第2章☆オンボロ橋
夜。
コマドリの四男坊は不思議な明かりで目が覚めました。
森の広場がなんだか騒がしいのです。
兄ちゃんたちはぐっすり眠ってる・・・
「人間がくる」
「森の秘密を探りに」
ひそひそ話が聞こえてきます。
羽根のはえた透明な妖精たちが輪になって踊りを踊っています。
月の光が煌々と広場を照らしています。
幻想的な出来事に、コマドリの四男坊はブルッと身震いしました。
☆
「だからー、川向こうにコマドリの巣があるんですってば」
ヘビのスネークがクマのベアーに耳打ちしました。
「俺は何度も卵を狙って向かっていったんですが、コマドリの野郎が物凄い剣幕で仕掛けてくるから、どうしても卵にありつけない。そうこうしているうちに、卵が次々にかえって雛鳥になっちまった」
「それで?なんで俺にそんな話をするんだ?」
ベアーは疑い深く聞きました。
「俺のかたきをとってくださいよー。コマドリ一家をギャフンと言わせたいんです」
スネークは涙ぐんで言いました。
コマドリの雛か・・・
ベアーは食べていた魚をたいらげると、川をじっと見つめました。
この川は森を半分に分ける大きな川で、ベアーが泳いで渡るにはちょっと広いし深すぎます。
向こう岸に渡るには、ずーっと昔、人間が架けていった吊り橋があるだけでした。それももううんと古くなって渡ると丸太を吊ったロープが切れそうでした。
あんなところを渡るのは怖いなぁ。
ベアーはなかなか踏ん切りがつきません。
そうこうしているうちに何日か経ってしまいました。
よし、川向こうに行こう!
意を決してベアーはオンボロ橋をそーっとそーっと用心深く渡っていきました。
橋はギシギシ音をたてながら、なんとか耐えていました。
無事川向こうに渡ったベアーは、スネークから聞いていたコマドリの巣めがけて走り出しました。
ぴーちちちちちー
クックロビンさんの歌声が響いています。
巣はどこだ?
ベアーはコマドリの巣を探しあてました。
大木の梢の上に巣がはってあります。ベアーは大木を登り始めました。
「僕らは陽気な4兄弟~♪」
「今日もお歌のお稽古さ~♪」
コマドリたちの賑やかな合唱が聞こえました。
「長男はしっかりもので、次男は嘘つき。三男は色男」
「そして僕は勇敢な四男」
ベアーが巣に手が届いた時、コマドリの四男がベアーの目をめがけてつついてきました。
ベアーはたまらず、巣をつかんだまま大木の梢から地上に落っこちました。
ギャフン。
巣の中は空の卵の殻しか入っていません。
ベアーがぐずぐずしている間にコマドリの子どもたちはみんな元気に巣立ってしまっていたのです。
「あ~あ」
遠くから見ていたスネークが溜め息をつきました。
ダーン、ダ、ダン。
「人間だ!」
いつのまにか近くに来ていた人間たちが、猟銃でベアーを狙いました。
弾は逸れて、ベアーはもうこれ以上はないというくらいの早さで、オンボロ橋に向かって走りました。
ギシギシ、バキッ。
吊り橋はあまりの勢いに耐えられませんでした。
ベアーは落ちた丸太に抱きついたまま、川下へと流されていきました。