彼の過去と──
「おはようユウさん」
朝、いつもより早く起きてしまったコウスケ早く部屋を出ると厨房から漂ういい匂いにつられるとそこには朝食を作っているユウがいた。
「あ、コースケさん。おはようございます」
ニコッと笑って返すユウにコウスケの心臓が跳ね上がった。
「ゆ、ユウさん…なんでメイド服なの?」
「メイド服…ですか?昨日の夜にユリが『料理するならこれ着て』って言ってたのでこれを着ていたのですが…これがメイド服ってやつなんですね」
服を見回しながらくるくると動くユウはとても可愛いらしかった。
「そういえばユウさん。今日この後依頼達成の報告しに行きたいんだけど…一緒に来てくれないかな?影移動を使えばすぐに着くからね」
「あ、わかりましたミリンはたしかにユリ達と一緒に街をまわるって言ってましたからそのときでいいですか?」
一旦手を止めたユウは確認するように問いかけた。
「大丈夫だよ」
「では朝食ができたらまた呼びに行きますね」
ユウはコウスケにそう言うと調理を再開した。
「ん。了解」
コウスケは厨房を出ると自室へと戻った。
「ユウさんっていつもこんな早いのか?どうしよ…もう一回寝ようかな…」
ベッドに転がったコウスケはひとり呟くとゆっくりと瞳を閉じた。
「コウスケ!起きろー!」
「ぐぇ…」
ドスッと言う音とともにコウスケの腹に重い一撃が入った。
「み、ミリン…朝一番の溝打ちは辛い…」
コウスケが目を開けるとそこにはニヒヒと笑うミリンがいた。
「いやぁ…コウスケが思ってた以上にぐっすり眠ってたからさぁ」
「だからって溝打ちはないよ…あぁ…ユウさんに起こしてもらうつもりだったのに」
コウスケはあからさまにガッカリするとミリンがコウスケの耳を引っ張った。
「いだいっ!痛いってミリン」
「なにぃ?わたしじゃ不服なわけぇ?」
妖しい笑みを浮かべるミリン。
「いやっさっきのは割と本心…あ」
「なによ、せっかく起こしにきたのにっ!」
「ぐはっ」
真っ赤になったミリンの顔を見た瞬間、コウスケは意識を失った。
ーーー
「──で、気絶したリーダーを運んできたわけね」
「はい…」
食卓に集まっていた4人はコウスケを担いだミリンを見ると苦笑した。
「ほら、コウスケ。起きて」
「…んぅ」
ぺちぺちとミリンがコウスケの顔を叩くとコウスケはゆっくりと目を覚ました。
「コースケさん、もう朝食出来てますよ」
ユウがそう言うとコウスケは跳ね起きた。
「おはようみんな!よし!後は食べよう!」
「むぅ…なんか釈然としない…」
コウスケの変わり身の速さにミリンは頬を膨らませながらも席についた。
『いただきます』
6人は手を合わせると朝食を食べ始めた。
ーーー
「それじゃああたし達は行ってくるから」
「いってらっしゃい」
朝食を済ませると支度をしたミリン、ユリ、サクラ、ハルナの4人は街へと出かけていった。
コウスケとユウはそんな4人を見送ると顔を合わせた。
「それでは私達も行きましょかコースケさん」
普段着に着替えたユウはコウスケとともに影の中へと消えていった。
「おつかれ様でした。こちら報酬です」
コウスケは受付嬢から報酬を受け取るとユウのほうへと向かった。
「おつかれ様ですコースケさん」
「いや…俺はこの依頼実質なにもやってないんだけどね…」
コウスケが苦笑すると受け取ったギルドカードを見たユウが驚いたような表情をした。
「ん?どうしたのユウさん」
「コースケさん…あなたは本当に人間なんですか?」
「えっ?」
ユウの予想外の一言にコウスケは思わず聞き返す。
「ユウさん。それはどういうこと?」
「だってコースケさんこれを見てくださいよ」
ユウはそう言って2枚ののギルドカードを前に突き出した。
「これは…俺とミリンのカード?」
「そうですよ。前から感じてましたが2人は本当に人間なんですか?人間がスキルを習得した地点でおかしいんですよ」
コウスケはそのカードをよく見るとどちらもスキルの欄に〈イメージの具現化〉と刻まれていた。
「本当だ…」
コウスケが呟くとユウは頷いた。
「まぁ別に、コースケさん達が人間じゃなかったとしても私達の関係にはあまり影響はないので大きな問題ではないのですが…やっぱりどうしてスキルを習得できたのか知りたいです。本来、〈イメージの具現化〉は私達竜の固有スキルです。なんで人間のお2人がそれを習得したのかが一番気になります」
