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嘘つきにーなのゲーム録  作者: にゃの
嘘つきにーな
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作戦会議しましょう


「あんたに黙っててもあんま意味なさそうだし、ののかさんにはある程度私のことを知ってもらいたい。その上でちょっとお願いがある。」


これから多人数とチームを組む上で私はその仲間に自分のスキルについて嘘をつき続けなければいけない。

全てを知っているののかとは他より強い信頼関係を築いておきたい。


「私には‥‥?わ、わかりました!なんでも言ってください!すんすん!」


「鼻息、荒。」


「す、すいません‥つい癖で‥気持ちが高まるとつい鼻息が荒くなってしまって‥さっきまでは我慢できてたのになぁ‥‥。」


「くひひ、うける。わかりやすくていいな、それ。」


「え‥あはは、そう言ってもらえると嬉しいです!」


テンション上がったり下がったり上がったり忙しいやつだな。まぁ、わかりやすいやつはこちらとしては非常に扱いやすい。


「本名は‥別にバレてもいいけど言う必要もないな。まぁ知っての通り、姉の復讐でこのゲームを始めた。姉はこのゲームで殺された。まだ生きているのなら姉を殺した奴はまだこのゲーム内にいるはず。私はそいつを殺す。

‥姉は私と違って生活を楽しんでたと思う。こんな糞ゲーを好き好んでやる人でもない。やる理由がないんだ‥もしなんか悩んでたならそれも知りたい。」


もし私が姉の悩みに気づけたのなら姉のことを助けることができたかもしれない。

私は気づけなかった自分自信も一生許すことはできないだろう。


「スキルは嘘を本当に変えるスキル。制限事項は相手に嘘だとバレるとスキルが発動しなくなるらしい。だからこのスキルが、特に制限事項がバレたら私は無能力といってもいい。

まさか初日からバレるとは思ってなかったよ。」


「な、なんかすいません‥。」


「いや、バレたのがあんたでまだよかったと思う。誰にも言わないって言ってくれたし。チームになってくれるやつが1人確保できたことも嬉しい。」


「その言い方だとチームは作るんですか?」


「作る。どっか入るのはリスクが高い。

強いチームに入ると1000万リルドしかない初心者は1回の負けでゲームオーバーになりかねないし、初心者が集まったチームに入るくらいなら自分で作って人を選んでチームに迎えたい。」


「1回の負けでゲームオーバー‥ですか?」


「負けたときの支払いは平等なんだと。5人の5億持ってるチームで負けたら1人5000万払わなければいけないじゃん?1発でさよならだよ。くそ運営は質問しないとそこら辺の説明全くしてなかったけど。」


「うわぁ‥にーなさんがいてくれてよかった‥。」


「まぁ、私の話はこんなもんかな。」


「あれ、お願いしたいことは?にーなはそれが1番気になってるのです。」


「ああ、忘れてた。私のこと見ててほしい。」


「ふぇ‥!?そ、それって‥。」


なにを勘違いしてるのか顔を赤める。

やめてほしい。私にそっちの気はない。


「私はこう見えて全く人の意見を聞かないところがある。自分の考えが1番正しくて、特に馬鹿だと思ったやつの意見はとことん受け入れられない。」


「見た目通りですよ?」


「殺すぞ。」


「す、すいません‥。」


「それに加えて意外と頭に血が上りやすくてテンパりやすい。自己分析できている分、まだマシだと思っているけどそれでも抑えれないときは抑えれない。

私が間違ってることをしてると思ったら強気で止めに来てほしい。

私のこと見てれば心読めるでしょ?」


「‥の、ののにできるか不安ですが頑張ってみます‥。」


まぁ、大丈夫だろ。

クマのことといい、見た目のことといい、人が気にしていることを物怖じせず言ってくる辺り、空気の読めなさはずば抜けていそうだ。

それくらいでいい。大変有り難い。


ほんとに私はすぐ我を忘れてしまうことが多い。姉がいなかったらたぶん私は今頃、刑務所暮らしでもしているだろう。

それくらい短気だしすぐ手がでる。

感情に任せて突っ込んでくるやつほど簡単な相手はいないからな。

止めてもらわないとすぐ殺される。


「で、これから仲間になるわけよ。話せる範囲でいいからののかさんのことを知りたい。」


「は!はい!あ、あの‥ののでいいですよ‥私なんかにさん付けなんて‥。」


「あー、わかった。そうする。」


どうでもいい。

それより私はこの女がなんでこのゲームを始めたのか少し興味がある。


先ほど両親がいないと言っていたし、カラオケを躊躇うくらいお金がないと言う。

こいつにも色々あるのだろう。

他人の不幸話は意外と嫌いじゃない。


「私は産まれたときに両親に捨てられて施設で育てられました。そこでもいじめられてました‥。やっと大人になって施設を出れたと思ったらうまく仕事も決まらなくて‥。やっとアルバイトは決まったと思ったら、そこの先輩にこのゲームを押しつけられました。」


