表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
2章 朧再び!? 地区大会決勝戦!!
86/238

ライムVS朧&デュラハンその1

 テトがフィールドに復帰するや、さっそくシンはスキルカードを発動し開戦ののろしを上げる。

「まずはデュラハンに武器を用意する必要がある。エンチャントスキルカード村正」

 これまでの流れから察せられる通り、デュラハンの武器から朧が出現したので、デュラハンは丸腰のままだ。シンが発動したスキルカードは剣へと変化し、デュラハンの袂に収められた。抜刀するや、刃先から禍々しいオーラが迸る。

「タッグバトルの環境下では、スキルカードはどちらか一体を対象として発動するみたい」

「一枚のスキルカードで、場にいるモンスターすべてが強化されたら、さすがにバランスブレイカーすぎるからな」

「私としては、手ぶらのデュラハンを強化したかったからちょうどいい。このスキルカード村正はモンスターに装備させて使用する。体力が減るほど技の威力が上がる呪われた剣」

「つまり、デュラハンの体力を生半可に残すと逆にピンチになるのか」

 いくら思考を巡らせたところで、二対一では絶対的不利には変わりない。それでも、あがけるだけあがいてみよう。


「テト、どうする」

「タッグバトルなんてやったことないけど、こういうのはどちらかを集中攻撃して数を減らすのがセオリーだ。デュラハンはさっきまでの戦いでHPが減っているし、朧の実力はまだまだ未知数だ。ここはデュラハンを先に倒し、じっくりと朧と対決するのがいい」

「じゃあ、狙うはデュラハンだね」

「そういうこと。やつは闇属性だから、この技が有効のはず。ライトニングだ」

 テトから命令を受け、ライムは指先を発光させる。テトの妹である愛華は目を輝かせていることであろう。彼女の相棒であるピクシーが得意とする光属性の攻撃技。光の玉を発射して攻撃するライトニングを発動しようとしているのだ。


 標的がデュラハンだと宣告されたので、首なしの鎧武者はじっと腕をクロスして待機する。かわす素振りがないというのが逆に不気味だが、素直にダメージを受けてくれるのならそれに越したことはない。

 指先より放たれた光の弾丸はまっすぐにデュラハンを射抜く。属性相性の加護を受け、デュラハンの体力は四十五パーセントにまで落ち込む。

「やはり、先ほどまでの異常防御力は朧と合体していたためか。ここにきて、デュラハンは手痛いダメージを受けてしまった」

「そんなのは織り込み済み。朧、三の太刀鳴神」

「御意」

 反撃を宣告されるが、肝心の朧の姿がない。ライムがきょろきょろと辺りを見渡していると、テトが声を張り上げた。

「上だ、ライム」


 はっとして見上げると、朧が剣を振り上げて宙を舞っていた。その切っ先には稲妻が迸っている。ライムと同じく、攻撃属性を自在に操ることができるウイルス能力。それにより、基本攻撃技「きりつける」を雷属性へと変換させているのだ。

 雷を纏った剣による一刀両断。既に虫の息だったライムの体力はゼロとなる。そのはずだが、ライムには最大の武器となるアビリティがある。

「朧の剣を受けたライムだが、九死に一生で踏みとどまる。このアビリティが発動する限りいじゅー、いや、テト選手に負けはない。シン選手、どう攻略していくか」

 解説された通り、アビリティが発動してくれれば、いくらでも踏みとどまることができる。しかし、無限に発動できるわけではない。通常ではありえない挙動を繰り返せば、処理能力に負荷がかかって疲弊してしまう。これまでの戦いで幾度もアビリティを確実に発動してきたので、知らずのうちにライムに負担をかけているはずだ。


 切迫した状態のまま、朧は雷の剣を振るってくる。ライムはステップを踏むように剣撃をかわしていく。朧一体のみが相手ならどうにか対処できたであろう。しかし、タッグ戦の恐ろしさを早くも味わうこととなる。

