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嘘つきにーなのゲーム録  作者: にゃの
嘘つきにーな
12/24

仲間を守りましょう


『ののかさんの意識が戻ったので30秒後に勝負を再開致します。』


「あ、えっと‥のの死んでたみたいですね‥。

すいません‥絶対ぷっちょさんに攻撃を当てれると思って突撃しちゃいました。」


「こっち見ないで。テレパシー使って。」


そう告げるとののかは目をつぶる。


『いいよ。私もごめん。守れなかった。後で焼き土下座でもなんでもする。でも今は30秒しかないから。攻撃が当たる気がしたんだよね?心が読めた?』


『あ、はい。読めました。

スキルは反射の膜。ぷっちょさんはなんでも跳ね返す膜で覆われています。制限事項は膜を自分から剥がすことで自在に操れてなんでも切れる正方形の板に変えれるそうです。その間は攻撃を跳ね返す膜がない状態になります。

そんなことより、ののはにーなさんがなんでもしてくれるというところが気になるのですが。』


『あー、もう。どこが制限事項なんだか。』


さっきののかがぷっちょの心を読めたのはぷっちょがナイフが通用しないと判断して膜を自分から剥がしたからか。

なんかエロいな。


『要はぷっちょがスキルで攻撃を仕掛けてきた瞬間ならこっちの攻撃も通るわけね。

タイミングを計る材料はののかの心が読めるスキルだけか。ののかを守りつつタイミングを見計らわなきゃな。難しい。』


『まかしてください!ののやれます!

そんなことよりほんとうになんでもですか?』


ののかはもう1回死んでる。これ以上死なせるわけにはいかない。


『みすず。私をおぶれる?

動けないけど髪の毛は動かせるから。』


『30秒経ちましたので勝負を再開します。』


アナウンスとほぼ同時に銃声が響く。


ののか目掛けて飛んできた銃弾を髪の毛で防ぐ。


「うへぁ。うはは。やぁっぱだめかぁ。」


ぷっちょが銃口から煙を出している拳銃を片手に気味わるく笑っている。

危なかった。よく反応した、私。

開始直後、何かしらしてくると思ってたから警戒しといてよかった。


『遠距離の攻撃は私が防ぐから近距離の攻撃はみすずに任す。私をおぶりつつ、できる?』


『押忍!』


「わひゃ!」


ののかを髪の毛で持ち上げ、おぶる。

力の抜けそうな声が漏れる。


『プラスののかの重さ。おぶれる?』


不安そうに私とののかを交互に見る。


『お‥押忍!がんばる!』


精神論は聞いてないがまぁいいや。


『ののかは変わらずぷっちょから絶対目を離さないで。心が読めたらさっきみたいに一言でいいから声を出して。

そしたら迷わず攻撃する。みすずもね。』


『はい。ののもそれしかないと思います。

それはさておき、なんでもってののが決めていいんですよね?』


『う‥うちだってやってやる!‥姉弟子そろそろしつこくない?』


『みすずちゃんは黙って!大事なことだから!』


ぷっちょの攻撃は見えない上に防御が不可能だ。なら攻撃される前に殺してやる。


『にーなさんってば!』


『うるさい。しつこい。何でもは何でもだから。何でも言うこと聞くよ。だから生きて。』


ぷっちょから目を離さないままののかの口角が緩む。


『こりゃぁ、ちょっと死ねませんね。ののか、生きて帰ったらにーなさんのこと、好きに弄ぶんだ。』


『‥‥死亡フラグにしかきこえないんだわ‥。わざとでしょ?』


『あはは、逆に死なない気しません?』


『死ね。‥‥当たり前。勝と。」


「うはは。もぉいぃかい?」


最初の襲撃以降、攻撃どころか一歩も動かずこちらを見ていたぷっちょが口を開く。

どうやら、なんとなくはののかのスキルがバレているようだ。

それをふまえ、こちらの作戦が整うまで何もしてこなかった。随分と余裕だな。気味が悪い。


「あたしさぁ、漫画が好きでさぁ、毎日のように読んでんのなぁ。」


そのまま攻撃してくるわけでもなく話し続ける。


「どっちかってぇと、バトル系の少年漫画が好き。あいつら戦いながらばっかみてぇにぺちゃくちゃ喋るんだぜぇ?しまいには必殺技叫んだり、奥の手とか言ってわざわざ解説とかしだしたりし始めるわけよー。ウケる。その間に3回は殺せんだろぉっての。」


