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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
6章 人質は数千人!? 無限の戦術に立ち向かえ!
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キラーの宣戦布告

「ファイモンのアニメを付け狙うなんて。お前は何を考えているんだ」

「過去に宣告したはずだ。我は、人間への復讐を目論んでいる。今回の作戦は序章といったところだ」

 徹人たちが解せないといった態でいると、キラーは微笑を浮かべた。


「コンピュータープログラムである我が人間へと関与できないと思っているのなら、それは大きな間違いだ。その気になれば、いかなる方法でも人間社会を壊滅させることができる。例えば、そなたらが住む日本には原子力発電所があるだろ。そいつを乗っ取ったらどうなると思う」

 歴史教科書で学ばなくとも、過去の大震災で原子力発電所の事故があったことは伝達されてきている。もし、日本中に残されている発電所を一斉にメルトダウンさせられたら、どれほどの地域が壊滅的被害を受けるか想像もつかない。

「尤も、一気に貴様らを壊滅させるなどつまらん。悶え、苦しむ様を達観しつつ徐々に嬲り殺すことに決めておるからな。

 希望を語ったところで、実行手段が無くては話にならぬ。まずは、人間たちへうまく干渉できるか実験する必要があった。そのための媒体をどうするか、我は思案を重ねてきた。

 結果、行きついたのがテレビだった。半世紀以上もの間、人間たちへの情報伝達の手段として重宝されてきた電子機器。加えて、大衆娯楽の肝も担っている。現代ではパソコンに地位を奪われつつあるが、未だ人間生活の根幹にあることは間違いない。なので、こいつを使えば、大多数の人間へと干渉できるとにらんだのだ」

 よどみない演説に、口を挟める余地はなかった。人間が企んだとしても末恐ろしいが、人工知能が独力で作戦を構築したという事実が恐怖を助長していた。


「我が最初の作戦も最終段階に入っておる。十分後に放映開始されるアニメファイトモンスターズ。本編終了後の重大発表に我が用意した特別映像を流したらどうなると思う。かつて、九十年代後半に似たような事故があったようだが、その時とは比較にならないだろうな」

 キラーは弄ぶように指先を動かす。最後の発言から、キラーの目論見は九割方明らかだ。アニメ史上最悪ともいえる放送事故。それを超越する大惨事を引き起こそうとしているのだ。


 反論を封殺するほど、高圧的な態度で迫るキラー。しかし、いつまでも屈服しているわけにはいかなかった。

「堂々と犯罪宣言させられて黙ってられるかよ。ライム、あいつを止めるぞ。ファイモンのアニメにふざけた映像なんか流させやしない」

「が、合点だよ」

 腰が引けているが、ライムはどうにかファイティングポーズを取る。すると、キラーは嘆かわしく両腕を広げた。


「忘れたわけではあるまいな。我はファイトモンスターズのモンスターではない。LIEの能力を使うのであれば別だが、攻撃しても無意味であるぞ」

 指摘されるまでもなく承知しているつもりだった。純粋なコンピューターウイルスであるキラーにバトルは仕掛けられない。ようやく黒幕と遭遇したのに、指をくわえているしかないのだ。


 それでも、ライムたち四人はキラーに包囲網を敷くように配備している。唯一突破口があるとするなら、四人が一斉にLIE能力を発揮し、キラーを構成しているプログラムを消し去ること。だが、ライムたちに搭載されているウイルスプログラムはキラーが有しているものの複製に過ぎない。オリジナルに対してどれほど効果があるかは未知数だ。


 キラーは達観しつつ、ライムたちの作戦を見破っていた。己を倒すのであれば捨て身の特攻をするほかない。そして、迎撃するだけの力はあると自負している。もはや勝利は確定的だったが、戯れに右腕を伸ばした。

「このままでは我の圧勝で終わる。しかし、せっかく目覚めたのに何ら刺激がないというのもつまらん。なので、貴様らとゲームで遊んでやろうではないか」

「ゲーム、だと」

 舐め腐った態度に徹人は憤慨する。人間共など意に介せずといった態で、キラーは指を鳴らした。


 先制攻撃を仕掛けられたと判断し、ライムは慌てて身を塞ぐ。しかし、一向にダメージを受ける気配はない。周辺環境のせいで絶えず体を蝕まれてはいるが。

 だが、周辺環境による浸食が突如として停止した。それどころか、ノイズへと変換されていた部位が急速に回復していく。

「どうなってんの。全然息苦しくないよ」

「なんというか、かなり居心地がいい」

「せやな。アウェーからホームに戻された気分や」

「ふむ、言い得て妙であるな。だが、まさに我らが本拠地にいるようだ」

 口々に環境の改善を申し出る。その割に風景は変化していなかった。唐突に不可思議現象を起こされて戸惑っていると、キラーは腕を組んだ。


「我が能力を使い、一帯の環境を変化させてもらった。人間の物差しで言うなら、我から半径五メートル以内はファイトモンスターズのサーバーとして適用される」

「つまり、この場においてノヴァたちは普通に技を使えるということか」

「察しの通り」

 周辺環境のせいで消滅する危険性が無くなったのはありがたいが、それにしても解せなかった。キラーの犯した挙動は、明らかに敵に塩を送っているのである。目的を遂行したいのであれば、完全無敵状態のまま一方的に蹂躙すればいいはずだ。


 一同が浮かない表情をしていると、キラーはため息をついた。

「我からのプレゼントを気に入っていないようだの。せっかく、我を倒せるチャンスを与えてやったのだぞ。まあ、腐らせるのがオチだろうがな」

「わざわざこんなことをして何を企んでいる」

「先に言っただろ。戯れだ。我が目的が達成されるまで三十分もない。その間に我を止めることができるチャンスをやろうと思ってな」

 不遜に口角をあげるや、キラーはとんでもないことを言い放った。

「我とファイトモンスターズのバトルをするのだ」


 あまりにも突拍子の無い提案に、一同は開いた口が塞がらなかった。

「お前とバトルするというのか」

「不服か。貴様らにとっては有利となる条件を出しているのだぞ。我の体内構造をファイトモンスターズのモンスターと同質とすることで、バトルによってダメージを受けることになる。

 そして、我が作戦が成就するまで残り三十分といったところか。それまでに我に勝つことができたら、用意してあった映像を放棄しよう。そして、ハンデとして貴様ら四人で挑んでくるといい」

「俺たちを同時に相手して勝てる気でいるのか。つくづく舐めた輩だ」

 ライムたち四人をまとめて一手に引き受けるとは正気の沙汰ではなかった。出揃っているのは現時点で最強クラスの実力者ばかり。一対一の真剣勝負でさえ苦戦を強いられるのは間違いない。もはや、狂気の沙汰としか思えない愚行であった。


 とはいえ、せっかくの反撃の機会だ。不特定多数の人質を取られている以上、無碍にするわけにはいかない。

「受けて立つぜ、キラー。僕たちの力でお前の野望を止めてみせる」

「決まりだな。来るがいい、我が力で葬り去ってやろうぞ」

 それが開戦の合図だった。サーバーにいる五人全員の傍に体力ゲージが表示される。四人全員を相手するのに合わせてゲージも四つというレイドボス仕様を採用するのかと危惧した。しかし、キラーもライムたちと同じくゲージは一つだけだった。あくまで対等に戦おうというつもりだ。

いよいよ最終決戦が始まります

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