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場違いな天才達  作者: 紅酒白猫
第一章 場違い召喚
17/47

16 歴史



 完成し続ける世界『ステージ』。

 そこで行われているゲームの歴史は、今から四〇〇〇年前まで遡る。


 各都市の代表である王女の儀式とその供物によって、異世界の英雄は召喚される。

 召喚された異世界の英雄は五人同時に召喚され、彼らは皆、異世界で数々の偉業を成した者、英雄的存在の者など、その世界で代表する存在であったことがわかる。


 彼らやって来たあらゆる時代、文明、世界。それらの知識と技術がこの世界の文明を急速に発展させ、人々を進化させていった。


 召喚されし英雄には、一つの指名がある。

 この世界にいる間、召喚者と共に創造主の『ゲーム』に参加しなければならない。

 さらに同時に召喚された者とチームを組み、共に行動する。


 以後、召喚されし英雄は『参加者』と呼ぶ。


 この『ゲーム』に勝利せしチームは天に召される。

 一説ではその後、勝利せし者は全能の力を頂けるとされている。


 『ゲーム』が生まれてからの歴を『主歴』と明記する。




…………




 世界の理。


 この世界の理として、以下の存在がある。

 ・マナ

 ・エレメンタル

 ・フォース


 マナとは

 存在するすべての根源たるモノ。

 すべてのモノはマナによって存在し、存在の消滅と共にマナに還される。


 エレメンタル

 現象の根源たるモノ。

 マナとの融合によってその現象が具現化され、フォースによって力をもたらす。

 エレメンタルには『火』『水』『風』『土』『時』という属性が存在する。


 フォース

 力の根源たるモノ。

 魔法や魔術のほか、筋力など人力にすら、このフォースが関わっていると言われている。




 合成と返還

 存在するモノ同士を合成させることで、別のモノへと変える。

 または、存在するモノをマナ、エレメンタル、フォースへと還す方法である。



…………




 異界からの侵略者。


 第一次侵略戦記――

 主歴二,二二二年。

 別の世界から突如表れた侵略者。

 彼らの目的は不明。

 殺戮と強奪を行い、数多くの村や町がその犠牲にあった。

 侵略者に対抗するため、ゲーム参加者がこれと対峙し勝利。侵略者は元の世界へ戻っていった。


 第二次侵略戦記――

 主歴二,八七六年

 再び侵略者が現れる。

 侵略者は前とは比べ物にならないほど、強力な武器を持ち、そして肉体すらも進化していた。

 前戦記同様ゲーム参加者と対峙し撃退。参加者二名が死亡した。


 第三次侵略戦記――

 主歴三,四五六年

 三度目の侵略者による進撃。

 前回の三倍もの大群による進行。その結果一つの都市が滅び、この世界の地図上から消滅した。

 参加者との激しい攻防の末、瀬戸沢で撃退。二つのチーム以外の参加者は命を落とした。


 奴等は周期的に現れ、出現するたびに強力狂暴化し世界を破壊し続ける。

 もしかすると、次こそ敗北するかもしれない。




…………




 各都市。


 近代都市『モドュワイト』

 王家モドュワイトが統一する都市。

 都市の時代目的は『平均』

 ほどほどの未来感を味わいたい者達が過ごしている。

 住んでいる人達には皆、人付き合いがよく、気前も良い。



 未来都市『ノヴォエラ』

 王家ノヴォエラが統一する都市。

 都市の時代目的は『未来』

 常に新たな知識、技術を取り入れ、変化し続ける都市。

 新たなことに興味を持つ者が多く過ごしている。

 世界の最先端を行くため人口は少ない。

 他の都市を見下す者がいる。



 自然都市『ファンドゥラ』

 王家ファンドゥラが統一する都市。

 都市の時代目的は『自然』

 自然と共に生き、自然と共に成長することを目指した都市。

 機器はほとんどなく、移動手段も動物を利用している。

 静けさと爽やかさを持つ者が多く過ごしている。



 遺跡都市『シェリディーム』

 王家シェリディームが統一する都市。

 都市の時代目的は『過去』

 近代都市『モドュワイト』で過去に出回ったモノや、溢れたモノが行き着く都市。

 暖かく、物を大事にする者が多く過ごしている。



 天空都市『パラディソス』

 王家パラディソスが統一する都市。

 都市の時代目的は『美徳』

 すべての都市から美しく、芸術的なモノを集めた都市。

 住むものすべてが、気品さと優雅さ持つと言われている。



 地底都市『フィクレニス』

 王家フィクレニスが統一する都市。

 都市の時代目的は『異物』

 すべての都市から存在を否定されたモノが集まる。

 住むものすべてが異様な者が多く、物も異様で奇抜、そして醜い物が多い。

 その見た目の都市だが、世界で一番治安が良いと言われている。



 ※時代目的とは

 その都市のテーマと呼べるもの。

 あらゆる世界から知識や技術力が手に入るが、その知識、技術力についていけない者が現れたため、世界の基準となる都市に、あえて別々の知識と技術に分けたことが始まりとされている。




