ポストカード
冒険者/
その先の景色を追いかけるように、僕は駆け上った。やさぐれた星の忙しない瞬き。かさついた手がつめたい空を切る。見たかった。乱暴に包装紙を剥ぎ取って、出てきた世界を。あられもない情熱を。つま先から踏み出す度に、僕はまたひとつ僕から遠くなる。ファンファーレ。荒い鼓動が鳴り渡る。あいたい。夜を捲って。この胸の疼きを辿って。小さな傷口と、その奥のまだやわらかな皮膚。風が吹けばしみる、新しい世界へ。
吼える/
紛れもなく無知だった。軽率で空っぽで渇いていた。チリチリと胸をやく焦りと蒼穹。無意味なコントラストがやけに眩しい。逃げるように漕いだペダルがふと軽くなる。登り坂のてっぺん。街並みを蹴散らすように、がむしゃらに吼える。届かない。届かない。届かない。そんな想いを誰かに届けたくて。
風/
静けさの中で私はシルエットとなる。感情のさざ波にもう輪郭はいらない。吹きっさらしの荒野。青白い空気。私がいたのかもしれない。他人には知り得ない心の内に補足を付けるのも馬鹿馬鹿しく。足下で咲く名も知らぬ小さな花が、枯れ、芽吹きまた咲き誇る営みを繰り返す間に、私は推測になりたいのだ。
風は冷たかったのかもしれない。
あなたがそう感じるのなら、そうなのだろう。
透明な手紙/
私の言葉は盛大なため息。聞き流すぐらいが丁度いい。美しい冬の日、いなくなったもの達に手紙を書いた。元気で。幸せを祈ってる。どこか見知らぬ場所の郵便受けに、その手紙が辿り着く頃、私はその存在すら忘れてしまって、また同じような手紙をしたためるだろう。元気で。君の幸せを祈ってる。