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お父様のこと

男爵家に着くと、玄関のホールに立つ人がいた。赤みがかった茶髪の銀縁眼鏡をかける冷たい印象のイケメン。

この世界での父だ。


「おかえり。フェリシア、トゥーリア」

琥珀色の目を優しく細め、お母様を抱き寄せて頬にキスをする。

「あなた、帰っていらしたのね」

嬉しそうに微笑み、お父様を抱擁するお母様。

商家を経営するお父様、ウォルター・ラインヘルト男爵。商用の為、隣国に二週間程出掛けていたのだ。

「トゥーリア。僕のお姫様」

お父様が私を抱き上げて、頬を寄せる。くすぐったい。

「しばらく会わない間にまた可愛くなった?」

私と顔を近づけてニコニコと笑うお父様。クールな美形眼鏡の優しい笑顔に、私は鼻血が出そうですよ。

「おかえりなさい。お父様」

(眼鏡男子!萌える!)

と心からの笑みを父に向ける私であった。



自室で着替えを済ませ、夕食までの間、居間でお父様とお母様と3人でくつろぐ。

お父様とお母様は、一緒に長椅子に腰掛けぴったりと体をくっつけている。

その様子を見ながら、前世喪女だった私は、

(リア充爆発しろ!って、こういう時に使うんだっけ?仲良しなのに、弟妹はまだかなー)

と、ぼんやり考えていた。

「今日は実家で茶会でしたわ。トゥーリアは茶器の扱い方も上手になってきて。順序はきちんと覚えていますけど、動きはまだこれからですわね」

でも、本当に上手ですよ、と私に微笑むお母様。

うん、聖母のようです。眼福。

順序はお母様のお茶の入れ方を見て覚えたよ。でも実践は自分の能力次第。まだ子供だもん。これから発展するはず。

「トゥーリアは覚えがいいよね。僕はマナーを覚えるの大変だったよ。フェリシア、トゥーリアと一緒にまた僕のことも指導してね」

クールで切れ者と評判のお父様。家族の前だとそういう風には全く見えない。

お父様とお母様は夜会で知り合った。お母様に一目惚れしたお父様は、お母様の前で跪いてその手を取って言ったそうだ。



「僕に貴族のマナーを教えてくれませんか?」



愛の告白じゃないんだ?って、お母様から聞いた時は、そこからどうして結婚に繋がるのかと思ったよ。


お父様は平民から男爵となって、一通りのマナーは身につけたそうだけど、細かいところがわからなかったそうで。

ある夜会で女性の中で一際優雅なお母様を見つけて、それからお母様の亡くなったお祖母様が王宮で女官をしていて、貴族の子女に王宮仕込の行儀を教えていたこととか情報を仕入れ、お母様に先程の申し込みをしたとのこと。

お母様は伯爵家の負債が嵩み、婚約破棄をしたばかり。先が不安の中でお父様のその申し込みを一度は断ったそうだけど。


「これは取引です。あなたが僕に授けてくれるだろう貴族の知識は僕の大きな武器となる。僕は若造で貴族に舐められているから。でも僕はこの国で一番の商人になって王宮にも出入りする予定だから、マナーを知らない奴と足を引っ張られないようにしたい。対価はこのくらいでどうでしょう。後は、領地経営について伯爵に助言をさせて頂いても?」


と、お父様はお母様と、伯爵であるお祖父様にもぐいぐい押してみたり、引いてみたりして、了承を得たそうだ。

お母様は、マナーを教えると言っても下心があるのではないか、それでも金銭援助を受け伯爵家が立ち直れるのなら、自分が何かされても仕方ないと覚悟していたそうだが、マナーレッスンは日中の伯爵家で家人が見守る中で行われ、お父様は全く真面目だったそうだ。

伯爵家を訪れる時は必ず花束や小物をお母様に贈り、マナーレッスンではお母様の言う事を素直に聞きひたすら実践、伯爵家の領地経営について祖父と伯父に不快感を与えないよう言葉を選んで助言する。

クールで冷たい印象とは違う、お父様の真面目な好青年振りに伯爵家の皆は心を許してしまったと言う。


(ギャップ萌えの勝利ね・・・)


お母様もきっと、お父様の容姿と内面のギャップに恋に落ちたのだろう。

マナーレッスン過程が終了し、伯爵家も持ち直し、もう2人が頻繁に会うこともなくなるはずだったけど、


「僕は、物覚えが悪いので支えてくれる人が必要です。この先の人生を共に歩んでくれませんか?」

とお父様がお母様にプロポーズし、お母様は了承した。

お祖父様も伯父様も賛成してくれたそうだ。


素敵な話だと思うけど、社交界ではその話は知られていない代わりにお父様がお母様を金で買ったと事実無根の話となっている。


お父様は、

「僕、悪徳商人に見られやすいから仕方ないんじゃない?」

って気にしてないけど。



私の未来に繋がることだから、なんとか認識改めてもらって!!






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