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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
1章 ライム誕生! スキルカードを取り戻せ!!
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美少女に変わっておしおきよ

 これは徹人にとってあまりにもリスクが大きすぎる条件であった。徹人はこれまでネオスライム一筋で戦ってきたため、その他のモンスターはあまり育てていない。戦闘の要となるモンスターを失うということは戦力の大幅な減少を意味する。

 それ以上に、徹人にとってネオスライムは歴戦の相棒である。この勝負に負けるということは、友人を身売りすることと同義であった。

「やめとけよ、徹人。さすがにこの条件は厳しすぎる。それにお前、源太郎に勝つ手段を思いついてないんじゃないか」

 悠斗は必至に説得を試みるが、徹人は静かに頭を振った。メモリカードを掲げ、源太郎に対峙する姿に一切の迷いは感じられなかった。


「俺に挑んでくるってことは、お前なりに勝算があるってことだろう。まあ、どんな戦法を使おうが無駄だけどな。全国五百十八位の実力を見せつけてやる」

 宣戦布告を掲げた源太郎は勇んでファイトモンスターズのページにログインし、対戦モードを開始する。徹人もまた、負けじと対戦モードに入る。


 両者のログインを認証し、教室内にフィールドが展開される。オーソドックスな闘技場フィールド。モンスターに対しなんら特殊効果を及ぼさないので、単純に潜在能力のぶつかり合いとなる。

 徹人と源太郎のアバターも投影され、それぞれテト、ゲンというコードネームが表示される。相変わらずRPGの強盗風のゲンが堂々と右手を広げる。

「俺はもちろん、こいつを繰り出すぜ。来い、メガゴーレム」

 ゲンの目の前の地面が光り、そこから岩石の巨人が出現する。この教室内で幾多のモンスターを根絶やしにしてきた絶望の象徴。ゲンが持ちうる最強のモンスターメガゴーレムだ。


 登場と同時にステータス補正により、メガゴーレムのステータスが上昇する。ゲンもまたテトと同じくお気に入りのモンスター単体でバトルする傾向がある。今回もまた、メガゴーレム単体で勝負する気だ。

「さあ徹人、さっさとお前のモンスターを出せ。まあ、どうせネオスライムだろうがな」

「言われなくても出してやる。来い、ネオス、じゃなかった。ライム」

「ライム。聞いたことねえな。新種のモンスターか」

 ゲンが首を傾げたのに同調し、他のクラスメイトもひそひそ話を始める。一同の注目を浴びる中、テトの目の前にモンスターが召還される。


 その姿を前に、クラス中が唖然とした。それもそうだろう。ネオスライムが出てくると思ったらそれとはまったく似つかないやつが出てきた。それもある。別に人型のモンスターが珍しいわけでもない。ただ、よもやこんな恰好のモンスターが出てくるとは思いもしなかっただろう。


 そこにいたのは、長髪でカチューシャをつけたセーラー服の少女だったからだ。


「やっほー、テト。もう、退屈して仕方なかったんだからね。やっと私と遊んでくれる気になったんだ」

「おい、まさかそいつがお前の新しいモンスターかよ」

 指を震わせながらゲンがライムを指差す。彼でさえ悄然としているのだから、クラスメイトがどよめいているのは自明であった。

「えっと、ライム。ちょっと話があるのだが」

「どったの、テト。なーんかここギャラリーが多いわね。もしかして、遊園地とかいうやつ。私、前からそこ行ってみたかったんだ」

「いや、そうじゃなくて、ここは教室。というか、ファイトモンスターズの闘技場の世界だ。これから勝負するんだけど……」

「なんだ、そっちか。まあそれでもいいわよ。もう暇すぎてどうしようかと思ったわ」

 胸を張って「プンスカ」と不満をぶつけてくる。服に隠れてよく分からなかったが、意外と張りがある。女生徒たちの嫉妬の眼差しが痛い。


 否、女生徒たちはこの胸のみに対して冷酷な視線を飛ばしているわけではないだろう。そのことをいち早く察していた徹人は、最大の疑問点をぶつけた。

「なあ、どうしてお前セーラー服なんだ」

 今朝出会った時はワンピースだったはずだ。これもまたバグの仕業なのだろうか。

「ああ、これ。テトが着替えるとか言うからさ、私なりに『着替え』という概念について調べてみたの。もちろん、ググってね。

 そしたらさ、『着ている服を脱いで別の服を着ること』ってどっかの辞書に載ってたの。そんなことして面白いのかなって思って、私の服のデータを書き換えてみたんだけど、やってみるとけっこう面白いわね。ほら、これなんか今朝テトが着替えてたのと同じ『学校の制服』ってやつじゃん」

「つまり、僕の真似して学校の制服に着替えてみたってことか」

「まあ、そんなとこ。月に代わっておしおきよってね」

「いや、だからさ。どうしてそんな古いアニメ知ってて、『着替え』の概念知らないんだよ」

「開発者の趣味?」

 四十年くらい前にやっていた某美少女戦士の決めポーズを披露され、テトは肩を落とすばかりだ。ちなみに、なぜテトがそのアニメを知っているかというと、少し前に「懐かしのアニメ特集」というバラエティ特番で紹介されていたからである。


 予想の遥か斜め上をいくモンスターを出され、ゲンは出鼻を挫かれていた。しかし、すぐにいつもの傲慢な態度を取り戻すと、前歯を剥き出しにしてライムを揶揄しだした。

「いくら勝てないからって、アニメオタクが好みそうな美少女モンスターを使うとは。地に落ちたな、徹人」

「いや、違うんだ、これは。こいつはネオスライムなんだ。ちょっとした理由があってこんな姿になってるけど」

「そいつのどこがネオスライムなんだよ。ただのクソビッチ女じゃないか」

「ねえ、テト。さっきから失礼なこと言ってるあのゴリラをぶっ殺せば遊んでくれるの」

「敵という意味では間違ってないけど、ぶっ殺すとかいうのは止めなさい。正確に言えば、あいつが使うゴーレムを倒してくれればいい」

「あのゴリラの手下のお人形さんね。分かったわ」

 ライムがゴリラと言うたびに観衆から失笑が漏れる。歯を剥き出しにして威嚇するところは風貌と合わさりゴリラそっくりであった。

スキルカード紹介

大雨レイン:相手の火属性攻撃を無効化し、次に自分が使う水属性の技の威力を少し上げる。

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