 一旦距離を置いてから、朧は腰を引くようにして重心を下ろす。

「六の太刀、桜花」

 桜の花びらが舞い散る中、朧は一気に切りかかってくる。十分にひきつけ、ライムは横っ飛びで朧をやり過ごす。だが、安心したのも束の間。

「危ない、ライム」

 回避したその先に待ち受けていたのはデュラハン。さすがに対処しきれず、村正による一刀が命中してしまう。


 これもまたアビリティで防いだが、もはや回避するので手一杯になってしまっていた。朧の剣を対処できたと思っても、すぐにデュラハンが剣を振るう。その逆もまた然りだ。

「くっそ、ライトニング」

 朧を対象に見据え、光の玉を放つ。だが、デュラハンが割り込んできて、彼女の盾となった。体力ゲージは二十パーセント以下だが、これは由々しき事態であった。

「デュラハンの持っている剣の効果を忘れたわけではあるまい。ここまで体力を減らしてくれれば、その力を存分に発揮できる」

 村正は体力が減るほど攻撃力を上げる。一撃でも喰らえば終わりなので、それほど実害が増したわけではない。それでも、攻撃能力値を大幅に上げた相手と、確実に弱点を突いてくる相手がペアというのはかなりの脅威だった。


 絶望的な状況だが、打破する手段がないわけではない。温存してあるスキルカード「革命」。これをうまく朧に対して発動できれば一気に戦況を覆せる。なにせ、朧は無傷。残り体力僅かのライムのHPを押し付ければ、シンの手持ちはどちらも瀕死状態だ。

 危惧すべきは、相手がスキルカードを打ち消す「対抗」を有しているか否か。だが、ここで使用を躊躇っていてはそれこそ勝ち目はない。

「ライム、できるだけ朧へと接近するんだ。デュラハンに邪魔されたら元も子もない」

「オッケ」

「テト選手、あえて多く体力を残している朧を先に倒すつもりか」

「普通はデュラハンを狙うのが筋だが、どういう了見だ」

 田島悟が首をかしげたのも無理はない。残り体力が少なく、攻撃力を上げているデュラハンを先に狙うのがセオリーだからだ。


「何を考えているか知らないけど、思い通りにするわけにはいかない。デュラハン、雷光一閃」

 デュラハンが帯刀したまま一気に肉薄してくる。ライムはどうにか突撃を躱すと、突然あっかんべーを繰り出した。

「ここまで来なさい、そぼろちゃ~ん」

「こいつっ、あたいは朧だ!」

 子供だましの挑発だが、あろうことか朧はそれに乗ってしまう。桜花を発動させたまま、一目散にライムへと突撃していった。


 相手の方から向かってきてくれるのであれば好都合だった。接近してくる相手を迎えるように、ライムは指先に光を宿らせる。十分に朧を引きつけたところで、テトはすかさずスキルカードを発動する。

「スキルカード革命チェンジザワールド。ライムと朧の体力を逆転させる」

「なにっ!?」

 朧とシンが唱和する。剣が到達する直前、スキルカードの光がライムと朧を取り囲む。そして、ライムの体力は全快にまで回復し、逆に朧の体力は「一」となった。

 そして、ライムが斬りつけられると同時に、指先から光の弾丸が発射される。

「ライムと朧、両モンスターが同時に技を繰り出した。直前には革命のスキルカードも発動したし、一体どうなったんだ」

 数秒の間に展開した技の応酬。会場内の誰もが固唾を呑んで結果を見守っていた。


 まず、ライムだが、桜花のダメージにより残り体力七割で胸を押さえていた。革命でせっかく回復した体力が減らされたのは痛いが、戦闘不能になるよりは大分マシだ。

 それに、あの攻防からすれば、朧は確実に落としたはずである。虫の息であったライムの体力を押し付け、加えてライトニングをぶつけたのだ。残るはさほど体力が残っていないデュラハンと一騎打ち。


 そんな打算を施していたテトだが、硝煙が晴れるとともに現れた少女の姿に愕然とした。倒したはずの朧が、憮然として剣を突き立てていたのだ。

「馬鹿な。なぜ倒れない」

「いきなり体力を減らされたのにはびっくりしたけど、さすがはシンよね。あんときにスキルカードを使っていたのよ」

「別に特別なカードを使ったわけではない。スキルカード回復ヒーリング。ライムの攻撃が到達する寸前に朧の体力を回復させてもらった」

 体力が半分以上回復したところに、ライムのライトニングが命中した。結果として、朧の現在の体力は約四分の一。回復カードを使ったのなら生き残っていても不思議ではないが、トドメだと思っていた一撃が外れに終わったという精神的ショックは絶大だった。

革命が不発に終わってばかりですが、本来は強力な効果を持つレアカードですからね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