リリアリムの子供たち
「エル!ギルとトゥーリアを二人きりにさせるなど、何を考えている!?」
サミュエルとアルティエに引きずられ、セシリオ達三人は、アルティエの私室にいた。
アルティエは侍女を呼びお茶の支度をさせ、人払いを命ずる。
「お兄様、落ち着かれて」
優雅にお茶を飲みアルティエはセシリオを宥める。
「そうだよ。菓子でも食べろって」
サミュエルは早速寛いだ姿勢で長椅子を占領している。
セシリオはサミュエルを睨み付け、イライラと指を唇に当てる。
「今日はギルの護衛が、ティムではなかったからギルがトゥーリアに会いにきたんだな?エル」
「違うよ。ギルがセスの家行くって言うから付いてきただけ」
「今日は護衛の日だろう」
基本、夜間や公務以外の平日は、第三王子を警護するのはティモシーが主であり、休日はサミュエルが警護することになっている。
「まあ、そうだけど」
へらりと言うサミュエルに、セシリオの眉間の皺が深くなり口を開こうとしたが、
「俺の家はリリアリムの子供達に甘いからさ~。ギルの望むことはしてやりたいんだよね」
と、仄かに笑うサミュエルの顔を見て口を閉じる。
サミュエルのグラッド侯爵家は、聖女リリアリムの親友が興した家であり、侯爵家の一族は親愛を込めて王家の人々を『リリアリムの子供達』と呼んでいる。
王族への忠誠心は国一番であり、王族からの信頼は厚く、子息は必ず王族の側近第一の位となる。
普段とは違う、静かな表情のサミュエルに、王族の護衛の意味がわかっているのか!?と怒ろうとしたセシリオの口からポロリと漏れたのは、
「・・・君たちを二人きりにさせるといたずらが多かった」
つい最近までの二人の姿。
以前、ギルとサミュエルは二人きりにさせると、いたずらが多かった。年長者であるセシリオは何度手を焼いたことか。
今は全く以前のことを感じさせないほど、ギルは落ち着いたが。
悲哀を、感じさせる程に。
なぜ、まだ少年であるギルにルケンティヒを滅ぼせと国王は命じる?
なぜこの国の歴史は第三王子ばかりを犠牲にする?
口に出せないギルへの哀れみと憤りがセシリオの胸にあった。
「最近、ギルはおとなしいからな~。もっと暴れたら楽しいのに。
つか、あの二人、二人きりにさせたってティムが知ったらどう思うかな~?婚約者だろ?」
表情をガラッと変え、にやりと笑うサミュエル。
ティムがトゥーリアに対して、婚約者として誠実に対応しているのを、サミュエルもセシリオも知っている。
婚約者であるなら、男女二人きりにさせたことに彼なら異を唱えるだろうし、男性に対しても警告を行うはずだが、主君であるギルに対してどう行動を起こすのか。
「面倒なことを・・・。黙っていろよ」
額を押さえるセシリオ。
「えー?面白いじゃん?」
そこに人払いを命じた筈の侍女が、ノックをして部屋に入ってくる。扇を広げたアルティエに耳打ちをする。
「まあ、大変」
大変と言いつつ、アルティエの顔は涼しい。
セシリオの妹はいつでも冷静だよなあ、とサミュエルは思う。
「ティモシー様がいらっしゃいましたわ」




