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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
2章 支配されたフィールド! 波乱の大会予選!!
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ライムVSダークモノリスその1

 自爆したためトラッシャーは自動的に戦闘不能になる。全身のヘドロを吹っ飛ばしたせいか、跡形も残されていなかったが。

「かろうじて耐えたか。これですんなり決まったらつまらなかったから、むしろよくやったと言っておこう」

「褒められても別に嬉しくないけどな」

「それじゃ、戯言はこれぐらいにして、オレの本気を見せてやるぜ。行け、ダークモノリス」

 オズマが召還したのはこれまた闇属性のモンスターであった。それも、トラッシャーに負けず劣らず珍妙な容貌をしていた。


 地表からそびえ立ってくるのは巨大な岩壁だった。巨大な一つ目が睨みを利かせている以外は、アトランダムに積み重ねられたとある物質に覆われている。徹人は土属性のモノリスなら知っていたが、そいつは岩石を積み上げた壁のモンスターだったはずだ。

 しかし、目の前にいるモノリスを構成しているのは、生物の骨なのである。それも経年劣化なのか、所々黒ずんでいる。ダークモノリスは闇属性にふさわしく、骨の壁で身を守る邪悪なモンスターなのだ。


 防御性能はトップクラスだが、攻撃力は皆無というアークグレドランと真逆のステータスを有している。突破するなら、ひたすら強力な技を叩きこむしかない。

 とはいえ、相手が単体ならあのコンボが通じるはずだ。いくらダークモノリスとはいえ、体力を一割以下に減らしてしまえば楽に打ち倒せる。

「スキルカード革命チェンジザワールド。出現して早々悪いが、一気にHPを瀕死ラインまで減らさせてもらう」

「根性系スキルとのコンボか」

 オズマはそう吐き捨てたが、特段取り乱すことはなかった。革命のコンボはメジャーな部類なので、大会に出るのなら知っていてもおかしくない、むしろ常識とも言えた。


 ダークモノリスの体力が僅かになったのを見計らい、いじゅーはバブルショットの発動を宣言する。無数のシャボン弾丸が迫るが、ダークモノリスは微動だにしない。あまりに堅牢すぎて、動くことすらままならないのである。残り体力が少ない時は致命的な欠陥となっていた。

 それをカバーするように、オズマはスキルカードを発動する。

「スキルカード無効インバリット。バブルショットを完全防御させてもらうぜ」

 弾丸が到達するより前に、カードより放たれた光の壁に阻まれる。一発目は外したが、次のターンに再度攻撃すれば問題ない。ダークモノリスに攻撃されたとしても、蚊の一刺し程度なので負ける要素はないはずだった。


 絶望的な状況にも関わらず、オズマから湧き出ているのは自信。卑屈になることなく、むしろ威圧的に胸をそらしている。その横暴さに、いじゅーの方が萎縮しそうになる。

「ここから俺のとっておきを披露してやるぜ。スキルカード猿真似イミテーション。このバトル中、手持ちの別のモンスターの技を一つ選び使うことができる。俺はトラッシャーの『リサイクル』を指定する」

「リサイクルだって。そんなレア技を覚えてるなんて」

 いじゅーが驚くのも無理はない。千体近いモンスターが配信されているが、リサイクルを使うことができるのはわずか数体。おまけに入手難易度が高いモンスターばかりなので、プレイヤーの間ではレア技とされていた。


 しかし、その効果はなかなかに強力なので、全国対戦での使用頻度は意外と高い。なので、いじゅーもまた効果自体は承知している。だからこそ、一抹の不安を禁じることができなかった。


 レア技をコピーするといった衝撃も去ることながら、オズマは更にスキルカードを使用する。

「スキルカード自動回復オートヒール

「やっぱり回復カードを使ってきたか。それは読めたぜ」

 耐久力に優れたモンスターを使うのなら、十中八九回復カードを忍ばせている。これもまた戦闘における定石だった。

「このターン、俺は『身を守る』で防御力を上げて終了する」

 ダークモノリスが大きく開眼すると、地表から新たに骨が浮き上がってくる。それらは吸い寄せられるようにダークモノリスに集合していき、より強固な壁を形成する。防御力を上昇させるだけの単調な補助技。それでも、残り体力からしてまだ余裕のはず。


 そんな打算は、次の瞬間に一気に打ち砕かれることとなった。自動回復により体力が少し回復する。そう思われたのだが、ターン終了と共に、ダークモノリスの体力は一気に全快したのだ。

 あまりに清々しい不正効果。それもデジャヴがある。アークグレドランの使い手カズキが使用していたスキルカード。それと全く同じ効果を発動させたのだ。

「おい、さすがにおかしいだろ。自動回復にそんな回復量はないはずだ」

「どうだろうな。システムがバグってるんじゃないのか。俺は単に自動回復を使っただけだぜ」

 開き直り方もまた既視感があった。カズキと内通しているのなら、オズマもまた異常カードを持っていてもおかしくはない。


「お前、一体どこでそのスキルカードを手に入れたんだ」

「それは教えることはできないな。っていうか、俺が不正しているように思われてるみたいで不愉快なんだが」

 悪びれる様子はなく、むしろ鼻高々に手で顔を煽っている。怒りをぶつけるがごとく、バブルショットを連発させる。だが、防御力の上がったダークモノリス相手では一割を削り切るのがやっとだった。反則技を発動させられなければ、この一撃で勝負を決していただけに口惜しくてならない。


 そして、オズマの戦法はここからが肝であった。

「スキルカード爆破ボンバイエ。ダークモノリスでバカ正直に攻撃してもたかが知れてるからな。こいつで体力を削らせてもらう」

 ライムの目の前に典型的な爆弾が出現する。一度体感しているだけに、ライムはゲルボディを集結させ、爆破に備える。

 盛大な爆撃音と共に、ライムの体力ゲージが削られる。まだ八割。ダークモノリスの攻撃では一割も削れないのでまだまだ余裕がある。


「そして、ダークモノリスでリサイクルを使うぜ」

 ここで指示したのはトラッシャーからコピーした補助技リサイクル。眼を血走らせると、ダークモノリスのボディ全体が発光する。その光はオズマの手元に到達し、空白となっていたカードケースに長方形の物質を形成する。

「そうか、リサイクルをコピーさせたのはそれが狙いか」

 いじゅーはようやくオズマの戦法に気が付き声を張り上げた。リサイクルは一度使用したスキルカードを復活させ、もう一度使用可能にする技だ。復活したカードを勢いよく手に取り、オズマは高らかに笑い上げた。


「超装甲を誇るダークモノリスでひたすら相手の攻撃を凌ぎ、スキルカード爆破で攻撃する。俺の十八番のスキルカード戦法だ」

 最初にトラッシャーを自爆させたのはダークモノリスに繋ぐだけに過ぎなかった。真の目的はトラッシャーの持つ「リサイクル」をコピーすること。壁モンスターを突破するのに苦戦している間にスキルカードで仕留める。敵ながら見事なチームプレーであった。

モンスター紹介

ダークモノリス 闇属性

アビリティ 鉄壁:受けるダメージを減少させる

技 身を守る

生物の骨を岩壁のように積み上げて身を守っている巨大な壁のモンスター。

土属性のモノリスと同じく、攻撃力は皆無だが防御力は異常に高いという極端なステータスを持つ。素直に攻撃してもサンドバック状態にされるだけなので、毒などの補助技と絡めて戦う必要がある。

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