勝負の準備をしましょう
「やほー。にーなさん!遅くなりましたー!」
私がチームルームに来てから1時間後、ののかが来た。
同じチーム同士だといつでもメッセージを送ることができたからここで集まるよう連絡した。
時刻は午後7時。寝すぎだろ。
「ていうか、にーなさん!チームの所持金が増えてるんですけど!なにがあったんですか!?」
本人も言っていたがゲーム内でのののかはうるさいくらいはきはき喋る。これはこれで鬱陶しい。
「あー‥うん。いろいろだよ。」
ぷっちょのこととか話すのもめんどくさい。
話したところで大した知恵も出てこないだろう。
「‥‥あー‥いろいろありましたねー。」
勝手に納得し始めたののかのほうを見ると目が合った。
「あんた、勝手に私の考えてる事、読んでんじゃねー。あっち向け。」
「は、はい!すいません!」
説明は省けたが思考を読まれるのはあまり気持ちのいいものではない。
「まぁ、そんなわけ。いろいろあって私の所持金は2400万になったわけだよ。
あんたが1500万で合わせて3900万。だいぶ余裕ができたな。
知ってる?お互いの同意があればお金を譲渡することができるんだって。」
「え?‥じょうろにしちゃうんですか?」
「意外と的確に私のツボをついてくるね。面白いこと言わないでよ。」
「え?えへへ。」
「けつの穴、破裂すればいいのに。」
「こわっ!しませんよ!」
「あーと‥要は私の所持金の一部をあんたに渡すことができるってこと。私とあんたの所持金はできるだけ同じにしておきたい。
負けた時に万に1つ、計算違いでどっちかが所持金0になってゲームオーバーとか笑えないからね。」
個人の所持金に限らずチームが負けた時に支払う金額は均等である。
もし仮に負けて1000万支払う時は私の所持金が500万以下でもそれぞれ500万支払わなければいけない。
つまりゲームオーバーだ。
まだチームが2人なら管理しやすいが今後、人数が増えていけばそこら辺を曖昧にするのはよくない。
私は問題ないつもりだが、たぶんこいつはすぐ死ぬだろうな。管理もめんどくさいし、死なれるのも困る。これが最善だろう。
「待ってる間にあんたに500万、送っといたから承認しといて。」
「わ、悪いですよ!そんな大金‥‥。」
「話聞いてた?所持金同じのほうが管理しやすいんだって。ぐちぐち言ってないでもらっとけ。次、駄々こねたら殴る。」
「あ、ありがとうございます!
‥あ‥でもこれだとのののほうが100万多くなっちゃいますね。」
「あーね。その100万、後で換金してきて。
チームルームは0時になったら勝負前まで入れなくなるからリアルの方で話し合おう。あんたに勝手に心の中読まれるのも勘弁だし。」
お腹すいたし。
「え?いやいやいや!現実のほうで話し合うのはいいんですけど、換金って‥‥。もらっといてそれはできないですよ‥。」
「しろ。あんた、カラオケに行くのも躊躇うほどお金ないんでしょ?勝負の時に栄養失調とかで体調崩されるだけで困るんだわ。」
「‥‥ありがとう‥ございまず‥。」
「そのすぐ泣くのもお礼言うのもやめて。いらいらする。」
そんな泣くほどお金に困っていたのか。
見るからに社会不適合ニートだしな。
「そんかわりだけど、またこっちのほうにきて。少し寝たいから。町田駅の近くにあるファミレスね。駅ついたらラブホがいっぱいあるほうの出口でればすぐあるから。」
「地元トークされてもわかりませんよ!?
ラブホって‥‥。しかもにーなさん‥なに考えてるんですか‥。」
「だからこっち向くんじゃねーよ。」
頬を染めながら言葉に詰まる。
何故かののかが複数の男に犯されていることを想像してしまった。ちょっと恥ずかしい。
たぶん処女は頭の中だけはビッチよりお花畑だと私は思う。
「じゃぁ、2時間後に駅にきて。迎えにいく。それまでファミレスで寝てるから。」
「あ、はい!わかりました!
