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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
2章 支配されたフィールド! 波乱の大会予選!!
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メガゴーレムVSアークグレドラン

 相変わらず闇属性に有利なフィールドが続いているが、攻撃力を上げる効果がなくなった分、先ほどよりは戦いやすくなったといえる。基本的に水属性の技しか使えない徹人にとって、光属性の技の威力が半減されたところで何ら実害はない。

 それはまた、日花里も同様で、主に逆鱗によるごり押し戦法で着実に勝ち星を稼いでいった。

「大抵、逆鱗を使えば突破できちゃうから、申し訳ない気がしてきたわ」

「我が力にかかればこんなものだ。さあ、愚者を蹂躙してやろうぞ」

「あんた、セリフがどう聞いても悪役のそれじゃない」

 後ろめたく思いつつも、ここぞという場面ではつい逆鱗に頼ってしまうのであった。


 徹人が次なる対戦相手を探し求めていると、見知ったアバターと遭遇した。中世の盗賊然としてならず者の男。それに象徴されるように、中身も性悪な源太郎であった。

 彼もまた、相変わらずメガゴーレムを使用している。闇属性優勢の中、土属性のモンスターを使用してここまで勝ち残れたことは賞賛に値する。全国五百十八位は伊達ではないということだ。


 現在進行形で戦闘中であり、血走った眼で対戦相手を睨みつけている。その様子を観察していると、ある異変に気が付いた。

 源太郎の周囲にいるプレイヤーは一様にそのバトルを見守っているのである。対戦途中にも関わらず視線を向けているといった熱狂ぶりだ。


 源太郎ことゲンはそこまで注目される腕前ではないはずだ。ここまで衆目を集める理由。それは、対戦相手にあった。

 現代の不良をそのままアバター化したような、三白眼の凶悪な男。それだけなら、あまり近寄りたくないという印象を持つだけだが、プレイヤー名を確認するや、異常事態の謎が大方解けることとなった。

 源太郎の対戦相手。それは、現在予選トップの「カズキ」なのである。


 今のところ最強の実力を持つプレイヤーのバトル。それだけでも注目を浴びるに十分な理由を有する。だが、拍車をかけているのはカズキが使用しているモンスターであった。

 アニメ版ファイトモンスターズを見ているものなら、そいつの正体は一目でわかる。主人公の相棒、グレドラン。しかし、それにしては凶悪な目つきをしていた。よく見ると、翼や角の形状が違う。極めつけは鱗の色であった。暗黒のフィールドに紅の眼だけを際立たせる邪悪な色彩。そいつは漆黒のグレドランだったのだ。


「テト、あのモンスターって」

「信じたくないけど、間違いない。でも、こんな短期間でバトルに出してくるなんて」

 徹人はおろか、ライムも驚愕しているのも無理はない。カズキが使用しているモンスターの名はアークグレドラン。本大会で配布されている限定モンスターなのである。


 できるだけ即戦力となるようにと、一定レベル上昇された状態で配布されてはいる。しかし、大会で渡り合えるレベルに達するには、そこから更に経験値を積み重ねなくてはならない。経験値上昇のアイテムが存在してはいるものの、最大レベルまで上昇させるとなると、相当量備蓄させる必要がある。余程の廃人プレイヤーであれば不可能ではないが、カズキもまたその一人であろうか。


「アークグレドランなんてレアモンスター繰り出して、いいかっこしいか。悪いが、相性なら土属性のメガゴーレムの方が有利だぜ」

 お得意の歯を剥き出しにするゴリラの威嚇を繰り出す。だが、カズキは不遜な態度を崩すことはなかった。アークグレドランはグレドランと同じく火属性のはず。相性が不利の相手に余裕ということは、何らかの策があるに違いない。

「どいつもこいつも闇ばっか使いやがって。等倍で瞬殺できるからクソつまんなかったぜ。むしろ、土属性相手なら楽しめそうだから大歓迎だ」

 大手を広げ、高らかに笑い上げる。不気味ささえ感じられるその様相に、あのゲンが怯みを見せた。


「アークグレドラン、消し炭にしてやれ。カオスフレイム」

 アークグレドランが咢を開くや、紅蓮の炎が放射される。それも、青紫色をした毒々しい代物だった。

 相性が悪いうえ、メガゴーレムは技の威力を減少させるアビリティを持つ。それにも関わらず、HPは半分近くまで削られた。

「炎技でここまでやられるなんて、なんつー攻撃力してんだよ」

「知らねえのか。アークグレドランのアビリティ先手必滅だ。こいつは残り体力が八十パーセント以上の時、攻撃力を上げることができる」

 攻撃力と素早さが異様に高い反面、防御力と体力が極端に低いという特徴的なステータスを有していた。それに拍車をかけるのが先手必滅というアビリティ。相手に反撃させる暇を与えず、一気に殲滅する。アニメでも披露された悪夢の戦法だった。


