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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
6章 アニメに隠された目論見! 犯人の陰謀を阻止せよ!!
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アニメに潜むカラクリ

 そして、週末のことである。約束通り、徹人は日花里の家を訪れることとなった。彼女の自宅は徹人の家から自転車で十分ぐらいの高層マンションの八階にある。

 日花里の家はおろか、女子の家に足を踏み入れるのは初めてのことである。なので、出かける寸前まで身だしなみに試行錯誤する徹人だった。

「敵に塩を送るのは癪だけど、今日のテトはなかなかイケてると思うわよ」

「そうかい、ありがとう、ライム」

 苦心の末チョイスしたのは、白パンツにボーダーシャツ。アクセントにブルーのジャケットというコーディネイトだった。


 部屋の中にはすでに先客がおり、Tシャツとスリットロングスカート姿の綾瀬と白のチュニックにホットパンツと合わせたレギンスを着用した真であった。二人ともリビングのソファでくつろいでいた。

 発起人の綾瀬がいるのは予想の内だが、真が直接駆けつけているというのは意外であった。那谷戸在住なので遠出できない距離ではないが。

「真か。よくここまで来たな」

「アニメの秘密を解き明かすなんて面白い真似、ビデオ通信で済ませるのはもったいないと思った」

 徹人が労うと、真はそっけなく答えた。ただ、足労している辺り、興味津々なのは間違いない。


 母親との二人暮らしということもあり、内装は可愛らしい小物であふれていた。シ〇バニアファミリーのお家を再現したらこうなるんだろなと徹人は不埒なことを考える。ただ、気もそぞろになるのも致し方ないのかもしれない。なにせ、この場に集まっているのは徹人以外全員女性だからだ。

 巨悪へと繋がる手がかりになるかもしれないため、LIEウイルスの能力を有するモンスターの所有者に限定して招集をかけている。例外はプログラミング技術に長けた綾瀬だ。徹人がリビングに到着するや、ライム、朧、ジオドラゴンの三体も擬人化形態でホログラミングを起動する。


 さっそく検証開始と行きたいところだが、徹人はあることに気付いた。

「そういえば、ムドーはどうしたんだ。僕に何度か連絡を取ってきてかなりやる気だったのに」

「心配しなくてもきちんと折り合い済みよ。ノヴァちゃん、回線は大丈夫かな」

「問題ないで」

 リビングに綾瀬が持ち込んだノートパソコンにノヴァの顔が映る。遅れて表示されたのは現実世界のムドーこと武藤であった。

「ムドー君はスカイプ回線で検証会に参加してもらおうってね」

「さすがに何度も遠征するほど財力はないからな」

 武藤は関西地方在住であり、那谷戸まで出向くとなると旅行同然となってしまう。検証会とはいえ、やることはアニメを見直すことなのでビデオ通話でも支障はない。


 参加者が揃ったところで、さっそく検証が開始される。これから色々映像を弄るということもあり、最初は普通に前回放送分を見直すことにした。ちなみに素材となっているのは徹人が放送分を録画したブルーレイディスクだ。

 ダークネクロスのイモータルに対し、アキラのネオスライムが善戦する。そして、カイの助言で敵の本性を暴くことに成功する。だが、喜ぶのも束の間。真の敵であるドクターネクロスが登場し、ネオ・ドクロ団の旗揚げを宣言する。徹人は既に二回ほど見返していたので、ストーリー展開は諳んじることができた。


 一通り流してみたが、感想としては「面白い」と言う他なかった。日花里や真も同様のようであった。

「まあ、普通に視聴していては分からんだろ」

「そうね。じゃあ、次は早送りしてみようか」

 二倍速、三倍速と映像を速めてみるが、ただダイジェストを流されているだけで特に不審な点はない。遊び半分でマンボNO5のリズムに合わせて早送りと巻き戻しを繰り返したが、特に変わったところはなかった。


 検証を開始してから一時間が経過したが、特異点を発見するには至らない。やはり、映像に不審な点など存在しないのではなかろうか。徹人は半ば諦観していたが、綾瀬はしたり顔であった。

