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場違いな天才達  作者: 紅酒白猫
第一章 場違い召喚
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0 場違いな 者

発投稿になります。

誤字・脱字があるかもしれません。

もしそれら見つけましたら、報告を頂けるとありがたいです。


投稿は不定期になると思いますが、よろしくお願いします。

 





 そこは何の変鉄もない草原。



 あるのは、地上を照らす日の光。

 聞こえてくるは風のせせらぎ。草木が揺れ、擦れる音だけだ。



 そんな穏やか場所に、電気が流れる様な場違いな音が響き渡る。


 ビリッともバチッともとれる、その音と共にソレは現れた。






 地面に突如として生まれたのは模様だった。

 模様の上に、一瞬の光と共に浮かび上がるのはふたつ人影だ。



 一人は薄桃色のスカート部分がふっくらとしたドレスを着た青髪の少女。

 頭には髪の色と同色の髪飾りを付け、動きやすそうな白いシューズを穿いている。


 もう一人は腰に長剣を下げた、銀色の全身鎧を着た大男。

 座り込む青髪の少女を見守るように、微動にせず、ただ静黙している。



 青髪の少女はすぐさま立ち上がり、辺りを警戒するように頭を左右に動かす。

 それから何もない事を確認し、重たい空気を吐く。


「ありがとうワスターレ、助かりました。どうやらこの場所は大丈夫のようです。ですが、警戒は怠らないようにしてください」

「......」


 ワスターレと呼ばれた全身鎧の男性は頷き、腰の鞘に納めている長剣の柄部分に手で触れる。

 それはまるで、お前は俺が絶対に守る。と言いたげな仕草。


 青髪の少女とワスターレの間に会話はない。だが、その仕草一つで心が通じ合う。


「ありがとう。今はもう、アナタしか頼れる人がいませんので助かります」




 少女は腰に巻き付けていた白い鞄を探る。

 中から一つ、握り拳ほどある虹色に光る石を取り出し、それをワスターレに渡す。


「ワスターレ、お願いがあります。この『供物』を......六つに分けてください」


 再びワスターレは頷き、鞘から長剣を抜く。


 音もなく一瞬にして石を六つに分けられ、剣は再び鞘に収められる。

 分かれた石は青髪の少女の手の上に落ちた。


「ありがとうございます。では、これからこの場で『召喚の義』を行います。ですが、この『供物』では失敗するかもしれません。そして、私が死んでしまう可能性も、あります」


