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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
1章 ライム驚愕の正体! そして決別!?
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テトの切り札「革命(チェンジザワールド)」

話の流れの都合上、今回はちょっと短めです。

 その一方で面白くないのはライムである。自分が得意としているアビリティが壁となってしまったのだから当然であろう。地団太を踏みながら吼えかかる。

「ふ、ふん。いくら攻撃を耐えたからって、残りHPは一だかんね。それに、砂塵の効果ですぐにやられちゃうもん」

「実はそうならないんだな。僕が浮遊を使ったのを忘れたか」

「そうか。浮遊は砂塵によるダメージを防ぐことができるのよね。だから、ライムがまた攻撃しないとネオスライムは倒されることはない」

「その通り」

 日花里の回答に、テトは親指を立てて応じる。


 そして、テトの反撃はここからが本番だった。ネオスライムの残り体力がこの数値になったことで、切り札として控えていたあのカードを使うことができるのだ。

「ライム、お前には悪いがこの勝負勝たせてもらう」

「一発も攻撃を当ててないのに、テトが勝てるわけないじゃん。出鱈目言わないでよ」

「普通ならそう思うよな。けれども、この状況でお前を一気に追いつめることができるカードがある。今こそ僕の切り札を発動する」

 テトがスキルカードの発動を宣告すると、ネオスライムとライムの両者をまばゆい光が包む。


「スキルカード革命チェンジザワールド

 両者の本体には特に変調はもたらされていない。だが、大きな異変はHPゲージに発生していた。

 十分な余剰があったライムのHPが一気に減少していく。それに対し、ネオスライムのHPが急速に回復する。

「どういうこと!? 私のHPがこんなに減らされるなんて」

 ライムがうろたえているうちに、残りHPは半分以下、それどころか雀の涙ほどにまで減らされる。バーの動きが止まった時にライムの体力を示す数値は「一」であった。


 ほとんど全快にまで回復したネオスライム。それに対し、風前の灯となったライム。まさに一瞬の内での逆転劇であり、訳が分かっていないライムは頭を抱えるばかりだ。

「ねえテト。どんなインチキ使ったの。勝てそうにないからこんなことするなんて、失望したよ」

「見損なっちゃ困るな。僕が使ったのは正規のスキルカードだ。そうだろ、田島さん」

「ええ。徹人が使ったカードは実在するわね。それも、父さんからわざわざ取り寄せたカードだし」

 徹人が使用したスキルカード「革命チェンジザワールド」。これこそ、ライム打倒の切り札として追い求め、日花里の協力のもと手に入れたカードなのだ。


「スキルカード革命チェンジザワールド。自分のモンスターの残りHPが十六分の一以下の時しか使うことができないけど、その効果は強力。なにしろ、相手と自分のHPを入れ替えるんだからな」

「HPを入れ替えるですって」

 このカードの発動条件を満たすとき、相手の一撃で倒されてしまうような窮地に立たされているのがほとんどだろう。そんな局面で自分のHPを相手に押し付けるのだ。そのうえ、相手のHPを自分に上書きできるので、タイミングさえ合えばテトのように大逆転を演じることができる。使いどころが難しいが、戦局を一気に覆すことができる、まさに最高ランクのレアカードにふさわしい強力無比な効果であった。


「こんな手を使うなんて、やっぱテトはすごいな。でも、いくら回復したって無駄だかんね。マシンガンシード」

 いきりたったライムは、指先から植物の種の弾丸を連射する。慢心して指示を出し忘れ、弾丸は呆気なくネオスライムに全発命中した。


 さすがに二連発で奇跡を起こせるほどテトは強運ではない。気持ちいいぐらいに体力が減らされ、ネオスライムはノックダウンしてしまう。これでテトの手持ちは残り一体となった。

 だが、勝負は最後の一体を召還するより前に決するはずだ。ライムが攻撃を仕掛けたことで、毒、およびフィールド効果により特殊ダメージが発生する。それらは九死に一生を適用することはできない。加えて、ライムの残り体力は「一」だ。

「ライム、僕の勝ちだ」

 ネオスライムが完全に消滅したのと、テトがそう宣言したのは同時であった。


 ライムの頭上に紫色の禍々しいシャボンが沸きあがる。これこそ、毒に侵されていることを示すエフェクトだった。これで一ドットしか残っていない体力は消滅する。

 そのはずだった。だが、いくら待ってもライムの体力は減ることがない。間違いなく毒状態は機能している。テトだけでなく日花里もまたそのことは視認済みだ。そして、毒により受けるダメージは最大HPの十六分の一。どう考えてもその数値が一以下になることはあり得ない。


 毒によるダメージ判定が終了し、すぐさま砂塵フィールドによる特殊ダメージが発生する。しかし、これもまたライムのHPが尽きることはない。


「そんな。毒やフィールド効果に対して九死に一生は発動しないはずだぞ」

 明らかな異変にテトは声を張り上げる。すると、ライムは不敵に笑みを浮かべて指を振った。

「それが発動しちゃうんだな。テトが自分で言ってたじゃん。私がデータの書き換えができるって」

 しれっと言い放つが、余りにも不条理な能力に直面し、テトは歯噛みした。この反則技を使ってくることは織り込み済みのはずだが、それでも実際にやられるとショックは大きかった。しかも、あろうことかそんな離れ業を披露する相手を敵に回しているのだ。奇跡を起こしたことによる歓喜が早くもしぼみそうになる。


 とはいえ、その対策を怠ったわけではない。むしろ、徹人の作戦がここからが大詰めであった。

「やっぱり、簡単には倒させてくれないみたいだな。じゃあ、僕の最後の一体にすべてを託そう」

 いよいよテトの最後の砦がその姿を現す。魔法陣による迎い入れられたそいつは、これまた意外なやつであった。

スキルカード紹介

革命チェンジザワールド

HPが1/16以下の時に発動できる。相手と自分のHPを入れ替える。

このカードを発動できる時は戦闘不能寸前であるため、相手を一気に瀕死寸前にまで追い込むというだけでも優秀な効果である。

特に、九死に一生や根性といったアビリティと相性がいい。予め相手を毒にしておくなど様々な戦法と組み合わせることができ、対戦では対策必須の一枚とされている。

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