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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
6章 大人気‼ アニメファイトモンスターズ!
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異常な視聴率

 更にまた翌日のことである。相変わらず感想で盛り上がっていると、悠斗がおもむろにウェブサイトを開いた。

「視聴率の速報データが出たんだけどさ、すごいことになってるぜ」

 アクセスしたのは、視聴率の速報値をまとめているサイトだった。ドラマやバラエティなどジャンル別にランキングされており、表示されている項目はもちろんアニメである。


 日本一の発行部数を誇る週間少年漫画誌の看板アニメや、半世紀以上放送されている世田谷の一家のアニメなどメジャーなタイトルがランキングを斡旋している。だが、それらを抑えたのは、

「嘘だろ、ファイモンが一位かよ」

 それだけではない。もっと驚くべきは、視聴率の数値だった。


 ファイトモンスターズは夕方のアニメにしては平均視聴率四パーセントとなかなかの数値を誇っている。だが、昨日の回の平均数値はなんと二十四パーセントであった。朝の連続テレビ小説や日曜夕方の落語家による演芸番組でも二十パーセント程だ。しかも、話題の連続ドラマなどを差し置き、全体のランキングでも一位に躍り出ていた。

「先週が五パーセントだから、五倍近く数値が跳ね上がっているみたいだぜ」

「さすがに異常なんじゃないか」

「何を言う。世間的にも昨日の回が面白かったという証拠だろ。っていうか、サ〇エさんに勝つとかマジで神すぎるじゃん」

「そうだな、そうだよな」

 一瞬、疑念が渦巻いたが、悠斗に押し切られてあっという間に払拭された。視聴率が高いということは、世間からしても面白いと認知されている証拠である。多数決が絶対的な民主主義国家においては、そんな不文律に抗得られるはずはなかった。


 そして、アニメファイトモンスターズの異常ともいえる人気はついにワイドショーでも話題をさらうこととなった。

 学校から帰宅した直後、愛華が息せいて徹人の着ている制服を引っ張ってきた。少しうざったく思ったが、

「ファイモンがニュースでやっている」

 と聞いて目の色を変えた。


 夕方に放送されているニュース番組のエンタメコーナーであったが、画面一杯に映されているのはファイモンに登場する子竜モンスタードランであった。テロップには「アニメの人気が急上昇! 子供たちに人気のファイトモンスターズとは」と表示されている。


「小中学生の間で話題沸騰しているオンラインゲーム、ファイトモンスターズですが、昨日放送されたアニメの視聴率が二十パーセントを突破しました。平均視聴率が四パーセントとのことですので、異常な上昇率に不和を唱える声がある一方、面白いので当たり前だと賛同する声も多数寄せられているそうです。これについてメディア評論家の堺さん、いかがですか」

「実は、先週放送された回より面白いという意見がネットを中心に多数寄せられていたのですね。私も気になって視聴しましたが、確かに夢中になってもおかしくない内容でした」

「堺さんというと、手厳しい批判で有名なのですが、今回は絶賛なさっていますね」

「ええ。少なくとも、近年放映された子供向けアニメでは傑作だと思っています。おそらくですが、この調子だと来週放映分ではさらに視聴率を伸ばすでしょうね」

「ファイトモンスターズはリリース直後にもブームを巻き起こしましたが、ここにきて第二のブームが発生しつつあるようです」

「すでに第二ブームが起こっていると言っても過言ではないと思いますよ。実際のゲーム内では少女の姿をした謎のモンスターが出たと騒がれていますし。相乗効果で一大ムーブメントになるでしょうね」

 人気の女子アナウンサーと受け答えしているのは、丸ブチ眼鏡を掛けた薄毛の男性だった。エンタメコーナーでは辛口批判で有名となっており、そんな彼が絶賛するのは異例であった。


 更に、他の局のエンタメコーナーでも軒並みファイトモンスターズを取り上げていたのである。ただ、紹介の仕方は高視聴率を素直に絶賛するのと、急な上昇率に懐疑的な見方をするのとで二極化していた。

「面白いから、視聴率が高くても問題ないと思うけどな」

 後者の批判を流している局に徹人はぼやきを入れる。とはいえ、ネットでのアニメ感想まとめを参照しても、未だ批判のコメントをしている人はいる。そもそも、視聴率二十四パーセントということは、日本国民の三分の四はまだ未視聴ということだ。あまり真に受ける必要はないと徹人は自分に言い聞かせる。


