ご利用頂きありがとうございます
『接続が完了しました。この度はLANDをご利用頂きありがとうございます。ゲーム内で利用する名前を決定してください。』
「‥‥にーな。」
『にーな様。本ゲームを始めるに当たってひとつご質問させて頂きます。
にーな様は誓約事項に目を通し、同意の上で本ゲームのご利用を考えている認識でよろしいでしょうか?』
「ん。」
『ありがとうございます。それでは本ゲームのご説明をさせて頂きます。
本ゲームは対戦型アクションゲームとなっております。細かい説明は省かせて頂きますが今にーな様が頭に装着している機器が脳神経と接続することによってよりリアルにバーチャル空間を感じることができていると思います。もし、接続が上手くできていない場合はいつでもお問い合わせください。
ゲームの大まかなルールは2つのチームが同意のもと勝負を行い、負けたチームが勝ったチームに所持しているリルドの半分を譲渡しなければいけません。
リルドというのはこのゲームでの通貨です。個人のリルドは1リルド1円としていつでも換金できます。チームに所属する人のリルドの総数がチームでのリルドとなります。』
「負けたチームはチームで所有しているリルドの半分がとられるって言ったけど渡すリルドは平等なの?」
『平等です。5人のチームで総額5億リルド所持していた場合、1人5000万リルドお支払い頂きます。所持金が足りない場合はその方はその時点でゲームオーバーとなり、足りない金額についてはチームの借金となります。借金については誰がどれだけ払っても問題はありません。
勝負内容は毎回異なり、勝負が承認された後にそれぞれチームに1日前に通知します。勝率をあげるためにこの1日でチームで集まり、対策などを錬ることをお勧めします。
承認前にわかる情報は相手のチーム名、人数、所持金だけです。こちらをふまえて、挑むかどうかチームで決定してください。
また、運営費として1人1日100万リルドをお支払い頂くことになっております。
お支払いできない場合はゲームオーバーとなります。
勝負中に3回戦闘不能になった場合はゲームオーバーとなります。
ゲームオーバーになった場合、誓約事項にも記載がありました通り、死にます。
以上です。ご質問はありますでしょうか?』
「途中でゲーム自体をやめることは?」
『誓約事項にも記載があるとおり、ゲームを辞める方法としては個人で1000兆リルドを支払うことによってゲームを辞退することができます。』
「なる。ありがと。もう大丈夫。」
『承知しました。既にアバターを作成頂いていますのでこれからにーな様のアカウントを作成し、ゲームを始めます。よろしいですね。』
「どーぞ。」
『承諾を得ましたのでゲームを始めます。これから誓約事項以外でのゲームの辞退は認められません。ささやかですが初回プレイボーナスとして私どもから1000万リルド、そして勝負に役立つ特殊スキルをプレゼント致します。特殊スキルについてはランダムに決定し、取り換えはききませんのでご了承ください。また、これから同じ初回プレイヤー同士でチュートリアルとして勝負をして頂きますがこちらの勝負は勝ち負けに関わらず所持金の増減もなく、3回戦闘不能になってもゲームオーバーになりませんのでお気軽にお楽しみください。』
私がこれから始めるLANDというゲームは鼻がもげそうなくらい胡散臭いゲームである。
上手くいけば億万長者も夢ではないが下手すれば死ぬこともありえるゲームみたいだ。
こんなゲームを姉がプレイしていたとは信じ難い。
私の姉、楠になはこのゲームで3ヶ月前に命を落としている。
勝負に負け、所持金がなくなったか、勝負中に3回戦闘不能になったかのどちらかだろう。
もしまだ生きていれば間接的であれ直接的であれ、姉を殺したやつらがまだこのゲーム内にいる可能性は高い。
ゲームのルールだろうと知ったことではない。私はそいつらを許さない。私の手で必ず殺してやる。
もしそいつらが死んでいたとしてもそいつらを殺したそいつらを殺してやる。
そのために私はこのクソみたいなゲームを始めた。
『それではご検討をお祈り致します。』
「ん。」
心にもないことをプログラムされているこの進行役にも腹はたったが今はどうでもいい。
自分自身も死と隣り合わせなのだ。他人を殺すことに躊躇いを持ってはいけない。
まずは私自身の特殊スキルについて知らなくては。
意識が一瞬遠のいたと思ったら個室のベッドで横たわっていた。
