与えられた命
セシリオとアルティエの嫌悪感に満ち、蔑みの表情を思い出す。
いつもは、ふわふわと優しく微笑んでいる二人の兄妹がそのような表情を浮かべることに、私はひどく驚き、そして・・・。
(イイよ!イイ!天使のような二人に隠された腹黒な顔!!ギャップに萌えるわ!!)
と、残念なことを考えていた。
お茶会が終了し、お母様と一緒に伯爵家を辞す。馬車に揺られ、疲れでウトウトするとお母様が抱き寄せてくださった。
ふんわりと良い匂いがする。
「着くまで休んでなさい」
優しく髪を撫でてくださる。
お母様もお父様も、私に優しい。私はそれを申し訳なく感じる。
私は本当のトゥーリアではないのに。
私が、この世界を前世の乙女ゲームだと気づいたのは、3歳の時だ。病にかかり高熱が何日も出た。病が回復した時、私は、前世の記憶を取り戻した。
私はトゥーリアがヒロインの乙女ゲームは何度かしかしたことがない。特にやり込んだわけではなく、前世でその存在すら忘れていた。
何故乙女ゲームかと気付いたのか、それは前世で読んだこと、目にしたこと全てを、現在の私は思い出すことができる。
いわゆるチート能力ではないかと思う。
現世でも、覚えておきたいと思ったことは覚えられる。前世で物事を忘れやすかったので、ありがたいと思う。
乙女ゲームに生まれ変わったと知ったときは、
「異世界転生!?マジか!どうせなら、某美少年アニメの世界に生まれたかった!あっちのセッちゃんとティエに会いたかったー!!!」
と叫んだものだ。
何故そんなに好きではないゲームの世界に生まれなくてはいけないのか。
納得がいかない。
納得いかないが、与えられた命。
裕福な男爵令嬢として、恵まれたこの環境を手放したくないので、絶対逆ハーを阻止して、穏やかな暮らしを守ります!!
某○ン○厶ですかね。