じゃぁ、ちゃちゃっと準備してくるのでログアウトしますー。ではでは!」
待ち時間より短い会話をし、ののかがログアウトした後、私もログアウトし、部屋の窓際で姉によく注意されていたタバコを吸う。
深く吸ってないから私自身にはそこまで害はないと思うんだけどな。
タバコを吸っている間は考えがまとまって楽なのだ。
いつも吸っているエコーの箱に目をやる。
どうせ吸うならもっと可愛いタバコ吸いなさいという姉の言葉を思い出し、1人でニヤつく。
11月に入って少し肌寒くなってきた外の空気をタバコの煙と一緒に吸い込む。
「むかつく。」
1人じゃないというのはそれだけで心が強く持てた。ののかに出会えたことに素直に感謝しよう。
ののかがいなければきっと今頃、部屋の隅で明日の勝負のことを考えてがたがた震えていたと思う。復讐だけでこのゲームに手をだしたことに後悔していたと思う。
私はただの憶病者だ。
1人が怖い。でも裏切られるのも怖い。
だから姉以外のことを信じることができなかった私は友達がいなかった。
ののかは信じていい、と思っている私がいる。
私が何を言っても、何をやっても逃げないでついてきてくれている。
もし、この3連戦がいい終わり方でも悪い終わり方でもそれでもののかが私の元から逃げないでいてくれるのなら改めてお願いしてみよう。
普通なら弱い相手とひたすら戦ってちまちま生き残るのがこのゲームのやり方かもしれない。
それでも私の目的は復讐だ。
おそらく勝機も薄いであろうもんじゃのチームといつか戦わなくてはいけないかもしれない。
ののかになんのメリットもないこの復讐にののかはついてきてくれるだろうか。
時計に目をやるとログアウトしてから2時間半ほど経っていた。
結局寝れなかったどころか遅刻である。
駅につくと改札前のど真ん中で背筋を丸めて座っているののかがいた。邪魔極まりないやつだ。
「悪い。遅れた。」
「あ、い、いえ‥‥きてくれて‥嬉しいです‥。」
そりゃくるだろ。私はそこまで鬼畜じゃない。
「じゃ、いこ。腹減った。そういえば換金はできた?」
「あ、はい!おかげさまで‥。換金したらすぐ振り込まれててびっくりしました‥。」
「あーね。普通、何日かかかるもんね。
あんなすごい糞ゲー作ってるし、なんでもありなんじゃん?まぁ、よかったね。」
「あ、あの‥改めて‥ありがとうございます‥‥。」
「もういいよ、その話。早くいこ。」
自分から振った話を自分で遮り、ファミレスに向かう。
「確認してるかしんないけど明日から3日連続で勝負だから。」
ファミレスに入り、注文を済ませた後、今後の予定を話す。
「あ、はい‥確認しました。
明日の相手は3人相手で所持金が2700万だったのを見ると恐らくののたちより1日早くゲームを始めた3人で作られたチームだと思いました。」
「あーと‥ちゃんと考える脳みそ詰まってたんだ。私もたぶんそうだと思って勝負を申し込んだ。実際はたまたまその所持金になってるだけで違うかもしれないけどそこは話してても仕方ないし。クソ弱い初心者の集まりであることを祈るだけだな。」
「おまたせしました。ご注文の品のハンバーグセットとクリームパスタをお持ちしました。」
ウェイトレスが注文した品を持ってきた瞬間、ハンバーグにがっついた。
朝から何も食べていなかったから空腹が限界に近かったのだ。
「ほれへさぁ、ふぉほあほ‥‥」
「え?あ‥‥食べてから話しましょうよ。
ののいっぱい寝たから朝まででも大丈夫です‥‥時間いっぱいあるし、途中で逃げたりしませんよ。」
そう言いながら申し訳なさそうに笑う。
「‥‥ふぁーふぇ。」
私はよく食べ物を口に入れながら話してしまう。姉にもよく注意されたものだ。
私には姉しかいなかったから、姉と一緒にいるときはできるだけたくさん話したかった。
ご飯を食べているときもトイレにいるときもひたすら話し続けた。
懐かしくて涙が出そうだ。
気づかぬうちにこんなみっともない癖がついてるとは。かっこ悪いところを見せたな。
「に、にーなさん‥‥?どうしたんですか‥?」
「あ?」
頬から雫がハンバーグに落ちて初めて気がついた。私は泣いていた。
「‥‥あーと、よくわかんないけど見なかったことにして。」
なんなんだ。ほんとに泣くやつがあるか。
なんでこんなダサいとこばっかり見せなきゃいけない。
少し俯く。ののかの震えている腕が視界に入る。
「‥‥っ‥!ののは見てしまったものをなかったことになんてできません!
