反復
ピピピピピピピピピ・・・・
やれやれ今日も朝が来てしまった。
いつものように朝食を取り
いつものように準備をして出勤する。
朝の電車は超満員だ。
片手で捕まるところを確保しつつ片手でスマホをいじる。
ニュースを見た。
○○町で殺人事件、○○国との関係悪化・・・
よくあるいつものニュースだ。
たまにはもっと面白いニュースが無いものか。
会社につき、仕事に取り掛かる。
いつものように資料を作成し
いつものように取引先と電話をする。
時々上司に叱られる。
それ以上仕事について特記することもない。
ずっと、それの繰り返しだ。
やがて終業時間になる。
しかし、上司がやってきてこう言われた。
「おい、君これもやっといてくれないかね」
「え、あ、はい。やっておきます・・・」
やれやれ今日も残業だ。
俺はこんな生活に嫌気がさし、一回自殺しようとした。
しかし、その次の日もこの生活だ。自殺に失敗したのだ。
いつになったらこんな虚しい毎日から脱却できるだろうか・・・
一年後?いや十年後?
もっと先?
とにかく長くなりそうだ。
この風景を閻魔大王と家来たちが見ていた。
閻魔大王が言った。
「こいつも気づいていないのか。不思議だ。
若くして自殺した者が行く、死んだ前日が永遠に続く地獄に入ったものは昔から大勢いた。
昔は多くの者が気付いて、もうどうにもならないと苦しんでいた。
しかしなんだ。近頃の者たちは皆、全く気付かないで暮らしている。
何故なんだ・・・」
下界に詳しい家来が答えた。
「下界ではこれが普通だそうです。
毎日毎日、反復した生活を送る。
それの積み重ねで生きているようです」
「なんだそれは。まるでこの地獄、そのものではないか。
人間もずいぶん悪魔的になってきたものだ・・・」