「うわ。私の人生も大概ひどいと思ってたけど比べものにならないくらいひどいな。聞かなきゃよかったよ。胸糞悪い。」


「す、すいません‥‥。」


「いや、あんたじゃなくてさ。ってか押し付けられたって?」


「あ、このゲーム、運営に承認もらえれば他の人にアカウントを譲ることができるみたいですよ。もちろんゲームで貯めたお金も含めてですけど。」


「はー。そんなことができるのか。ってことはあんたは実は所持金いっぱいだったり?」


「いえ。引き継いだお金は500万リルドでした。初回の1000万と合わせて1500万ですね。」


「上出来だよ。その浮いた500万はかなり最高。その500万、私に任せてよ。」


「あ、はい。構いませんけど‥。」


「いや、構えよ。私って結構悪人だよ?搾り取られちゃうよ?」


「‥‥はふ‥ふふふ‥。」


突然、ののが笑いだした。笑い方がちょっと不気味だ。


「ののの経験上、悪い人は自分のこと、悪人だなんていいませんよ。悪いことをしてるなんて意識ないですから。」


「説得力ありすぎて何も言えないぞ、それ。」


「あはは、にーなさんと話すと嫌なことも普通に話せます。」


「別に私だからじゃないでしょ。あんた、今までが人に恵まれなさすぎ。

でも世の中って糞ゲーだね。たぶん今頃、両親はあんたを捨てて人生を謳歌してるだろうし、施設であんたをいじめてたやつも社会に順応してのうのうと生きてるだろうし、あんたにこのゲームを押し付けたやつだって日常に戻って幸せにしてるだろうし。みんな死ねばいいのに。」


なんでそういう糞みたいなやつが生きてて姉が死ななければいけないのだ。

姉の命の方が100倍は尊い命だというのに。


「‥‥えっと‥‥にーなさんにそう言ってもらえるだけでののは幸せです。‥のの、こうやって誰かと仲良く話すのが夢だったんです。

そういう意味ではゲームを始めてよかったかもです。」


申し訳なさそうに笑みを浮かべながら顔を上げる。


「私は仲良しごっこなんてやるつもりないから。命かかってるわけだし。だから言いたいことは全部言うし、あんたにもはっきり言ってもらわなきゃ困る。勝負中そんなもじもじしたらぶち殴るから。」


「それってある意味友達以上ですよね。すんすん!」


嬉しそうにこちらを見る。

どちらかというと懐いてくる犬に見えてきた。


「別にあんたがそう思いたいならそれでいいよ。」


「ありがとうございます!あとチュートリアル中見てもらった通り、ゲーム中はあんま人見知りしないんで大丈夫ですよ。ののは自慢じゃないですがネット弁慶なので。」


「くひ‥!ネット弁慶ってだけであんな変わるのか?あのゲームの感覚、現実とそんな差ないだろ。くひひ、まじ自慢でもなんでもねーな。」


変なところでツボに入ってしまった。

こんなしょーもないことで笑ってしまうとは。


「まぁいーや。自己紹介もこんくらいにして、そろそろこれからについて話し合おうか。」


「は、はい!よろしくお願いします!!」


「とりあえず私の考えを聞いてよ。不満なところがあれば、度に話止めて言って。最後まで何も言わなかったら後で3回殴るから。」


「あ、私殴られ慣れてるからたぶん大丈夫だと思います‥。」


「じゃぁ、串刺しね。まず辛いことに私は1000万リルドしか持ってない。明日にはくそ運営に取られて900万リルドになる。10日後には所持金が0になってゲームオーバーになる。

1番面白くなくて、たぶん初心者で1番多い終わり方だろうね。だからといって一気に稼ごうとすると所持金の多いチームと戦うことになる。それはやだ。場慣れしてるやつと戦えば負けるリスクも高くなるし、負ければ誰も相手してくれなくなる。」


初戦で負ければ初心者の2人チームとして2000万は1000万に、1000万は500万になる。くそ運営に毎日100万取られるから実際はもっとなくなるのは早い。

それでも何回か負ける余裕があるように見えるが、もし私だったらそんな勝っても1日のくそ運営への貢ぎ金にもならないなんのメリットもない相手からの勝負なんて絶対受けない。

チームでの戦利品が500万とか5人のチームなら一人当たり100万だ。こんなハイリスクノーリターンなんて5歳児でも避けるだろう。

唯一、相手をしてくれるのは同じ初戦で負けて所持金が同等のやつくらいだろう。


つまり、初戦で負けたチーム、特に初心者の集まりのチームは、その時点でほぼゲームオーバー確定なのである。

1000万リルド持っているチーム同士が戦って勝ったところで数日の運営への貢ぎ金になるだけだ。

所持金が少ないチームを相手にする気まぐれなジャンキーでも現れない限りそのチームは終わりだ。

チームを解散して大きいチームに入れてもらえることを祈り、その上で次の勝負にそのチームが勝てることを祈るしかない。

無理だろ。


「初戦はなんとしても勝ちたい。そんなわけで私は同じ初心者で結成されたまだ勝負をしたことがないチームに勝負を挑もうと思う。相手も慣れてないだろうしまだ勝ちやすい。遅くても明日には相手を探して勝負の日程を決める。」


