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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第1部.人と亜人と思惑と
15/113

街の現状



「おい!西のほうで魔物が現れたぞ!はやく建物の中へ避難しろ!」


 コウスケ達が武器屋を出ようとすると外にいた人々が雪崩のように建物の中へ入ってきた。


「魔物!?じゃあ俺達が行かなきゃ!」


 コウスケはそう言い、その場を動こうとするとミリンにその手を掴まれた。


「待ってコウスケ。一体この人混みからどうやって出ようっていうの?」


 ミリンが言い終えると2人は周りの客に押しつぶされてしまった。


「リーダー、ミリン、この前貰ったスマホとやらを使ってユウを呼び出したらどう?」


 ミリンにしっかりと抱きついていたサクラは人混みに埋もれながらも自らのスマホを取り出した。


「よし、とりあえずユウさんと連絡をとろう。人混みがなくなるまで魔物とも戦えないしな…」


 コウスケはサクラの手からスマホを取ると電話をかけはじめた。


「頼む…繋がってくれよ…」


 何気に初めて使うので若干心配になるコウスケだった。



ーーー



「もう、大丈夫そうですか?」


 ユウは少女が泣き止むと、優しい声で問いかけた。


「うん…ありがとう。優しいおねぇちゃん」


 少女はゆっくりと顔を上げると泣き腫らした顔のままニコッと微笑んだ。

 ユウは微笑み返すとスッと立ち上がった。


「自己紹介が遅れました。私はユウ。魔物討伐のためにアール王国から来た冒険者ですよ」


 ユウはぺこりとお辞儀をすると少女はそれに習ったように立ち上がった。


「はるの名前はハルナっていいます。えっと服屋のむすめです」


 少女ーハルナはぺこりとお辞儀をすると顔を上げた。ユウは安心させるようにハルナの頭を頭を撫でるとハルナは狐のような尻尾をブンブンと振った。


『ブブブ…ブブブブ…』


 不意に、ユウのスカートのポケットにあるスマホが鳴り出した。


「ハルナちゃん、ちょっと待ってね」


 ユウはそう言うと慣れない手つきでスマホを操作し、電話に出た。



ーーー



『もしもし?』


 スピーカー越しにユウの声が聞こえてきた。

 コウスケ達はスピーカーモードにしたスマホを覗き込んでいた。


「よかった繋がった…」


 コウスケが安心しているとミリンとサクラは「すごい」「本当にユウの声が聞こえる」などと驚いている様子だった。


『どうかしたんですか?』


 ユウの不思議そうに尋ねる声が聞こえてくるとサクラが口を開いた。


「あ、ユウ。今どこにいるの?」

『あー…ちょっと色々ありまして…武器屋から西にちょっと離れた場所にいるんです』

「ん?西?」

『はい、そうですよ?どうかしたんですか?』


 コウスケの呟きが聞こえていたのか不思議そうにするユウの声が聞こえてきた。


「あ、いや…ユウさんに何もないならいいんだけど…」


 コウスケがそう言うとユウの声が聞こえてきた。


『コウスケさん達は今武器屋にいるんですか?』

「あ、うん。そうだよユウさん」

『わかりました。ちょっとだけそこで待っててもらえますか?状況は後で説明するので。すぐいきますね』


 ユウはそう言うとプツッと通話が切れた。


「ユウさん、急いでるみたいだけどなにかあったのかな?」



ーーー



「──すぐいきますね」


 電話を切ったユウはスマホをしまうとハルナのほうに向き直った。


「おねぇちゃん。今のは?」


 ユウは不思議そうに尋ねるハルナの頭を撫でると口を開けた。


「あれは遠くにいる私の仲間と話せる魔道具ですよ。…それよりもハルナちゃん。お父さんとお母さんはどこだかわかりますか?送ってあげますよ?」


 ユウがそう言うとハルナは暗い顔をして俯いてしまった。