 自室に戻った徹人がパソコンを立ち上げると、当然の如くライムが飛び出してくる。そこは別に驚くべきことではない。しかし、徹人は別の意味で驚くこととなった。

「いつの間にかメッセージが届いている」

 寝る前に歯磨きをするかのようにファイトモンスターズのマイページを開いたところ、ユーザー同士のチャット機能に未読メッセージが存在していた。それだけなら特に驚くことはない。悠斗とかから「全国対戦で勝てねえ」などのくだらない便りが届くことがあるからだ。徹人が目を丸くしていたのは、差出人が意外な人物だったからである。

「ムドーからって、あのムドーか」

「ノヴァちゃんからお手紙なの」

「多分、そうかもしれない。ムドーの偽物かもしれないけど」

 半信半疑だったのは、本文を開いたからだった。そこには、「アニメのファイモンで伝えたいことがある」とだけ記されていた。ぶっきらぼうな感じはまさしくムドーであったが、素性を隠すためにあえて簡潔な文面を用いているという可能性も捨てきれない。


 不審に思いつつも、ライムに頼んでノヴァへと直接コンタクトを取ってもらう。そうすれば、自ずとムドーとも連絡がつくはずだ。

 しばらくすると、ライムがノヴァを連れて戻ってきた。

「ようやく返信してきてくれたか。待ちくたびれたで」

「本当にノヴァがやってくるってことは、あの手紙は本物だったんだな」

「あんさんに悪戯を仕掛けてどないすんねん。うちはそんなに暇やあらへん」

 素直に感嘆を漏らすと、ノヴァは頬を膨らませた。そして、しばらくするとムドー本人とも通信が繋がったのだ。


「手を煩わせて悪いな。少し相談しておきたいことがあるんだ」

 全国大会で対面した時よりもどことなく大人びているのは、新調した学生服のお陰だろう。徹人よりも一つ年上の彼は、四月より高校へと進学した。それでも、相変わらずファイモンで無双を誇っているようだ。

「それで、話というのは」

「予め連絡した通り、アニメのファイトモンスターズのことだ。俺はまだ見ていないが、とんでもない人気らしいな」

「そうそう。面白いから見ればいいのに」

「アホやな、あんさん。ムドーはんは高校の勉強で忙しいんや。夕方のアニメなんか見とる暇あらへん」

 聞けば、県内でも屈指の偏差値を誇る高校に合格したという。アニメは未視聴でも律儀に全国対戦をこなすのは流石というべきか。


「お前なら正常な判断をしてくれると思ったが、無駄だったか」

「おいおい、その言い草はないだろ」

 いきなり冷笑され、徹人はムキになる。だが、ムドーは腕を組むと厳しい顔つきを取り戻した。

「急激な視聴率の上昇といい、きな臭さを感じないか。俺としても、不正の類は疑いたくはない。だが、普通に放送していて四倍以上も視聴率を伸ばすなど明らかに異常だろう。むしろ、裏があると考える方が自然だ」

「じゃあ、アニメのファイモンが人気なのは秘密があるっていうのか」

「私はそう思うよ。なんかみんなして目の色変えちゃって、怖くなってきちゃったもん」

 そう言ってライムが身震いする。いつもは気楽な彼女が怯えているなど、只事ではなかった。やはり、秘密があると勘繰るべきか。


「忠告はした。この調子だと、来週の放送で更に視聴率が伸びるのは確実だ。俺はどうにかしてアニメの秘密を探ってみるが、お前も注意しておけ」

 一方的に言い放つと、ノヴァと共に去っていった。帰り際にちゃっかり、「暇ができたら、ライムはんにリベンジさせてもらうで」と置き土産をしていったが。


 ムドーの言葉が気になり、徹人は今一度アニメのファイモンについて検索してみる。ところが、やはりどこも賛美しているサイトばかりだ。異常だと指摘されればそれまでだが、警戒しすぎではないだろうか。動画投稿サイトの動画が短期間で爆発的な再生数を記録するように、特定のテレビ番組が急激に視聴率を伸ばすのも珍しくないはずだ。

 何より、徹人は一話から欠かさず視聴するほど、アニメのファイモンに心酔している。不正を働くなんて真似はどうしても受容できないのだ。


 激しく頭を掻きむしると、徹人はベッドへとダイブする。

「宿題とかいいの」

 当たり障りのない話題でライムは呼び止めようとするが、ふてくされて伏している徹人には馬の耳に念仏であった。そんな彼に一瞥をくれると、ライムはネットの海に繰り出した。

最近はサ〇エさんの視聴率はそんなに高くないみたいですね。

参考までに前クールの甘々と稲妻が視聴率四パーセントを記録したようですよ。

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