「そ、そうですね‥負けるくらいならこつこつ地道に貯めていきましょう!」


「だからといって私は負け犬みたいにこつこつ貯めていくのは嫌い。」


「え?えええ?どっち‥‥?」


「とりあえず3日間、最低でも2日間連続で初心者チームでなおかつ3人以上いるチームと戦う。初心者チームなら、早くゲームの醍醐味を味わいたいだろうし、チームのお金の減りが早くて焦ってる。バカなら2人しかいなくて勝ったとしても貰えるお金が少ない相手でも食いつてくるだろうし。」


「‥‥あ!そっか!人数が多いチームほどたくさん所持金持ってますもんね!さすがです!」


「え?そこなの?まぁいいや。

その後は10億くらい持ってるチームと戦いたい。」


「ぶっとびすぎでしょ!馬鹿ですか!?」


「全部うまくいけばだよ。最初の連戦で全部勝てば今の所持金の2倍くらいにはなるだろうし負けてもまだ立て直せる。その上でこんな弱小を相手にしてくれる大きなチームがあれば挑まない手はないでしょ。って、誰が馬鹿でチビだ。」


「そこまで言ってないです‥。でもそうなると2人じゃ不安じゃないですか?」


「あーね‥まぁ、勝負内容によるでしょ。

使える奴がいたら仲間にしたいけど無理にする必要はないかな。人数が増えれば増えるほど個人の所持金増えないし。」


「まずは個人の所持金増やさないとゲームオーバーになりかねませんもんね。ぬぬぬ‥そこらへん難しいですね‥。

この後は対戦相手探しですか?なら1回家に帰ろうかな。ゲーム機、家のパソコンに繋げっぱなしです‥。」


「それは明日1日かけてやる。今、2つほど決めときたい。」


「でも、もう11時半ですよ?終電が‥。」


「始発で帰ればいいじゃん。」


「え?いつ寝るんですか?」


「え?寝る気なの?」


「12時間は寝たいんですけど‥。」


「つっかえな。じゃぁ寝てていいよ。対戦相手は私が探すから。だから始発まで話し合う。」


「にーなさんいつ寝るんですか?」


「2時間寝れば頭回るから大丈夫。」


「へぇ。じゃぁお言葉に甘えます。」


「‥なんかムカつくから8時間で起きて。」


「んー‥頑張ります。」


「じゃぁ、とっとと話して始発までも少し寝れるようにしよ。2時間で頭回るとかんなわけないじゃん。」


「‥えっと‥ごめんなさい。」


「くひひ。うっせ。黙れ。死ね。3時間は必要なんよ。」


まともかどうかは別として姉以外とで人と話すのは久しぶりだ。なんか妙にこしょばい。


「あんたのそのテレパシーって有効範囲どれくらい?」


「確かめてないのでなんとも‥。でも扉を閉じた状態で部屋からチームルームまでは使えましたよ。私が繋げば3人とか複数でも会話とかできます。」


「なるほど、なかなか優秀。勝負前にどれくらいか試しとこう。」


逆に視界に相手をいれないのが条件なら、有効範囲もそれなりに広いのかもしれない。


その後も、ののかと4時間ほど話をした。


スキルを活かす最善策について。

いくつか勝負のルールを想定した作戦について。

私のスキルをどうやって発動させるかについて。

チーム名について。これが1番時間を費やした。馬鹿すぎる。


大事な初戦なのだ。

いくら話しても話し足りない。


「な‥なんか勝てそうな気がしてきましたー‥‥眠い‥。」


「後は運だな。今話したことがスムーズに起きてくれればたぶん負けないよ。

とりあえず少し寝る。」


「あ、にーなさん!」


「あ?」


自慢じゃないが私は寝る邪魔をされることが大嫌いだ。

小学校の修学旅行のとき、就寝時間すぎに女子の部屋に遊びにきた騒がしい男子の腕の骨を折ったことがある。それくらい嫌い。


「あの‥今日はありがとうございました‥。ゲームのことなしで人と話して楽しいって思えたの久しぶりです‥‥。のの、にーなさんに会えて、頑張って声かけてよかったです‥。」


「‥‥あーあ。そういうの死亡フラグっていうんだよ。ご愁傷様。」


「はい!おやすみなさい!」


この駄あほは頭どころか耳まで悪いらしい。


とりあえず今、こいつに心を読むスキルがなくてよかったと思う。




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