「お、お父さんも…お母さん…もっ…さっきの魔物…にっ…殺されちゃって…」


 ハルナは再び泣き出してしまった。


「あ、ご、ごめんなさい!私…そんなこと知らなくて…」


 ユウはあたふたしながらそう言うとハルナをギュッと抱きしめた。


「あの…もしよければ…おねぇちゃんについていっていいですか…?」


 鼻声で涙を抑えながら言うハルナにユウは「私でよければ」と返すとハルナは一瞬、嬉しそうな顔をすると疲れてしまったのか眠ってしまった。

 ユウは寝てしまったハルナをおんぶすると影の中へと消えていった。



ーーー



「この程度の魔物では歯も立ちませんか」


 先ほどまでユウがいた廃墟のような町にローズが『出現』した。


「エイズ。貴方が作ったこの魔物…弱すぎます。わざとですか」


 ローズが感情のない声でそう言うといつのまにかローズの背後にいたエイズと呼ばれる白衣の男は焦るように言った。


「い、いえ…そんなことはしておりません」

「そう。なら、次はないわ。こんな実験動物おもちゃで遊んでる暇があるなら自分でやりなさい。でなければ父様にこのことを報告しますよ」


 ローズは表情や声のトーンも変えずにそう言うと、エイズは顔を真っ青にした。


「わ、わかりましたローズ様。このエイズ…必ずや成果を出してみせましょう」


 ローズはそれに一言も返さず、空気に溶けるように消えていった。


「竜人か…ホルマリン漬けにしてやるぜ…」


 エイズは魔物の残骸を拾うとその場を後にした。



ーーー



「おまたせしました」

「うわぁっ!…ゆ、ユウさん⁉︎」


 ユウと電話を終えてしばらくすると店に集まっていた人々がぞろぞろと店を出ていった。

 店内のスペースに余裕ができたとき、影移動を使ったユウがコウスケの影からヌッと出てきた。


「どうしたんですか?そんなに驚いて」

「いや、いきなり後ろに現れたら流石にビビるよ…」


 ユウは首をかしげているとユウの姿を見たサクラは口を開いた。


「ねぇユウ。なんで女の子を背負ってるの?」

「えっと…まぁ詳しい事情はここでは話せないので…とりあえず移動しませんか?そうしたら話しますから」


 目を泳がせながら言うユウを見て3人は顔を見合わせると店を後にした。




「で、デカイ…」


 サクラに先導され、ユリの家に着いたコウスケ達は門の前で絶句した。


「そういえばユリの親って地主なんだっけ」

「どおりで家が大きなわけですね」

「えっなにそれ初耳なんだけど」


 ミリンとユウがそう言うとコウスケは自分だけ知らなかった情報に驚愕した。


「まぁガールズトークの内容を男のコウスケが知ってても怖いだけなんだけど…」

「あの、ミリン。私も男なんですけど…」


 2人がそんなやりとりをしていると門を開けたサクラが敷地内へと入っていった。


「もう入って大丈夫って連絡きてるからはやく入っちゃって」


 サクラはそう言うと3人から門をくぐったのを確認して門を閉めた。



 コウスケ達が屋敷内に入ると慌てた様子でユリがやってきた。


「あたしの家にようこそ…ってここは別荘だけど。夕飯ができるまで自由にしてて…ってユウ。そのどうしたの?」


「いや…この今身寄りがいないらしくて…本人の希望で私が今保護してるんです」


 ユリはユウの背中で眠るハルナの顔をじっと見つめた。


「…この、服屋のハルナじゃない?」


 ユリがそう言うとサクラも同じようにハルナの顔をじっと見つめた。


「本当だハルナだね。なんで気づかなかったんだろ」

「まぁ…ハルナなら心配ないわ部屋が余ってないから今夜は誰かと同室じゃないとだけど…なんとかなるでしょ。起きたら話を聞いてみればいいし」


 ユリはそう言うと「夕飯できたら呼ぶからと言い残してその場を去っていった。


「とりあえず私の部屋に運びますね。…サクラはどうします?ミリンは部屋の整理するとかコースケさんはお風呂に入るって2人とももう先に行っちゃいましたけど」