コウスケはしばらく考えこむとひとつ思い当たることがあった。
ーーー
──コウスケが召喚された日
「3日後『水晶の洞窟』にいる人物を連れ出してほしい」
竜人はそう言うと頭を下げた。
「いや…べつにいいけど俺は力もなにも持ってないし…」
コウスケがそう言うと魔人が大量に金貨の入った袋と竜の装飾の入った一本の黒い剣を渡してきた。
「これは?」
「お前がこの世界で生きていくために持っていけ」
竜人はそう言うと魔人もそれに続くように口を開いた。
「あなたに私達…いや竜と魔族の力を預けるわ。きっとなにかの役に立つから」
2人はコウスケの頭に手を置くとコウスケはなにかが流れ込んでくる感覚を覚えた。
「俺達はまだやることがあるからこれで失礼するぞ」
「ユウを…この世界をお願いね。できればもう会わないことを願うわ」
2人はそう言い残すと影の中へと消えていった。
ーーー
──そして現在
「この力はある人達から託された力なんだ。ユウさんを…この世界をお願いってね。未来からやって来たらしいけど」
コウスケがそう言うとユウは顔を曇らせた。
「未来から?時間遡行魔法を使えば…私?世界?一体どうなって…」
「どうしたの?ユウさん」
コウスケが聞くとユウは顔を上げるとニコッと笑った。
「いえっ…なんでもないですよ」
「そう?ならいいんだけど…ミリンはどうしてスキルが発現したんだろう?」
コウスケが考えるような仕草をすると「あ」と何か思い出したようにユウが声をあげた。
「そろそろ戻りましょう。昼食のの支度をしないといけないので。それに…ミリン本人に聞いた方が早いと思います」
「それもそうか」
コウスケそう言った瞬間、コウスケは影に引きずり込まれた。
「未来の私ですか…」
ユウはそう呟くと影の中へと消えていった。
ーーー
「ただいまぁー」
「お、ちょうど帰ってきた」
ユウが昼食を並べていると外へ出かけていたミリン達が帰ってきた。
「昼食できてますよ。手を洗ったら席についてください」
ユウがそう言うと4人は洗面所へと向かっていった。
「この世界には科学もあるんだな」
「コースケさん、科学ってなんですか?」
コウスケが感心したように呟くと向かいの席についたユウが首をかしげた。
「えっ…じゃあ水道とかガスとかどうなってんの?」
「すいどー?がす?」
コウスケはユウが戦闘以外の知識がほとんどないことを忘れていた。
「あ、いやそれはえつと…ほら、厨房は水が出るところとか火が出るところとかあるじゃん。あれだよ」
コウスケがそう言うと手を洗い終えたミリン達が席に座った。
「あれは魔道具だよ。魔法が付与してあるから水とか火が出るんだけど…コウスケ知らなかったの?」
ミリンがユウに説明するように言うとユウは理解したように頷いた。
「いや…だって俺…ここに来てからまだ1か月もだってないし…」
コウスケ言うとミリンは納得したような顔をした。
「それより早くご飯食べよう!2人で通じ合ってるみたいな確認はしなくていいから」
コウスケとミリンの様子を眺めていたユリが少しイラついたようすで言った。
「そ、そうだな。それじゃあ食べるか」
2人の世界から戻されたコウスケはそう言うと6人は手を合わせた。
『いただきます』
ーーー
「そういえばユウに渡しておこうと思ってたものかあったんだ」
昼食を終え、みんなが休んでいると食器を洗っているユウのもとにミリンがやってきた。
「どうしたんですかミリン」
ユウは作業をしながら言った。
「ユウと初めてあった日にわたしがユウの服を洗ったじゃない?」
ミリンはユウを手伝うように手を動かした。
「そうですね…あ、それはそっちの棚に置いてください」
「おっけー。それでそのときの服の中に入ってて渡し忘れてたものがあるんだよ」
ミリンがそう言うと作業して終えたユリは手を拭いた。
「渡し忘れたもの…ですか?」
「そう…ユウって彫ってあったから間違いないと思うんだけど…」
ミリンはそう言うと銀色に輝く何かを取り出した。
「これは…指輪ですか?」
「ユウのじゃないの?ほら、裏のとことに『ユウ』っていう字と『イヨ』っていう字が彫ってあるでしょ」
リングの裏側にはたしかに『ユウ』という字と『イヨ』という字が彫ってあった。
