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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
6章 人質は数千人!? 無限の戦術に立ち向かえ!
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犯人が現れた

ついに黒幕のお出ましです

 放送時間三十分前となり、武藤とも連絡がついた。ライム、朧、ノヴァ、ジオドラゴンと徹人陣営の最強勢力が出揃ったことになる。

「放送開始までのこの三十分が勝負となるわね。ファイモン以外のサーバーで活躍できるといっても、長時間は滞在できない。そして、犯人はおそらくコンピューターウイルスを使ってきている可能性が高い。だから、怪しいプログラムを発見次第、LIEの能力を使って駆除する。発見に至らなくても、放送が開始した時にはいったん戻ること。作戦は以上だけど、問題ないわね」

 綾瀬の説明に一同は首肯した。すでに放送制御機器の管理システムへの道筋は確保しており、後はライムたちが出向くだけだ。


「そして、釘を刺しておくけれども、この戦いはかなり危険なものになるかもしれないわ。放送局のシステムを自在に動かせるとなると、非常に強力なウイルスが仕掛けられていると思う。LIEもまた強力なプログラムだけど、場合によっては押し負けることだってある」

 言わんとしていることは身に染みて分かった。ファイモンのバトルでHPがゼロになるのとはわけが違う。相手は純粋なコンピューターウイルスの可能性が高い。そいつを駆除しようとするなら、反撃を受けてライムたちの存在自体が消されるかもしれないのだ。ライムたちにとってはまさに命を賭した作戦となる。


「ライム、危なくなったら無理せず帰って来るんだぞ」

「心配しないでよ。どんなやつが待っていようととっちめてくるんだから」

 笑顔でサムズアップを繰り出す。それでも、徹人は一抹の不安を拭い去れなかった。これまでも、危険を承知でファイモン以外のサーバーに送り出したことがあった。しかし、今回は訳が違う。待ち受けている相手の得体が知れないのだ。


 ただ、徹人たちがやらねば、この後の放送で大惨事が起きるかもしれない。意を決し、一同は放送機器サーバーへとライムたちを送り出した。


 彼女たちの視覚映像が手持ちの携帯端末へと送られてくるのだが、相変わらずゼロとイチが並ぶだけの無機質な世界だった。道という道もなく、綾瀬が用意した赤外線だけが目印となっている。どこから敵が飛び出してくるのか分からない。なので、常に気を張っている必要がある。

「こうして赤外線に従って歩いていくって、どっかのミニ四駆になった気分ね」

「ライム、あんたビ〇トリ―マグナムでも破壊するつもりか」

「あんさんら、そのネタはマニアックすぎて分かりませんて」

「いかにも。ちなみに原作だとブロ〇ケンGが破壊したようだぞ」

 冗談を言い合っているのも緊張を和らげるためであった。場面が場面なら完全に遠足だが、周囲の風景がそうは許さない。


 やがて、先導していた赤外線が急に途切れた。景色は変わらないものの、ここが問題の放送機器サーバーということだろう。

 時刻は六時四分。早いと思われるだろうが、サーバー間移動はブラウザからブラウザに移るような感覚で行うこともできる。そう考慮すると、むしろ時間がかかりすぎていると言ってもいい。

「本来、ライムたちも異物として扱われるからね。セキュリティを潜り抜けるのに苦労したわ」

 現場への案内が完了したことで、綾瀬の仕事はひと段落する。彼女は今後、ライムたちの後方支援へと回る。なので、ここから先はライムたちの手で犯人を探索し、とっちめなくてはならない。


 とはいえ、あまりにも殺風景すぎて、どこを探せばよいか皆目見当がつかない。とどまっているだけでも、ライムたちの体にノイズが浸食してくる。試しにバブルショットを撃ちこもうとしたが、ノヴァに止められた。下手にサーバーを刺激して、そのせいで放送に問題が起きては元も子もない。


 大した収穫が得られないままいたずらに時が過ぎていく。もしかして、放送機器のサーバーはブラフだったのではなかろうか。そんな悪夢がよぎる。だが、候補地を洗い直している時間はない。


 事態が膠着化しつつ、時計の長針は「三」を指そうとしている。そんな時、ノヴァが目を光らせた。

「そこにおるのは誰や」

 ライムたち四人の他には誰も存在していないはず。しかし、ノヴァは一瞬ではあるが第三者の存在を捉えていた。


 異変に気が付いたのはノヴァだけではなかった。

「真、ここら一帯に不穏な気配を感じる。やはり、当たりだったみたいだな」

「うむ、我は特に感じることはないが。だが、よからぬものが潜んでいるのは確かなのだな」

 視認はできないが潜んでいる者がいる。徹人は過去にも似たような状況があったことを思い出した。現実世界でも通じるか分からないが、試してみるしかない。


「スキルカード対抗バニッシュ。どうにか成功してくれよ」

 ライムへと送り込んだのはスキルカードを無効化するカードだった。ファイモンのサーバー内ならすんなり発動するが、彼女たちがいる場所ではそうはいかない。他サーバーだと、スキルカードが発動できるかどうかランダムになってしまうのだ。


 とはいえ、天文学的確率を幾度となく樹立してきた徹人たちだ。数パーセントの確率など、成立させるのは容易い。

 空間に稲妻が迸り、長方形の光が出現しようとする。エフェクトから無理やり発動させようとしているのが嫌でも分かる。手助けするように、ライムが光の塊を引っ張り込んだ。

 そして、全員の視界を奪うまばゆい閃光が迸る。よもや、失敗か。悲観論がよぎるが、徹人は手持ちのデバイスを瞬きせずに注目する。


 やがて、ライムたちの視界が回復した。彼女の他に同士が三人。否、それだけではない。先ほどまではいなかったはずの第三者がしれっと佇んでいるのだ。


 金色の長髪をたなびかせ、一瞥するだけで愚民をたじろがせる冷徹な瞳。羽衣にも似た壮麗な服装を纏う姿はまさに神。しかし、そいつの本性を知る徹人たちにとっては邪神でしかなかった。

「まさかとは薄々感づいていたけど、やはりお前の仕業だったか。最強のコンピューターウイルス、キラー」

 名前を呼ばれ、キラーは口角をあげた。他愛無い一挙動だけで、ライムたちの身に悪寒が走る。他サーバーにいることのペナルティだとごまかそうにも、それを凌駕する異人が容赦なく肉体を蝕んでいく。


「戯れに透明化インビジブルの効果を適用しておったが、よもや見破られるとはな。それ以前に、我がここにいることを看破するなど、底知れぬお子よ。そやつらのパートナーとなるだけの器は持ち合わせているということか」

 一人納得するキラー。作戦が破られつつあるというのに、少しも動揺した様子がない。むしろ、予定調和とさえ感じる。


「すでにこちらも種は掴んでいる。放送機器のサーバーに潜んでいたことといい、お前がファイモンのアニメに介入していたんだな」

 ムドーが念を入れて尋問する。キラーは悪びれることもなく、

「いかにも」

 と、簡潔に返答した。

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