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ユーフィミアの想い

更新が遅くなり申し訳ありません。

第三王子であるギルスバードの後ろを歩きながら、先程の令嬢が廊下の端で第三王子に向けた王族への最敬礼を思い返していた。

優雅で可憐な姿。


でも私が感じたのは。


(トゥーリア・ラインヘルト男爵令嬢・・・。地味な子ね)


学園の敷地内は王族への最敬礼は本来ならしなくても構わない。学び舎では王族も貴族も平民も上下関係のない同じ学園の生徒だからだ。

ただここは王族のみが使用できるサロンである。彼女は自分がどう振る舞えば良いのかわきまえているのだろう。


(男爵令嬢でしかない立場、それとも断罪を受けたくないヒロインとしてかしら?)


間近に見た彼女は、私の記憶の中で明るく朗らかに笑って、誰彼をも惹きつける魅力に輝いていたヒロインとは全く違っていた。

優雅な振る舞い、謙虚に微笑む淑女。可愛らしいのに不思議と華のない目立たない姿。

私は確信する。


(きっと彼女も転生者ね)



サロンの扉が開く。

ソファに腰掛けて、お茶を飲んでいたクラウスが私を認めて破顔した。


「姉上!」

「ラウ、迎えに来てよ。帰りましょう」

子犬のように私に飛びついてくるクラウス。もう身長は私とそんなに変わらないのに甘えん坊だわ。


「クラウス、トゥーリアへの授業で何か変わりがあったか?」 

第三王子がほんの少し眉をひそめ、クラウスに尋ねる。珍しいわね、彼がそんな顔をするのは。


「変わりですか?何もなかったと思いますけど?どうしてですか?」

小首を傾げクラウスは答える。人差し指を頬に当てて。まあ、可愛らしくてよろしいわ!


「・・・ルケンティヒのことを知りたいと、争いの理由を知りたいと言うことだったが、それだけか?」

「そうですね、何か企みがあるような感じはなく、純粋な好奇心だったのではないでしょうか」

「そうか」

ギルスバードはそれ以上言葉を続けなかった。

クラウスは、どうしたんでしょうね?と言うように上目遣いで私にアイコンタクトを取る。

ああ、萌え死にそうよ!


ティモシーが戻って来たので、私とクラウスは第三王子に別れを述べ帰ることにした。

仲良く手を繋いでね!


※※※


屋敷に向かう馬車の中でクラウスに問いかける。

「今日の授業のご令嬢、トゥーリア様。可愛らしい方ね?」

「そうですか?まあ、礼儀作法は正しく身についているようで感心しました。セシリオさんとアルティエの従姉妹と言うことですから、同様の教育を受けたのかもしれませんね」 


そう、彼女はセシリオとアルティエの従姉妹。

伯爵家から公子であるクラウスの婚約者となったアルティエ。

もし、トゥーリアがアディンセル伯爵家の養女となれば?


(トゥーリアがクラウスの婚約者になることも可能ではないかしら?)


サロンでのお勉強イベントを行ったのだもの。クラウスルートに彼女は進むのではないかしら?



※※※


私が前世を思い出したのは3歳の頃。伯父である義理の父と義理の母、乳母に抱かれる赤子のクラウスと共にリリアリム学園の聖堂にお参りに来た時のこと。

女の子は玉の輿に乗ったリリアリム様にあやかって節目にお参りをするのだ。


「りりあ、りむしゃま?」

神官からリリアリム様のありがたい話を聞きながら、私は首を傾げる。胸に何かが引っかかった。


(ゆーふぃみあ?くらうす?がくえん?)


「りりありむがくえん?」


言葉に出した時に、頭がスッと切り替わった。

3歳の幼女から、○○歳の、前世の記憶に。


(リリアリム学園!愛は真実の彼方に!)


チャララ〜とBGMが頭の中で流れた。


異世界転生とか、ひどくショックを受けたはずなのに、気絶しなかった私は偉いと、その時を思い返しては自分を褒めている。


屋敷に戻ってから、侍女や侍従から情報収集し、今いる世界は、乙女ゲーム『リリアリム学園〜愛は真実の彼方に』とよく似ていると確信した。


私はヒロインの攻略を阻もうとする、公爵令嬢ユーフィミア姫。

悪役の立場に分類されるのかも知れないけれど、ヌルゲーだったので攻略対象者の婚約者共々、断罪イベントもなく、最終的にはヒロインと友情を育んだりもしていた。


なので、学園でヒロインが現れても、彼女の邪魔をする気はなかった。

問題なのは、ユーフィミアがクラウス公子がヤンデレになった原因の一つであること。


(可愛いクラウスたんを虐めるなんて、私にはできない!)


前世の私は、ショタコンだったのかクラウス押しだったのだ。ヤンデレも好みではあったが稚い赤子を虐める気にはなれなかった。


なので、クラウスをとても可愛がった。その過程で養父母の間の誤解が解け、二人の気持ちが通い合い、仲の良い家庭となれた。

だから、今のクラウスにヤンデレ属性はなく、ショタ属性だけがある!



とっても可愛い義弟であり、従弟。

私の気持ちはきっとおかしい。前世の記憶があるからか親族への気持ちより、幼馴染の男の子と思っていたのかもしれない。


クラウスに見つめられ、スキンシップを受ける度に胸が高鳴る。

この気持ちは叶わないのに。

クラウスにはアルティエがいる。私には第三王子の仮の婚約者という立場がある。

何より、王族のいとこ婚は禁止されている。


だから、この気持ちは胸の奥底に沈めよう。クラウスがアルティエでもトゥーリアでも、どちらを選ぼうが、姉と言う立場は消えないのだから。

第三王子と婚約破棄をすれば、良縁は来ない。私はずっとクラウスの姉でいられるのだから。



(でも第三王子はトゥーリアがお好きなのかしら?さっきはびっくりしたわね。でもティモシーの婚約者に決まったのよね?サミュエルとも仲良くしてるらしいけど。・・・大丈夫かしら?あの子、逆ハールートを知らないの?)


逆ハールートでヒロインは断罪を受ける。意味がわからないシナリオにネットで専用板が作られたりした。

何故ヒロインが悪役になるのか?

色々仮説が立った。私はそこまで熱心に見てはいなかったけど、一つ気になる仮説があった。


トゥーリアと言うヒロインの名前。(ヒロイン名は自分の名前とかにも変えれるけど)

人名としては変わっている。その名前の意味。トゥリア、ギリシャ語で3つと言う意味ではないか。ノーマルエンドの普通の幸せを掴むルート、バッドエンドの悪女として裁かれる逆ハールート、それ以外にもう一つのルートがあるのではないか。


(もう一つこそがトゥルーエンドなのかしら?)


まあ、私には関係はないことね。

第三王子の婚約者を無事に務め終えたら、クラウスの側で小姑として生きてくだけだから!


 





ユーフィミアとクラウスは両思い。ユフィちゃんはクラウスのヤンデレを回避したと思ってるだけ。彼女はあまり深く思考しないので、お馬鹿なところをクラウスに見抜かれて愛されてます。

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