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第一話 普段

「おい、聞いたか3日前の事件」

「あぁ。隣の小国の貴族が殺されたって話だろ?」

「そうそう。あるのは血溜まりが残っているだけで、館に誰もいなくなってたってやつだろ? 何があったんだろうな?」

「噂じゃ、また出たらしいぜ」

「出たって、死神のことか?」

「あぁ。あそこには屈強な護衛を何人も雇ってたのに全員やられてたとか。それを一晩で、しかも誰にも気づかれないようにやるなんて不可能だぜ」

「幸か不幸か、殺されてるのは汚いことばっかやってるやつらだけってんで、巷じゃヒーロー扱いだ。世も末だよな」


 朝の宿泊所に併設されている食堂にて、男二人が面を合わせて数日前に起こった事件の話をしている。

 普通のやり方では侵入はおろか、許可なく近づいた者には銃殺されるような物騒な所を、たった一晩で主を殺害。その護衛たちもほぼ同様な目に遭っており、巷で有名なシニガミのことを。


「あんたたち。いつまでもくっちゃべっていないで、飯食ったんならさっさと行きなっ!!」


 食堂の奥からコック帽をかぶった女性が厨房から出てきて、食事を終えても何時までも居続ける男たちを怒鳴る。


「ちょっとくらいいいじゃないかよ、レイラさん」

「そうそう。せめて仕事が始まるまでのんびりさせてくれよ」

「のんびりくつろぎたいならなんか頼みな。その金すらないならとっととおいき。あの坊やくらい頼むなら考えるけどね」


 レイラと呼ばれた女性コックは彼らに顎で指し示す。

 その先には食堂の隅、彼らの視線も気にせず、黙々と食事を続けている少年が一人、山と積まれた皿の間からチラチラと見え隠れする。


 白髪に黒目、見た目は幼そうな少年と言っていい風貌だが、左腕がないというのと彼から発する異様な空気で、彼の席の近くには誰も近寄ろうとしない。


「朝からいい食いっぷりだよ。あんたらも、あれだけうちの売り上げに貢献してくれるならいつまでも居座ってもいいよ?」

「あ、あははは」

「・・・・・・いってきまーす」


 流石にあれだけの量を食いきれず、支払える金もない男たちはすごすごと退散していく。


「まったく、口ばっか動かして稼げるんならあたしだってそうしたいよ」


 男たちが出ていったのを見送り、レイラはため息を1つついた。


「さて、と。坊や、あんたはまだ食べるかい?」


 レイラの問いに、食事の音が止み、少年は皿の山から右手で輪っかを作り、そのあと指を三本たてると右手を引っ込め食事の音が再開した。


「あいよ。ちょっと待ってな」


 そんな無作法にもレイラは嫌な顔1つせず、寧ろ笑顔で応えて厨房に戻っていった。


 しんと静まり返っている食堂にカチヤカチャと食べる音が聞こえるなか、ふいに椅子を引く音が聞こえ、誰かが座った。


「いつ見てもいい食いっぷりですねぇ。見てるだけで胃もたれ起こしそうですよ」


 少年はピタリと食べる手を止め、顔を前に向ける。

 そこにはテーブルに肘を乗せてにやにやと笑っている少女が一人こちらを見ていた。


「はろー☆ ごきげんはどーお?」

「・・・・・・来るのが遅ーよ、死神」


 少年は対面でにやついている少女とは逆に無表情でぶっきらぼうに答えた。

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