…………




 <生物>


 異獣

 参加者によって召喚された生物。

 召喚した者がいなくなっても存在し続け、召喚者がいなくなると狂暴化するとされる。

 基本レベルやステータスは定まっていないが、参加者を殺すために召喚されているため、一般の者が手に負えるような生物ではない。

 見かけたら逃げることを第一と考える。




 <道具>


 魔具・魔器

 参加者もしくは人工的に造り出された道具や武器類。

 魔法や魔術以外にも、あらゆる用途として用いられている。




 <種族>


 人族

 世界で一番人口数が多い種族。

 能力はそこまで高くないが、知力と結束力に優れた種族である。


 獣族

 二番目に人口数が多い種族。

 能力が高く、生まれつき様々なスキルを有するものが多い。


 ドワーフ

 三番目に人口数が多い種族。

 器用で力もある。身長は人族の平均身長の約半分ほど。


 エルフ

 四番目に人口数が多い種族。

 魔力が高く、尖った耳はエレメンタルの流れを感じることができる。

 寿命は記録された中で約四三四歳が最長とされている。


 魔族

 エルフより魔力が濃く生まれたもの。

 額に生えた角でエレメンタルとマナを感じ、赤黒い瞳はフォースを見ることができる。


 竜人族

 高い知能と戦闘能力を持つ種族。

 数が少ないのはその繁殖能力が乏しい為と考えられている。


 天人族

 高貴さと気品さ持ち合わせた種族。

 寿命は永遠に近いと言われており、古い資料には必ず存在している。

 第三次侵略戦記以降の歴史にて存在が確認されていないため、絶滅したと思われる。


 精霊

 エレメンタルの集合体。

 自我を持ったことにより存在を確立された種族。

 基本身長は人族の手首から中指までの大きさだが、エレメンタルを大量に蓄積された場合、記録されている最大身長は人族の子供と同じくらいまで巨大化する。




…………




 考察

  この世界の者たちはゲームとは無関係な者がほとんど。

  多くは観戦者や傍観者だ。そのため、参加者とは価値観が合わない。

  存在こそは認めている。

  しかしそれは天災と同じく、存在そのものが違う者と判断してのことだ。






「......とりあえずは、こんなものかな」


 大量の本が置かれた机で私――ユリアーナはペンを置き、その場で背伸びをする。背伸びした後、目の前の書き記した資料に再び目をとおす。

 我ながら相変わらずな字体だ、自然と口を尖らせる。


「それは、ユリアんが書いたものなのかぁ......?」


 いつの間にか近くに来ていたロディオが話しかける。


「......まあね。それとユリアんって呼び方、止めてくれるかな?」

「しかし、みんなも言っているがぁ......」

「確かに言ってるけどさ!」


 ちなみに、今のところボクをユリアんと呼ぶのはソウジとジョン、それと購入した者達だ。

 クリエットやアリシアはまだ言っていないが、なんかそのうち言いそうだな。

 そうだ、許すまじ。

 全ての元凶、ソウジ!


「それにしても、本当に全部読めるんだなぁ......」


 ロディオが話しかけてきた。先ほど恨めしいことを考えているとも知らず、のんびりとした低く重低音の声だった。

 彼は、ボクの隣に積まれている本の山を見ている。


「......ボクにかかればこんなもんだよ」

「でも、確か数百冊ほどは、あったと思うけどぁ......」

「いつも読んでた論文とかに比べたら、これらはほとんど似たり寄ったりなものばかりだったからね、特に頭を使うような書物は無かった。それと不一致な点も多かったから、そこのところをもう少し掘り下げてみてもいいけど、とりあえずはこの世界の常識みたいなところを抑えてみたんだ。それもだいたい、ほとんどはもう抑えたかな。あとは絞り込みとか他の資料とかを参考にしつつ、不一致や不明点の洗い出しを行ったりして......」


 と、ちょっと話しすぎたかな。

 そう思ってロディオを見ると、やはり苦笑いをしていた。


「その字、その......、芸術的だなぁ......」

「下手なら下手って言ってくれるかな!? その言い方、回り回って来るものあるから」


 少し怒鳴り立ち上がったが、ここが図書館だったことを思い出して着席する。


 この世界は声と文字に対して、自動翻訳機能がある。

 だけど、なんでこう、ね。変なところも忠実に正確に再現してしまうのだろうかな?

