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少女と神様  作者: 古伝奇より抜粋、語り人不明
1/2

前編

昔ゝある所に大きな山がありました。


何日も暑い日が続いたある晩、近くに住む人間が赤子を捨てに来ました。


近くの川は暑さで干上がり、大人でも生きのびられるか分かりません。

もっと弱い赤子はすぐに死んでしまいます。

でも人間は、目の前で赤子が死ぬのは見たくありません。


人間は山に入れないので、山の入り口に赤子を置いて帰ります。

最後にそっと抱き寄せて、お別れを言ってから。


地面に寝かせられた赤子は、そのまま夜空を見ています。

今日は特別な晩なのです。

水色に輝く大きな月が一晩中夜空を照らしています。

この月は、一年に一度だけ空に上がるのです。


赤子が寝かされて暫くした頃、近くに影が下り立ちました。

影は少しの間赤子を眺めると、自らの姿を変えてから抱え上げ、ふわっと山に入っていきました。




赤子は影に抱えられたまま、山の中にある屋敷に連れてこられました。

屋敷の明かりで、影は黒い服を着た大きな男だと分かります。

赤子を置いていった人間よりも大きいですが、赤子はぐずったりせず、じっと男を見ていました。


その男は神様でした。

この屋敷にお供達と一緒に住んでいます。

人間の気配に山の入り口へ向かえば、小さな人間が置かれていたので持ってきました。


神様はお供を一人呼び、小さな人間の世話を任せました。

お供は赤子と言っています。人間はこの姿の時は赤子と呼ばれるのでしょう。

赤子をもう一度眺めてから、自分は暫く部屋に籠もる事にしました。


神様は部屋でぼんやりしてから転寝をしました。

起きてからも暫くぼんやりしていましたが、赤子の事を思い出したので、部屋から出てみました。


戸を開けると誰かが近付いてきます。

そこには、赤子の世話を任せたお供と、赤子ではない人間がいました。

神様より遥かに小さいですが、赤子より大きくて自分で立っています。

お供と同じ服なので、女のようです。


神様が不審に思っていると、お供から神様が部屋に籠もっている間に水色の月が二回上ったと教えられました。


人間と一緒に過ごさない神様は、転寝の間に姿の変わったのを面白く思いましたが、うっかり眠り込んだら次に起きた時にいないかもしれません。

せっかく持ってきたのにそれは残念です。

そこで神様は、大きくなった赤子がいなくなるまで、起きている事にしました。


神様が考え事をしている間、子ども-大きくなり呼び名が変わったそうです-はじっと神様を見ていました。


子どもを見下ろすと、お供から何か聞いているのか「かみさま?」と呼ばれました。

その首を傾げた姿と自分に呼びかけた声が気に入った神様は、子どもに飾りと名前を与えました。


飾りを付けて、名前を呼んだ時の顔も気に入りました。

お供の真似をして頭を触るともっと神様の気に入る顔をしましたが、うっかり小さな頭を潰さないか心配になります。



お供は手ずから飾りを与え、恐る恐る子どもの頭を撫でる神様に、とてもゝ驚きました。

子どもは満面の笑みを浮かべ、神様はいつになく機嫌が良さそうです。

お供は気にしないでおこうと決めました。




それから子どもは、毎日神様や一緒にいるお供と時間を過ごしました。


他のお供達はご飯を作ったりお部屋を綺麗にしてくれて、時々子どもの相手もしてくれます。


子どもは庭を走ったり花を摘んだりするのも、お供に文字を習うのも好きでしたが、神様と居るのが一番好きでした。


最近のお気に入りは、お供に習った文字で神様にお話を読む事です。


神様の横でお話を読んでいましたが、気が付くと神様は眠っていました。

少し残念でしたが、日差しがポカポカだったので、子どもも一緒に眠る事にしました。


目を覚ますと、隣に目を覚ました神様がいます。

こちらを見ながら何か呟いていましたが、聞き取れませんでした。



神様は、日に日に眠さが増していくのを感じていました。

人間ではないので、水色の月が三度上がる間ずっと起きていました。

神様にとって瞬きに等しい時間ですが、起きていると長く感じます。


どこにも障りはありませんが、どんどん眠くなります。

元々起きているよりも、部屋に籠もって睡み続ける方が長いとお供達に言われているのです。


ですが、今の神様は眠っていられません。

転寝の間に赤子が子どもになっていたのです。

次に眠って起きた時にもっと姿が変わっているかもしれません。

姿だけではなくもし居なくなっていたら。


転寝から起きた時なら、残念な気持ちで済んだかもしれません。

今の神様はそれは嫌だと思うのです。

だからどれだけ眠くても起きていました。

読んで頂きありがとうございます。

後編(超短編)は後日上げます。

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