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身の程をわきまえよ

学園に到着し、お父様に手を引かれて馬車から降りる。周りには何台も馬車が止まり、貴族の子女達が親や従者としばしの別れの挨拶をしている。

王都に住む貴族は学園へ馬車で通うのが一般的なので、広い馬車の停車場が学園にはある。

平民は歩きか、乗り合い馬車で通うか、遠方から来るものには、寄宿舎がある。

私はもちろん通いだ。これから毎朝お父様か、家人に送ってもらうことになる。箱入り娘ですから!


「では、お父様、行ってまいります」

「ああ、楽しんで学びなさい」

「はい!」

お父様の素敵な笑顔に癒やされて、私は1人で白く輝く学園に向かう。白いリリアベルの花が満開でさやさやと擦れて音が聞こえる。かすかに漂う甘い香り。

前世の新学期の始まりのうきうきした気持ちを思い出し、懐かしく感じる。


今年の新入生は40人程度だ。

集められた新入生は、学園長や教師から学園生活の説明を聞かされる。特に担任の教師はいないとのこと。義務教育以外に学びたい教科は自分からその教科の担当教師に申し込みをするそうだ。

学園に教えられる教師がいない場合は、学園長の許可を得て王宮に上申し、その専門家を呼ぶこともあるらしい。滅多にないようだが。


※※※


新入生は、最初の数ヶ月はマナーを叩き込まれる。平民はもちろんだが、貴族の生まれでも容赦なく一から教えられる。

教師は、上級生だ。


「レイモンド、背中が曲がっている」

「キャスリーン、笑顔」

「フィリス、相手に体を寄せて」

「トゥーリアはもっと楽しそうに!」


えー、楽しくないし〜。


現在、私達のクラスはダンスの練習中だ。

お母様からマナーレッスンを受けていた私は、新入生が受けるマナーの勉強なんてお茶の子さいさいと思っていました。

ダメ出しされるなんてあるはずないわ!と思ってましたが、もっと自分を表現して!ってなんですかそれは。女優ですか。


「ダンスは皆苦手みたいだね」

一緒に踊るセシリオに言われる。15歳になるセシリオは、少年から大人になる手前の不思議な色気を出している。

美少年の色気に当てられ、クラスメイトの女子達はセシリオと踊るときは皆ガタガタである。私は、セシリオとは小さい頃から練習相手でよく踊って慣れているからまだマシなのだ。


「皆、緊張してるんですわ。第三王子殿下もいらしてますし」

そう、新入生のマナーレッスンは、礼儀に長けた上級生が指導を行うので必然的に高貴な位の家の者が担当する。二学年上の第三王子が駆り出され、今年度の新入生は、王族から直々にマナーを学ぶというプレッシャーがあるのだ。


踊りながら、ちらりとギルちゃんに視線を走らせる。

二年ぶりにあったギルちゃんは、最後に会った日より身長が伸び、更に大人びた。

まだ14歳の少年ながら、口の端に笑みを乗せ、自信に満ちた態度で王族らしく他者を惹きつける雰囲気。

末子である為、王妃に非常に可愛がられ我儘が目立つが、学業も剣の腕も優秀であると評判だ。

同じように優秀な兄王子達がいるため、彼は王にはなれないだろうが王家と繋がりを持ちたい貴族達は彼に取り入ろうとする。

学園で彼はいつも女子生徒に囲まれている。第三王子の婚約者が発表されていないため、皆、結婚相手に選ばれたいと必死だ。


最有力なのは、ギルちゃんと同学年のローデナム公爵家のユーフィミア姫ではないかと噂に登っている。彼女の弟は私より一学年上の攻略対象者のクラウスだ。


ユーフィミア姫は、薄い茶色の髪に透き通る白い肌、濃い紫の瞳の印象キツめの美人だ。ゲームの中では18歳で胸がとても魅力的で、トゥーリアと違い大人の色気があった。

前世のゲームの中で、彼女はギルちゃんの婚約者になりたいと頑張っていた。

トゥーリアがギルちゃんのルートに進むと、彼女はトゥーリアにテンプレな意地悪をしてくる。 

まあ、バッドエンドでギルちゃんは他国の王女と結婚していたから、ユーちゃんの恋は実らないんだけど。

クラウスルートでも、身分違いをわきまえよと意地悪をしてくるが、クラウスとのハッピーエンドでは、トゥーリアの頑張り?に絆されたのか、最終的には仲良くなっていた。


「トゥーリア、ギル王子には近づいてはいけないよ」

私の視線の先を見てセシリオが困ったように微笑んで言う。

セッちゃんはいつも、私に対してこんな笑い方だ。

血縁的には従兄妹、でも位は平民に近い男爵令嬢だから、扱いに困るのだろう。

「王子から親しくされたことは忘れなさい」

身の程をわきまえよと、セッちゃんは言っているのだろう。

「はい、セシリオ兄様」

にこりと微笑み返して、私は答えた。





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