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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
6章 大人気‼ アニメファイトモンスターズ!
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アニメファイトモンスターズ97話 ダークネクロス死す!? ネオ・ドクロ団の旗揚げ‼その3

「んなぁ。こっちに来るなッカ」

 通常であれば、モンスターの技は人間には効かない。だが、アキラはよくドランの火炎放射を受けて黒焦げになっていた。その数秒後に回復するのは昔からの伝統芸能ではあるが。

 そして、そんなお約束が通用する世界で、ダークネクロスだけがモンスターの技に対して完全に無敵という道理はない。そして、油断していたために躱すどころか、防御する暇もなかったのである。


 まともに気泡の弾丸を受け、ダークネクロスはマントをびしょ濡れにされる。水属性の基本射撃技なので、被害としては大したことはない。

 一方、通行止めを喰らっていた邪神の怒りだが、難なくバブルショットを突破する。そして、ネオスライムとギルアンコウを一網打尽にしようとする。

 しかし、先んじてアキラとカイは同時にスキルカードを展開した。

「スキルカード無効インバリット。邪神の怒りを無効化させる」

 モンスターの技を完全防御する最上位クラスのカードだ。これでまた命拾いした形になる。


 そして、ただ延命しただけではなかった。バブルショットの直撃を受けたダークネクロスだが、明らかな異変が生じていたのである。

「グ、グガガ、よくも、やった、ッカ、ね」

 途切れ途切れに発音するうえ、なぜかノイズが混じっている。動きもどこかぎこちない。

「どうした、ダークネクロス。調子でも悪いのか」

「う、うる、さい。ゆ、油断、し、し、た、だけ、だ」

 ハヤトにからかわれてムキになるが、口調の乱れは悪化の一途を辿っていた。そして、肉体にも変調は広がっていった。


 どうにか前に進もうとするが、足がもつれてうまく歩けていない。あっちへふらふら、こっちへふらふらと、酩酊したおっさんのようである。

「く、くそ、うま、く、せぎょ、で、でき、ない」

 あまりのふらつき具合に、もはや戦闘どころではない。そして、ついに自分の足でマントを踏んづけてしまい、派手につんのめった。


 気の毒になってアキラはダークネクロスを助け起こそうとする。だが、マントを広げた途端、彼らは息を呑んだ。

 マントの下に広がっていた光景。そこにはきちんと人間の体が存在するはずだった。だが、そんな固定概念は容易く破られることとなった。

 ダークネクロスの首から下を構成していたのは精密機械だったのである。


 白を基調としたボディにケーブルやらチップやらが剥き出しになっている。無秩序に構築されているのではなく、胴体に手足と人間の肉体を模していた。

「どういうこと。これじゃまるでロボットじゃない」

 マドカの感想は正鵠を得ていた。人間だとばかり思い込んでいたダークネクロスの正体。それはロボットだったのだ。

「とんだ茶番だな。お前たちはロボットに苦戦していたってことか」

「カイ、まさか最初から気づいていたのか」

「いいや、薄々そんな気がしただけだ。永遠にモンスターを復活させるなんて、普通の人間じゃあり得ない。加えて、ドクロ団の研究員がアンドロイドについて調べていたのを思い出してな。機械のボディにソウルコネクションを組み合わせるなど夢物語のはずだったが、よもや実用化してくるとは」

 元ドクロ団を感嘆せしめた技術力ではあるが、研究の結晶は見るも無残な姿に成り果てていた。


「しかし、いくら機械だからといって、水がかかっただけで壊れるなど脆過ぎないか」

「ソウルコネクションに注力しすぎて、防水だったり、防塵だったりという装備面には手が回らなかったのだろう。ともあれ、使い手を破壊してしまえばイモータルはろくに行動できまい。もちろん、無限の復活も発動しない。このまま一気に攻めるぞ」

 カイの指摘通り、主が急に不在となってしまい、イモータルはうろたえている。相手を蹂躙するなら任せろとばかりに、ネオスライムを差し置いてグレドランが進み出る。カイのギルアンコウも負けじと並び立つ。もはや、流れは決したか。


 すると、空中よりけたたましい咆哮が轟く。同時に、凄まじい重圧がかかり、グレドランとギルアンコウは押しつぶされそうになる。攻撃が行われているのは確かだが、軌道が不可視なのだ。敵の姿はおろか、いかにして攻められているのかも想像がつかない。

「あれを見て」

 耳をふさぎながら、マドカは天を指差す。アキラたちも首を上げると、優雅に空を飛ぶモンスターを目撃した。


 純白の極限まで無駄を省いた形態。そう描写すると聞こえはいいが、実際はおぞましい姿だった。なにせ、骨格標本がそのまま飛行しているも同然であったのだ。しかも、ただの動物の骨ではない。全長で八メートルに達しようかという大翼。鋭利なとさかと嘴を備えたそいつは、数億年前の地球で大空を制していた覇者だった。

