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学べよ、求めよ

ルケンティヒ国の情報が極めて少ない。


私はこの事に気が付き、どうしても気になって学園の図書館や王立図書館を調べなおしていた。

私は性格なのだろう、気になった事を調べ尽くして納得しないとすっきりしない性格なのだ。


「やっぱり少ない」

今日も学園の図書館で本を手に取り、こっそり呟いた。


「トゥーリア、調べもの?」

背後から声をかけられた。ファナだ。

そばかすの目立つ顔に、肩で切り添えられた麦わら色の髪。ニコニコと人好きのする笑顔の彼女はその姿から似つかずとても賢い人だ、と思う。


「そう、知りたいんだけど本に書いてある内容が少なくてわからないの」

何が知りたいかについては濁して私は答える。

「トゥーリアが知りたいこと。学園の授業内容にないことですねー。なら学園長にお願いしたらいかがですかー?」

「学園長?」

「リリアリム様は学べよ、知恵を求めよ、さらば与えられんと言ったとか言っていないとか。学園の理念ですよー」

「!」

リリアリム学園の理念。それは知りたいこと、学びたいことが学園の教科にない場合、学園長の許可を得れば専門家を呼ぶことができる。


※※※

私は悩んだ。悩んだ末、知識欲に負け学園長にお会いする申請を行った。


そして。


「まあまあ!あなたは何を学びたいのかしら?今まで私が学園長になってから、色んな子が知識を求めてこの部屋に来たわね。さぁどんなことを学びたいのかおっしゃいな」

学園長は女性だ。リリアリム学園の学園長は代々女性が務めている。この方は教育、福祉分野の専門家だったはずだ。


緊張で手先が冷たい。

「私はルケンティヒ国について学びたいのです」

「まあ、ルケンティヒ国を?」

学園長は微笑んだまま、探るような目をした。

「我がヴァルテリッド国とルケンティヒ国は長年敵対関係にあります。その敵国について学びたいと?それは何の理由があってからかしら?」 


指を組み、背筋を伸し学園長を見つめた。

相手を恐れてはいけない。相手への敬意は忘れず、だが必要以上にへりくだる必要はない。

お父様が交渉に臨む時のように。


「私は父の商会を引き継ぐ予定です。各国に取引先があります。もちろんルケンティヒ国とも。各国の風習や文化について学ぶ中、ルケンティヒについてはわからないことが多く、知りたいと思うのです」

「それだけ?良い子の模範解答ねぇー」

肘掛けに肘を付き、学園長は人差し指を唇に当てた。

「私は学園長ですから、生徒の悩みを聞くのも仕事なの。本音で話してもいいのよ。秘密は守るから」


その言葉を信じてもいいのか。学園長の瞳は穏やかだ。


「なぜ2国間の争いが収まらないのか。理由を知りたいだけです」

「知ってどうするの?」

「何もしません。私にできることなんてないでしょう」

「裏返せばできることがあればするってことね?」

「・・・・お答えできません」


(平凡な自分にできることはないだろうし、できることはするなんて私一人の問題じゃないから答えられないよ!)


「では質問を。なぜルケンティヒ国の事を学べると思ったの?世に流通しているルケンティヒ国についての本が全てよ?」

「いいえ。かの国と敵対関係にあるなら、もっと詳しい情報をヴァルテリッド国は持っているはず。そうでなければ常に戦を有利に終わらせられるはずがありません」

「そう、・・・あなたはルケンティヒ国を知りたいだけなのね?国に仕えたいとか、そういう理由ではなく?」

私は頷く。国の役人なんて務まりませんよー。ムリムリ。

学園長は顎に指を当て考え込む。

「・・・とりあえずは王城に上申しましょう。叶えられるかわかりませんが」

「難しいですか?」

「そうねぇー。リリアリム様が学びたい子には学ばせなさいと仰ったから、この学園と制度がある訳だけど国としては利益がないことにはなかなか許可を出さないかもねー」


そうだよね、と私も思う。まーダメ元だし、収穫としては学園長はフレンドリーだったことを知った。生徒の悩み事相談を随時行っているそうだ。



※※※


結果として、私はルケンティヒ国について学ぶことを許された。

学園長の部屋に呼ばれ、そのことと授業の日時を告げられた。

そして、今日がその日。

学園長の部屋から更に奥の廊下を学園の衛士にクネクネと案内され辿り着いた部屋。

やけに豪華な部屋だよねーと、私は長椅子に腰掛けて教師を待つ間、部屋の中を見渡す。

うん、何だかここ見たことあるよ!ゲームで!

ここ、王族専用のサロンだよねー。


ガチャリと扉が開いた。

「お待たせしましたね」

慌てて立ち上がる。入ってきたのは、にこやかに微笑むクラウス公子、そしてその背後に立つ私の婚約者になるだろう、無表情のティモシー。


(ああ、なんかイベントを私は踏んじゃったのか?)


かろうじて食堂の時以外、接点がなかったクラウス公子と対面することになるなんて!


私は王族への最敬礼を無意識に取りながら呆然としていた。






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