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0003 初共闘



 「新しくこのクランに入ることになったアオイです。ゲーム以外なら楽器をやってます。よろしくお願いします」



 クラン「白百合」の拠点で簡単に自己紹介をする。



 「ああそれで耳が良いんですね」



 「はい、いろいろ辛い時期もありましたけど続けてよかったと思える理由のひとつです」



 「よし、じゃあとりあえずクエストに行くこうか。まずはアオイちゃんの経験値稼ぎからだ」



 「ありがとうございます。それで、どこに行くんですか?」



 クエスト受注場所であるギルドと反対方向に進むリーダーを見てアオイが声をかける。

 リーダーは口にゆがんだ笑いを浮かべながら答える。



 「まずは第32地区地下迷宮かな」



 「地下迷宮って……推奨レベルが高かった気がするんですが?」



 「確かに初心者が調子に乗って入って死に戻りを繰り返すと有名な場所ではあるね」



 「私初心者なんですが」



 「大丈夫ですよアオイさん。私たちが付いてますし」



 「ああそうだな、いつもは三人で回ってるしルーキーが一人増えたところで問題はねえ」



 「クロハちゃんとデリクの言う通りだ。アオイちゃんを死なせることはないさ。ただレベルだけ上がっても困るから戦闘にはしっかり参加してもらうけどね」



 「はい、覚悟はできてます」



 「よしじゃあ行こうか」



 一行は目の前にそびえ立つ不可解な装飾が施された門をくぐる。それから間もなく洞穴の入り口が見えてくる。



 「よし、じゃあ各員の役割の確認をしよう。まずはクロハちゃん」



 「私は近距離での牽制とアオイちゃんとデリクさんの補給回復です」



 「よし、じゃあ次はデリク」



 「俺は中距離からのメイン火力だな。グレネードランチャーも持ってきたから大型の敵や群れてる敵を優先して潰す」



 「今回も前衛を巻き込まないでくれよ?じゃあ次はアオイちゃん」



 「はい、私は前衛で敵を足止め、もしくは群れから離れた敵を撃破ですよね。私やりきれる自信がないんですが」



 「大丈夫ですよ。目的は出来る限り多くの敵に弾を当てることで倒す必要はないです。離れた敵の方はリーダーがなんとかしてくれますし」



 「そうですね。死なないようにしつつも精一杯頑張ります」



 「よしじゃあそれぞれ配置について……進行!」



 四人は互いの距離を確認しながらそろそろと迷宮に入っていった。



 





