動き始めた陰謀
「探せ!全力で探せ!なんとしても連れ戻すのだ!」
ディザスター帝国と呼ばれる魔物によって支配されるこの国は今、混乱状態にあった。
その王都では多くの魔物達がざわめきを見せていた。
「ルイン様、こちらが次の計画書になります」
魔族の男は魔王─ルインに明らかに怪しい資料を渡した。
「下がれ」
ルインはそう言うと男は部屋を出ていった。
「…次はアール王国か…あの馬鹿娘…一体どこに…」
「父様、ご報告があります」
ルインがブツブツと呟いていると15くらいのミニスカートを履いた魔族の少女が音もなく現れた。
「どうしたローズ。イヨは見つかったのか?」
「いいえ、姉様は見つかっておりません。ただ、竜人が出現したそうです。あの女が逃げた今、新たな竜人の捕獲も同時進行で行ったほうがいいと思われます」
少女─ローズは感情のない言葉でそう言うとルインは右手を顎にあて、考えるようなしぐさをした。
「…わかった。ではその竜人とイヨを捕獲するように伝えろ。その竜人が現れたという場所はどこだ」
「アール王国です」
ローズが間を開けるずに答えるとルインは玉座から立ち上がった。
「なら、捕獲するついでに滅ぼしても構わん」
ルインはそう言い残すとその部屋を出ていった。
「了解しました」
ローズは表情を変えずそう言うと空気に溶けるように消えていった。
ーーー
「…で、ユウは2人の部屋でナニしてたのかな?」
朝、コウスケ達は朝食(ユウが作ったもの)をとっていると、ミリンが唐突に口を開けた。
「昨日の夜ですか?」
ユウはミリンがどういう意味で言っているのか理解できていない様子で聞き返した。
「そうよ!昨日の夜!なんであんなにうるさかったのか聞いてるのよ!」
ミリンは若干息を荒げながらそう叫ぶと周りの視線がこちらに集まった。
「み、ミリン落ち着けって…みんなこっち見てるから」
コウスケが指摘するとミリンは「あ」と呟いて静かになった。
「で、何やってたのユウさん」
コウスケが小さな声でそう聞くとそれならったのかユウも小さな声で話しだした。
「この前コースケさんに教えてもらった『山手線ゲーム』とやらをやってたらユリとサクラがなんか喧嘩始めちゃって…それで部屋を抜けてきたんですよ」
「山手線ゲーム?そういえばそんなの教えたな…なんで喧嘩になったのかは知らないけどそういうことをしたわけではないってことね」
コウスケはひとりで納得するとユウは状況を理解できていないように首をかしげた。
ーーー
朝食を食べ終えたコウスケ達は支度を済ますとアイテム屋KAZUにやってきていた。
「こんにちはカズヤさん」
「こんにちは叔父さん」
ユウとミリンがそれぞれ挨拶をすると店の奥からカズヤが出てきた。
「おう!誰かと思えばあんちゃん達でねぇか!ん?そっちの嬢ちゃん達は新入りか?」
カズヤは店の商品を物珍しそうに眺めているユリとサクラを見てそう言うと、ユウが口を開いた。
「あの2人はユリとサクラ。私の知り合いで昨日からパーティに加わった新しい仲間です」
「姉ちゃんの知り合いか。なら悪い人じゃなさそうだな!HAHAHA…!」
「だから私は男ですッ!」
コウスケはそんな2人の会話を見ているとミリンがコウスケの袖を引いてきた。
「ん?どうしたミリン」
「あの2人ってなんか親子みたいに見えない?」
ミリンの一言にコウスケはうーんと考えると口を開いた。
「んー確かに言われてみればそうかもな。でもユウさんの父親ってあのときの竜だろ?」
「まぁ…そんなんだけどさ…」
ミリンがなにかを言おうした瞬間、ユウと話していたカズヤがコウスケに声をかけた。
「あ、そうだあんちゃん。この前あんちゃんに頼まれたやつできたぞ。なんかに使えるかなと思って量産したからパーティのみんなにも配ってやれよ」
カズヤはそう言うと店の奥へ消えていった。
「コウスケ。何頼んだの?」
ミリンは上目遣いでコウスケに聞くとコウスケはふいっと目をそらした。
「ま、まあ…みんなが離れてても意思疎通ができるアイテム…かな」
2人がそんなやりとりをしているとカズヤが店の奥から出てきた。
「おお…見せつけてくれるねぇお2人さん。姉ちゃん達も姪っ子夫婦を邪魔しないように気をつけなよ」
カズヤはいつのまにか集まっていたユウ、ユリ、サクラにそう言うと3人はブンブンと首肯した。
「「夫婦じゃない!」」
「おぉ…息ぴったり…」
コウスケとミリンが叫ぶとユリが感心したようにそう呟いた。
「まぁ夫婦漫才もほどほどに本題に入るぞ。ほれ、これはあんちゃんのやつ」
