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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
2章 会場ジャック! ケビンの企みを防げ!!
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ケビンの目的

 そんな考えを見透かしたように、ケビンは予め釘を刺す。

「繰り返すが、この会場は私が支配している。携帯電話の電波は遮断したから、外部との接触はできんぞ」

 虚言を吐いているわけではなく、携帯は圏外になっている。試しに「110」をかけてみても、「お客様がおかけになった電話番号は電波が届かない場所にあるか、電源が入っていないため繋がりません」との定型文が流れるばかりだ。


「おい、どうなってるんだよ」

「扉が開かないわ」

 会場の出入り口付近にいた人々から驚くべき声があがる。まさかと扉に殺到し、体当たりなどで突破を試みるがびくともしない。

「無駄なことは止めたまえ。全会場の扉をロックさせてもらった。別に私は君たちを永久に幽閉するつもりはない。標的を逃がさないための処置なので、我慢してもらおう。私の目的が達せられた時にきちんと解放するから安心するといい」

「こんな真似をして。お前の目的はなんだ」

 怒気を孕んだ口調で、田島悟が問いかける。ケビンは鼻で笑うと、人差し指をまっすぐに伸ばした。

「私の目的は唯一つだ。この大会に紛れている『ライム』というモンスターを手に入れること」

 その単語が言い放たれるや、会場は更に色めき立つ。


 最近、ファイトモンスターズ界隈を賑わしている謎のモンスターライム。それがこの大会に参加しているというのだ。一部では現時点最強のモンスターとも噂されており、そも姿が拝めるというだけでも血沸き肉躍るというものだ。


 そして、最も衝撃を受けていたのは、いわんや徹人である。足元でちょこんと佇んでいるスライム。それがケビンという輩の狙いだという。

「ネットで流布している少女の姿のまま参加しているとは考えにくい。何らかのモンスターに化けているはずだ。まずはこの戦いでその化けの皮を剥がさせてもらう」

 あまりにもいいようにケビンに利用され、田島悟は腸が煮えくり返る思いであった。年に一度の祭典を個人の思惑で潰させるわけにはいかない。


 歯噛みしながらマイクを握っているファイモンマスターからマイクをひったくると、田島悟は大声を張り上げた。

「このままお前の思惑通りに事が進むと思うな。ライムの正体を暴くというのであれば、ファイトモンスターズのバトルで何らかの策を講じるのであろう。そんなものに、ここに集まった精鋭のバトラーが屈するとは思えない。

 選手諸君。この乱入者の野望を砕けるのは君たちだけだ。君たちの力を存分に発揮し、この危機を救ってくれ」

 どう考えても犯罪に巻き込まれたとしか思えない現状。この主張だけでそれが完全に払拭できるわけではなかった。


 だが、とある気運を生み出せたというのは大きい。

「そうだよな。これがテロかなんかのはずがない」

「運営がテロリストを用意し、大会を支配させたんだ」

「なんだよ、演出かよ」

 この一連の流れは、運営が予め仕組んだパフォーマンスだと思わせる。演出であれば、本気で人体に危害が加わるような真似はしない。そんな考えが浸透し出したことで、いくらか騒然とした雰囲気は鎮静化された。


「なるほど。私の計画を演出と見せかけるか。小賢しい真似をするが、下手に騒がれてはやりにくいからな。田島悟よ、お前の策に乗ってやろう」

 マイクを切っているうちに、ケビンはそう呟いていた。感嘆するや、勢いよく右手を広げる。

「ご託はこのくらいにしよう。いよいよバトルの始まりだ」


 宣告されるや、ケビンを映し出した大モニターに再びノイズが走る。それは数秒後にあっさりと回復し、四人の選手を映し出した。

「いじゅー。ライト。カズキ。キリク。以上の四名が決勝を戦ってもらう選手たちだ」

 その発表に、一斉に不平が沸き起こった。無理もなく、決勝トーナメントに進出できるのは十六名のはず。それがいきなり四分の一にまで減らされてしまったのである。


 ブーイングの嵐に動じることなく、ケビンは憐れむように両手を広げた。

「君たちはどうせ、カードを集めたのに決勝に参加できないのはおかしいと言いたいのだろう。だが、それはお門違いの文句だ。きちんと自分の持っているカードを確認したまえ」

 そう言われ、各選手は一斉にデバイスで所有カード枚数を表示させる。


「おい、冗談だろ」

 乱暴にデバイスを振り回しているのは源太郎だった。一応カード枚数を残していたんだなと感心しつつ、徹人はちらっと彼のデバイスの画面を覗き見た。

 すると、映し出されていたカードの枚数はゼロだったのだ。

「源太郎、ゼロ枚なのに決勝に進出できると思っていたのか」

「アホ抜かせ。俺はきちんと十枚のカードを残していたんだ。それが、いつの間にかゼロになってたんだよ」

 鬼の形相で迫られ、徹人は後ずさる。これが源太郎だけに発生しているのなら、彼の虚言で片づけられただろう。


 しかし、会場内の至る所から「カードが消えた」という報告が為されているのだ。よもや、有資格者四十数人のうち、選出した四人以外全員のカードを消したというのか。

「この大会のルールを忘れてはいないだろうな。カードをすべて失った者は失格になると。この四人以外は所有カード枚数がゼロ。つまり、決勝に参加する資格すらないということだ。

 そんなゴミどもはさっさと立ち去ってもらおうか。もっとも、会場は閉鎖してしまっているので、このホールの片隅で指をくわえて観戦するしかないがな」

 一斉に抗議されるが、ケビンは鼻で笑って一蹴するや、画面にトーナメント表を映す。

「トーナメントの組み合わせはこうだ。第一試合、いじゅー対カズキ。第二試合、ライト対キリク。そして、運営の諸君も傍観しているだけではつまらないから仕事をやろう。試合の実況はファイモンマスター君、君が担当したまえ」

 いきなり指名されて舞台から転げ落ちそうになるが、ファイモンマスターはどうにか踏みとどまる。


「ご指名を受けたからには全力でその任を務めさせてもらおう。謎の人物、ケビンに対抗できるのは君たち四人だけだ。どんな障害が待ち受けているかは分からないが、それを乗り越え、危機的状況を救ってくれ」

 掛け声に続くように、「がんばれ」「負けるんじゃねえぞ」と叱咤激励の声援が飛び交う。ここまで大々的に大会を支配されてしまったのであれば、黙って従っているわけにはいかなかった。敵の狙いは徹人だとはっきりしているのである。


 モニター越しにケビンへと睨みを利かせていると、つかつかと歩み寄って来る影があった。威圧を感じさせる不良のアバター。トーナメント最初の相手、カズキである。

「まさかてめえが当たりだったなんて、思いもよらなかったぜ。正体を明かす前に俺が圧勝しちゃうかもな」

「どうかな。やってみなくちゃ分からないだろ」

 互いに火花を飛ばしあう二人。邪悪な思惑が渦巻く中、決勝の火ぶたが切って落とされたのだ。

スキルカード紹介

地獄ヘル

フィールド操作系のスキルカード。闇属性以外のモンスターの全能力を減少させる。

闇属性が有利になるフィールドの中では最強の一枚。属性を変更されると、自分も影響を受けてしまうので注意が必要。

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