ののにできることがあればなんでも言ってください‥‥。な‥仲間じゃないですか‥。」
「‥あー、そんな震えるほど恥ずかしいなら言うなし。しょーもな。ほんと何でもないから忘れて。ご飯食べよ。」
「す‥すいません‥。」
俯きながら黙ってクリームパスタを食べ始める。私も残りのハンバーグに手をつける。
私は何に泣いたんだろう。
自分でもよくわからない。
姉のことを思い出したからだとは思う。
それとも‥。
どちらにしても私はなんて弱いのだろう。
いくら強がって見せたところで根本的なところは昔から変わらない。
「ごちそうさま。と見せかけてプリンを頼む。
あんたはデザートは?」
「あ、はい!じゃぁ‥ののもプリンで‥。」
「なんで同じの頼むの?ティラミスにして。」
「あふぅ‥ののにはデザートを選ぶ権利さえないのですね‥。」
「同じものを半分こしてもつまらないじゃん。それにティラミスは美味しい。」
「いや、いいですけど‥半分こって‥急に子供っぽいこと言いますね、にーなさん。」
「‥‥‥じゃあ、いい。」
「あ‥拗ねた。」
私は小さい頃を除けば、姉としか食事をしたことがない。
姉とはいつも食事後のデザートをお互いに半分こしていたから普通のことだと思っていた。
知らなかった。デザートを半分こするのは大人のすることじゃないのか。
「‥拗ねてねーし。ばかにすんな、この駄あほが。」
「す、すいません‥。のの、半分こなんてしたことなかったから‥嬉しくて調子乗りました‥。その‥半分こ嬉しいです‥。」
「‥あーと、人と話すのって難しいな。
私が普通だと思ってたことはあんたにとって子どもらしいみたいだし、あんたが嬉しいことは別に私は嬉しくない。あんたが何を考えてるかなんてわからない。全然合わないね、私ら。」
「え?普通‥じゃないですか?
にーなさんはののじゃないし、ののはにーなさんじゃないですから。全部一緒だったら気持ち悪いですよ。」
「あー‥あーね。そりゃそーだ。」
「でもその違いも知りたいから、ののは話したいなって思います。
ののは半分こが嬉しい、電話に出てもらえるのが嬉しい。にーなさんとお話しするのが嬉しい。ののの考えてることわかりました?」
恥ずかしそうに嬉しそうに流暢に話す。
なんか言い回しが気持ち悪い。
まぁでも、相手を知りたいから話がしたい。
考えたこともなかったがそうかもしれない。
私は姉と話をするのが嬉しかった。
「‥ティラミス半分もらうね。プリン半分あげる。」
「あー!に、にーなさん!ティラミスの上半分持ってかないでくださいよ!しかもプリンも下半分渡すって‥子どもですか!?」
「くひひ、年上は年下に優しくしろよ。って誰が幼児だ!あほばか!」
別にこいつのことを知りたいとは思わない。
でもこいつと話していると姉との楽しい日々をなぞっているようで心地がいい。
まぁ、だからといっていつまでも無駄な話をしているわけにもいかない。
「明日の勝負は椅子取りゲームらしい。」
「あ、ののも見ました。でも詳しいルールは書いてなかったですね。」
「そうな。きっと椅子取りゲームのルールに則った殺し合いのゲームだと思うけど。あー、乱闘とかわかりやすいルールのほうがやりやすいわ。
とりあえず最低限、決めときたいことは2つ。私のスキルの発動方法とギブアップのタイミングかな。」
私のスキルは相手が私の嘘を信じることによって発動する。
つまり、初対面のやつに発動させるには都度、嘘のスキルを宣言するか嘘のスキルを発動させて見せなければいけない。
「あんたはもう私のスキルを知ってるから制限事項のせいで発動できないからな。だからと言って自分から嘘のスキルを宣言するのもなんか嘘くさい。」
「この前にーなさんが言ってた通りにののはやればいいんですよね?」
「それも嘘くさいから嫌なんだけどね。まだましだし今回はそれで。上手くいかなかったらまたそんとき考える。