 しょうじきかなり恥ずかしいため、これ以上見られないようにノートを閉じ、鞄の中へとしまう。


 そうだ、この鞄も不思議だ。

 この鞄はクリエットから借りたものだが、借りた瞬間にこの鞄を検証してみたいと思ってしまった。

 理由は簡単、この鞄の中は見た目以上に広い。そう、あの魔具屋とかいう店と同じような構造だ。さらに取り出したい物を考えるだけで取れる。これもいったいどんな原理か不明だ。

 未だに頭が痛くなるが、この鞄も含め全ての現象を私が実証して見せる。

 私は鞄に資料や道具を入れながら再び決意した。


「......それにしても、この都市の図書館だから、画面操作とか見たことない技術で閲覧する資料が多いかと思ったんだけどな。まさかほとんど書物で管理されているとはね」


 ここ近代都市『モドュワイト』にある図書館に来て最初に思ったのがそのことだった。

 ボク等の世界でも紙ではなくても本を閲覧できていた。そのためこの、自分達よりも少し進んだ文化のこの都市では、資料の閲覧には何かしらの方法が用いられると思っていたのだが、その期待は普通に裏切られた。


「そうだなぁ、おかげで親近感は沸いたなぁ......」

「親近感ね......。ボクは少し、別の技術を知るいい機会だと思ってたから、残念だったけどね」


 そう言い鞄を肩に掛ける。

 かなりの資料を入れたはずなのに、まったく重くならない。重量も制御できる技術があるのかもしれない。やはり、さらなる調査が必要だな。


 この場所『モドュワイト大資料館』という名の図書館に来るのに、あの線を走る電車の様な物に乗った。

 電車は都市の上に張り巡らされているレーザーを沿って動いている。

 外形は知っている電車と似ている、ただし外形だけだ。

 内側は外形以上に広く、物理法則を無視している感じがする。

 それに揺れなどもなかった。


 この世界は元の世界と違うところが多い。そのことを調べるためにも情報が必要だ。

 その調査に必要な資料を求め、この図書館に来たのだった。

 少し違った。今回来たのは、先日考案された計画進行のためだ。この世界の事を学び、理解する。

 それが今回の図書館に来た目的だった。


 無知は罪。よく言ったものだ。

 知識がなければ対処もできない、経験だけでは危険すぎる。

 そこでロディオとボクが情報収集を兼ねてこの世界の常識を身に付ける、といった感じだ。

 基本ボクが調べる役。ロディオは欲しい資料や本を持ってきて貰うよう役割だ

 そこで気が付いたことなのだが、彼はすごいことに適当に伝えたことでも、確実に欲しい資料や本を取ってきてくれる。本当にありがたい。


 ただ、それにしてもどうしたものか。

 隣にいるロディオとは、あまり話した事がない。

 分野も違うし、何よりボクは芸術に関して疎い。ロディオが描いた絵も「上手」と思う以外何も感じない。さらに言うとボク自身、そこまで人と話すのは得意ではない。

 はっきり言って、今の状況はかなり気まずい。


「なぁ......」

「ぅっ! な、何かな?」


 突然話しかけてきたロディオに、少々戸惑いつつ返事をする。


「調べこと終わったなら、美術館でも行かなぃかぁ?」


 えっ? あぁ、確かにそんな約束してたかな。

 この調べものを手伝う代わりに、終わったらこの都市の美術館に行く、という約束を思い出す。


「......いいよ」

「悪いなぁ。じゃぁ俺は片付けてくるぅ......」


 そう言い、積み上げていた本を数冊持ち、元の場所へと返しにいった。

 口の端が上がっている、何だか嬉しそうだ。そんなに行きたかったのだろうか。






 数分後に片付けが終わり、美術館へと約束通り向かうことにした。

 行く間もかなりロディオは興奮していた。こんな彼を見たのは共に行動してから初めてだった。初めてと言いつつボク達はまだ、出会い行動を共にして数日しか立ってないんだけどね。


 そう言えば日付の間隔はどうなっているのだろうか。

 資料には歴が書いてあった。歴があるってことは、この世界にも時間と言うモノがあるはずだ。後で調べなければならないな。


 そうボクは思いつつ、いつもより歩くのが早いロディオの後ろをついていった。



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