「イヨ…そうですね…多分私のだと思いますけど…」
「思います?どういうこと?」
「それは少なくとも『今の』私のものではないです。ただ…私の服に入っていたなら私のもので間違いないです」
ユウの言葉にミリンは首をかしげた。
「へんなの…まぁとりあえずこれはユウに渡しておくね。それじゃ!」
ミリンはそう言うとそこから去ろうとした。
「あ、ちょっと待ってください!」
「ん?どうしたの?」
ユウは勢いのあまり声が大きくなってしまった。
「ミリンは…人間なんですか…?」
「えっ」
ユウの言葉が意味わからないといったようすでミリンは固まった。
「わたしは正真正銘の人間だよ?何いってるのユウは…」
呆れたように笑うミリンにユウは首をかしげた。
「ではなぜ…スキルが発現したのですか?」
「そんなぁ…わたしがスキルを発現できるわけないじゃん!何いってるのユウは…今日ちょっとおかしいよ…?」
ミリンは本気でユウを心配し始めるとユウは困ったような顔をした。
「いや…わからないならいいんですけど…」
「そう?体調悪いんだったら遠慮なく言っていいからね」
ミリンはそう言い残すとその場を後にした。
「ユウ…それは一体どういうこと?」
「サクラいつのまに来たんですか」
ユウが部屋に戻って掃除をしているといつのまにか後ろにいたサクラに押し倒された。
「私…聞いちゃったんだ。ユウとミリンが会話してるとこ…その指輪は何?イヨって誰?教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて──…」
「ちょっ…サクラ!?何やってんの!?」
2人が扉のほうを向くとそこには驚愕の色に顔を染めたユリが立っていた。
「ユリ…ちょっと助けてください…」
ユウが涙目になってそう言うとユリはサクラの首に手刀を入れた。
「ぅ…」
サクラはガクンと倒れるとユウの上に覆いかぶさった。
「ユウ…一体何がどうなってんの?」
「実は…」
ユウはサクラを抱えながら起き上がった。
「…でそこにあたしがやってきたと」
「そうです」
ユウはミリンとの会話から今までの経緯を話すとユリは呆れた顔をしていた。
「そのイヨってのにはあたしも引っかかるけど…サクラが暴走したのもなんか納得」
「納得ですか?」
ユウはユリの言葉の意味を分かりかねたのか首をかしげた。
「…この鈍感」
ユリはサクラを担ぐとそう言い残して部屋を出ていった。
「そういえばユリはなんで部屋にきたのでしょう?」
ユウは扉のほうを眺めながらひとり呟いた。
ーーー
翌朝、コウスケは早く目を覚ました。
「なんだ…この音…?」
コウスケは重い瞼をこすると部屋を出た。
屋敷を出ると少し離れた森の一角からドォン…ドォン…と小さな爆発音が聞こえてきた。
「敵襲か…⁉︎」
コウスケはろくに装備も持たないまま音のするほうへと駆けていった。
「あ、コースケさん。おはようございます」
コウスケが音のする場所に着くと銃を構えたユウがそこにいた。
「おはよう…じゃないよ!ユウさん、朝早くからこんなところで何してんの?昨日同じくらいに起きた時はやってなかったのに」
「何って…見たとおり特訓ですよ。ここ最近私が知らない強い魔物が増えてきているので私も鍛えないとと思いまして」
笑顔でそう言いタオルで汗を拭うユウにコウスケは何も言い返せなかった。
「あ、コースケさんも一緒に特訓します?『イメージの具現化』をうまく使えるようになると思いますよ!」
「えっ」
ユウは持っていた銃を影に投げ捨てると屋敷のほうへと歩き出した。
「あっ待ってよユウさん」
コウスケもユウを追うようにその場を後にした。
ーーー
『いただきます』
ユウはシャワーを浴び、朝食の支度をすると起きたミリン達が集まってきた。
「ユウ、昨日はごめんなさい。つい我を忘れてしまって…」
食事が始まるとサクラが申し訳なさそうに口を開いた。
「大丈夫ですよ。目に光が灯ってない状態で押し倒されたのは驚きましたけど…」
あははと笑うユウにサクラが困った顔をするとその隣に座っていたハルナが口を開けた。
「おねぇちゃん!そのイヨっていうのはおねぇちゃんの知ってる人なの⁉︎」
「まぁ…多分知り合いですよ…その人であればもう10年も前の話ですけど…他の人って可能性もありますけどね」
少し悲しそうな顔をしたユウにそれ以上追及する人はいなかった。
