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嘘つきにーなのゲーム録  作者: にゃの
楠になの人生譚
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過去のお話をしましょう2


「じゃじゃーん!今日は千ちゃんにゲームを作ってきましたぁ!」


私が千尋さんの過去を見始めてから数年後、お姉さんが自作のゲームを持ってきた。

自作にしては手が込んであり、市販のコンパクトなコンピューターゲームと言われてもわからないくらいだ。

画面には女の子が映っている。

どことなく千尋さんに似ていた。


「作ったって‥‥もう見た目が学生の自由研究のレベルじゃなくない?お姉ちゃん、ゲーム会社で働いてるの?」


「いやいやぁ‥私まだ大学生だって。

まぁ、そういう研究は専攻してるけど。」


「へぇ。くひひ、私はゲームにうるさいぞ?

で、どんなゲームなん?操作するボタンとかついてないんだけど。」


「超単純なゲームだよ。ゲームに向かって話しかけてみて。」


「死ね。」


「あはは!千ちゃんはすぐ死ねっていう。」


笑いどころはわからないが、ゲーム画面に映っている女の子が千尋さんのほうを向く。


『ワタシはAIのため、死ねません。

ですがとても悲しいです。』


「すごい。まじめに受け答えしてきやがった。」


「んふふ、どやぁ。お世話のいらない喋るたまごっちみたいなもんだよ。会話パターンをいくつかインストールしてあるから大体の会話はできるはず。んで会話をしていく中でAIが自己学習して会話パターンが増えてくよ。

