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0004 リアル



 「なんとか切り抜けましたね」



 「アオイちゃん大丈夫だった?」



 「リーダーはなんですかあの立ち回り。完全に私の中のスナイパーの概念が崩れましたよ」



 「アオイさんはあまりゲームをしないようなので知らなくてもしょうがないですが、世界には今回のリーダーみたいに敵にスナイパーライフルで突っ込んでいくというプレイスタイルもあるんですよ」



 「じゃあ聞いていいですかクロハさん、世界にアサルトライフルを持っておきながら一発も撃たずに格闘だけで敵を倒すメディックは何人いますか?」



 「ははは、こりゃいっぽんとられたなクロハ。世界でもこんな変態プレイしてるのはお前だけだよ!」



 「デリクさん……やめてください。それにアオイさんだって十分おかしいプレイスキルですよ。敵の足音だけで戦況把握して最適なポジションに移動するなんて初心者でできる人なんていませんよ」



 「そればっかしはここまで音も作りこんでくれたこのゲームの制作スタッフに感謝ですね」



 座って談笑をしているなか、リーダーが立ち上がる。



 「じゃあ休憩もこれくらいにして帰ろうか。そろそろ晩飯たべたいし」



 「そうですね。ちなみに今何時ですか?」



 アオイが立ち上がり、泥を払いながら尋ねる。



 「ん?0時だが」



 「……へっ?」



 アオイが急いで端末を取り出し確認する。確かに時刻表示には0が三つ並んでいる



 「リーダー、超急ぎでおねがいします」



 「えっ?まあいいけど、どうした?」



 「えーっとあーリアルの話ですけど家族と一緒に住んでて、晩御飯すっぽかしちゃったんですよね」



 「あらら、どんまい。じゃあまかせてくれ」



 リーダーが銃を肩に担ぐ。



 「俺が殿になる。クロハちゃんが先行してデリクとアオイちゃんはそれに続いてくれ」



 「「「了解!」」」



 こうして一行は迷宮の出口へと走ったのだった。







 「あら美佳子、まだ起きてたの?」



 「ごめんママ。晩御飯まだある?」



 「ええ、レンジで温めてから食べてね。私は明日も早いからもう寝るわ」


 「うん、ありがとう。おやすみ」



 「おやすみなさい」



 母親が寝室に入っていったのをみて美佳子はため息をついた。



 「時間を忘れるほどゲームに夢中になったのっていつぶりだろう」



 晩御飯を温めながら美佳子はふと考える。



 「良い仲間に恵まれたおかげかな、また明日もしたいってそう思える」



 ゲームの中のことを思い浮かべる美佳子の顔はゆるんでいた。



 「おっと、明日も学校なんだった。早く寝ないと」



 美佳子は残りを急いで食べ終わり、片づけてから急いで寝る準備をした。







 「美佳子?お母さんもう行くわね。朝ごはんおいてるから」



 「うん。いってらっしゃい」



 美佳子の母親がバタバタと出勤していく。



 「さて、私も準備しますか」



 美佳子のいつもの一日が始まった。







 「おはよー」



 「おはよう美佳子ちゃん」



 「昨日のテレビ見たー?」



 「ごめん昨日は用事があってー」



 「珍しい、美佳子が○○君の番組は見ないなんて」



 「ちゃんと録画はしたから帰ったらすぐ見るよ」



 美佳子は友達と談笑する。女子高生らしく友達と好きなタレントの話をしたり、時に恋バナに発展したり、はたまた誰かの陰口になったり……



 (早く帰りたいなぁ)



 「どうしたの美佳子ちゃん」



 「えっ?別にちょっと考え事してただけだよ」



 「寝不足?ちょっといつもよりぼーっとしてない?」



 「うん、昨日夜遅くて」



 「おー?彼氏でもできた?」



 「そんなんじゃないよー」



 「ほら、ホームルーム始めるぞー。早く席につけ」



 美佳子たちはしぶしぶ席に着く。美佳子の学校での一日が始まった。







 「じゃあねー」



 「うんまた明日」



 美佳子は家が近くの友達と別れ、一人帰路につく。



 「確かリーダーとデリクさんは7時くらいからインするって言ってたから、まだ時間あるな」



 腕時計を見ながらそう言う。



 「いらっしゃいませー」



 「たまにはこういうのも必要だよねー」



 買い物かごにお菓子屋や飲み物を入れていく。



 「あと……これもね」



 そういって手に取ったのはウェブプリペイドの購入カードだ。もちろんLoBの課金にも対応している。



 「ありがとうございましたー」



 店員の間延びしたあいさつを背中で受けながら店をでる。



 「ちょっと買いすぎちゃったかな」



 美佳子は両手の大袋を見ながらそう言う。



 「ただいまー」



 誰もいない家に美佳子の声が響く。

 買い物袋を置き、部屋着に着替える。



 「戸締り良し、空調良し、回線電源ともに良し。さてインしましょうか」



 美佳子はゲーム機の電源を入れる。冷却ファンがうるさく鳴り響き、各ランプが正常だと青く光り始める。





 そして一度深呼吸をして……



 スタートスイッチを押した。







 「アオイさんこんにちは」



 「あっクロハさん。こんにちは、早いですね」



 「いえ、今日はたまたま早く帰ったので」



 アオイがLoBに入るとクランハウスにはアオイがいた。



 「確かクロハさんも学生でしたっけ」



 「はい、いつもは小遣い稼ぎにバイトをしているんですけど今日はなしになりまして」



 「へえ、バイトいいですね」



 「といっても親戚のやってるカフェで働かせてもらっているだけですけどね」



 「へえ、個人経営のカフェですか、行ってみたいです」



 「ええ、機会があったら是非」



 「それでクロハさんこの後空いてますか?よければ迷宮に一緒に行きませんか?」



 「いいですよ。ちょうど一人で行くのは嫌だなぁと考えてたところなんですよ」



 「良かった、じゃあすぐ準備してきますね」



 アオイは装備を整えクランハウスから出る。すでにクロハは完全装備で待っていた。



 「お待たせしました。では行きましょう」



 「はい、えっと第36地下迷宮で良いですか?」



 「そうですね……私はどこでも良いですからクロハさんがそこが良いなら」



 「そうですね、できれば人型のエネミーがいるほうが私が戦いやすいですので」


 「そういえばどうしてクロハさんはこのゲームで格闘を?」



 「ああ……私リアルのほうでそういうことをしてまして……」



 「学生でカフェの店員で武術に長けている……キャラ濃すぎじゃないですか」



 「ここまで話したのはアオイさんが初めてかもしれませんね。なんでしょう、同年代くらいな気がしてつい口が緩んでしまうんです」



  クロハが少し照れくさそうに笑う。



 「あれ?言ってませんでしたっけ?私も学生ですよ?」



 「そうなんですか?リーダーたちと話が合ってたようなのでてっきりもっと年上かと」



 「確かによく年寄りだなって友達に言われますね。確かに昔の音楽やテレビとかも好きですけど」



 「でもわかります。私も数世代前のアニメとか結構みましたよ」



 「じゃあ○○○○ってわかりますか?」



 「はい、声優の□さんのデビュー作品ですよね」



 「ああわかる人初めて見つけました!クロハさんは本当に仲良くなれそうです」



 「あっ着きましたよ。準備はいいですか」



 「はい、今回は前衛をお願いします。私は援護射撃の練習をしたいんで」



 「了解。じゃあ行きましょうか」



  クロハがアオイに手を伸ばす。



 「はい!お願いします!」



 アオイは元気よく返事をして、その手をとった。


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