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地味に生きよう、そう思っていました。

学園に入学してすぐに、ギルスバード王子を遠目に見かけた。

女子生徒や、側近に囲まれていても、彼の黒髪や黒い目はとても目立つ。 


(ああ、遠い人だなぁ)


前世では身分の違いなど、そう感じる機会はなかったが、ここでは彼と自分との身分差をはっきりと感じる。 

ゲームの中では、トゥーリアがギルスバード王子に自ら話しかけに行っていたが、この現実では畏れ多くてできるわけがない。


見つめているとギルちゃんがこちらを見た。視線が合わさり、一瞬ドキッとしたけど、彼はまるでそこらの景色を見ているように、表情は一つも変わらない。


(・・・ちょっとだけ、前みたいに声をかけてくれるかもって、期待しちゃったじゃん。気まぐれに優しくしないでほしかったよ、バーカバーカ)


そう思って、くるりと方向転換しその場を立ち去った。



※※※


あれが、トゥーリアかぁ。


しばらく王子を見ていた見覚えがない新入生。聞いていた容姿であるピンク味を帯びた金髪に、キラキラ光る緑の瞳から、ラインヘルト男爵令嬢であると確信した。

まだまだ子供だけど、顔立ちは可愛らしく、歩く姿は優雅で貴族の子女の中でも目を惹く。


そして、隣のギルが面白い。

トゥーリアに気づいているはずの彼は、表情こそ変わらないが、上の空だ。平常心を取り繕いたいからこそ、表情が変わらないのだ。


聞くところによると学園に入る前のギルは、トゥーリアを非常に可愛がっていたらしい。しかし、トゥーリアはギルに近づこうとはせず、立ち去った。

ギルもトゥーリアに声をかけないと言う事は、一般の生徒に対する、必要以上に親しくならない姿勢を取るつもりなのだろう。


(なんでだろうね?)


我儘王子が気まぐれに可愛がっただけなら、ギルは動揺を見せないだろう。

以前、王子はトゥーリアについて、『自分には関係ない』と言っていたが、その時も素っ気ない口振りのようで、焦りが見えたので、面白いと感じたのだ。


(俺がトゥーリアにちょっかいをかけたら、ギルはどういう態度取るかな?無関心?それとも?)


サミュエルの口元が、ニヤリと上がった。



※※※


学園生活は、最初こそぼっちだったが、クラスメイトは皆親切で、話の合う友達が何人かできた。

空き時間に図書館で読書をしていると、同じように読書好きな子たちがいて顔見知りになり、仲良くなったのだ。

ランチタイムは、友人とお勧めの物語について熱く語り合っている。

前世も今世も、オタク女子はいるものだ。


母に連れて行かれた集まりで友人ができなかったのは、向こうの子達がリア充であったため、リア充を怖れ地味を愛していた前世の自分が、無意識に彼らに敵愾心を抱いたのではないかと、最近ハッと思いついた。


せっかく美少女に生まれ変わったのに、見事に残念だ。

だが、ゲームのトゥーリアのように派手に振る舞っては、攻略対象者を引き寄せるもとになる。私は地味に生きよう。



そう思っていた。


目の前に豪奢な金髪を揺らし、笑みを浮かべた美人が座っている。うっとりと見惚れてしまったが、水色の瞳、左目の涙ボクロで攻略対象者のサミュエル・グラッドだと認識する。


女好きの騎士、サミュエル。美しい容姿で色々な女性と浮名を流す。

彼は幼い時に母親を亡くしたため、母性を無意識に求めている。付き合う女性がサミュエルの容姿を愛で、表面的に甘やかす中でトゥーリアだけが彼を心から叱り、彼の内面を理解した。

とかなんとか。ベタな設定だ。


ああ、美人だ。


だが、何故彼は女装しているのだ?






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