「‥あんたも大概、お喋りだろ。駄あほ。」


「うはははははは!それな!」


不気味にこちらを見ながら声を上げて笑い始める。


「あーってる。自覚はあるわぁ。

ばかまぬけとは思いつつ、あたしぁ、それが好きなわけよ。オウドウ漫画の醍醐味じゃん。憧れんに決まってんだろぉ。

んなわけであたしもさぁ、奥の手でもお喋りしなー


「あ!」



「適当に走れ!!みすず!!」


「お‥押忍!!」


話の途中でののかが声をあげる。

突然すぎて思考が追いつく前に声を張り上げ、髪の毛の槍をぷっちょめがけて突きのばす。


ののかが声をあげたということは心が読めたということだろう。話し途中に攻撃を仕掛けてきたということだ。

とことん不意を突くのが好きなようだな。なにが王道漫画に憧れてるだ。死んで欲しい。


ぷっちょの攻撃は見えない。

みすずにがむしゃらに適当に走ってもらって当たらないことを祈りつつ、ぷっちょを殺すしかない。


「うははぁ。そう熱くなんなよぉ。余興だっ‥‥ろっ!?」


柔らかい感触が髪の毛に伝わってきた。


「うへぁ‥いった‥‥ぁ‥。」


ぷっちょの左胸を貫通した髪の毛の槍の先端に心臓が刺さっている。

弱々しい鼓動を感じるそれと一緒にぷっちょを地面に叩きつける。

ぷっちょの体が動く気配はない。

呆気ないがぷっちょを殺すことができたようだ。


「やった!ののか‥‥。」


「にー‥さ‥‥。」


ののかのほうに振り返ると同時にののかの首が切断される光景が目に映る。

血飛沫が呆気にとられてあほみたいに開いている私の口に入る。

生暖かい鉄の味が口に広がる。

みすずにおぶられながら嘔吐してしまった。


「姉弟子!!」


「がは‥う‥そんな‥‥なんで‥なんで!!なんで!!なんでだよ!!」


髪の毛に巻き付けているののかの体から力が抜けるのがわかる。


私はまたののかを守れなかった。


『ののかさんとぷっちょさんが戦闘不能になりましたので勝負を中断して勝負前の位置にお戻りください。ののかさんとぷっちょさんの意識が戻った30秒後に勝負を再開致します。』


気がついた時には髪の毛で巻きつけていたののかの死体は消えていた。


「師匠!姉弟子が‥姉弟子が‥‥ごめんなさい‥‥ごめんなさい‥。」


みすずが謝罪している。みすずは悪くないのに。

私がもっと頭良ければ‥私がもっとしっかりしていれば‥ののかは‥。


「いったぁ。いっぺん死んでみるのもいいなぁとは思ったけど‥うへぁ‥想像以上だわぁ。うはは、頭がんがんする。」


数秒の間もなくぷっちょが復活している。

ののかはまだ再生すらされていない。

また何かしらのアイテムでも使ったのか?


「あー、えー、あたしは親切だからあほな主人公みたいにあたしの考えを教えてやるよぉ。そのために早く復活したんだからなぁ。感謝だろぉ。

まず言うけどあたしははなからその真っ二つ女しか狙ってない。うはは、めっちゃ守られててやりづらいってのぉ。」


殺しづらいののかを狙った。負傷してて1番殺しやすいであろう私ではなく。わざわざ相打ちになってまでも。

つまりそういうことだろう。


「その真っ二つ女を3回殺す。そんときのてめぇの表情を想像するだけでよだれが止まらないわけよぉ。うひゃひゃ。てめぇを殺すよりこっちのほうが断然おもしれぇわぁ。」


あと1回死ねばののかは3回死んだことになる。そうなればもう復活はできない。

ぷっちょはまだ1回しか死んでいない。相打ちでののかを殺してもぷっちょはまだ復活ができるわけだ。でも‥。


「そんなことしてもうちと師匠がまだ1回も死んでない状態だから!ばか!意味ないからやめろ!」


みすずの言うとおりである。

仮にののかを殺してもまだ私とみすずがほぼ無傷で残る。

心を読めるののかがいなくなったとしてもぷっちょ自身、死にリーチがかかる。あまりにリスキーな選択ではないだろうか。


「うっせぇ。獣女。

いーよ。別に勝てなくたって。てめぇらと違ってあたしは負けても、所持金が半分になっても安全圏なわけよ。うっぜぇてめぇの絶望する顔がみれりゃ満足だわぁ。」


参ったな。お手上げだろ。


「あーあーあー。まぁいいよぉ。あたしは優しいから。ギブアップは許してやんよぉ。

真っ二つ女をリスクなく助けたいなら今だなぁ。

それともあたしとギャンブるかぁ?