後はギブアップのタイミングだけど‥さっき私の考えてること読んだから知ってると思うけど、数十秒間、声を出せなくするアイテムがあるらしい。」
「えっと‥林檎のやつですね?」
「あれを2回戦闘不能になった後に使われるとすごく怖い。でもだからといって1回戦闘不能になった時点でギブアップするのもあほらしいわけよ。
500万するらしいし所持金的に明日の相手は林檎なんて買ってないと思うけど。
とりあえずは2回戦闘不能になったらにしよう。力の差が歴然だったらまた考える。」
「異議なしです。」
「後はあんたの使い道だな。」
「はい!いくらでもこき使ってください!すんすん!」
「こき使うほど使い道はない。」
「あふぅ‥そこは‥にーなさんの頭脳を駆使して考えてください‥。」
気のせいか、心なしか昨日より馴れ馴れしくなってる気がする。
というか馬鹿にされてる?
「あんたに最低限、求めることは3つだけ。
1つ目は闘技場に行ったらどんなやり方でもいいから勝負前までに相手のスキルを全部わかる状態にしといて。相手がなんか作戦とか考えてるようならそれもわかると嬉しい。
2つ目は勝負中はずっと敵のほう見てて。ずっと心を読んでて。んで必要な情報がもしわかったらテレパシーで私に教えて。
3つ目はなるべく私の近くから離れないで。
髪の毛のスキルで遠距離から戦うつもりだし、私自身はそこまで身体能力高くないから付いてこれると思う。
あんたがゲームオーバーにリーチをかけられるとそれだけで動きづらくなるから。近くにいてくれると守りやすい。
こんなもんかな。」
「あふ‥最低限が結構難易度高めです‥。
ののにできるかな‥‥。」
「無理なら言って。私は理想を言ってるだけだから。」
「‥やひます!」
「ありがと。頼む。」
下を向きながら赤くなっている。
噛んだこと突っ込んだほうがよかったかな?
「それとナイフが300万で買えるから買っとこっか。150万ずつだして。身を守るものは持っておいて損はないだろうし。」
「あ‥ありがとうございます!」
ナイフは明日ログインしたときに買うとして、現状、できる勝負の想定、脳内でのシミュレーションをしてその日の話は終わりにした。
時刻は23時半頃。そろそろファミレスも閉店の時間になるちょうどいい時間だ。
これならののかも終電に間に合うだろう。
「じゃぁ、帰ろっか。」
「あ、ああ‥あの‥‥。」
会計を手に取り、席を立とうとしたら、ののかが何か言いたそうにもじもじしている。
「え?なに?」
「えっと‥その‥‥やっぱりなんでもないです‥‥。」
一瞬こちらを見たかと思えばまた下を向きながらうじうじし始める。
血管がぷっちんぷりんしてしまいそうだ。
「あ?なに?言いたいことあるなら言って。
文句でも不満でもなんでもいいからさ。言おうとして言わないのが1番鬱陶しいよ。
後ではもう聞かない。今なら聞く。今しか聞かない。言って。それか死んで。」
「ご‥ごめんなさい‥‥。
‥っ‥あの!にーなさんってお酒好きですか!?」
決意を固めたのか、一瞬の間を置き、しょーもない質問を投げかけてきた。
「飲んだことないけど、なに?」
「いや‥あの‥のの、にーなさんともっとお話したくて‥この後、居酒屋とかで飲めないかなぁとか思っちゃったりして‥飲んだことないんですね‥今の話忘れてください‥。」
「おい、勝手に話を終わらせないで。そういうの嫌い。終電で帰れなくなるけどいいの?」
「あ、はい‥始発で帰ろうと思ってました‥。」
「明日は16時から勝負だから14時には起きてもらわないと困るんだけど。」
「た‥大切な日くらい起きれますよ!」
「じゃ、行こう。飲む機会がなかっただけで興味ないわけじゃないよ。甘いお酒もあるって聞いたことあるし。」
俯いていた顔をようやく上げ、ようやく目が合う。その目は今にも泣きそうな目をしていた。
「え?‥え?‥い、いいんですか‥?」
「なに?どっちなの?
