跡取りだそうです
書いた話をうっかり消してしまい書き直しました!
ギルちゃんとユーちゃんが婚約内定したと言う話が王都に広まり、学園では二人が揃って談笑する姿が見られるようになった。
学園の女子生徒達は節度を守り、必要以上に第三王子に近寄らなくなった。
私は二人の仲良く談笑する姿を遠目に見かける度に胸は痛んだけど、侍女達に初恋は実らないと言われているので、
(お幸せに・・・)
遠くから二人の幸せを祈っている。
私の方も婚約者が決まりそうだと先日お父様から話があったが、頭の重いことになっている。
※※※
家宰のヒューに呼ばれ、父の書斎に出向く。ヒューが茶の支度をする中、お父様と近況を話し合う。
お茶を飲み、ヒューの見守る中お父様が口を開いた。
「トゥーリア。君の婚約者が決まりそうだよ」
「まあ、どのような方ですの?」
来たか!と内心叫んだが、表面上はおっとりと小首を傾げ尋ねる。
まあ、お父様を信頼しているので、お父様が選んだ人間なら人格的にも能力的にも優秀な人だろう。
「僕の取引先のお家のご子息でね、真面目で優秀な方だよ。ご子息よりご主人が君を気に入られてね」
「まあ、どうしてですの?」
なんでだ?
「君から政略結婚したいと言われ、僕がどんなにびっくりしたかと話したら、いたく感心されていた」
ん?
「昨今、貴族も平民も恋愛結婚に憧れ、親の決めた結婚を嫌がる者が増えているそうだよ。恋愛を否定するわけではないが、貴族の婚姻は義務が掛かっていることが多いからね。義務を蔑ろにする風潮にその方は危機感を感じているようだ。そのようなところに君の話を聞いて、年若いのに心構えが立派だと褒めていらした」
「とんでもございませんわ」
(打算!打算だから!心構えなんて全然ないし!)
恥ずかしくて内心身悶えしている。
(ていうか、お父様、取引先で娘の話しないでよー!)
あー、恥ずかしい、恥ずかしいと心の中で呟いていたので次のお父様の言葉を聞き落とすところだった。
「その家のご子息を我が家に婿に迎えようと思う」
え?
「婿?」
「そう、君は婿を迎え、僕の跡を継いでほしい」
いやいや、我が家にはれっきとした弟のルルーディンがいるではないか。
「ルルがいるではありませんか。なにを仰っていますの?」
意味がわからない。
「ルルにはまた違う会社を渡すつもりだよ。でもルルはまだ幼いし僕に万一があった時に采配できる人間を作っておきたい」
「万一ってお父様、何か危険なことに関わっていますの?」
ゲームの逆ハールートでお父様は暴徒に殺されてしまった。ゲームと現実は違うだろうが、この先お父様に万一が起こる可能性もあるだろうか。
それを考えてしまうと、目に涙が浮かんできた。
慌ててヒューがハンカチを差し出してきたのを受け取り、目元を拭う。
お父様は静かな表情だ。
「トゥーリア。人の上に立つものに安全な生活はないよ。どうしたって妬みや嫉み、逆恨みは出てくる。万一が起こらないように身を守る対策は取っているよ」
大丈夫だよ、とお父様がテーブル越しに手を伸ばして頭を撫でた。
「トゥーリアが僕の跡を継ぐことで君にも危険なことが起こるかもしれない。・・・だからこそ、君の婚約者は君を全てから守ってくれる人に僕はしたつもりだよ」
「お父様・・・」
この時は、お父様が結構ハードボイルドな世界で働いているんじゃないかと心配で、そのまま話はうやむやに終わってしまった。
急にルルではなく私がお父様の跡取りと言われ、頭が真っ白になったせいでもあるが。
※※※
数日後、お父様に尋ねた。
「先日の話、お父様の跡取りは私の婚約者で良いのではございませんの?」
この国の女性の地位は低くはないが、男性が表に立ち、女性は内向きの仕事をする傾向である。女性が跡を継ぐ家もないことはないが婿を迎えるなら婿を後継者に立てるべきではないだろうか?
「ねえ、トゥーリア。君は僕に政略結婚の相手を探してほしいと頼んだよね?」
「まあ、そうですわね?」
うん、それが何か?
「僕は商人だよ?依頼するには対価が必要だよ。トゥーリアの婚約者を探してほしいという依頼の対価がなんだろうと思って、僕の跡取りが良いかなって思ったんだよね」
えええ!そうなるの!?
「お父様、依頼ではなくて娘からのお願いですわ。お父様は娘のお願いから対価を取りますの?」
ひどい、と目をウルウルさせて見るがお父様はニヤリと笑うのみ。
「僕はトゥーリアのそのお願いは聞きたくなかったから、依頼と言う形で叶えてあげたんだよ?対価はしっかりと貰わないとね」
悪徳商人やー!ここに悪徳商人がおる!
「これに懲りて、君は自分の言葉に責任を持ちなさい。うっかり呟いた言葉がこのように揚げ足を取られることもあるのだから」
ごめんね、とお父様は小さく呟いた。




