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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第1部.最強の冒険者は誰だ
18/110

意外な参加者

「あたし達に任せな!」

「ゴーレムにはゴーレムだね!」


 ユリとサクラはそう言うと砂の巨人サンドゴーレムに突っ込んでいった。


「コースケさん、私達は観客の避難を!」

「ああ…!」


 コウスケはユウにそう返すと浮遊魔法を使って観客席へと向かった。



ーーー



「おはようございますコースケさん。今日は大会の日ですよ」

「んぁ?おはよう…ユウさん」


 朝、コウスケはユウに起こされるとグッと背中を伸ばした。


「朝食はできてますからはやく着替えてきてくださいね」


 いつもどおりエプロンをしているユウはコウスケにそう言い残すと部屋を出ていった。


「今日か…どんなやつからが来るんだろ?」


 コウスケは着替えながらそんなことを考えていた。



ーーー



「でけぇ…」

「これが会場ですか…」


 朝食を済ませたコウスケ達は大会の開かれる会場へとやってくるとコウスケとユウはその会場の大きさに感嘆の声を漏らしていた。

 会場内は陸上の競技場とどことなく似ていてそれがコウスケの気持ちをより高ぶらせた。


「もうエントリーはしてあるからここからは別行動ね。あたし達は観客席から見てるから」

「頑張ってね!ユウ!」


 ユリとサクラはそう言うとあらかじめとっておいたらしい観客席へと走っていった。


「姪の夫が大会に出るなら全力で応援しなきゃな!」

「ちょっと叔父さん!?なんでいるの!?」


 コウスケとユウが出場者用のゲートをくぐろうとすると背後うしろから何やら騒がしい声が聞こえてきた。

 2人が振り返るとそこではカズヤとミリンが言い争っていた。


「あ、カズヤさん!こんにちは」

「おう、姉ちゃんも出るのか…頑張れよ!あんちゃんも負けんじゃねぇぞ!」


 カズヤは2人に気付くとニッと口を広げてそう言った。


「コウスケ…頑張ってね!ユウも2人ならきっと勝てるよ!」

「おう!絶対勝ってやるからな!」

「絶対…優勝します!」


 2人がそう言うとカズヤとミリンはユリ達のいるほうへと向かっていった。


「そういえばハルナちゃんは?」

「確か…今日は店の手伝いだったはずです…私もできる範囲ではやってきたので終わり次第店長と一緒に来るんじゃないですか?」

「それもそうか」


 2人はそんな言葉を交わしながらゲートをくぐると自分達の控え室へと向かっていった。



ーーー



『さぁ始まりました!最強の冒険者を決める大会…その名も!最強王者決定戦んん!!』


 司会の暑苦しい叫び声とともに7色の花火が上がった。


「えっ…最強王者決定戦?ネーミングセンス無くね?」

「変な名前ですね」


 控室にいるコウスケはユウの淹れた紅茶を楽しみながら放送を聞いていた。


「この名前は数年前に先代の国王がつけたみたいですね…まぁ伝統ということで名前は変えてないのではないでしょうか」


 ユウは紅茶を口に含むとふぅ…と息を吐いた。


「ユウさん…俺達こんなにリラックスしてて大丈夫なの?」

「私達は初戦が午後からだったはずなので今は緊張をほぐしておいたほうがいいと思いますから…何も問題ないと思いますよ」


 2人はそんな会話をすると再び紅茶を口に含んだ。


「…やっぱユウさんの淹れた紅茶美味しいな。だんだん上手くなってない?」

「それはいつも練s…「見つけたぞ!我が姫様プリンセス!」


 ユウが口を開いた瞬間、控室の扉が勢いよく開かれた。

 2人は声のしたほうへと目を向けるとそこにはいつか見たイケメンが立っていた。


「えっと…どこかでお会いしましたか…?」


 ユウが若干ビクついた様子でそう言うとイケメンのうしろからぬっと眼鏡をかけた女が飛び出した。


「失礼しました。あ、お久しぶり!確か…コウスケとユウ…だよね?」


 女がそう言うとユウが思い出したように手を打った。


「あ!確か…スミレさんでしたね?お久しぶりです。…あれ?私達名乗ってましたっけ?」


 ユウの言葉に女─スミレは嬉しそうに顔を緩めた。


「名前なんて会話を聞いてればわかるよ。それより僕のこと覚えたんだね。ここにいるってことは大会に参加するのかい?」

「あ、はい!私達も参k…「スミレ!我抜きで姫様プリンセスと話を進めるでない!」