真っ二つ女を守ってあたしを殺せればてめぇらの勝ち。

あたしだって死ねたくねーし、2回死んだらギブアップだって考えてるわけよ。

次で真っ二つ女を守れなかったらあたしの勝ち。いや、まぁギブアップするし、金はてめぇらに取られるけどなぁ。

うはは、大事な大事な真っ二つ女より金っていうならてめぇらにとってはいい話だな。」


「やるに決まってるじゃないですか。」


「‥‥ののか‥‥。」


後ろを振り返るとののかが目を覚ましていた。


『ののかさんとぷっちょさんの意識が戻ったので30秒後に勝負を再開致します。』


「待って!勝手に決めるな!あんたはもう2回死んでんだ!」


みすずにののかの前まで行かせて、ののかの胸ぐらをつかむ。

あんたがいいって言っちゃだめなんだ。


ののかは怯むことなくこちらを見る。


「言いましたよね?覚悟の上です。」


「いやいやいや!金なんてまた貯めればいいじゃん!数千億おじゃんになるけど命まではるほどのことじゃないと思う!」


「‥‥こんなことでいちいち諦めてたら復讐なんて一生かかっても無理ですよ?」


「そんなこと今いい!考えれない!」


「それどころか所持金が尽きて死ぬかもしれません。わかりますか?今勝負所ですよ?冷静な判断をしてください。

いや‥冷静なのかな。ののが起きるまでギブアップしてなかったし、ののがその気なら続行する気だったんですよね?」


「あ‥ちが‥‥。」


そうなのだ。私はどこまでも卑怯である。


「責めてるわけじゃないです。むしろよかったと思ってます。にーなさんに迷惑かけたくないので。」


「‥‥わかんないよ‥‥‥。」


わかる。

そうなのだろう。

私はののかの了承を得れれば勝負を続ける気だったのだろう。現にしようと思えばできるのに未だにギブアップしていない。

私にとってののかはただの駒なのだろうか。

今悩んでいるのも無意識に演技をしてるだけなのだろうか。


「大丈夫ですよ。にーなさん。」


「‥ごめん‥ごめん‥ののか‥。」


「その気持ち、ののは幸せです。」


ぷっちょに視線を向けたまま、優しく微笑む。


「って、ののだって死ぬ気ないですからね!

しっかり守ってくださいよ!」


「姉弟子‥師匠‥うちはギブアップしても大丈夫だよ‥‥?」


おそるおそるみすずが話し始める。


「そりゃぁお金が減るのは怖いけど‥姉弟子の命には


「ありがとう。やめて。これは勝たなきゃいけない勝負だから。」


ののかが話を遮る。

手を見ると小刻みに震えていた。

このひとときで決心をするのにどれだけの葛藤と勇気がいるのだろうか。


わからない。


ののかが私のために勇気を振り絞っているというのなら私はどう応えるべきなのだろうか。


わからない。


「‥今度は絶対守る‥。」


なくなった足の傷口をつねる。

ののかの言う通り、私の目的は姉を殺したやつへの復讐だ。こんなところで躓いていたら復讐どころか、所持金に余裕ができるのさえいつになるかわからない。


でもののかのことは死なせない。


嘘じゃない。

楽しかった。温かかった。守りたいと思った。

こんな感情、姉に対するものと対して差はない。


この気持ちは嘘じゃない。


「絶対死なせないから。」


私は欲張りなのだ。

両方勝ち取ってやろうではないか。


「‥わかってますって。」


「‥よく信じれる。‥ばかみたい。」


『30秒経ちましたので勝負を再開します。』


「うははは、続けるのな!ウケる!いいわ!オウドウ漫画みたいな盛り上がりだわぁ!

