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オンラインゲームがバグったら彼女ができました  作者: 橋比呂コー
1章 ライム誕生! スキルカードを取り戻せ!!
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カード強奪

 クラスメイトがざわめく中、伊集院徹人は膝を曲げて崩れ落ちた。相撲部屋に入門していそうな体格のいいクラスメイト剛力源太郎が嘲笑しながらそれを見下している。二人はそれぞれ、先ほどまで戦っていたテトとゲンと同一人物であるわけだが、服装はいつの間にか学校の制服へと変化していた。


 それどころか、闘技場であったはずの舞台も学校の教室へと変貌しており、級友たちが色めき立ちながら二人を取り囲んでいた。

「今回も俺の勝ちだな、徹人」

「今のはまぐれだ。今度は絶対に僕が勝つ」

「往生際が悪いぞ。そう言って負けてばっかりじゃないか」

 眼鏡をかけて嫌味な笑みを浮かべるクラスメイトが発破をかける。彼は西條京太。源太郎のいわば取り巻きであった。


「おい、大丈夫か、徹人」

 徹人の隣に、くせ毛の友人三上悠斗が駆け寄る。彼に支えられるようにして、徹人はどうにか立ち上がった。

 徹人が顔を上げると、源太郎が卑しい目つきで右手を差し出していた。

「さて、分かってるよな。この勝負に勝ったら、お前の持っているスキルカードを一枚もらうって約束だぜ」

「そうそう。とっととデッキを見せるんだな」

 躊躇する徹人であったが、データの入っているメモリカードを提示するのを渋っていると、源太郎は拳に息を吹きかけ始めた。その挙動に徹人は思わずすくみ上る。


「素直に言うことに従った方がいいぜ。源さんのパンチはメガゴーレム並に痛いからな」

 京太に煽られ、徹人はしぶしぶメモリカードを手渡す。源太郎はそれを自分の机に設置されているパソコンにセットし、記録されているデータを物色し始めた。

「源さん、徹人のやつ使っているモンスターは雑魚だけど、スキルカードはけっこういいの持ってますね」

「ああ。だが、俺がもう持ってるやつがほとんどだな。この中で選ぶとしたら……」

 一息ついて源太郎は画面にあるカードを表示させた。それを目撃した徹人は急に源太郎の腕を掴んだ。


「往生際が悪いな。どれを選ぼうと俺の勝手だろ」

「それだけはやめてくれ。そいつは僕の大事な」

「そんなの知ったこっちゃねえんだよ」

 徹人の抵抗は、源太郎の怒号で打ち消された。勢いよく腕を振り上げられ、徹人はその場で尻もちをついてしまう。それでもなお「やめろ」と叫ぶが、源太郎は無情にも「トレード開始」のボタンを選択してしまっていた。


 目の前で所有するレアカードが消滅していく。トレードなので、源太郎の所有カードと交換されるだけだが、相手がまともなカードを送ってこないことは先刻承知であった。

 それに、選択されたカードはただのレアカードではない。先の勝負で徹人が切り札としていたカード。そう、「大雨レイン」のカードであった。


 うなだれる徹人を前に、源太郎は乱暴にメモリカードを投げつける。

「残念だが、約束は約束だからな。悔しかったら、バトルでこの俺に勝つことだ。まあ、いくらやろうと無駄だろうがな。なんたって俺は全国五百十八位だ。そんじょそこらの相手じゃ話にならない」

 徹人は言い返そうとしたが、ただ歯噛みして、メモリカードを握りしめるしかなかった。


「あ、やばいですよ。もうすぐ先生が来ます」

 京太のそれが鶴の一声となり、皆一様に自分の席へと戻る。徹人もまた、源太郎を睨みつけ、しずしずと席につくのであった。

「おい、お前らやけに騒がしかったが、まさか教室でゲームなんかしてたんじゃないだろうな」

 昼休み後の五時間目の科目である数学。その担当教諭の平田が教室に入るなり釘を刺した。図星ではあるが、素直にそれを認めるような阿保がいるわけがない。


「最近、ファイトモンスターズとやらが流行しているみたいだが、いくら教室内にパソコンが整備されているからって、オンラインゲームをやるのは校則で禁止されているからな。まあ、お前らも中学生なんだから、学校でゲームなんかしちゃいかんってのは分かっていると思いたいが。

 さて、お小言ばかり言っても仕方ないからさっそく授業を始める」

 日直による恒例行事の後、生徒たちは一斉に机に設置してあるパソコンを操作し、数学のテキストデータを立ち上げる。画面に表示される動画を交えたり、パソコンを使って問題を解いたりと近世的な試みを交えているのだが、基本的には半世紀以上前から変わらない授業風景が続くのであった。先の戦いの結果で徹人が授業中上の空であったというのも相変わらずの風景といえばそうであろう。


 西暦二千三十五年。コンピューターは更に人間社会の至る所に浸透してきていた。学校の授業の八割がパソコンを使って行われるというのもその賜物であった。

 その他、日常生活のあらゆる場面で電子化が進み、前時代で既に電子化されていたものは更に発展を遂げた。後者で一例を挙げるならゲームである。半世紀前では架空の物語世界の中でしかお目にかかれなかった機能が続々と導入され、著しく進化していった。

 ただ、特定のゲームが小中学生の間で爆発的人気を誇るという現象は昔から相も変わらずであった。ドラクエ、ポケモンと名作と呼ばれるゲームが生み出されてきたが、その潮流に乗るとされているのが、徹人たちが熱中しているオンラインゲームである。

モンスター紹介

メガゴーレム 土属性

アビリティ 屈強な体:受けるダメージを少し減らす。

技 岩石パンチ レインストーム メテオブラスター

魔導士が作り出した土人形が意思を持って動き出したモンスター。大地に関連してマグマを操ることができるためか、炎属性の技も駆使する。

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