 先頭を行っていたアオイがふと止まる。それを見てほかのメンバーも止まり、物陰に身を隠しながら通信機のスイッチを入れる。



 「何か変な音が聞こえませんか?」



 「アオイちゃん何か聞こえたのかい?」



 「はい、何かジーっという機械音が」



 「よしじゃあアオイちゃん、音の発生源を探してほしい」



 「はい、わかりました」



 「クロハちゃんはアオイちゃんについていってあげて。デリクは俺とその場で待機、俺は後ろを警戒しておくからデリクは前な」



 「了解です」



 「了解だ」



 アオイがきょろきょろと探している中、三人は手早く自分の持ち場につく。



 「アオイさん何かありましたか?」



 「多分こっちからなんですが……止まってください!」



 「えっ?あっはい」



 「絶対動かないでくださいね」



 そういってアオイはゆっくりとクロハに近づく。



 「えっちょっアオイさん?」



 「黙ってください」



 アオイはゆっくりとクロハに近づく。状況が読めないクロハは慌てるも、とりあえずはと言われたとおりに微動だにしなかった。



 「あの、ちょっとその……真剣な顔で迫られるとその……」



 「何を言ってるんですか?それよりもですね」



 目の前まできたアオイがクロハの目の前でかがみこむ。



 「カチって音がしたのでもしかしたらと思ったんですが、案の定でしたね」



 クロハの足元の土を慎重に掘っていくアオイ。そこには小さいスイッチがあった。



 「リーダー、このクランで罠の解体は誰の担当ですか?」



 「デリク、出番みたいだな」



 「おう、俺に任せとけ。とりあえずそっちに向かうが、どんな形状をしてる?」



 「えっと三脚の足みたいなのが逆向きにあって、その下は……」



 「いや、それだけでいい。おそらくただの地雷だろう。クロハはそこから絶対動くな」



 「はい、すみません私の不注意で」



 「謝る相手は俺か?それに本当に必要なのは謝罪の言葉じゃないんじゃないか」



 「はい。アオイさん今度は私が助けてもらえましたね、ありがとうございます」



 「いえいえ、たまたま気づけただけですよ」



 「じゃあ私は音源の捜索に戻りますね」



 「あっここら辺地雷地帯かもしれないので歩き回らないほうが……」



 そう声をかけられたアオイが突然ピタっと動きを止める。



 「……どうしました?」



 中途半端な耐性で止まったままのアオイを訝しんでクロハが声をかける。



 「どうやらですね……手遅れだったみたいです。私も踏みました」



 「デリクさーん!超急ぎでおねがいしまーす!」



 「はは、まったく手のかかる嬢ちゃんたちだぜ」







 「なんとか無事に抜け出せましたね」



 「はい、アオイさんのほうも踏んだ瞬間爆発するタイプじゃなくてよかったです」



 「なんとか接敵する前に処置できてよかったぜ。リーダー、終わったぞ」



 「もう遅いよ。後ろからエネミーが数十の群れで来てる」



 「なに!どうするんだ?」



 「とりあえず俺もそっちにいく。安全なルートを一本だけ残して後はふさいでおいてくれ」



 「なるほど、このトラップ群を利用するんですね」



 「おっルーキーのくせに話が分かるじゃねえか。その通りだ、さっそく作業に取り掛かるぞ」



 「あっそういえば音源も見つけました」



 アオイが指をさした方向をクロハとデリクは見る。



 「こりゃあ」



 「先に見つけといてよかったですね」



 そこは一見は普通の通路だが、壁に赤い光がポツンとともっていることがわかる。ちょうど反対側にも同じような赤い光が見える。ここはこのゲーム最大のトラップ、通称C4花火地帯だ。この見えない線に引っかかると辺り一帯に隠された火力の高い爆薬が一斉に点火するという死亡必至なトラップである。



 「じゃあ俺はこれを解除する。これは規模がでかすぎて扱いきれねえ」



 「わかりました。私とアオイさんでルートを塞いできますね。アオイさん、行きましょう」






 「クロハさん、これくらいでいいですかね」



 「はい、大丈夫でしょう。早く戻りましょう」



 アオイとクロハがデリクの元へ戻ると、すでに銃を構えていた。



 「お前ら間に合ってよかった。いまリーダーがエネミーを引き始めたところだ。早く配置につけ」



 「はい。そういえばリーダーってDEXにステータスふってるんですか?」



 「いや、あいつは最低限しか上げてないはずだ」



 「えっそれって今結構ピンチってことですか?」



 アオイの問いにデリクは大笑いしながら答える。



 「ははははは!まあ見てな。うちのリーダーはやるときゃやる男だぜ!」



 その言葉通りリーダーが何かをしながら走ってくる。



 「まだ遠くてよく見えないんですけど何してるんですかあれ?」



 「アオイさんこのゲームに部位欠損があるのは知ってますか?」



 「はい。確かプレイヤーにもエネミーにもあって、完全に動かせなくなるって……」



 「それです。リーダーさんは時折振り返って追いついてきそうなエネミーの足を撃ってるんです」


 よくよく見てみれば確かに振り返り、それとほぼ同時に引き金を引いているのがわかる。



 「クロハさんクロハさん」



 「どうしました?」



 「リーダーが今手に持っているのってスナイパーライフルですよね?」



 「そうですね。いつもの愛銃のライフルだと思います」



 「あれって重かったと思うんですが」



 「はい、STRを上げてないとすぐに重量過多になってしまいますね」



 アオイは一度目をこすってから再びリーダーのほうを見る。



 「どうも私の目にはリーダーがそのスナイパーライフルで部位破壊してるように見えるんですが」



 「あれはリーダーさんの十八番ですよ。ソロ時代に培った逃げスキルだと誇らしげに言ってました」



 果たしてそれは誇れるのかと疑問に思いつつも、アオイは銃を構える。



 「アオイさん、どうしたんですか?」



 「何がですか?」



 「いえ、そういえば仲間と共闘は初めてだったと思うとなんだかうれしくって」



 「そうですか。たしかに楽しいですよね、仲間がいるとより一層に」



 「おい二人とも、もうすぐだぞ」



 デリクのその言葉で二人は配置につきなおした。



 敵がトラップ地帯に完全に入り込む。視線の先のリーダーの右手が上がる。



 アオイは引き金に込める力をゆっくりと強くしていった。


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