じゃぁ特別なー。空気的にあっちぃし、マヌケなラスボスみたいにあたしの有利なところを洗いざらい話してやろうじゃないの。」


勝負が再開されたにも関わらず、攻撃する素振りを見せず上機嫌に話し続ける。

また油断を狙ってるかもしれないと思うと気が抜けない。


「さっきあたしが心臓貫かれた後、真っ二つ女も死んだだろぉ?

死んでみてわかったけど心臓貫かれても数秒は意識あるみたいでさぁ、獣女の動きが緩むのが見えたわけ。そしたら目線でどこに動くか推測できちゃうわけよ。死ぬ直前にそこに攻撃したってわけだぁ。だから真っ二つ女の首を吹っ飛ばせたんよ。参考にしてがんばぁ。

後はぁ‥‥いやぁ‥もうないなぁ。うはは、意外と少ねぇ。」


「だってさ。ののかが声あげたら目つぶって走った方がいいかもね。」


いけしゃあしゃあと話すがどこまで異常なのだ。スキルなしでもほんとに厄介な相手だな。


「う‥うん‥。死んでも姉弟子は守るよ!」


「‥おろして。」


「え?あ、ちょっと‥師匠!」


ののかが死ぬ前の勝負からずっとみすずに風車されていた体の体勢を崩し、地面に崩れ落ちる。


「私のことはいい。あとみすずは攻撃しなくていいから。ののかを守ることだけ考えて。あいつから距離を保つようにして。攻撃はここから私がする。」


「で‥でも!師匠は足が1個なくて動けないから狙われたら殺されちゃうよ!?」


「狙われない。あいつはもうののかしか狙ってこないと思う。

仮に狙われたとしても1回殺された方が動けるようになるしちょうどいい。

‥‥ごめん。守るとか言ったけど、私よりみすずにお願いするほうがいいと思う。」


「謝らないでください。足手まといはごめんなので文句なんてありません。

‥そういえば途中からテレパシーで話してませんね。」


「あー‥ね。くひひ。別にいんじゃん?」


ほんとに、私含めて馬鹿ばっかりだな。


「し、師匠!姉弟子!くるよ!姉弟子は私の背中に乗って!」


ぷっちょのほうに目をやるとゆっくりこちらに近づいてきている。

やろうと思えばすぐ攻撃できるだろうに。気味が悪い。


みすずがののかを背中に乗せてぷっちょと距離を保ちつつ、対角線上に移動する。


「みすず!前の時も言ったけどあんたは強い!あんなやつの攻撃なんか効かないくらい!ののかを頼む!」


暗示という頼りない嘘をみすずに向けて言う。

ないよりはマシだ。


「がってんだよ!絶対!守るから!」


ぷっちょはまっすぐ私の目の前まで歩いてきて見下すように私を見る。


「ぐっ‥うぅ‥っ‥!!」


そして傷口目掛けて蹴りをいれてくる。


「うはは。んだぁ?捨てられたのかぁ?

殺してくださいって顔に書いてあんぞぉ。」


「くひひ。いいな、それ。

どうもしんどくて頭がまわらないから1回死んどくのもありだな。」


実際はそうでもない。

自分でも驚くほど痛みを感じないし、頭はクリアに働く。

火事場の馬鹿力ってやつか?