「スカルプテラ。どうしてこんなところに」

 翼竜プテラノドンの骨格がそのままモンスター化した、闇と風の二属性を持つ凶獣。今も絶えず上空から超音波を発する「キラーノイズ」で制圧し続けていた。


 永遠と放送休止の電波音を聞かされているようなものなので、耳がおかしくなりそうだ。まして、実害を受けているグレドランたちは堪ったものではないだろう。

「グレドラン、スカルプテラに向けてブレイズブレス。厄介な音波を止めさせるんだ」

 やかましい音波に負けじと、アキラは腹の底から叫ぶ。それでも途切れ途切れになってかなり聞こえにくかったが、グレドランはどうにか攻撃命令が下されていると判断した。


 鎌首を持ち上げると、上空へと火炎放射を放つ。攻撃に夢中になっていたスカルプテラは退避が遅れ、まともに火炎を浴びてしまう。危うく墜落するところだったが、地面に激突する寸前に体勢を立て直した。ただ、怪音波の発射は中断されることとなった。


 イモータルの窮地に颯爽と飛来したスカルプテラ。偶然としては出来すぎだ。何者かの差し金と考えた方が自然である。

「俺様の正体を見破ったか。大した奴らだ」

 草むらを掻き分け、一組の男女が闊歩してくる。大空を遊泳していたスカルプテラは女性の元へと降り立っていく。イモータルもまた近寄る男にかしずいた。


 男の方は白衣を纏い、左目に機械仕掛けのルーペを装着していた。更に、右手が鋼鉄の義手、左足もまた義足と半ばアンドロイド化している科学者といった印象だった。一方、女は紅のスパンコールドレスに扇を手にし、中性の王女のように髪を編んでいる。歩く度にハイヒールの地面を踏み鳴らす音が響いていた。

「お前らは何者だ」

「いきなり何者とは礼儀がなっていない奴だ。おまけに俺様の傑作を壊しやがって。やんちゃなガキどもにはお仕置きが必要だな」

「あら、そんなポンコツを傑作だなんて、腕がなまってるんじゃないの。私のスカルプテラが助太刀しなければやられていたじゃない」

「余計なお世話だ。俺様のイモータルだけでも充分に勝てたぜ」

 アキラたちを置いてけぼりにし、いい年こいた男女二人が喧嘩を繰り広げる。ただ、カイだけは表情を曇らせ、爪を噛んでいた。


「状況から察するに、そっちの男がダークネクロスの正体ってところか」

「半分正解だな。ダークネクロスはその人形につけた名前だ。俺様の名はドクターネクロス。この世界を制圧する偉大なる科学者だ」

「そして、私の名はマゼンダ。以後、お見知りおきを」

 義手を掲げて大見得を切るドクターネクロスに対し、マゼンダは粛々と一礼をした。対照的な性格のようであるが、両者とも並の使い手ではないことは嫌でも分かる。


「わざわざ人形なんか差し向けやがって。お前らの目的は何だ」

「簡単なことだ。ソウルコネクションの実用化に向けた実験をしていたのだよ。生命力を糧にモンスターを永遠に復活させる禁断の技術。だが、馬鹿正直に生身の人間を媒介に使うこともあるまい。そこで目を付けたのは半永久的に起動できる機械だ。今回は不完全だったが、もし永久機関を開発し、そいつにソウルコネクションを組み込めば、正真正銘の無敵のモンスターが完成するって寸法さ」

「そして、無敵のモンスターを使って私たちに都合がいいように世界を作り替えるってわけ」

「大層なことを言って、所詮はドクロ団とやっていることが変わらないじゃないか」

 ハヤトが吐き捨てるが、ドクターネクロスは意に介せずといった態で義手を持ち上げた。

「当たり前だ。なにせ、俺様達の最終的な目標はドクロ団の再興だからな」

「あなたたちに敗れたシャレ・コーベに成り代わり、私たちが新世代のドクロ団を盛り立てていくのよ」

「今日は挨拶程度にしておいてやる。だが、近い将来に思い知ることになるだろう。我らネオ・ドクロ団の力の前にひれ伏すがいい」

 大言壮語を放つと、ドクターネクロスとマゼンダは魔法陣を出現させる。相方のモンスターを引っこめると、踵を返していった。


 追跡したいところだが、スカルプテラのキラーノイズが予想以上の痛手となっていたようである。グレドランたちの呼吸は荒く、立ち上がるのさえやっとだった。

「ネオ・ドクロ団か。また厄介な敵が出てきたな」

「それに、本当に不死身のモンスターを生み出されたら手が付けられないわ」

 アキラたちが静観している中、吹きすさぶ風が虚しく草木を揺らしていた。新たなる強敵の出現に、アキラは力強く拳を握りしめた。

「ドクターネクロスにマゼンダ。どんな手を使おうが、俺たちが野望を打ち砕いてみせる」

 決意を述べたところで、邪悪への反抗を誓い合う同志たちの顔が映し出された。

モンスター紹介

スカルプテラ 風属性

副属性 闇

アビリティ 太古の記憶:二回連続で同じ技を受けない

技 キラーノイズ

プテラノドンの骨格標本そのままの姿のモンスター。ネオ・ドクロ団のマゼンダの切り札である。

骨格標本型恐竜モンスターとして、他にガイティラノ、ドクロトリケラ、ムクロブラキオがいる。いずれのアビリティも二回連続で同じ技を受けない太古の記憶である。これにより、弱点を突く技を連続で喰らうことが少なくなってくるため、場持ちがよくなっている。

ちなみに、マゼンダは恐竜モンスターの使い手というわけではなく、薔薇をモチーフにしたロゼッタなど様々な属性のモンスターを扱うバランス型のプレイヤーである。

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