カズヤはそう言いながらコウスケにスマホを渡した。
「ありがとう、おっちゃん。これでここでも使えるんだな」
「最初に渡されたときはどうなるかと思ったがいままで見たことない道具で腕がなったよ!HAHAHA…!」
カズヤはそう笑うと他の4人にもスマホ(のような魔道具)を渡した。
「あんちゃんのやつは若干改造させてもらったぞ!でもできることは変わんねぇから安心しろ。姉ちゃん達に渡したやつだけど使い方はあんちゃんに聞いてくれ」
カズヤはそう言い残すと再び店の奥へと戻っていった。
「カズヤさんはなんでも作れるんですね…」
驚き半分呆れ半分といった感じでユウが呟くとコウスケ達は店を後にした。
ーーー
「今日は依頼が少ないですね」
ギルドに着くとクエストボードを見ていたユウがそう呟いた。
「あ、これやらない?」
ユリはそう言いながらひとつの依頼の紙を指差した。
「…ん?なになに…『ユートピアにて未知の魔物出現。討伐求む』だって。ユートピア?理想郷?」
「ユートピアは街の名前ですよコースケさん。ここからは遠いですからやるなら明日以降にしないと無理ですね…今日は別の依頼にしましょう」
ユウがそう言うとサクラが何か見つけたように一枚の紙を指差した。
「最近この辺で『死神』と呼ばれるものが出没するらしいよ。『巨大な鎌を持ち、黒い布を身にまとって人型をしている』みたい。殺された人はみんな首の一番外側の皮一枚残して中身が綺麗に切断されてるんだって」
「へー…そんなことできるのかな?ここに書いてあるあたり人間じゃないんだろうけど」
ミリンはどこか馬鹿にしたようにそう言った。
「『死神』…ねぇ…」
コウスケは頭に引っかかる何かをわからないままその場を後にした。
ーーー
依頼を終えたコウスケ達は宿屋に戻ると思い思いの時間を過ごしていた。
「コースケさん。名前…考えたんですか?」
コウスケの部屋にやってきたユウは掃除をしながらそう言った。
「うーん…これといっていい名前が思いつかないんだよね…俺は中二病は卒業したんだ!」
「ど、どうしたんですか?いきなり叫んで…ちゅうにびょーってなんですか?」
「あ、いや…ユウさんは知らなくていいよ」
コウスケがそう言うと、掃除を終えたユウは掃除用具をしまうとコウスケのほうへ向けた。
「では、私は夕飯の支度があるので失礼しますね。決まったら教えてくださいね」
ユウはスカートを翻して部屋の外へと出ていった。
「ユウさん…家事上手いなぁ…」
「竜から作られた剣だから《ドラゴソード》とか?」
ユウがいなくなるとコウスケはカズヤから受け取った金色の剣を持ってそう呟いた。すると、その剣は光だし《ドラゴソード》と刻まれた。
「あれ?呟いただけなのに名前がついたってこと?…どうしよう…もっといい名前にするべきだった…」
コウスケは焦った。しかし何かを思い出したのか手を叩くといつもの鞄から黒い剣を取り出した。
「今度はしっかり名前をつけないと…うーん…黒剣・《ダークスレイヤー》!…なんてね…」
コウスケは冗談半分で黒い剣を構えた。
「うぅ…これはさすがにないわ…」
中二病時代の自分を思い出したコウスケは得体の知れない頭痛に襲われていると、構えていた黒い剣が突然光だし、《ダークスレイヤー》の名が刻まれた。
「えっ…ちょっと待って…」
どうやらこの剣には《ダークスレイヤー》という名前がついたよだ。
それを理解したコウスケの顔に一筋の汗が流れた。
「嘘…だろ…」
コウスケはその場に崩れ落ちると静かに涙を流した。
ーーー
「ねぇユウ」
「なんですかミリン」
夕食中、ミリンが小さな声で話しかけた。
「なんでコウスケは抜け殻みたいになってるの?」
ミリンがそう言うとユウはコウスケのほうをチラッと見ると再び口を開いた。
「武器に名前をつけようとしたら、なんか考えてる途中に名前が決まっちゃったらしいですよ。私が呼びに行ったときはなんか思ってたのと違うって嘆いてましたけど」
「そ、そう…」
2人はミリンの隣にいる明らかに落ち込んでるコウスケを見ているとユウの向かいに座っていたユリが口を開いた。
「そういえばユウも剣に名前をつけたみたいだけど…なんて名前にしたの?」
「あ、たしかに私も知りたい」
サクラもそう言うと落ち込んでいたコウスケがピクリと反応した。
「たしか《アベンジャー》ってつけました!」
アベンジャー…つまり復讐。ニコニコと笑うユウを見てなんでこんな名前にしたのか気になったコウスケはいつのまにか元気を取り戻していた。