朝食を済ませたコウスケ達は荷物をまとめると玄関先に集まっていた。
「では荷物は私が先に宿のほうへ送っておきます。昼食の時間までは自由時間ということでいいですか?」
ユウがみんなの荷物を影の中に入れながらそう言うとコウスケ達は首肯した。
「では昼食の時間にはここに集合ということで」
ユウはそう言うと掃除用具を取り出した。
「じゃあわたし達は街に行ってくるわ。コウスケも来る?」
「いや…遠慮しとく。俺もやりたいことがあるからね」
「そう…」
ミリン、ユリ、サクラ、ハルナの4人は門を出るとそのまま街へと歩き出した。
「ユウさん…なんでそんなに悲しそうな顔をするの…?」
4人がいなくなると静かに掃除をしているユウにコウスケは声をかける。
「…」
「ユウさんはイヨって人がそんなに気になるの?」
コウスケの言葉にユウは動きをピタリと止めた。
「…なんで…なんでそんなに私に構うんですか!私のことなんてほっといてくださいよ!」
珍しく声を荒げたユウの顔は溢れんばかりの涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「なんでじゃねぇよ!なんでそんな悲しい顔をするんだよ!俺達はそんなに信用ねえのかよ!…何か…あれば…頼ってくれたって…いいじゃねぇか…」
コウスケは叫んだ。喉は痛いくらいに乾き気づけば涙が下垂れ落ちた。
そして2人はしばらくその場で泣いていた。
「…あの」
「…ん?…どうしたのユウさん」
先に口を開いたのはユウだった。
「話…聞いてくれますか」
「…ああ」
ユウはゆらゆらと窓側へ歩くと明後日の方向を向いた。
「もう…10年前の話です…あれは──」
コウスケはユウと同じ方向を見つめユウの話へと耳を傾けた。
ーーー
──10年前
「ほらっユウーこっちこっちぃー!」
灰色の長い髪を揺らしこちらに手を振る7歳くらいの金色な瞳をした少女。
「待ってください〜…」
赤みがかった長い茶髪をした7歳の少年はその後を追うように少女のもとへ駆け寄った。
「もう、ユウ遅い〜」
「そ、それはイヨがフライングするからでしょう!」
少女─イヨは少年─ユウの手を取るとその場を駆け回った。
「相変わらず仲良いね2人とも」
「あ、ユイ姉!」
ユイと呼ばれたユウと同じ髪の色をした短髪の少女は2人のもとへ歩いてきた。
「姉さんそんな顔をしてどうしたんですか?」
ユウはユイの顔を覗き込むとユイは焦ったように首を振った。
「イヨちゃんはやっぱり家に戻りたくないの?」
ユイがそう言うとイヨは俯いてしまった。『竜の里』と呼ばれるこの村はとてつもない濃霧に包まれた峡谷である。崖のいたるところには大きな穴が開いており、多くの竜がそこに住んでいる。
「あんな場所…二度と帰りたくない…」
「そう…」
ユイとイヨはそんな会話をするとお互い無言になった。
「私はイヨに帰ってほしくないです…」
「大丈夫だよユウ。俺達もいるから」
ユイはユウの体を抱きしめた。
「あ、ユイ姉ズルイ!私もユウにギュッてするぅ!」
イヨはユウに抱きつこうとするが開いている場所がなく、わなわなとしていた。
「そろそろお腹すいたし戻ろう」
正午ごろになるとユイの一言に今までじゃれていた2人がピタリと動きを止めた。
「「ご飯!」」
「はいはい…じゃあ一緒に行こう」
ユイはユウとイヨの手をそれぞれ繋ごうとしたがイヨはそれを振り払うようにくるりとターンするとユウの空いている腕にギュッと抱きついた。
「ベーだ」
「このアマ…」
「痛い!姉さん、右手強く握らないで!」
三人はそんなやりとりをしながら洞窟へ入ろうとした。
「──敵襲だ!逃げろお前ら!」
そんな声と共に洞窟の中から沢山の竜が飛び去っていった。
「何があったの父さん!」
ユイは手を離すと洞窟の奥へと走っていった。
「あ、待ってください姉さん!」
「待ってユイ姉!」
2人はユイを追いかけ中に入るとそこには赤竜・黒竜・白竜がユイを庇いながら大量の魔物と戦っていた。
「父さん!叔父さん!叔母さん!」
ユウが叫ぶと赤竜がそれに気付いたのかユイを掴むとユウのもとへ飛んできた。
「何が起きてるんですか父さん」
ユウが早口で言うと赤竜は魔物のほうを見ながら口を開いた。
