ぎりぎりまだ30代です
(セッちゃんてば、こわいよ)
とか、かわいこぶってみたものの、前世30代、現世の歳を足してもぎりぎりまだ30代の精神年齢の私が、8歳の男の子に睨まれたからって本当に怖いはずはない。
「セシリオ兄様、可愛いものは愛でられて当然ですわ」
すまして、従兄に答えると、
ますます意味がわからない、と眉間に眉を寄せる従兄のセシリオ。
(セッちゃん可愛いー!)
と、セシリオの困りぎみの美少年ぶりを見て内心にまにましてしまう。
「めでる?」
隣に座っていた従妹のアルティエが、言葉の意味がわからず首をかしげる。
こちらもセシリオによく似た美幼女だ。
今日は王都の外れにある、伯爵家の屋敷で新緑を眺めながらお茶を楽しんでいる。
私達、子供組にはマナーレッスンを兼ねている。
私の現在の年齢は5歳、セシリオは8歳、アルティエは4歳だ。
三人とも、3歳からマナー教育が始まっている。
私は大分マシになってきたが、アルティエはまだ手が小さいこともあり、茶器を持つ手が震えたり、取り落とすこともある。セシリオは優雅だ。
セシリオとアルティエは、白っぽい金髪に紫色の目を持っている。
二人とは仲良しだと思う。
今、は。
セシリオは、前世の乙女ゲームの中の攻略対象者だ。
アルティエも、何人かいる攻略対象者の婚約者だったはずだ。
前世の乙女ゲームで、仲の良かったはずの二人は言ったのだ。
「平民の血が混じってるあなたと、本当に仲良くしていたと思っていたの?」
「叔母様をお金で買った父親とお前はそっくりだ」
嫌悪に満ちた表情で、トゥーリアは言われたのだ・・・。
セッちゃんの名前が決まりました。