 炎をくすぶらせながらも、メガゴーレムは構えを取り直す。呼応するように、ゲンも腕を組んで仁王立ちした。

「お前のアビリティはHPが減少しちまえば効果を発揮しないんだろ。ならば対処法は簡単じゃねえか。メガゴーレム、レインストーンだ」

 体力を削れば自ずと攻撃力も削減できる。単純明快ではあるが、有効な手段であった。メガゴーレムの上空に空間の裂け目が生じ、無数の岩石が降り注ぐ。


 しかし、そんなあからさまな弱点を補強していないわけがなかった。岩石が到達する直前、カズキはスキルカードを発動した。

「スキルカード風化メタモルウィンド。これでアークグレドランの属性を風に変化させる」

 風属性に対し、土属性の技は半減されてしまう。徹人も愛用する属性変化による防御戦術だった。


 雪崩落ちる岩石の直撃を受けるも、翼で撃ち返すなど余裕を垣間見せている。とはいえ、残り体力はアビリティ発動条件を下回ってしまった。

 してやってりとゲンは指を鳴らすが、カズキはすかさずスキルカードでリカバリーする。

「スキルカード自動回復オートヒール

 その名の通り、毎ターン少しずつ体力を回復するカード。体力を減らされても、元に戻せばまたアビリティを使用できる。


 しかし、徹人はどうにも違和感を拭えなかった。アークグレドランのアビリティはほぼ満タンのHPでないと発動できない。それならば回復量が大きい通常の回復ヒーリングの方が効率はいいはず。わざわざ回復量の少ない自動回復を使う意義が見いだせなかったのだ。


 しかし、この後ついに恐れていた事態に直面することとなる。繰り返すが、自動回復の効力はHPの少回復。なので、ギリギリアビリティ発動条件に届かない値となるはずだ。

 だが、スキルカードの効力が発揮された途端、アークグレドランの体力は全快にまで達してしまったのだ。

「てめえ、そのスキルカードは反則じゃねえのか」

 ゲンがいきり立つのも無理はない。自動回復により回復できる量を大幅に上回っている。この大会に出場している者なら容易に看破できる不正カードを堂々と使用してきたのだ。

「反則なんて言いがかりだぜ。オレは普通に自動回復のカードを使っただけだ。回復量がバグったんだろ」

「この野郎、いけしゃあしゃあと」

「おっと、リアルファイトするなら、そっちの方が反則になるぜ」

 そう釘を刺され、源太郎はしぶしぶ拳を引っこめる。やり場を失った矛先をどうしようもできず、幾度となく空を殴りつけていた。


「アークグレドラン、うるさいゴミクズを始末しろ。スキルカード炎力フレアパワー、そしてカオスフレイム」

 スキルカードの加護を受け、暗黒の炎がメガゴーレムを包む。防御をアビリティ頼りにしているゲンにとって、この一撃を防ぎきる手立てはなかった。


 メガゴーレムが崩れ落ちるのに合わせ、源太郎もうなだれる。明白な反則技を披露されたのも衝撃的だが、それを差し引いたとしてもまさに圧倒的な実力であった。予選一位を裏付けるだけの速攻戦術。沸き起こる体の震えは、恐れか武者震いか。居てもたってもいられず、食い入るようにアークグレドランを眺めていると、使い手であるカズキに一瞥された。

「てめえは見かけたことあるな。公式大会なのにネオスライム使ってる変人だから目立ってたぜ。ここで叩きのめしてやってもいいが、そんな雑魚モンスターを潰したところで面白くねえ」

「なんだと。雑魚かどうか、やってみなくちゃ分からないだろ」

「やってみなくても分かるっつーの。まあ、オレとどうしてもやりてえのなら決勝まで勝ち上がってくるんだな」

 鼻で笑うと、カズキはアークグレドランを引っこめる。そんな彼の横に別のプレイヤーが並び立った。頭にバンダナを鉢巻のように巻き、ズボンのポケットに手を突っ込んでいる。

「カズキ、例の奴は見つかったか」

「今のところはいねえみたいだな。この調子ならオレとお前でワンツーフィニッシュしそうだな、そうだろ、オズマ」

「違いないな」

 カズキとオズマはハイタッチを交わすと、互いに歩み去っていく。徹人のことなど眼中にないといった呈だ。


「テト、あいつらむかつくね」

「ああ。この大会で当たったら目にもの見せてやろうぜ」

 哄笑しながら去りゆく二人を、徹人は目の奥で炎を燃やしながら眺めていた。

モンスター紹介

アスモデウス 闇属性

アビリティ 暗黒の絆:3体で勝負を挑み、かつすべてのモンスターの属性が闇の時、全能力値を上げる。

技 バベルブラスター

肩にある羊と牛のモニュメントが特徴的な大悪魔。

アビリティの発動条件は厳しいが、達成すればそれに見合うだけの実力を見せる。光属性の技で一網打尽にされるという弱点も有しているので、それを補強するスキルカードも必要である。

かなり癖があるので、上級者向けのモンスターといえるだろう。

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