どんな性格になるかは千ちゃん次第。」


『ふふん。AIのあいちゃんとお呼びください。』


「名前のセンスないな。でも、こういうの嫌いじゃない。」


「え?そう?あはは!照れるぜ!外見は千ちゃんを意識して作りました。」


「見た目は0点。」


「手厳しい!‥千ちゃん、あんま外でないし、私も毎日これないから少しでも楽しめたらなって思って‥‥。」


お姉さんが声を落として少し悲しそうな表情をしてゲームをみながら話す。


「‥ありがと。‥大丈夫。お姉ちゃんがたまにでも会いに来てくれれば。」


それに千尋さんが早口で答える。


「‥っ‥!会いにくるから!会いてる時間は全部会いにくるから!」


「くひひ。そこまですんなし。

お姉ちゃんは友達多いだろうし、そのうち大事な人もできるよ。それも大事にして。」


「ふふん!私の勝手だからね!空いてる時間は全部可愛い可愛い妹に使うのさ!」


「あー‥シスコンきも。」


『姉妹愛素敵だと思います。』


「こいつ、いちいち反応してくるのか‥。」


きっとお姉さんの本心だと思う。

子供の頃の時間を埋めたいのだろう。


この微笑ましい時間は緩やかに数年続いた。


カラオケに行ったり、ご飯を食べたり、本当になんでもない日常が続いた。

それを噛みしめるように2人は幸せそうに笑っていた。


お姉さんが大学4年になり、今までよりくる回数が減ってきた。

高校生の私にはピンとこないが色々と忙しくなる時期なのかもしれない。


千尋さんはお姉さんの前では顔に出さないけど、1人になるとため息が多くなった気がする。

それでも駄々をこねないあたり、お姉さんを大事に思っているのだろう。

小学生の頃のことを考えると少しくらい我儘を言っていいと私は思う。


「千ちゃん、あのゲームってまだ使ってくれてたりする?」


ある日、唐突にお姉さんがあのゲームについて尋ねる。


「あのゲームって‥こいつのこと?」


そう言って漫画の山の下からゲームを取り出す。


『聞いてくださいよ。お姉さん。マスターったらワタシの扱いが酷いです。

カップラーメンの蓋閉めに使ったり、ワタシにエッチな格好を要求したり。』


「てめぇ、黙れ。」


電源はついているようで流暢に千尋さんの恥ずかしい話を暴露する。

私は見ていたが結構卑猥なことをしていた。


「まぁ、そういうわけで話し相手くらいには使ってるよ。」


『うひひひ、あれが話し相手くらい?』


「駄AIが。ぶち殺すぞ?」


ペットは飼い主に似るというがどうやらAIも例外ではないようだ。


「ごめん!あげといてなんだけど、少しの間、あいちゃん貸してもらってもいいかな!?」


そんな2人のやりとりを無視してお姉さんは話を続ける。

千尋さんの喋っていることに反応しないのは珍しい。


「あー‥うん。全然いいけど。」


「ありがと!ごめん!今日はもう行くね。

んっふっふぅ!今ゲーム作ってるんだ!千ちゃんも絶対喜ぶようなゲームだから楽しみにしててね!」


「あ‥うん。」


複雑な顔をしてお姉さんを見送る。

お姉さんが来る頻度が月に1回くらいになった。


そして、その日が来た。


「やほぉ、千ちゃん!」


「うるさい。大家さんに怒られちゃうから。」


いつものようにチャイムを鳴らさず鍵を勝手に開けてお姉さんは入り込んできた。


6月の中旬。梅雨に入って雨が降り、少し肌寒く感じる日。

アリーさんの話だともう既に、お姉さんはアリーさんの恋人を殺した後のはずである。

少なくともお姉さんの素振りからはそれを感じない。


「今日はね!千ちゃんの好きなものいっぱい買ってきたよ!プリンとね、牛乳プリンとね、焼きプリン!」


「くひひ、プリンばっかかよ。まぁ、好きだけど。」


「にへへ。一緒に食べよ!」


いつも通り。いや、いつも以上にお姉さんは機嫌が良さそうに見える。

本当にこの裏で憎しみと憎悪が渦巻いているのだろうか。

本当に人が死んでいるのだろうか。


知りたい。

アリーさんからの依頼ではなくても私は知りたい。

なぜ、お姉さんはアリーさんの恋人を殺さなければいけなかったのか。

なぜ、あんなゲームを作ったのか。

目の前にある華奢な手を掴みさえすれば私はその全てを知ることができる。


「お姉ちゃん‥大丈夫?」


今にも触れそうな手が止まる。

疼いていた心臓の鼓動も止まったかと思うくらい静寂な間があく。


千尋さんが心配そうにお姉さんを見つめる。


「えっと‥‥なにがかな?」


「あ‥‥いや‥なんか元気なさそうだったから‥勘違いだったらごめん‥。」


そうだろうか。

私には全くわからなかった。


「も‥もぉ!なんだよぉ、いきなり!びっくりしたなぁ!大丈夫大丈夫!私は元気が取り柄みたいなとこあるから!」


「そ、そっか‥。ならよかった。」


「大丈夫。私は千ちゃんがいれば‥千ちゃんさえいてくれれば頑張れるから。」


小さい声で、今にも泣きそうな声でお姉さんは小さくこぼす。


「え?ごめん。聞こえない。」


「‥ううん!なんでも!これ、食べたら行くね。」


「‥そっか。また待ってるから。」


私は知りたい。知らなくてはいけない。

お姉さんになにがあったか千尋さんに伝えなければいけない。

この健気で不幸な人の力になってあげなければいけない。


お姉さんの手を掴めば、また十数年前、過去を繰り返すことになる。

実際の時間にして言えば一瞬なのだろう。

それでも私には私が生きてきた人生より長い時間を味わっていることになる。

何も食べず、誰とも話さないただ傍観するだけの時間が。


正直、辛い。

それでも迷わず、その手を掴むことができた。


少ない時間をお姉さんと話すことに必死でプリンに全然手をつけてない千尋さんの顔を見る。


「待っててくださいね。」


もちろん返事はない。

話したこともない赤の他人に献身的になっている自分が可笑しくて笑う。


空間が歪み、景色が変わる。

気がつけば千尋さんが小学生の頃、住んでいた家にいた。

千尋さんの姿はない。

母親、父親、お姉さん、それとスーツを着た見たことない男性が2人が何かを話しているようだ。

机には小難しそうな書類がいくつも並べられている。


「それでは実験の概要をご説明させて頂きます。」



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