょーだい!」
「はい、ハルナちゃん熱いから気をつけてくださいね?」
サクラはそんなユウとハルナを眺めると口元を緩めた。
「ユウとハルナって仲のいい姉妹みたいだよね」
「たしかに」
ミリンもそれに首肯すると部屋の扉がバーンと勢いよく開かれた。
「先輩ッ!姫様!我が来たぞッ!」
「帰れ!吉田帰れ!」
「先輩酷くない!?いいじゃん遊びに来たって!」
「これをどうぞ」
ユウはカイトが部屋に入ってきた瞬間、あからさまにテンションを下げるとカイトにお茶漬けを渡した。
「あ、ありがとう姫様…で、なんでお茶漬け?」
「家などに来た人にお茶漬けを渡すというのは早くお引き取りくださいって意味なんですよ」
「へー…って姫様も酷い!?」
可愛らしい仕草で言うユウにカイトが叫ぶと扉のほうからスミレが入ってくるとユウに抱きついた。
「ユウ…あれは現実だよね?もう一回僕に言ってよねぇッ!」
「ちょっとスミレさん近いです…紅茶淹れてきてあげますからちょっと離れてください…」
スミレはしぶしぶ離れるとサクラがそれを睨むように見つめていた。
「ちょっとスミレさん?私のユウに近づきすぎじゃないかしら?」
「サクラさん?僕がユウに抱きついて何が悪いのか教えてもらおうじゃない」
2人がいがみ合いを始めるとそこへユウが紅茶を置いた。
「仲良くしてくださいね?」
「「ハイ…」」
ユウはニッコリと笑うとその場を後にした。
「ユウさん。明日の朝も練習付き合ってくれない?」
「いいですよ。ミリンも誘っておきますね」
コウスケはあれから少し変わった日常を楽しむように紅茶を口に含んだ。
「次の冒険はどこに行こうかな?」
コウスケ、ユウ、優勝おめでとうッ!(挨拶)
みなさんこんにちは。赤槻春来です。戦闘シーンは書くの初めてなので伝わりにくいかもです…(謝罪)
第5章の今回は大会編!コウスケの元の世界の後輩とか魔物の襲来とか…書きたいことをひたすら詰め込んだ章となっております!
今回初登場のカイト!
彼はコウスケの後輩でしたね。(前提)召喚されたのは1年前でコウスケが死んだのはその3年前…先輩と呼んでいるということは歳の差は2つ以下なのでこの世界ではコウスケより年上となっております!(考察)
イケメンなのにコウスケのパーティの女性陣から苦手意識されているという…
コウスケの新しい魔法は自分も巻き込む特大魔法!?それを共用しようとするミリンもマジ乙女…
第6章では今回チラッと登場したあの男が大暴れします!(宣伝)
面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。
感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。
それではみなさん!また後書き部分でおあいしましょう!バイバイ!