 ユウが答えようとするとイケメンがそれをさえぎるように叫んだ。


「えっと…このやかましい人は?」


 ユウがキョトンとした様子でイケメンを指差すとイケメンはフンスと胸を反らした。


「我はカイト!異世界より召喚された冒険者なり!」


 イケメン─カイトがそう名乗ると先程まで何か考えていたコウスケが思い出したように声をあげた。


「あーッ!お前…吉田か!お前もこの世界に召喚されたのか!」

「「「えっ」」」


 コウスケの言葉に3人は目を見開いた。


「えっ…覚えてないの…?俺だよ?コウスケだよ?」


 コウスケがカイトに訴えかけるようにそう言うとカイトはしばらく考えるような素振りを見せた。


「いや…まさか早乙女先輩?しかし…先輩は3年前に死んだはず…まさかね…」

「おーい…聞いてる?さっきからブツブツ言ってるけど…やっぱり俺の見間違いだった?」


 カイトはコウスケの顔をジッと見つめるとあわあわと体を揺らした。


「早乙女先輩…?本当に先輩なの?」

「そうだけど…やっぱり吉田たよな?」

「早乙女先輩…ッ!」


 カイトはコウスケに抱きつくとその場で泣き出した。



「落ち着きましたか?」


 ユウが声をかけるとカイトは無言で頷いた。


「で?コースケさん、この男と知り合いなんですか?」

「あー…吉田コイツは元の世界での俺の後輩だよ。中二病だけど根はいい奴だ」


 コウスケがそう言うとユウはカイトをジッと見まわした。


「この男がコースケさんの世界で竜人を名乗ってたんでですね?普通の人間じゃないですか」

「いや…ただそういう設定だっただけだからね?ユウさんが思ってるのと多分というか絶対違うからね?」

「まぁ私はこの男みたいなイケメンは嫌いですけどコースケさんの知り合いなら大丈夫ですかね」


 ユウがそう言うと先程まで静かにしていたカイトが急に電源を入れたかのように元気になった。


「さすが姫様プリンセス!我の魅力に気付くとは!」

「あ、前言撤回します。やっぱりこの人とは分かり合えそうにありません」

「えぇ?ナンデ?ナンデ?」


 汚物を見るような目で言うユウにカイトが声をあげていた。


「それよりもスミレさんもこの大会に出場するんですね。こんなにゆったりとしてますけど試合はいつからなんですか?」

「あー…僕らはシードだから今日はないよ。2人はこれからなのかな?」

「そうなんですよ!私達時間までまだあるのでこれで気持ちを落ち着かせてます」


 ユウとスミレが話に花を咲かせているとそれを見ていたカイトがコウスケに話しかけた。


「先輩…まさかまた会えるなんて思いもしませんでした。あの時と全然変わらないですね」

「あの時?なんの話だ?」


コウスケが首をかしげるとカイトが驚いたような表情を見せた。


「先輩…覚えてないんですか?4年前の12月…先輩の誕生日ですよ」

「4年前?お前と俺が出会ったのは3年前だぞ?なにいってんだ?」


 2人はお互いに顔を見合わせると再び首をかしげた。


「おかしいな…4年前のはずなんだけど…?」

「今はそんなことどうでもよくないか?それよりも俺はあの2人が気にならんだが…」

「あの2人?」


 コウスケが指差すとそこでは楽しそうにお茶しているユウとスミレの姿があった。


「ユウさんはいつも通り…というかスミレさんと初対面じゃない分壁がなく接してるけどスミレさんはなんであんなに顔赤いの?」

「あー…スミレは今あのにお熱だからじゃない?スミレ女にしか興味ないから…あんだけデレデレしてるのも初めて見たけど」

「あれでデレデレしてるのか…」

「先輩は鈍感だからわかんないと思うよ。…多分あの姫様プリンセスも相当な鈍感だと思うけど。あれ以上近づいたら多分スミレは気絶するね。嬉しくて」

「えぇ…」


 2人がそんな会話をしていると前の試合が終わったらしく司会の叫ぶようなアナウンスが流れてきた。


『さぁいよいよ本日の最終試合…ッ!前回準優勝のガリゴリペアに対するのは初出場のペアだぁーッ!』


 ユウは持っていた食器を片付けるとスッと席を立った。


「コースケさん、私達の番です。行きましょう」

「おう!じゃ、また明日な吉田!」


 2人はそう言うと控室を後にした。


「スミレ…さっきからデレデレしすぎじゃない?」

「あんなに綺麗で可愛い女性ひとがいるから悪いんだ…!僕の心はこんなにもドキドキしているのに!」







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