第3章☆根っこ広場
人間が来たぞ!
森をその噂が駆け巡りました。
動物たちはなりをひそめて物陰から3人組の男たちがずんずん森の奥へとわけいっていくのを見守りました。
3人は、ハンター兼森の案内役のビルと、逆さ虹の森の調査員のオコンナーと、新聞記者のラルフでした。
「猟銃を持ってるって!ベアーが撃たれそうになったって!」
コマドリの子どもたちの歌から得た情報をシマリスのチップマンクの子どもたちが口々に叫んで駆け回りました。
「人間?ふん!関係ないね!」
アライグマのラクーンはキノコの椅子に腰かけて、息巻いていました。
多分、自分を見ても、人間は関心を示さないだろうとラクーンはたかをくくっていました。
ガサガサ。
「おっと、アライグマだ」
オコンナーさんはそこに堂々として居座っているラクーンに気づきました。
「おい、こっちこい。良いものやるぞ」
赤い透明なものをオコンナーさんはラクーンに見せびらかしました。
ラクーンは好奇心が勝って、その赤いものを手渡しで人間から受けとりました。
「クマとかタヌキとかキツネとかシカなんかがいないかなぁ」
猟銃をもったビルがそう言いました。
「あーはっはっはっは」
「どうした?」
「アライグマが飴玉を水で洗って、全部溶けたから目を白黒してるんだよ!」
ラクーンはばつが悪そうに人間から離れていきました。
「かわいそうに」
そう言いながらも3人の男たちはひとしきり笑いました。
森の木々が密集しているところに根っこ広場がありました。
「こりゃ気をつけんと足を掬われるぞ」
3人は根っこが複雑にはびこる場所を進みました。
「ここらでお昼にしよう」
「干し肉とラム酒だ」
「待ってました!」
ぴーちちちちちー
コマドリの歌声が4重奏を奏でています。
お人好しのキツネ、フォックスは、ラクーンが不憫でどうしてもこの人間たちに一泡吹かせてやりたいと思いました。でも敵は恐ろしい猟銃を持っています。
フォックスを見つけたら、人間はその毛皮が欲しくて迷わず捕まえようとするでしょう。それでも許せません。
今だ!
フォックスは油断している男たちの前にひらりと身をひるがえしました。
「キツネだ!」
3人は食べ物をもて余しておたおたしました。
立ち上がって猟銃をひっつかもうとしたビルは木の根っこに足をひっかけてばったり倒れました。ほかの2人も引っ掻き傷やらで大騒ぎです。
してやったり!
フォックスは長居は無用とさっさと退散しました。