あー‥この時間嫌い。早く決めて。」
「い、行きます!行きましょう!なんか甘ったるいお酒がいっぱいあるお洒落なお店に行きましょう!」
「くひ‥なんだ、それ。地元だからって私、居酒屋なんて行ったことないから何も詳しくないから。よろしく。」
「あ、はい!10分待ってください。調べます。」
「ん。よろ。」
「あ、あと‥ののタバコの匂い、嫌いじゃないので吸っても大丈夫ですからね。」
「あーと‥私、タバコ臭い?」
「す、すいません‥‥のの、昔から鼻がよくて‥少しタバコの匂いがしました‥。
でも嫌いな匂いじゃないから‥気にしないでください。あはは、早く探しますね‥。」
「あーね。ゆっくりでいいよ。ファミレスの閉店までまだ少し時間あるし。」
自分でもびっくりするくらいののかに心を許している気がする。
待つのが嫌いなはずなの苛立ちもさほどない。
要領悪いくせに一所懸命になってくれているこのばかを苛立ちと一緒に愛おしいとさえ感じている。
自分でもこの感情がなんなのかよくわからない。でもおそらく人恋しいのだろう。
唯一の拠り所であった姉が死に1人が怖いだけなのだろう。
だからもし、近づいてきた相手がののかじゃなかったとしても私は同じ感情を持ったかもしれない。
まだ出会ってたった2日しか経っていなくてまだよくも知らないののかにこんな感情を抱くのはまだ早く、浅ましい気がする。
「あ、ここなんてどうですか?すごくよさそう。」
冷や汗をかきながら、それでも笑顔で私の反応を待っている。
「じゃ、そこにしよ。正直どこでもいい。」
それでも私はそう思ってしまったのだから仕方がない。
私はののかを私の身勝手な復讐に巻き込みたくない。
所持金にある程度余裕ができたら、そうだな。ぷっちょに勝てたらチームを解散しよう。
2000億くらい渡しとけば何もしなくてクソ運営に毎日100万取られても一生暮らせる上に贅沢だってできる。
無理矢理このゲームに参加させられたこいつにとって悪い話じゃないだろう。
そうしよう。
私も復讐を終えれば、チームじゃなくても現実世界でののかと、たまに会って何でもない話をしながら生きていくのも悪くないかもしれない。
「にーなさん‥なんかニヤけてますけど、どうかしました?」
「‥‥あーと‥なんでもない。‥くひひ。」
なんてありきたりな死亡フラグを考えているのだろう私は。思わず笑ってしまった。
復讐なんてやめて‥が一般的に正解だと思う。
でも駄目なのだ。私は姉を裏切れない。
姉は復讐を望んでいると思う。
じゃなければあんなくそみたいなゲーム、私によこさないだろうし、あんなメモを残すはずない。
あのメモは姉が私宛に書いたものだ。
なら私は姉が望む通りにしたい。
「早く行こ。カルーアミルクとかいうの飲んでみたい。」
その後のことはあんま覚えていない。
3杯目のカルーアミルクを頼んだあたりで記憶が飛んで朝の5時に閉店だと店員に起こされた。
目の前には寝息を立てているののかがいる。
腹立つ顔してるな、こいつ。
頭が少し痛いし、吐き気がする。
初めて味わったそれは、さこまで悪い気はしない。
なるほど。これが二日酔いというやつか。