出血量的にいつ死んでもおかしくはないと思うが。


「んへぁ?んー‥あー‥‥。あ。んー‥どしよかな。」


そう言いながら私の周囲を歩き始める。

大丈夫だ。この距離なら攻撃されても反応できると思う。


「いいやいいや。ほっとくわぁ。うはは。

てめぇ殺すより真っ二つ女殺したほうがてめぇのいい顔が見れそうだしぃ。」


私に背を向けてみすずたちがいるほうに体を向ける。

くそ。なんて無防備な背中だ。

髪の毛を突き刺せば簡単に殺せそうなくらいに。


後に思うことだが死ぬ覚悟でここでぷっちょに攻撃をするべきだった。

万が一にも攻撃が当たったかもしれない。十中八九、跳ね返されて私が死ぬことになるがそれはそれで万全の状態で復活ができた。

そうすれば未来は少しは変わったかもしれない。


「あー、おいおいおいぃ‥。てめぇ、はえーんだよ、獣女ぁ。追いつけやしねぇ。」


「うちは速いよ!お前なんかに追いつかれるわけがないだろ!うちはお前なんかより強い!」


「あへぁ‥まぁ、いいってぇ。追いかけっこも飽きたしなぁ。勿体無いから使いたくなかったけどぉ‥使うかぁ。」


そう言うと胸ポケットに手を突っ込み何かを取り出す仕草をする。

何かを手に持っているようだが目視では何も見えない。


「うはは、私はイカしてる女神だからなぁ。クソな正義のヒーローみたいにちゃんと説明してやんよぉ。

見えないだろうけどあたしの持ってるのは超小型の爆弾ね。威力はまぁ‥人2、3人吹き飛ばせるくらいらしいなぁ。」


そんなものまであるのか。

思った以上にアイテムがあるみたいだ。

私がお店を見たときはそんなにあるように見えなかったが。

ぷっちょの言う通り、無用そうに見えるものは目にはいらないのかもな。

そもそも目視で見えないものをどうやって買うのだろうか。


そんなことより、その爆弾をどうするつもりだ。目に見えないからと言ったってみすずがぷっちょに近づかなきゃ問題ない。

仮に投げてきたとしてもモーションでわかるし余裕で避けられるだろう。

そもそも、こいつには遠距離から攻撃できるブーメランみたいなスキルがあるんだ。今更、爆弾なんかに頼るものだろうか。

ぷっちょにはオートリフレクターがあるから闘技場全体を破壊できるような爆弾ならわかるが、クソみたいな運営がそんなものを用意するとは思えない。


「はい、ぼかん。」


ぷっちょが手を叩いた瞬間、爆発が起きる。

やはりその威力は小さく、そこまで遠くにいない私にさえ爆風がくる程度だ。


続け様に爆発が何度か起きる。

爆風で舞った砂埃でぷっちょが見えなくなる。


「‥くそ。そういうこと。」


「うははは!わかってからぁ。真っ二つ女がこっちずっとガン見してんだもんよぉ!

視界に入らないと心読めないんだろぉ!?

見える?見えないよなぁ!?後はあたしのタイミングでぶち殺すだけだわ!」


『ののか!』


『だめです‥スキル使えません!』


これが狙いか。今攻撃されたらまずい。私もみすずも全くタイミングが掴めない。


『とりあえずハッタリかます!適当に話合わして!』


「ののか!スキル使えなさそう!?」


「大丈夫です!まだ心は読めてませんが感覚はあります!」


「うはは!そぉですかぁ。やべぇやべぇ。計算外だわ。うはは!」


駄クソが。ばかにしやがって。

どうやらののかのスキルを完全に把握されているらしい。

まずいまずいまずい。このまま攻撃されたらののかが‥。

もうギブアップするしかない。

ののかの気持ちは嬉しかったし、数千億を逃すのは惜しいが、勝機が望めないなら仕方がない。

ののかが死んでしまうよりましだ。


「‥っ‥‥!‥!?」


声がでない。

くそ。あのくそ女。りんごを使ったのか。

狂ったふりしてどこまで冷静なのだ、あの女は。


冷や汗が止まらない。

まずいまずいまずい。

なにか考えないとののかが‥。


『‥‥師匠!うちに任せて!』


『みすず‥?』


『姉弟子が殺された1回目も2回目も嫌な感じがしたんだ。1回目は怖くて‥2回目はタイミングが合わなくてかわせなかったけど‥‥今度こそかわす!姉弟子を絶対守るから!』