 青髪の少女は次に白いチョークの様なものを取り出す。

 雑草のあまり生えていない地面に、取り出したチョークで手慣れたように丸を描き、その中に五芒星を軸とした模様を描く。これは俗にいう魔法陣というモノだ。




 少女は黙々と準備をしている間に思った。

 本来、これから行う『召喚の義』には、合計六つの『供物』と呼ばれる素材等を必要とする。だが、その『供物』が数分なかったため一つを六つに分けた。

 この中途半端な供物で儀式を行った場合、彼女自身どうなるか分からない。

 だからこそ最悪な考えが、心の内に生まれた。


「もし、私が死んだ場合は......」


 六つに分かれた『供物』を五芒星の先端にあたる五か所にそれぞれ別々に置く。

 青髪の少女は魔法陣の中央に座り、残った最後の『供物』を手の平で持ち上げる。


「アナタだけでも逃げて、そして『次の方』に付いてください、ね」


 ワスターレは黙ったまま頷く。

 頷きを見た少女は「ありがとう」と微笑む。


 そして、儀式が開始される。




「我、クリエット・モドュワイト・ロームーブの名の下に要求する。我の声を聴き、姿を捉えし者よ。我に従い、我と共に勝利をもたらす者よ。どうか......姿を現せ」


 青髪の少女――クリエットが唱える。 


 魔法陣が光を放つ。

 同じように置いてあった『供物』も光を放ち、宙に浮かぶ。


 座っている地面から、強く吹き荒れる風に似た力をクリエットは全身に浴びる。

 ドレスが持ち上がり、スカートもなびく。同時に持っている『供物』も、手の平から離れていく。


「......っ!」


 しかし、それ以上のことが起きない。



 沈黙。


 内側から込み上げる、焦り。



 クリエットにとってこの儀式は二度目だった。

 最初の一回目は唱えた瞬間に現れた。

 だが、今回は違う。


 クリエットは嫌な予感がした。


 唱えても現れない。

 理由はいくつかあるだろうが......それでも変だ。


「どうか、どうかお願いします。応じ......答えて。お願い、します......。『あなたの力が必要なのです』!!」


 思わず願いを口に出して叫ぶ。

 こんな事が無駄だとはわかっていた。



 だが、無駄では無かった。



 魔法陣が更に輝きを増し、全ての『供物』が砕け散る。






 激しい光にクリエットは思わず目を閉じる。


 光がおさまった直後、ゆっくり目を開けて辺りを確認する。

 周りには見知らぬ五人の男女が倒れていた。


「や、やった。成功した! やったよワスターレ! 召喚できた!」


 クリエットは近づいてきたワスターレに抱きつき、跳びはね、嬉しさを爆発させる。

 彼女自身かなり不安があった。


 以前はすぐに現れた『召喚されし者』がなかなか現れなかった。

 それだけでも不安だったが、何より別の事で焦っていた。このような草原にまで追い立てられた状態にした者達が、まだ追ってきている可能性があったからだ。


「こ、これで、この『ゲーム』にも希望が見えた、見えてきました」


 徐々に落ち着きを取り戻しつつ、しかし内情興奮した状態で一人一人を確認する。


 見た目は普通な五人。

 格好もバラバラで、統一感なんてない。

 なかなか珍しい人達かもしれない。


「......あれ?」


 クリエットは、とあることに気が付く。

 同時に次なる不安が内にあふれる。


「この方たち、なんて身軽な装備なのでしょうか?」


 クリエットが気になったことはその服装だ。

 現れた五人の服装は、都市や街で見かけるような質素な服装だったためだ。

 本来『召喚されし者』は、鎧や剣などの武器や防具を装備している場合が多い。だが召喚された五人はそのような装備は一切なかった。

 武器も、防具も、道具もない。


 頬に手を当て思考する。


「もしかしたら何か特殊な力が備わっている、のかも......」


 クリエットは左目を手で抑える。

 右目は開いたまま。少し迷ったが、決意する。


「あまり、味方とかに許可なくやるのは好きではありませんが、今は時間がありません。『視察』を発動!」


 右目を見開き、景色が一瞬ブレた後、文字が表示される。


 初めに確認する相手は、一番歳をとっていると思われる灰色コートの長身男性。

 男性の周りに様々なステータスが表示される。


「そ、そんな......ない!」



 名前は『ロディオ・ジーヴァピス』

 年齢『19歳』

 種族は『人族』

 性別は『男性』

 レベル......『10』

 装備の材質は『どこにでもある布製』

 特殊武器および特殊スキル『なし』




 慌てて隣にいる白いコートの様な服を着た女性に視線を移す。


 名前は『ユリアーナ・ジーニ』

 年齢『20歳』

 種族は『人族』

 性別は『女性』

 レベル......『11』

 装備の材質は『どこにでもある布製』

 特殊武器および特殊スキル『なし』




 さらに隣の赤茶色の髪の少年を映す。


 名前は『ジョン・リード』

 年齢『9歳』

 種族は『人族』

 性別は『男性』

 レベル『6』

 装備の材質は『どこにでもある布製』

 特殊武器および特殊スキル......『なし』




 その隣の見た目は良いドレスを着た少女。


 名前は『アリシア・ライトベア』

 年齢『16歳』

 種族は『人族』

 性別は『女性』

 レベル『8』

 装備の材質は......『どこにでもある布製』

 特殊武器および特殊スキル『なし』




 更にその隣の男性は......もう映すのを止めた。

 もう分かった。もう理解した。もういい。






 クリエットは自然と膝をつく。

 力無く、ただ地面に吸い寄せられるかのように。

 全身をこの世界全てに、委ねたように。


「こ、こんなの、のって。あ、ありえるの......? 誰も、何も持っていない。そして......レ、ベルも、低い。彼らはどこから来たのか、どんな世界に居たのかなんて、知らないけど。そ、それでも、こんな人達が、生きていける世界なんて......あ、あるの?」


 普通ではありえない。


 いくら考えても、いまの状況がまずい事に代わりはない。

 しかし、希望が打ち砕かれた感覚が、全身に電気が流れるように染みわたる。


 呟き、涙を流しているクリエットに、ワスターレが宥めるように背中を優しく叩く。



 彼は普段、こんなことをしない。

 どんな気まぐれか何かかは分らないが、それでもうれしかった。




 確かに召喚された者達は、期待していた者達ではなかった。


 でも、こうなっては仕方がない。

 この世界に選ばれた以上、彼等には何かあるはずだ。






 涙を拭こうとしたとき気が付く。

 後ろから歩み寄る音に......。



 そして話しかけられる。

 姿勢はそのままで後ろを振り向き、確認する。


 話しかけてきた者は、先ほど召喚した五人の一人。

 茶髪の少年、ジョン・リードであった。


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