「ここまではいわば小手調べよ。次はコマ送りにしてみましょう」

 早送りの真逆で登場人物の一挙一動がスロー再生される。三十分の番組を再生しきるのに一時間以上かかりそうな勢いだった。

「ここまで遅いと眠くなってくるわね」

「寝たら死ぬわよ」

「あのさ、真。雪山に来てるんじゃないから冗談やめてくれる」

「じゃあ、寝たらケツバットでお仕置きされるとか」

「綾瀬さん、それはかなり昔の年末特番ですよ。確か、笑うとお仕置きされるやつでしたっけ」

 あまりにも物語が展開しないため、無駄話に花を咲かせる始末だ。いくら傑作と賞賛されていても細切れでテンポを悪くしてしまうと駄作に成り下がるということだろう。


 超絶スロー再生を続けて四十分が経過しようとしていた。コマーシャルを挟み、ようやくBパートに差し掛かろうとしている。Aパートの最後でダークネクロスがロボットだったと明かされたので、ここから新敵が登場するという流れだ。もはや展開が分かり切っているので、惰性で画面を見つめていた。あまりにも単調で退屈極まりないのだ。眠気覚ましにつまんでいたスナック菓子も底を尽きている。


 もはや検証会というよりも我慢大会に突入しつつあった。そんな折、ネオ・ドクロ団のドクターネクロスが歩み寄って来る。今回最大の見せ場ではあるが、

「今のシーン、ちょっと待ってくれ」

 唐突にムドーが声を上げた。映像を一時停止するが、ドクターネクロスが右手を掲げているだけだ。映ってはならないものが映っているかと思われたが、心霊的異常も無さそうだ。


「どうしたんだよ、ムドー。別におかしなところなんてないだろ」

「いや、これのコンマ数秒前だ。綾瀬、もっと遅くできないか」

「呼び捨てにしていいとは言ったけど、露骨に命令口調だとむかつくわね。まあいいわ。再生速度を落とすぐらい朝飯前よ」

 ただでさえ遅い映像を更にスロー再生し、加えて逆戻しにする。小刻みにドクターネクロスが右手を下ろしていく姿は失笑を誘う。こんなしょうもない映像に不審な点などないと思われた。


 だが、ドクターネクロスが右手を下げきる直前、画面全体に明らかな異変が現れた。当然画面全体が暗転したかと思うと、赤字のおどろおどろしい文体でメッセージが表示されたのだ。


「コレハ オモシロイ。ショウサンセヨ、カクサンセヨ」


 コマ再生しているにも関わらず、表示されている時間は一秒ほど。脇目をしていたら見逃してしまいそうだった。

「これは面白い。賞賛せよ、拡散せよ。どういうことだ。こんなの、本放送の時にはなかったぞ」

 繰り返すが、検証に用いているのは徹人がファイモンのアニメを録画したものである。動画投稿すらしたことがない徹人が映像を弄れるわけがない。そもそも、コマ送りにして一秒程度ということは、本放送時だとゼロコンマ単位の時間でしか流されていないことになる。


 そして、異変はまだ終わりではなかった。不可思議な画像を発見した速度で再生を続けていたところ、マゼンダが名乗った直後にも同一の画面が表示されたのだ。その後、番組が終了するまで十五分近くかかったが、その間に六回ほど例の画面を確認することができた。

「コマ再生しないと見れない画像だなんて。こんなのを仕込んで何がしたいのかしら」

 日花里が首をかしげる。それは徹人や真も思っていたことだった。アニメ制作陣が遊びで仕組んだとしても、発見されなくては意味がない。


 そんな無意味のはずの画像であるが、綾瀬は慄いていた。

「いやあ、超スロー再生にすれば化けの皮がはがれると読んでたけど、本当に剥がれるなんてね。しかも、こいつはすごい発見だわ」

「ああ。よもやこんなカラクリが潜んでいたとはな」

「ねえ、二人で納得してないで説明してよ」

 日花里が抗議すると、綾瀬は眼鏡の縁に手を添えた。

「アニメのファイモンに仕組まれていたカラクリ。それはサブリミナル効果よ」

サブリミナル効果は実在する手法です。詳細は次回更新をおたのしみに

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