みすずとの勝負のときに見せた第六感か。

確かにあのとき、感覚で罠を全て回避していた。


いや‥他にいい方法も思いつかない。みすずに賭けるしかない。


『みすず‥頼む!声がでないんだ‥ギブアップもさせてもらえない‥。嫌な感じしたらテレパシーで声あげて。そしたら私も煙目掛けて迷わず攻撃する。』


『押忍!』


『ののか‥ごめん。それでいい?』


『はい。ついに真の役立たずになったののが文句言える立場じゃないですから。よろしくね、みすずちゃん。死んだら化けてでるから。』


『‥こんなときも冗談言えるとか‥流石だなぁ、姉弟子は。』


『あはは。』


『じょ‥冗談だよね‥?』


『そんなチンカスに耳傾けてる場合じゃないから。酷な言い方だけど死んでもそのチンカスを守ってあげて。』


『言われなくてもだよ!死んでも守る!』


『だから!何回言えばわかるんですか?!私はチンカスじゃなくてにーなさんのまんか


『きた!!』


みすずがテレパシーで声を上げると同時にポニーテールの片方を無数の針に変え、砂埃に向けて突き刺す。


スキルを使うために常にみすずのほうを見ていた。顔は青ざめ、目の前の空間を見ている。

また先を見据えて攻撃してきたのか?砂埃で見えないはずなのに。

どちらにせよ、みすずを見る限り、避けきれないと顔に書いてあるようだ。


「跳べ!!みすず!!」


「ぱ!?」


条件反射なのか、私の言葉通り、みすずは走りながら跳ぶ。

身体能力をあげるスキルが解除され、全力で走っていた反動を受けて空中で体勢を崩す。

よく信じて跳んでくれた。


「ああああああ!!!」


あらかじめみすずにくくりつけていたもう片方のポニーテールの一部でみすずとののかを明後日の方向に全力で投げ飛ばす。


投げ飛ばした瞬間、何もしなければみすずが走っていたであろう軌道上に衝撃音と共に大きな刃物で地面を抉ったような跡がつく。

あのまま走っていたらみすずもののかも真っ二つどころではなかっただろう。


髪の毛を串刺しにしたほうに目をやる。

手応えはあった。跳ね返されてもいないようだ。

柔らかいなにかに突き刺さる感覚がまだ残っている。これで死んでなかったらお手上げだな。


砂埃が晴れ、ぎりぎり原型を留めているぷっちょが目を見開きながら串刺しになっている姿が映る。

とりあえずぷっちょを殺せたことに安堵する。


「おい!みすず!ののか!」


緊迫していたこともあり、力を加減できず、思いっきり放り投げてしまった。

これで首の骨でも折って死んでいたら笑えない。特にののかについては。


「いったぁぁあ!!‥かは‥姉弟子‥無事?」


「あはは、みすずちゃんのおかげでなんとか‥。」


生きている。2人とも。

みすずは重症のようだがののかはぴんぴんしている。どうやら、みすずが身を呈して、ののかを落下の衝撃から守ってくれたようだ。

どうにせよ2人とも無事なのだ。

今日ほど気持ちが高ぶった日はないかもしれない。


『ぷっちょさんが戦闘不能になりましたので勝負を中断して勝負前の位置にお戻りください。ぷっちょさんの意識が戻った30秒後に勝負を再開致します。』


勝ったのだ。私たちは。


脳裏にカップヌードル全種類を食べている自分自身が浮かぶ。

いや、まだ気が早いだろ。

ぷっちょがこのままギブアップしてくれるとも限らない。

同じ要領でののかをまた守りきらなければいけないかもしれない。


それでも顔がにやけてしまう。

私たちは‥私はやっとののかを守ることができたのだ。


「にーなさん!」


ののかがこちらに走ってくる。

みすずはどうやら足の骨が折れているらしくゆっくりこちらに近づいてくる。


「くひひ、肩くらい貸してやれよ。」


ののかのみすずへの塩対応も今は微笑ましい。

今ならなんでも許せる気がする。


小走りでこちらに向かってくるののかと遅れて歩いてくるみすずを交互に見る。


この勝負で勝てば数千億手に入る。

そうすれば1日100万取られたとしても一生遊んで暮らせるくらいのお金が残る。無理してこのゲームを続ける必要もない。

ののかとみすずもこのゲームをやめるべきだろう。危なかっしくて見てられない。

でも、こうやって3人で顔を合わせるのも最後だと思うとどこか名残惜しい気持ちになる。


「にーなさん!やりましたね!」


ののかが私まであと少しの距離のところまで来た。ちょうど先ほどぷっちょがいたくらいの距離くらいだ。


「姉弟子!!待って!!」


それと同じくらいにみすずが顔を青ざめさせながら叫ぶ。

脳裏に薄気味悪く笑うぷっちょの顔が浮かぶ。


「え?」


「ののー


みすずのほうを振り返りながら一歩踏み出した瞬間、私がののかの名前を叫ぼうとした瞬間、ののかの足元で爆発が起きる。


「‥‥のの‥‥か‥‥?」


得体のしれない赤い物体がいくつも上から落ちてくる。

砂埃が晴れたそこにはののかの姿はなく、粉々になった人間の部位が辺りに散らばっている。


「え‥?あ‥‥う‥うそ‥だよね‥‥?」


『ののかさんが3回戦闘不能になりましたのでゲームオーバーとなりました。』


無情にもアナウンスの言葉が響く。


「あ‥‥あぁ‥‥。」


「うひ‥うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」


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