 サクラは「うーん…」と少し考えたようなしぐさをすると口を開けた。


「じゃあユウの部屋に行こうかな。ハルナも起きたときに知り合いがいたほうがいいでしょ」

「そうですね」


 2人はそう言うとユウの部屋(割り当てられたもの)へと足を運んだ。



ーーー



「あれ?ミリン。どうしたのタオルなんか持って」


 ユウとサクラは部屋へ向かっている途中、廊下を歩くミリンと鉢合わせた。


「いやー…あの人混みのせいで汗かいちゃったから荷物だけ置いて先にお風呂入っちゃおうかなぁーって思ってね。…それで…お風呂ってどこ?」


 予想外の言葉に2人はしばらく固まっていたがすぐにサクラが口を開いた。


「お風呂ならこの先まっすぐいった突き当りにあるよ」

「ん。わかった!ありがと!」


 ミリンはそう言うとスキップしながら風呂場へと向かっていった。


「ん?あの、サクラ?お風呂って今コースケさんが入ってませんか?」


 ユウか聞くとサクラはサムズアップしながら答えた。


「たまには夫婦水入らずの時間がないとね!私ってばやるぅ!」

「は、はぁ…まあそれもそうですね」


 2人は再びユウの部屋へと歩きだした。



ーーー



「あぁ〜染みるぅ〜」


 コウスケは浴槽に浸かっていると脱衣所のほうから何やら鼻歌のような声が聞こえてきた。


「えっ…これは定番的なあれかな?」


 コウスケがそうな淡い期待をしていると扉がガラッと開かれた。


「おっ風呂ぉー!」


 そう叫びながらミリンが入ってきた…全裸で。

 コウスケは思わずその場で立ち上がってしまった。


「えっ…み、ミリン⁉︎」

「こ、コウスケ⁉︎なんでいるの⁉︎」


 2人はお互い顔を見合わせると固まった。


「うん。一旦落ち着こう俺…ってなれるかぁっ!なんで全裸なんだよ!丸見えだろ!」

「ま、丸見えっ⁉︎いやいやっ!コウスケこそなんでいるのよ!知ってたらタオルくらい巻いたのに!」


 2人は混乱するとある結論にたどり着いた。


「あれ?俺、ユウさんに風呂入るって言ったはずなんだけど…」

「わたしもユウとサクラにお風呂のこと聞いたんだけど…これってもしかして…」


「「はめられた⁉︎」」


 2人の叫び声は浴室に反響した。



ーーー



「あの2人…うまくやってますかね?」

「さぁ?大丈夫なんじゃない?あの2人、相思相愛っぽいし」

「コースケさんがミリンをどう思ってるかはわからないですけどね…」


 部屋に入った2人はハルナをベッドに寝かすとそんなやりとりをしていた。


「そういえばユウ。その服着替えないの?スカートとか血が付いてるけど…本当に何があったのよ…」


 ユウはサクラに言われると自分の服を見まわした。


「ほんとですね。ちょっとここで待っててください。私、ちょっと着替えてきます」

「ん。了解」


 ユウはそう言うと自分の影の中へ入っていった。


「影操作ってこんなこともできるのね」




「…んぅ」

「あ、起きたみたい」

「おはようございますハルナちゃん」


 ハルナは目を覚ますとベッドに寝かされていた上半身を起こすと目をこすった。


「ここは?」


 ハルナはユウとサクラを目にすると首をかしげた。


「ユリの家だよハルナ。私と前に来たことあるんだけど…わかる?」


 サクラがそう言うとハルナは思い出したのかコクコクと首を振った。


「サクラさん、久しぶり」


 ハルナはそう言うとユウとサクラの顔を見た。


「おねぇちゃんとサクラさんって知り合いだったんだね。はるは知らなかったよ!」


 退屈のない笑顔でそう言うハルナに2人は思わず頭を撫でた。


「私達はとりあえず3日くらいはここに滞在する予定ですが…ハルナちゃんはそのあとどうしますか?ここに残るなら私は引き取ってくれる人を探しますけど…最終日にまた聞くので考えておいてください」