『こちらがにーな様のお部屋となります。にーな様が許可しなければにーな様以外のユーザーがこちらに入室されることはありません。』
頭に先ほどの進行役の声が直接響く。
なるほど。他のゲームでいうマイページのようなものだろうか。
『チュートリアルに参加するユーザーが集まりましたので30分後にチームルームの解放、その30分後に勝負開始となります。チームルーム解放30分前になりましたらログアウトは禁止となっております。
チームルームの解放は本番でも当日は同様のルールです。勝負1日前までは全時間解放されておりますのでご自由にお集まりください。
特殊スキルについては机の上にある封筒に書いてありますので勝負前までにご確認ください。なお、特殊スキルのお問い合わせについては一切受け付けておりませんのでご了承ください。』
ベッドの横にある机の方に目をやると黒い封筒が置いてある。
勝負まで時間がない。すぐ確認し対策を練らなければ。
チュートリアルとはいえ、ここで役立たずのレッテルが貼られればチームを組むのも難しくなりそうだな。
たぶんチーム戦というくらいだから個人で勝ち続けるのは難しいゲームだろう。
封筒を開けると中には封筒と同じく黒い紙が入っており、こう書かれていた。
『にーな特殊スキル:嘘を本当に変える能力
制限事項:相手がその嘘を本当と認識した場合に限る』
なるほど。最悪だ。
嘘を本当に変える力。チート並の能力と言えるだろう。制限事項がなければ。
これのせいで使い勝手がかなり悪い。
それどころか最弱にさえなりかねない。
能力がバレた時点で私は文字通り無能となる。
更には能力がバレた相手には1回こっきりではなく一生、私のスキルは通用しなくなる。
最悪はゲーム内全体に広まること。
そうなればこのゲーム内で最弱な無能となる。
当分はスキルを使うにしてもバレにくい当たり障りのない嘘をつくのが無難だろうな。
何個か試したいことがあるがリスキーなものは後回しにしよう。
とにかくこのスキルを使うにあたって最低でもはっきりさせとかなければいけないことからはっきりさせていくとしよう。
再度、黒い紙に目をやる。
『制限事項:相手がその嘘を本当と認識した場合に限る』
ゲームの運営は大抵くそだがここの運営は最悪極まる。
わざとだろうが書き方に悪意がある。
相手とは何を指しているのか全くわからない。
能力を使用する特定の相手だろうか。
それともその場にいる無特定の誰かを指すのだろうか。
前者であればほぼ毎回初顔合わせになるであろう勝負相手に大なり小なり嘘を宣言しなければいけない。
進行役は触れなかったが姉の遺留品の中にあったメモには「観戦」というシステムについて記載があった。
他人の勝負で賭けができるのだ。
これが唯一、勝負をしないでお金を増やしていく方法だろう。
そして賭けをすることによりその勝負の観戦も可能になる。
要は第三者から見られている状況で私は毎回、嘘を宣言することとなる。
比較的、私のスキルがバレやすくなるわけだ。
メリットとしてはチーム内で私のスキルがバレたとしても裏切りでもない限り私はまだ無能にはならないですむ。
後者の場合であれば私はほぼ無敵である。
突拍子のない嘘であってもその場にいる誰か1人が信じさえすればスキルが発動できるのだ。
「‥‥逆にその場にいる全ての人間とかだったら最弱もいいところだな。」
そもそも信じるの基準もわからない。
一瞬でも信じればスキルは発動するのだろうか。そうであれば案外突拍子のない嘘でも仮にこのスキルがバレたとしても戦いやすくなる。
UFOだ!と大声をあげ、空を指差せば大半の人がその方向を向くだろう。
その程度の信用ということであればいささか話は簡単なのだが。
『1分後にチームルームを解放致します。
強制ではありませんが時間になりましたらチームルームに集まることをお勧めいたします。』
「くそ運営が。時間が足りなすぎる。」
欲を言えばあと半日程度は自分のスキルについて考察したかった。
まぁ今考えていた程度のことであればチュートリアル中に試せばいい。
時間がきてしまった今はチュートリアル中にぼろを出さないことだけを考えよう。私は頭がまわる方ではないから。
考察ならそれを踏まえた上での方がよっぽど有意義だろう。
少なくともこのチュートリアルに参加する中に相手のスキルを見破るスキルを持っている人がいないことを願う。
姉を殺したやつらを殺すまでは死んでたまるか。