「魔物の大群が押し寄せてきたんだ。お前たち3人は早く逃げろ。ここは我らがなんとかしよう」
赤竜はそう言うと魔物のほうへ火を吐いた。
「3人ともこっちよ早く!」
3人の後ろから女性の声が響いてきた。
「母さん!」
ユウ叫ぶと女性のもとへ駆け寄った。
「ここはお父さん達に任せて逃げましょう。ユイとイヨちゃんも早く!」
ユイとイヨは顔を合わせると女性とユウを追うように外へ出た。
4人が森の中を駆けているといつのまにか大量の魔物に囲まれてしまっていた。
「俺と母さんだけじゃ倒しきれそうにないな…」
「ええ…でもやるしかないわ!ユウ!イヨちゃんを守ってあげて!」
女性は2本の短剣を、ユイは鋭利な鎖に繋がれたペンデュラムをそれぞれ構えると、魔物の群れへと突っ込んでいった。
「さあ戻りましょうイヨ様」
「ユウ!助けーむぐっ!」
ユウの後ろから男の声が聞こえると同時にイヨの叫び声が聞こえた。
「イヨ!」
ユウが振り返ると気絶したイヨを担いだ白衣の男が立っていた。
「…その尻尾、竜か。なぜ存在しないはずの竜人がここにいる」
男が呟くと別の足音がユウのもとへと向かってきた。
「エイズ。イヨ様は捕まえたか」
「こっちは片付いたよぉ〜」
顔の固そうな大男とやたらテンションの高い女が気絶した女性とユイをそれぞれ抱えてやってきた。
「母さん!姉さん!」
ユウは2人を目にすると大男のほうへと体当たりをした。
「小僧…この女共がどうなっても知らんぞ」
大男は片手でユウを抑えつけると低い声でそう言った。
「エボラ〜そのへんにしとけば〜?この女共もなんかの役に立ちそうだし早く帰ろ〜よ〜」
「ペストは少し黙れ。…小僧、命拾いしたなこの竜人と人間の女は貰っていく」
大男はユウの頭を掴むと近くの大木へと投げた。
「がっ…はっ…」
大木にぶつかったユウは吐血しながら地面に落ちた。
「ルイン様の元へ帰るぞエイズ、ペスト」
「ちぇ〜りょ〜かぁ〜い」
「…わかった」
大男の声に続き女と白衣の男は大量の魔物を引き連れてその場を離れていった。
「…イヨ…母…さん…姉…さ…ん…」
ユウは朦朧とする意識の中右腕を伸ばすもそこで意識を失った。
ーーー
──現在
「──それで…気がついたら父さんの背中の上で…コースケさん達が来るまで水晶の洞窟に住んでいたんです」
ユウは大粒の涙を流しながらそう語った。
「私は…守れなかったんです…母さんも…姉さんも…初恋の人も…」
「ユウさん…」
ユウは涙を拭うとコウスケのほうへと向き直った。
「イヨは…私の初恋の相手です。2年近く一緒に暮らして…守れなかった人です…コースケさん、この話は他の人には言わないでください」
「なんでだよ!」
悲しい笑顔でそう言うユウにコウスケは反射的に声をあげた。
「なんで…ユウさんはそう言うんだよ…俺達だって仲間じゃないか…なんでそんな…悲しい顔をしてんだよ…俺達を…俺を頼ってくれよ…」
コウスケは止まらぬ涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら静かに叫んだ。
「コースケさん…私は…私はあなたを頼っていいんですか…?…大切な人を守れなかった私は──」
「いいよ!頼ってくれよ!俺達だって大切な仲間じゃないか!なんでひとりで抱え込もうとするんだよ!」
コウスケは声を張り上げるとブツブツと言ったユウの声がピタリと止んだ。
「俺を…頼ってくれユウさん。俺だって何をできるかわかんないけど…話さないよりは楽になるぞ」
コウスケが優しい声でそう言うとユウはバタリと倒れ込んだ。
「っ!?ユウさん!しっかり!」
「大丈夫だ、安心しろ。ただ安心して気絶しただけだ」
コウスケがユウを抱き上げると聞いたことのある男の声が聞こえた。
「『竜人』っ…」
「久しぶりだなコウスケ。1か月ぶりか…」
「竜人…何しにきたんだ、こんなときに」
コウスケは竜人を睨みつけるが竜人は気にした様子もなく話を続けた。
「ユウはお前を信用した。だから俺はもう一つお前に教えることがある」
「教えること?」
コウスケは目つきを戻した。
「その指輪は俺達が未来から持ってきたということだ」
「指輪…」
コウスケはユウの手に握られている指輪を見つめた。
「これからもユウの支え…いや、俺の友人としてよろしく頼む」
コウスケが顔を上げるとそこに竜人の姿はなかった。