 ユウの選択を委ねるような言葉を聞いたサクラは首をかしげた。


「ユウ、ハルナになにかあったの?」

「あ、それは後で報告のときに話しますよ。ハルナちゃんには少しだけ辛い思いをさせてしまいそうですけど…」


 ユウはそう言いながらもハルナの頭を撫で続けた。ハルナは気持ちよかったのかユウに体重をかけながら再び眠っていた。



ーーー



「…で、なんで俺はミリンと一緒に風呂に入ってるの?」


 風呂場にいるコウスケもミリンは仲良く湯船に浸かっていた。


「さぁ?でもいいんじゃない?わたしもいやではないし」


 ミリンはそう言うとコウスケの背中にピトッとくっついた。


「あ、あのぉ…ミリンさん?なにをしてるのでしょうか?」

「んー?コウスケにくっついてるだけー」


 コウスケが若干前かがみになりながらそう言うとミリンはより一層身体を密着させてきた。


「も、もう俺あがるからっ!」


 コウスケだって年頃の男の子なのだ。コウスケはそれを悟られないように浴槽から出るとそのまま脱衣所へと向かっていった。


「もうっ…あと少しだったのに…」


 ミリンはひとり呟くとブクブク鼻まで浸かった。



ーーー



 夕食の支度が終わったユリはそれを食卓へ運ぼうとするとコウスケ達は既に揃っていた。


「おまたせ!あたし特製のカレーだよ!」


 ユリそう言って皿を並べた。


「あ、あのユリ?なんで私のだけみんなと違う具材なんですか?」


 ユウが自分に出された料理を見てユリのほうを向くとユリは目をそらした。


「本当だ。ユウのやつだけ精のつくもの多くない?」


 サクラがそう言うとユウはハテナと首をかしげるがユリは顔中に脂汗あぶらあせを浮かべていた。


「ハルナは小柄な割に胸大きいから…うぅ…」


 ユリがひとり自己嫌悪に陥っているとサクラがパンパンと手を叩いた。


「まぁいいやそれより食べよ!」

 サクラがそう言うと6人は手を合わせた。

「「「「「「いただきます」」」」」」


「そういえばユウさん、今日はなにがあったの?それとナチュラルにユウさんの膝の上に座ってる女の子は誰?」


 コウスケは夕食を食べ終えるとユウのほうを見て口を開いた。


「あ、そういえばそうでしたね…えっと…」


 ユウはそう言うとハルナの頭を撫でながら一人で行動していたときのこと(ただし、魔物の容態にはふれていない)を話した。



「──ということです」

「それでこのがいるわけね。あ、そうだ自己紹介してなかったな。俺はコウスケ。このパーティのリーダーだ」


 コウスケはハルナのほうを見ると胸に手を当ててそう言った。


「はるはハルナっていいます。コウスケ?おにぃちゃん、よろしくお願いします」

「お、お兄ちゃん…だと…⁉︎」


 コウスケがひとり、心を打たれているとにっこりと笑顔を浮かべるミリンに足を踏まれた。


「いったぁ!」


 ミリンはコウスケのそんな声に耳を傾けず、グリグリと笑顔で足を踏んでいた。


「わたしはミリン。よろしくね」

「ちょっとミリン…ホントに痛いからやめ…」


 4人はそんな2人の様子を温かい目で見守っていた。



ーーー



「それで、街の様子は?」


 ユウ、ユリ、サクラ、ハルナは風呂に入るとユウの部屋に集まっていた。


「んーあたしのほうでも聞いたんだけどみんな魔物が現れたって慌ててただけでリーダーが欲しいような情報は得られなかったかな」


 ユリは少し苦笑を浮かべながらそう言うとサクラとミリンも同様に首を振った。


「ハルナちゃんはわかりますか?その魔物のこと」


 ユウがハルナのほうを見るとハルナは不思議そうに首をかしげた。


「えっ…魔物っておねぇちゃんが倒してたよ?」

「「「「「えっ」」」」」


 ハルナの一言に5人の声が重なった。


「ユウが倒した魔物ってオオカミみたいな姿してたの?」

「は、はい…そうですけど…」


 ミリンの言葉にユウが返しているとギルドカードを確認したコウスケが「あ」と声をもらした。


「本当だ。依頼達成クエストクリアになってる」


 ユウ達がそれを覗き込むとそこには確かに『依頼達成クエストクリア』の字が刻まれていた。


「じゃあもうわたし達がやることはないの?」

「そ、そうだな…せっかくだし予定してたあと2日は観光も兼ねて自由行動ってことでいいかな?」


 コウスケがそう言うとみんなはコクリと頷いた。


「ところで…はるはどこで寝ればいいの?」

「「「「「あ…」」」」」


 この後、ユウの部屋にコウスケとミリン以外が寝たのは言うまでもない。(ただし、そういうことはしていない)


どうも赤槻あかつき春来はるきです。

とりあえずこれが第3章です。はい。


今回登場するのは獣人のハルナちゃんです!スレンダー率100パーセントのコウスケのパーティには初めてのこと巨乳キャラ。うぅ…書いてて恥ずかしくなってきました…(赤面)

それはともかく!10歳くらいの幼い少女として書いてみたんですけどいかがでしたでしょうか。

こんなにお兄ちゃんと言われるコウスケはきっと幸せものですね。(混乱)


定番(笑)の風呂場シーンはコウスケとミリン!この2人の仲はいかに!リア充爆発しろ!(白目)

それでもユウは可愛い!(語彙力皆無)


面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。

それではまたどこかで。あでゅー!

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